大旋風!ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』!
新しい伝説の始まりを感じる日本版初演の様子を、舞台写真とともにご紹介いたします。ザ・フォー・シーズンズの楽曲で彼らの物語を綴る、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』。
今でも、そのメロディを耳にすれば、「あ、この曲ね!」と思える、大ヒットナンバーの魅力もさることながら、その名にちなんで、物語を4つの季節に分け、4人のメンバーがストーリーテラーとして語っていくスタイルというのも、とてもユニークで面白いのです。
もう、ひとりひとりが心の中では常に“枕詞「俺に言わせりゃ…」”が付くような4人なのです。きっと、そこには嘘はなく、それぞれの真実の青春だったり、人生だったり、音楽だったり…それがひとつになったものが、ザ・フォー・シーズンズであり、『ジャージー・ボーイズ』なんだということを強く感じました。
製作にあたったのはザ・フォー・シーズンズのオリジナル・メンバーであるボブ・ゴーディオとプロデューサーのボブ・クルー、本作にも登場する二人!さらに、劇中で語られるようにフランキー・ヴァリも、今もなお、歌い続けている。
生きる伝説!アメリカンドリーム!な彼らですが、物語はそんなきらびやかな面だけでなくほろ苦かったり、エグかったり、どうしようもなかったり…。
では、藤田俊太郎さんの演出で届けられる日本版『ジャージー・ボーイズ』、極上のハーモニー、ライブ感、そして人間ドラマに心わしづかみにされるREDとWHITE、2組のボーイズたちをご紹介。
【RED】
グループリーダーのトミー:藤岡正明さんトミー:藤岡正明さん
俺が俺がで、ダメダメなんだけど憎めない…そんなトミーの完成度の高さと言ったら!
そんな藤岡トミーのシーンで印象的なのは、フランキーの歌声に出会い、彼をメンバーに引き入れる歌。あれはもう…口説きの歌声!成功へのカギを見つけたトミー渾身の歌声から始まるザ・フォー・シーズンズの物語、その口火を切るトップバッタートミーです。
そして“3500ドル”のシーン、あの時のトミーの表情に胸を締め付けられました。
天才作曲家ボブ・ゴーディオ:矢崎広さんボブ・ゴーディオ:矢崎広さん
メンバー最年少、才能豊かで、頭もイイ!周りが放っておかないようなボブです。
柔らかい歌声だけでなく、何といっても、物語の第2章のはじまり、矢崎ボブが語り出した瞬間、思いっきりハートを射抜かれました。メンバーに見せる顔とまたちょっと違う顔で“僕ら”を語る矢崎ボブの、その切り替えの鮮やかさ、最高。そして、しっかりしていて先を見通すスマートさと、それでも消し去れないかわいらしさのバランスがイイ!
ベーシストのニック:吉原光夫さんニック:吉原光夫さん
決して目立つ存在でなくても、グループのハーモニーを支え、ステージを下りても常に周りをよく見ているニック。誰よりもほかのメンバーの変化を察知する繊細な人物を演じる吉原さん。口癖のようにボソッとつぶやくあのセリフも、プププと笑ってしまうようなカワイイニックです。
印象的なのは、ラストシーンの彼のした決断に対して本心を明らかにする瞬間です。ラストシーンということで、詳細は…ぜひ劇場で!
