
オール・ザット・ジャズ!(なんでもあり!)
それが“CHICAGO”の世界!!
世界初・女性キャストだけで演じられる『シカゴ』として、2014年に宝塚歌劇100周年を記念して上演された
ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚歌劇OGバージョン。
本場ブロードウェイから、クリエイティブチームを招聘。ボブ・フォッシーがのこした“シカゴの全て”を体に叩きこまれた強く美しい女たちが、この夏、ふたたびステージへ!
7月9日からの横浜公演を皮切りに、東京、大阪…そして! 評判を聞きつけたリンカーン・センター・フェスティバル実行委員会に招かれ、ニューヨーク・リンカーンセンター「デビッド・H・コーク・シアター」での上演も決定。
翌日に舞台入りを控えた7月某日、ダブルキャストでロキシー役を演じる大和悠河さんが、大阪にて報道陣の取材に応えました。

キュートな殺人犯、ロキシー・ハートを演じるのは元・宝塚歌劇団トップスター【大和悠河さん】
(朝海ひかるさんとダブルキャスト)
「前回よりクールに、よりセクシーに、スタイリッシュに進化」
「『シカゴ』は振付ひとつ、動きひとつにすべて意味がある。前回はそれを体に叩きこむのに必死だった。今回はもっと余裕をもって、感じるものを大切に見せていきたい」
「体ひとつで全てを表現。鍛えあげられた肉体も見どころ」
「宝塚OGが演じると、『シカゴ』の世界にも、なぜかエレガントで美しい品格が出てくる」 …気になる発言連発の大和悠河さん。
『シカゴ』について、ロキシー役について、そして女優・大和悠河さんについて、もっと知りたい! ということで…取材会のあと、さらに詳しくお話を訊いてきました!
◆【削ぎ落とした魅力、それがCHICAGOの世界!】
──先ほどの取材会で、宝塚OGが集まると、世代が違っていても、不思議と同じ空気感が生まれると、お話されていました。稽古場の雰囲気はどんな感じでしょうか? 全員が『シカゴ』の世界に入り込もうと集中している、まさに“ザ・シカゴ・ワールド”です。宝塚時代の稽古場とはまた雰囲気が違いますね。よりひとりひとりの集中度が高い。今回もまたニューヨークからクリエイティブスタッフが来日して、『シカゴ』の世界を、振付の細かい意味まで教えてくれています。これは本当に貴重な経験!! 出演者全員が彼らからのアドバイスを絶対に聞き逃さず、自分のものにしようと挑んでいるので、もちろん余計なおしゃべりなどはまったくない、集中した雰囲気ですね。
──『シカゴ』には「オール・ザット・ジャズ(なんでもあり)」というフレーズが出てきますが、実はその世界観を守るために、舞台裏ではたくさんの決まり事があると聞きました。 ダンスの振り付け、動きのひとつひとつまで細かく決まっています。お稽古着も「色は黒、形は体のラインが出るもの」という指定があるんです。宝塚時代の稽古場では、みんな色とりどりの稽古着。やっぱりちょっと目立ちたいという気持ちもありましたし(笑)、場面に合わせたイメージの稽古着を選んだりもしていましたから、雰囲気がまったく違いますね。でも黒を着ていると、表現したいことに集中できるんです。大事なのは、余計なものを削ぎ落とした、体の芯から生まれてくるもの。みんながそれぞれ主張するデザインのTシャツなんか着てたら、見せたいものが見えなくなっちゃうので(笑)、黒い稽古着にも意味があるんだなと思っています。
──「ロキシー役の色合いによって、作品から受ける印象も変わる」とおっしゃっていましたが、振付や動きまで細かく決まっているなかで、どのようにそれぞれの個性が出てくるのでしょうか? 今回、お稽古をしながら改めて発見したのですが、舞台の上に物語があって、役の感情がある。それを表現するために考えぬかれた振付であり、歌なんですよね。だから与えられた動きをきっちりやればやるほど、演じている役の感情がわかりやすく出てくるんです。オペラでもそうですが、ハッキリと決められた様式があっても、演じる人によって、現れてくるものや滲み出てくるものがぜんぜん違う。決まっていれば決まっているほど、自由になるというか、その人本来のものが出てくるんじゃないかなと思っています。実はついこの間も、ブロードウェイで『シカゴ』を観てきたのですが、もう、キャストによって見え方がぜんぜん違う! すごく可愛いロキシーだったり、なんだか強そうなロキシーだったり(笑)。
──確かに、前回もキャストによって印象が変わっていました。今回も朝海ひかるさんと大和悠河さん、それぞれに魅力的なロキシーに会えるのが楽しみです。
キャストの組み合わせによって、まったく違う魅力が出てくる宝塚OG版『シカゴ』。
全組み合わせを観てみたい!
