ミュージカル『王家の紋章』宮野真守さん、伊礼彼方さんインタビュー

時空を超えて実現した“イズミル・ライアン会談”は…爆笑につぐ爆笑!!




 この夏の話題作『王家の紋章』で、古代エジプト王国と敵対する古代ヒッタイト王国の王子・イズミル役を演じる宮野真守さん、現代から古代にタイムスリップするヒロイン キャロルの兄・ライアン役の伊礼彼方さんにお話をうかがいました。※イズミル役は平方元基さんとのダブルキャスト



──製作発表を終えられて、ようやく緊張が解けてきたといったところでしょうか。



宮野)はい。

伊礼)僕は、今日はなぜか最初から緊張しなかったんだよね。

宮野)でしょうね、そうお見受けしました(笑)。

その場にいる全員) 笑!

伊礼)本当に、不思議なくらいリラックスした製作発表でしたね。

宮野)あんただけや!!(笑)。

伊礼)俺だけか(笑)!

──今日もなかなかにフリーダムでしたね(笑)。

宮野)ちょっと“今日も”って言われているじゃん!


──お会いになるのは久しぶりとのことですが。

宮野)実際に会うのは10年ぶりぐらいだね。それも、ミュージカル『テニスの王子様』のライブで1日か2日ご一緒して以来。



伊礼)そうそう、だから、実はものすごく親しいというわけではないんだけど(笑)、僕の中ではすごく印象に残っている。当時から宮野くんは、ライブをやっていても会場の空気をキャッチするのがすごく上手くて、いわゆる“空気が読める人”。お客様が楽しめているかなと気を配って、もっと楽しんでもらおうとするところに共感したし、その姿勢が魅力的に映ったんです。若いメンバーだから、自分が楽しむのに精一杯だったりする中、こんな若者もいるんだって。まぁ、自分も若かったけど(笑)。

──その頃の伊礼さんはどう映りました。

宮野)同じ学校の役ではなかったので(笑)、楽屋でもそんなに近くにはいなかったよね。でも、柔らかいお兄ちゃんだなと思っていました。今日、久しぶりに会ったら、さらに柔らかくて(笑)。意外とキャラを抑えていたのかな。

伊礼)さらに柔らかく…、この10年いろいろ経験してこうなりました(笑)。

宮野)(笑)!!

──そんなお二人が、今年、帝国劇場で顔を合わせることになりました。



宮野)不思議な縁ですよね。

伊礼)本当に。

──帝劇初出演となる宮野さんが出演者に伊礼さんのお名前を見つけた時は。

宮野)あっ!と思いました。帝劇も、グランドミュージカルも初めてですし、そもそも舞台経験もほかの方より少ないので、非常に緊張感がある中、「知っている人がいる!」という、伊礼君の名前をみつけたときには安心感がわきました。

伊礼)わかるなー。アウェイ感いっぱいのところに入っていくのはすごく緊張するよね。

宮野)当たり前のことですが、今日の製作発表のリハーサルでもみなさんお知り合いだったりする中で、そこにどう入っていくかはドキドキしました。

──伊礼さんにとってのルドルフ(帝劇デビュー作『エリザベート』)のころに通じますか。

伊礼)そうですね。あのころは必死でした。名古屋公演でデビューしたのですが、その1か月はほぼ記憶がないんですよ。先日、名古屋へ行ったときに、「なんとなくここだったなー」って、泊まったホテルの場所をかろうじて覚えているくらい。帝劇に来てからもそんな調子で、実は帝劇のイメージもあまりないんですよ。今回、初めて落ち着いて立てる、やっと普通に帝劇を経験できるなと思っています。



宮野)僕も、そんな毎日になるのでしょうね。正直に言うと、まだ自分が帝劇の舞台に立っているということをイメージできなくて。8月にはあの舞台に立っているというのがまだ不思議な感じです。

──そこで演じるイズミルとライアン、今の時点でどうとらえていますか。

宮野)僕が演じるのは古代ヒッタイトの王子で、自分が欲するものはすべて手に入れられる身分の人です。そんな彼の人生で、初めて思い通りにならない存在がキャロルで、それに対して自分の欲に正直に動いていく人物。ある意味で素直というか。そういったところをしっかりと表現していきたいと思います。

伊礼)ライアンも御曹司ですから…育った環境は特殊ですよね。その中で妹が失踪。彼の愛情はわかりますが、あまりにもシスコンですよね。

宮野)あまりにもシスコン、確かにそうだね。

伊礼)でしょ。あそこまで妹を愛するというのは正直まだ理解できませんが、自分に近しい大切な人、血縁のある人を愛する気持ちはもちろんわかるので、そこを表現していこうと思います。
 ただ、荻田さんのお話だと現代パートはあまりたくさんは無さそうなので、頑張らないと!これは顔芸勝負かな(笑)


宮野)顔芸でお客様の記憶に残る感じ(笑)?



