さまざまな伝統芸能を30-DELUXが新しいエンターテインメントとして発信する
「Dynamic Arrangement Theater」。
今回挑むのは、
近松門左衛門の人形浄瑠璃の代表作『国性爺合戦』。
明朝復興という旗印に翻弄される人々の人間ドラマを大胆なアレンジで届けるこの作品で、主人公の母・渚とかつての明の将軍の妻・錦祥女という数奇な運命の糸で結ばれた二人の女性として共演される
緒月遠麻さんと
大湖せしるさん。ともに宝塚歌劇団出身、雪組時代には男役スターとして活躍したお二人の思い出話から、役へのアプローチまで盛りだくさんのインタビューが届きました。
緒月遠麻さん、大湖せしるさん
──まずは宝塚時代に同じ組に在籍されていた時期もあるお二人、お互いの役者としての魅力は。(※緒月さんは第86期生、大湖さんは第88期生として入団)
緒月さん)
せしるはどの男役より男役でした。仕草やウインクとか、私にはできない“キザ”なんです。実は、とある貸切公演のときに誰にも言わずに自分の中で「今日は大湖せしるバージョンでやってみよう」と決めてやってみたんです。そうしたらすごくテンションが上がったんですけど、同時にこれを毎日本公演ではできないなとも悟ったんです。せしるはちゃんと自分のものにしていたんだけど、私はそれがしっくりこないというか。下級生ながら堂々とした振る舞いをしていてすごいなと思っていました。大湖さん) えー、そんな風に!!
緒月さん)
特にショーとか。自分が思っているより、あなたすごかったよ。そんな誰よりも男役だったせしるが娘役に…びっくりしたわ。大湖さん) 確かに男役だったころは快感でしたね。客席を見たときに目が合うと、お客様が“はぁ~”となって、その瞬間にウインクすると“キャッ”ってなるのが!
緒月さん)
そもそもお客様を見つめられるところがすごいと思う。芝居としてならまだしも、ショーになると見られなかったから、私は。「何で見てくれないんですか」って手紙ももらったなぁ。実際に客席から見たときに目線もらうとうれしいし、そこでウインクしてもらったらファンになるよね。その気持ちはすごくわかるから、それができなかったのは私の引き出しの少なさだったなと。大湖さん) でも、それがなかったとしても、キタさん(緒月さん)の空間を埋める力というのをそばで見ていて感じていました。そして、組のみんなも「キタさん、キタさん」って集まっていて、それはファンの方へはもちろん、みんなに分け隔てなく、愛を注いでいたからだと思います。
そんな人として愛情の深い部分、普段の姿が全部舞台上に出ていて、とても魅力的でした。
私が悩んでいる時も、何か言葉が欲しいなと思うとキタさんのところに行きました。そうするといつも気づきをくれる方なんです。たくさんのことを教えていただきました。
緒月さん)
でも、せしるはちゃんと自分を持っていたから、悩んでいるなとは思っても、実はあまり心配していなかったんだよね。自分の中での方向性は決まっていて、こう背中を押してほしいんだなというのもわかりやすかったし。そして、目指す方向も間違っていなかったし、少し話せばしっかりと理解してくれたから。
あと、なんていうか舞台って普段が出るよね。おとなしそうに見えるけれど、絶対そうじゃないだろうなとか(笑)。舞台上では丸裸というか、近くでしゃべるよりも見えてくるものはあると思う。大湖さん) 舞台に立って表現するって、その怖さもあります。
──そして、今回、舞台でお二人が女優対女優として共演することになりました。お二人) (声を揃えて)楽しみしかない!
緒月さん)
もちろん自分の役に対しての課題、クリアしなくてはならないことへの不安が全くないわけではありませんが、共演できることについては楽しみしかないですね。大湖さん) 娘役に転向して女性の役を演じたとき、やはり芝居の中での感情の流れが自然だったんです。その自然な感覚でキタさんと芝居がしてみたいと思っていました。宝塚時代には叶わなかったことが、今回ようやく実現するのでとっても楽しみなんです。
──ではここからは、作品についてうかがいます。お稽古前の今の段階で感じる新版『国性爺合戦』の魅力は。大湖さん) 台本を拝見すると、親子や夫婦の情や国と国の争いなどさまざまなドラマが描かれていますが、その中でも特に、人の欲望をストレートにぶつけ合うことで見えてくるものが描かれているところに魅力を感じました。それはとても苦しい心情のシーンでもありますが。
緒月さん)
人の欲望の話っていいですよね。私自身、見るのもやるのも、さわやかな作品より人間臭い作品が好きなので、この作品もそういった人間ドラマの部分がすごく楽しみです。宝塚に在籍しておいてアレですが、ドロドロしたものが好きなんです(笑)。大湖さん) 実は私も(笑)。それぞれの欲望を否定しきれない、どこかで理解できてしまうようなところがあるんですよね。
緒月さん)
その中で私が演じるのは、佐藤アツヒロさん演じる主人公の和藤内(わとうない)の母・渚。一筋縄ではいかない、芯の強い女性です。でも“芯の強い”と自分で言いましたが、そのひと言で片づけてもいけないのかな。──確かに、渚は日本人女性ですが、夫の祖国でもある明朝復興のために、息子や夫と海を渡ります。さらにそこで…、人間的な大きさを感じますよね。緒月さん)
私、昔から宝塚の男役さんが演じる女性のキャラクターが好きだったんです。もちろん娘役さんも魅力的ですが、男役さんってどこか一味違うんです。不思議なんですけど。今回、渚を演じるにあたり、私が感じる“男役がやる女性”の魅力が出せたらいいなと思っています。だってあの時代のあの状況下ですから、人間的な強さがないと生き抜いていけないと思うんです。そこでは、どこかで男役だったことも役立つような気がして。大湖さん) 私が演じるかつての明の将軍・甘輝の妻、錦祥女(キンショウジョ)も渚とは性格づけは違いますが、本当に強い女性です。自分自身のプライドを守りながら、最後に“人のために”彼女がする行動を、今の私ができるだろうか…。そう考えると、この役を演じきることで、私自身、大湖せしるとしての新たな引き出しが増えるような、多くのことを得られる役だろうなという楽しみがあります。
──そんな濃密な人間ドラマの中に、ときどき笑いの要素が入ってくるのも30-DELUXの魅力です。緒月さん)
ありますね。私、意外と得意なんですよね。 大湖さん) え?「意外と」付きますか(笑)。私、台本を読んでいてキタさんの表情まで想像できましたよ!私の役はあまりそういうところはないので、そこはキタさんの面白さを楽しませていただきます。
緒月さん)
やるからには別空間になるぐらい変えようかな。というのは、作品自体が重めというかドロドロしているので、そういう場面が必要なんですよ。
そして、求められるからにはそこにちゃんと応えていきたいと思うんです。あまり考え過ぎずに、感じたままにやります。大湖さん) キタさん、舞台では丸裸ですから(笑)!普段のキタさんの面白さがにじみ出れば大丈夫です(笑)!
──お二人の幅広い魅力を見られそうな新版『国性爺合戦』がますます楽しみになりました。楽しいお話をありがとうございました。 公演は9月14日よりシアター1010にて開幕、その後、愛知公演、福岡公演、大阪公演が予定されています。約300年前、当時鎖国下であった日本で、中国人と日本人の混血である男を主人公に据え人気を博した近松門左衛門の代表作がどう生まれ変わるのか!この秋注目の公演です。
30-DELUX清水順二さん、森大さん、田中精さん鼎談も併せてお楽しみください
提供:30-DELUX/ジェイズプロデュース