◆【女優として、男役さんと芝居をするのは不思議な気分】
──宝塚の舞台は、華やかな衣装や、豪華なセットなども含めて楽しむものですが、今回はみなさん体ひとつで『シカゴ』の世界に挑戦されていますね。 宝塚は“夢の世界”を作り上げるところ。男役は、女性が演じているからこその、理想的なかっこよさを追求していました。でも今回の『シカゴ』の男役は、もっとリアル。本物の男性に近いものを目指しています。そこが同じ男役でも違うところですね。
──宝塚歌劇団卒業後、女優として各方面で活躍されています。タキシード仮面(『ミュージカル 美少女戦士セーラームーン』)など、宝塚時代に培った技術を活かした“男性の役”や“男っぽい役”を演じられることもありますが、今回は“女優”として“女性の役”を、“元男役”の方が演じる“男性役”を相手に演じられるわけですね。…ちょっとややこしいですが(笑)。 ニューヨークで本編終了後に上演する「タカラヅカ・アンコール」では、私は女役で男役さんと組んで踊るんです。これもある意味ちょっと珍しい、貴重な経験ですよね(笑)! みなさん本当にかっこいいんですよ! 組んで踊っているとドキッとしちゃう。やっぱり自然と宝塚時代の雰囲気になるというか、空気感が合うんですね。でも私も男役でしたので、女役として男役さんにリードされるというのは、なんとも言えない感覚です。不思議な気分ですね。
──今回、ビリー役は峰 さを理さん、麻路さきさん、姿月あさとさんの3人が演じます。 みなさん雰囲気がそれぞれ違います。同じ間合い、セリフでも、ロキシーとして感じるものが全然違うので、毎回ドキドキしますよ。そのほかのキャストも組み合せがたくさんあるので、日によって変わるのがおもしろいです。決まった型のなかでも、感じ方が変わるので、毎回ちゃんとセリフを聞いて、リアルな反応をお見せしたいですね。同じ流れのなかでも、ある日突然、別のものが生まれることもありますし。いろいろな組み合わせで楽しんでいただけると思います。
◆【“大和悠河”直伝! ニューヨーク公演の楽しみ方】
──大きな話題になったニューヨーク公演。決まったときはどんな思いでしたか? もう、本当に驚きました! そのあと、嬉しさと同時に怖さも感じて。宝塚OGとしての看板を背負って行くこともそうですし、なんといっても、あの『シカゴ』! それもブロードウェイでも今まさに上演されている、同じニューヨークでやるわけですから。でも2年前の私たちの舞台が評価されたからこそ、呼んでいただけたのだと思っていますので、そこは自信を持って、私たちなりの『シカゴ』をお届けするために、いま一生懸命にお稽古しています。
──ニューヨークの劇場の雰囲気をご存知なだけに、客席の反応も気になるのでは… “男役”というものにものすごく興味を持っていただいているみたいなんです。“タカラヅカ”の『シカゴ』にすごく期待していただいているようで。楽しみであると同時に、ちょっと怖いような…ドキドキしますよね…。うん、でも私たちの『シカゴ』、絶対にかっこいいはずなので、いつものように最高のパフォーマンスをお見せできれば。
──現地の観客はもちろん、日本から行くファンの方もいると思います。悠河さんのニューヨークおすすめスポットなどあれば教えていただけますか? ニューヨークのいいところは、とにかく歩きやすいこと。道がまっすぐで、すごくわかりやすいの。私もいつもスニーカーを持って行って、とにかく自分の足で歩くんです。昔に比べれば治安も良くなったし、実際に歩くことでわかることってあるんですよね。そうね…私だったら、まずは五番街からスタートして、セントラルパークを散歩して…買い物も好きだけど、街の雰囲気を楽しむのも大好きなんです。五番街はいわゆる観光スポットでもあるけど、ちょっと上の方に行くと、素敵なお家や建物があったりして、そういう町並みを見ながらぶらっと歩くのもおすすめですね。あとセントラルパークのリス! そこらじゅうにいっぱいいるんですよ。初めて見たときは驚いたけど、今ではニューヨークの癒やしの存在です(笑)。
──ニューヨークには、劇場用のおしゃれな靴と、歩きやすい靴、二足用意して行き、自分の足で歩き回るべし! と(笑) そうそう! それから、ニューヨークにはニューヨークのファッションがあるんですよ。現地で買ったものを着ると、ニューヨーカーの気分になれる(笑)。リーズナブルなものもたくさんありますし、私もいつも赤とか黒のワンピースを買うんです。結局、日本から持って行った服はぜんぜん着ないで、帰りは荷物が倍になっちゃう(笑)。でもニューヨーカーの気分で買い物するの、楽しいですよ。
──現地で揃えたアイテムでお洒落をして、『シカゴ』観劇というのも楽しそうですね! ◆
「“いい女”、追求します!」
【“今のわたし”をさらけ出したい】
──ロキシーは無罪を勝ち取るため、そしてスターになる夢を手に入れるために必死に生きていきます。同じく夢に向かっていき、宝塚のトップスターという夢を叶えた悠河さん。“今の大和悠河”としての新たな夢を教えていただけますか? 宝塚時代は、私にしかできない男役を追求していました。それと同じように、今度は女優として、自分に何ができるのか、突き詰めていきたいですね。再演に向けて変わったことは、何より私の中の『感覚』です。卒業してから、今回初めて『宝塚』という感覚が私の中でしっかりと土台になった!! と感じています。宝塚で培ってきたものを最大限に生かしてより進化できること、そして女優になっているんだけど、男役も追求しているという不思議さを大切にして、もっともっと自分をさらけ出して、どんな女優になれるのか…さらに“いい女”を追求していきたいと思っています!