【WHITE】
グループのリーダーのトミー:中河内雅貴さんトミー:中河内雅貴さん
常にグループのリーダー、兄貴感のある中河内トミー。フランキーに悪いことをいっぱい(もちろんイイことも!)教えたんだろうな~(笑)。誰よりも自負心の強い中河内トミーが、ボブをメンバーに認めるときのアクションが、認めるけど…、どこかちょっと複雑だけど…、その思いが溢れています。さみしがり屋さんなのかな。あとはこちらもラストシーンになりますが、髪を撫でつける姿がそりゃもうカッコイイのです。
天才作曲家ボブ・ゴーディオ:海宝直人さんボブ・ゴーディオ:海宝直人さん
海宝ボブは何といっても、フランキーの歌声に出会った瞬間。目の前に天使が舞い降りた!かの如く、炸裂させるキラッキラの笑顔。一目、ならぬ一耳(?!)で恋に落ちたな、この人、と思わせるのです。それと同時に、ボブはビッグヒットのきっかけでもありながら、クレバーな異分子でもあった。でも、それゆえ、最後のピースになりえたのでしょう。
そして、お芝居の中の歌から、自然とスケールアップし、気が付くと劇場全体を巻き込むライブ感!海宝さんの、歌声で空間を支配する力も必見、必聴。
ベーシストニック:福井晶一さんニック:福井晶一さん
製作発表で「こういう華やかな場面が苦手で…笑」とはにかんでいた福井さん。
そんな福井ニックは、人間関係もハーモニーもグループをガシッと支える存在です。普段はあって当たり前の地殻のようなニックで、そこからの地殻変動が起きて…そこで、驚き、存在の大きさを感じるのです。そんな中に、ちょこちょこお茶目なところも垣間見え、そして心から音楽を愛するチャーミングなニックです。
さらに、異彩?!、独特の輝きを放っていたのはボブ・クルー役の太田基裕さん。ものすごく突き抜けています。この人を頼って大丈夫かしら?という始まりから、それでも頼れる確かな耳によって生まれる信頼!「ビンゴ!」のシーンがお気に入りです。
ほかにも、凄みをきかせたボスから一風変わったラジオDJまで大活躍の阿部裕さん、ワックスマンの鋭さで物語にくさびを打ち込み、カーテンコールでのハイトーンもサプライズの戸井勝海さんといったベテラン勢。
TV画面を通して夫を見つめる後ろ姿が印象的な綿引さやかさん、冒頭のフランス語ラップバージョンのキレも素敵な小此木まりさん、フランシーヌとして階段にたたずむ姿が涙を誘う まりゑさん、女性グループのセンターでパワフルに歌い上げる遠藤瑠美子さんといった女性陣!
モンキーチックなあのシーンで独特の感性を持つ人物を好演(!!)の大音智海さん、絶妙なコンビネーションをみせる白石拓也さんと山野靖博さんの車のシーン、石川新太さんのジョー・ペシは末っ子感炸裂です。
そして、お待たせしました。
フランキー・ヴァリ:中川晃教さんフランキー・ヴァリ:中川晃教さん
お稽古に入る前のインタビューで仰っていたこと「4人それぞれの人生がひとつになったものが“ザ・フォー・シーズンズの音楽”」。それを体現するかのような中川フランキー。
“天使の歌声”を持って生まれたフランキー、トミーとの出会いやニックの手助けもありその歌声はさらに磨き上げられ、やがてボブが加入。歌うことで成功への階段を駆け上がるフランキー。一方で、次第に溝が深まる、妻や娘ら家族との関係。
人間フランキーの成長と苦悩、少年のあどけなさから父親の哀愁までのドラマにも心打たれます。それでも、彼の人生には常に歌があった、ザ・フォー・シーズンズの仲間たちがいた。
プロデューサーでもある、ボブ・ゴーディオお墨付きのハイトーンは“驚異の”と形容されるにふさわしく、さらに感情を吐露するナンバーでの芝居歌も心にしみる。中川さんの、集大成であり真骨頂ですね!
REDとWHITEのほかの3人のメンバー、それぞれのパワーバランスが微妙に異なる中で、2つのザ・フォー・シーズンズがより一層輝くような絶妙なポジションをとる中川フランキー。さらに、フランキーが変化したときは、メンバーが絶妙に調和を生み出し、ときには関係を歪めさせる。
誰も欠くことのできない、4人そろってのザ・フォー・シーズンズ、それに尽きます。
最後に、観劇中にじわじわと感じていたのは『ジャージー・ボーイズ』という作品のタイトルの大きさ。この作品は、ニュージャージー出身の男の子たちの、音楽と愛と青春の物語なんだなということです。
時代を映し出すTV画面や回転する舞台、光と影の照明効果、生バンドの演奏…舞台でこそ届けられる『ジャージー・ボーイズ』にすっかり魅了されました。
舞台写真提供:東宝演劇部
おけぴ取材班:chiaki(文) 監修:おけぴ管理人 JB2016