伊礼)だってね、古代のみなさんは衣裳もメイクも濃いのはもちろんですが、楽曲もすごくパワフルなんですよ。それに対してライアンは孤独を歌う楽曲。頑張らないと、古代のみなさんに全部持って行かれちゃうよ。

宮野)で、顔芸なんだ。荻田さんがどの程度受け入れてくれるのか、稽古が楽しみだな(笑)。

──伊礼さんの歌と芝居、そして顔芸?!の表現力で描き出される現代と古代の鮮やかなコントラストを期待しています。さて、そんなイズミルとライアンは時代は違えどキャロルを思う気持ちという意味では似たような境遇ですよね。

宮野)確かに僕らはふたりとも一方通行ですね。
この作品は少女漫画の金字塔と称される、まさにロマンスの原点なんです。ヒロインに対してさまざまな方向からベクトルが向かっていく、だから僕らはそれぞれ違う色の想いを出していけるし、出していかなくてはならないと思っています。そうすればお客様に感情移入して観ていただけるのかなと思いますね。


──劇中ではキャロル、劇場ではお客様のハートを奪い合うことになりそうですね。キャロルという少女にはどのような魅力を感じていますか。

宮野)夢を持って勉強している真っ直ぐな子。その健気さが要所、要所で出てくるので、放っておけなくなるんじゃないかな。

伊礼)そうなんだよね。原作を読んでいると、すぐ突っ走っていっちゃうんだよ。そこを兄としては「こらこら、待て待て」って。でも、それも聞かずに行ってしまうところがかわいいんじゃないかな。



──このように長く愛されている原作、その人気のキャラクターを演じる上でプレッシャーは。

伊礼)彼ら(古代エジプトチーム)はあるでしょうね

宮野)僕らはあるでしょうね(笑)。

2人) 笑!!

──なんでしょう、この息ピッタリ感(笑)。



宮野)空気が読めるんでしょうね、僕ら。

伊礼)ね、自分たちで言っちゃった(笑)

宮野)連載開始から40年目で初めてのこと、そんな“歴史的瞬間”“前代未聞”という空気は感じていますので、オファーをいただいたときからそこへの緊張感はありますよ。
正直、出演に対しては勇気もいりましたが、ミュージカル界としても大きなチャレンジであるこの作品、そこで僕自身もチャレンジすることは、自分の中でのステップアップになると思ったので決めました。緊張感はありますが、同時に、よし、やってやろう!という気持ちもあります。


伊礼)原作ものというのは、やっぱりファンの方のイメージが強いので特有の難しさはありますよね。実際、僕らだってそうですよ。小説を読んでいても、自分でイメージを作って読み進める。それが面白いところでもあるので。
 生身の人間が演じるとなったときに、僕が一番難しいと思うのは声。ビジュアルは作れますが、声、しゃべり方やトーンも含めて、それは想像するしかない。それを受け入れてもらえるのか…。


宮野)確かに見た目は寄せられてもね。

──そこは宮野さんが主戦場にされているところでもありますよね。

宮野)主戦場にはしていますが、そこでは常に同じ戦いがあるんです。

──そこで大切にしていることは。

宮野)結局は自分の声帯でできることでしかないので、無理はしないですね。
自分自身で役を掘り下げ、イメージを膨らませること。そうして生まれる声を大切にする、自分が(その役に)選ばれた時点でそう思っています。


──舞台上でどのようなお芝居、声のアンサンブルが聞けるのか楽しみが膨らみました。
ここからはご共演者のみなさんについてうかがいます。同世代の仲間からミュージカル界の重鎮までそろっていますよね。




宮野)今日、みなさんがおしゃべりしている様子を拝見し、すごくいいカンパニーの中にいることを改めて実感しました。山口(祐一郎)さんにお会いするのは初めてでしたが、物腰柔らかく、こんな僕にも丁寧にあいさつしてくださって。これから現場でいろいろと学んでいきたいなと思います。

伊礼)僕も祐さんとは『エリザベート』以来ですね。今日も、お会いしたら「おじいちゃんだよ~」と温かく迎えてくださって。いつお会いしても、人を気持ちよくさせようと気遣いをされる方だからね。

宮野)会見でも、どの質問に対しても最後に山口さんがコメントされましたが、心に響くコメントの数々に感動しました。

──そして、会見といえば、原作の先生方もとってもチャーミングでした。伊礼さんも大活躍でしたね。



製作発表会見より

伊礼)僕にとって女性はみんな大切な存在なので、ミュージカル界のエスコートNo.1として…、いや、ただそういう文化の中で育ったというだけです。日本文化の中では、抑えていますが(笑)。