──女優として、本当に幅広いジャンルの作品に出演されていますよね。 新派の舞台に出演させていただいたときには、周りからものすごく驚かれました。私自身も、驚きましたけどね(笑)。「え? 新派ってあの新派ですか?」って。でも求められたからには、自分ができるだけのことをさせていただこうと。そしてやっぱりどの作品も、やってみると勉強になるし、おもしろいんです。やればやるほど、やらなくちゃいけないことが増えてくるっていうのかな。今はとにかく「私はこれだけ」と決めつけずに、何にでも挑戦していきたいと思っています。
──新派からタキシード仮面、そして『シカゴ』に出演する女優さんは、世界中でもかなり珍しいと思います…! 着物からセクシーなワンピース姿に変身して、この夏は『シカゴ』一色。暑い夏、さらに熱い『シカゴ』のワールドツアーを乗り切る秘訣は? もうとにかく、しっかり食べて、筋肉を落とさないように(笑)! 前回の『シカゴ』は秋から冬にかけてだったので、寒さで筋肉が固まらないよう気を使いましたが、今回は稽古場で尋常じゃないくらいの汗が出てきます。「もう、これどうするの…?」って全員、必死です。衣装の着こなしも、細く見せるというよりは、筋肉をしっかりつけて、美しく見せる。うん、やっぱり「筋肉美」! これがないと、暑さに負けちゃうし、舞台の上でも見せたいものを表現できないですからね。
──舞台の上ではクールに、稽古場ではアツく、鍛えていらっしゃる、と! それでは最後にあらためて、ロキシー役への意気込みをきかせてください。 ロキシーだけでなく、監獄に入れられている女性たちみんな、「一歩間違えれば私もこうなっちゃうよね…」って、変に共感できるところがあるんです(笑)。もちろん殺人は犯罪ですが、人間としてどこかに理解できる部分があって、罪を犯しながらも、それでも生きていく強さを身につけて、スターになる夢に向かって這い上がっていく。その姿が、すごくピュア。絶対にあきらめず、使えるものは全部使って生きていく強さ、自分への愛、計算せず本能的に生きていく生来の賢さ、キュートさ、セクシーさ…これが全部“ロキシー”なんですよね。すごく印象的なのが、ヴェルマとふたりでショーに出演するラストのあの場面。“やっと舞台に出られた!”というシーンで、ロキシーが「50年後、魔法は消える」って言うんですよ。もうね、「ロキシー…わかってるなあー」って! ね? すごいですよね。すごく自分をわかっている。今だからこそ使えるセクシーさ、魅力、全部をさらけ出して生きるロキシー。私も“今のわたし”の全てを出して、このロキシー役を演じたいなと思っています。
そして、なんといっても「ザ・タカラヅカ!!」という、まさかの大羽根でニューヨークの劇場に立てるのが嬉しいですね。これぞ宝塚!! という舞台をニューヨークでもお見せしたいと思っています。
◆ 元・トップスターたちを中心に、宝塚歌劇団卒業生たちが魅せる、美しく、艶やかな、そして品格ある(!)ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚歌劇OGバージョン。
ニューヨーク公演で行われる「タカラヅカ・アンコール」では、黒一色の世界から一転して、極彩色のタカラヅカワールドへ! 大羽根も登場して、うっとりとするようなレビューシーンが繰り広げられるとのこと。さらに「すみれの花咲く頃」や、黒燕尾での総踊りも!
ニューヨークまでは…という方も、現在公演中の横浜公演では「タカラヅカ・アンコール」から一部楽曲が披露される「お見送りセレモニー」が、東京・大阪公演の一部日程ではニューヨーク公演の裏側に密着した「ニューヨーク公演特別映像上映会」が開催されるとのこと。
詳細は公式サイトをご参照ください セクシーで、逞しく、オール・ザット・ジャズ(なんでもあり♪)な女たちの活躍を、お見逃しなく!!
おけぴ取材班:mamiko(文/撮影) 監修:おけぴ管理人