宮野)先生方、本当におかわいらしかったですね。

伊礼)お会いしたとき、この扮装で「僕、誰かわかります?」っていきなり話しかけたんです。そうしたら「ええ、ライアンよね」って笑顔で仰って、「そうです!」ってすっかりライアン気質(アメリカ人気質)でハグしちゃった!「あら~♪」って、それがまたとてもチャーミングだったんですよ。やっぱりオープンマインドでいったほうがいいよね!いろいろ出していこうよ!平方君みたいに(笑)。

宮野)彼は面白いね。稽古中も積極的にコミュニケーションをとっていこうと思います。どんどんオモシロイ部分が出てきそうです、彼からは。

伊礼)たぶん、スゴイよ(笑)。



──にぎやかな稽古場になりそうですね。
では、最後に本格的なお稽古開始に向け、どのような準備をして臨まれますか。


伊礼)僕は、まず荻田さんと交渉してシーンを増やしてもらうところからですね(笑)。メンフィスとキャロルの愛が盛り上がると、一方その頃ライアンは…「キャロル?キャロル?」って二人の後ろを通過しながら舞台上をさまようのはどうだろう。

宮野)ダメですよ、そんな(笑)!

──宮野さんはいかがですか。

宮野)僕個人としては、まずは歌です。ミュージカルで、どう歌い、どう表現できるのか。今、ボイストレーニングを受けながら、それを探しているところです。

──楽しいお話をありがとうございました。『王家の紋章』ワールドプレミアがますます楽しみになりました。


【こぼれ話1】

どちらからともなく「やっぱりこのポーズでしょ」と…



これは一体?!石油王と実業家の契約締結か、はたまた打倒メンフィス同盟か…


【こぼれ話2】

インタビュー終了後、伊礼さんがボソッと…

伊礼)俺、今日、何一つまともなこと言っていない…。

宮野)意外と言っていますよ。

伊礼)あ、そうですか?

宮野)冷静に聞くと大丈夫です(笑)。

伊礼)そう?じゃあOK、OK(笑)!

どこまでも面白いお二人は、次なる取材へと連れ立っていきました。




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ミュージカル『王家の紋章』製作発表レポート~歌唱披露&おまけ~

ミュージカル『王家の紋章』製作発表レポート~キャスト・クリエイターコメント編~

【公演情報】
ミュージカル「王家の紋章」
2016年8月5日(金)~27日(土)@帝国劇場
おけぴ劇場マップ 帝国劇場
プレビュー公演 8月3日(水)・4日(木)

<キャスト>
メンフィス:浦井健治
キャロル:宮澤佐江/新妻聖子(Wキャスト)
イズミル:宮野真守/平方元基(Wキャスト)
ライアン:伊礼彼方
ミタムン:愛加あゆ
ナフテラ:出雲綾
ルカ:矢田悠祐
ウナス:木暮真一郎
アイシス:濱田めぐみ
イムホテップ:山口祐一郎

川口竜也/工藤広夢

天野朋子/熊澤沙穂/栗山絵美/小板奈央美
島田彩/藤咲みどり/横関咲栄
青山航士/岡田誠/輝海健太/加賀谷真聡
上條駿/齋藤桐人/笹丘征矢/千田真司
長尾哲平/橋田康/若泉亮

<スタッフ>
原作:細川智栄子あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
脚本/作詞/演出:荻田浩一
作曲/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ

<ストーリー>
16歳のアメリカ人キャロル・リードは、エジプトで大好きな考古学を学んでいる。頼もしい兄や、友達や教授に囲まれ、幸せな毎日を送っていた。
ある日、とあるピラミッドの発掘に参加するが、そこは古代エジプトの少年王・メンフィスの墓だった。ピラミッドに眠っていた美しい少年王のマスク、古代エジプトへのロマンに沸き立つキャロル。
そんななか、アイシスという謎の美女が突然現れる。記憶をなくしているという彼女は、キャロルに優しく近づき、リード家で面倒をみることになるが、実はアイシスは古代エジプトの神殿の祭司でメンフィスの異母姉。メンフィスの墓を暴いたことによる祟りを起こすため、現代に現れたのだ。彼女の呪術によって、キャロルは古代エジプトへとタイムスリップしてしまう。
キャロルは、エジプト人にはありえない金髪碧眼に白い肌。そして、考古学の知識と現代の知恵を持つ。やがて古代エジプト人達から、“ナイルの娘”“黄金の姫”と呼ばれ、崇められる様になるが、キャロルは現代を懐かしみ、帰りたいと願っていた。しかし、メンフィスから求愛を受けるようになり、強引で美しい若き王メンフィスに反発しながらも心惹かれてゆく。だが、メンフィスを愛するあまり憎きキャロルの暗殺を企てるアイシスや、キャロルの英知と美しさにほれ込み、彼女を奪おうとするヒッタイト王子・イズミルなど、2人の間には数々の困難が立ちふさがる。
果たしてメンフィスとキャロルの運命は――。

公演特設サイト

おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文) おけぴ管理人(撮影)

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