「海外の秀逸な戯曲を東京の舞台へ」をコンセプトに、1997年からスタートした劇団スタジオライフの「The Other Life」シリーズ。
第9弾となる今回取り上げられるのは、アメリカ犯罪史上最大級のセンセーショナルな殺人事件「リッヅィー・ボーデン事件」をモチーフに描かれる「家族の物語」です。
劇団中心メンバーがFateチーム・Doomチームのダブルキャストでみせる“大人の”スタジオライフ公演『BLOOD RELATIONS~血のつながり〜』
(シャロン・ポーロック作/吉原豊司翻訳)観劇レポートを、Fateチームゲネプロ舞台写真&おけぴ会員のみなさまから届いた感想コメントとともにお届けいたします!
(以下、赤字はすべておけぴ会員から寄せられた感想コメント/一部抜粋)彼女はほんとうに罪を犯したのか?
事件の第一発見者であり容疑者となった次女・リッヅィー役【青木隆敏さん】
(シングルキャスト)
1892年、アメリカ・ボストンの田舎町で資産家夫婦が斧で惨殺される事件が起きた。継母と不仲だった次女・リッヅィーに嫌疑がかかるも、証拠不十分で無罪に。
事件から10年後…友人でもある“女優”とともに事件を振り返るリッヅィー。元容疑者と女優、ふたりは時に立場を入れ替えながら、事件の真相、そして家族の心の闇に迫っていく…。
◆「The Other Life」では本邦初演の作品が取り上げられる機会が多いなか、今回は国内で既に何度か上演されている作品が取り上げられました。倉田淳さん(演出)ならではの仕上がり方です。いや、面白い! サスペンス好きなら観ない手はないでしょう!
◆男性の役者のみで構成されたスタジオライフの“女優陣”の力量に改めて感服させられた。過去の真相を探るために、自身とは別の役を演じて物語が進んでいく脚本のおもしろさを、出演者の凄まじい女優っぷりで堪能させてもらえます。
最後まで観るとこの作品もまた、倉田淳さんの真骨頂である“愛を切望する”人物の物語だとわかります。Fateチームで“女優”役を演じるのは【松本慎也さん】。
Doomチームで同役を演じる若手【久保優二さん】との役作りの違いは?
ぜひ2チーム見比べてみたい!
◆再現劇の形でリッヅィーを演じる女優役の松本慎也さんの演技が素晴らしかった。リッヅィー本人役の青木さんのクールな役作りと対象的で、本当の彼女はどんな人だったのだろうと興味が湧きます。(Fateチーム) ◆Fateチーム“女優”役の松本慎也さん、リッヅィーへの想い溢れる演技がとても良かった。事件前のリッヅィーを演じる場面では「女」「娘」であることに縛られ苦しむ彼女の苛立ちがよく伝わり、苦しくなります。
リッヅィーの姉・エンマ役の大村浩司さん、アイルランド人の医者役・山本芳樹さんも、リッヅィーに心を寄せながら、問題を見て見ぬふりをする人間の弱さを巧みに表現。役者としての力量を見せてくれました。 ◆人物のキャラクターが立っていて、芝居の構成も素晴らしく、気がつけば前のめりで没頭していました。
青木さんには大女優の風格を感じましたし、芝居を始めて3年という久保さんも時にドキっとする情感を滲ませ、脇を締める楢原さん、石飛さんはそこにいるだけで、物語の悲劇性を予感させる存在感がありました。(Doomチーム) ◆こんな濃密なお芝居を見逃すのは本当にもったいないので、ぜひたくさんの方々に観て頂きたいと思えるDoomチームの超実力派神キャストっぷりでした。
青木さん、久保さんだけでなく、スタジオライフのベテラン“女優”の石飛さん、楢原さんの助演女優ぶりも、助演男優の倉本さん、曽世さん、奥田さんのお芝居もとにかく凄いです。登場人物達の人間関係、立場としての力関係、人種的な優劣など、あからさまにわかる部分だけでなく、微妙で繊細な部分まで見せてくれて、非常に満足度の高い舞台でした。ボーデン夫人役の【石飛幸治さん】はシングルキャスト。
“牛”のような存在感!? その意味はぜひ劇場で!
妹を愛しているけれど、理解することはできない姉エンマ。
(写真はFateチーム【大村浩司さん】/Doomチームは【楢原秀佳さん】)
【山本芳樹さん】はドクター・パトリック役のほか、法廷の弁護士役も。鮮やかな演じ分けに拍手!
劇中で唯一、ほっとできる存在かもしれないドクター・パトリック(その姿はぜひ劇場で)。
Doomチーム【曽世海司さん】の演技も楽しみです!
◆この家族に何が起きたのか。ドキドキするくらい引きこまれました。 ◆こじんまりとした空間で、少人数でみっちりサスペンスが堪能出来ました。
謎自体が難しい訳ではないのに、最後まで「どうなるんだろう?」と緊張感が半端なく世界観に浸れます。
◆演劇好きな方には絶対オススメです。 ◆サスペンス、人間関係、マイノリティ差別、いろんな要素が心にチクチクきました。 ◆2回観ることで気付けることもあったので、ぜひ両方のチームを観ることをお勧めします。 ◆狭い空間で濃密なお芝居でした。事件の謎よりも、そうなった原因や心理を丁寧に描く作品。すっかり引きこまれました。 ◆劇場の狭い空間から、アメリカの田舎の暑い夏の大きな青空まで見えそうなお芝居。父と娘、それぞれの立場、想い、家族のつながり…
抑えきれない感情が爆発したときに、何が起きたのか?
(写真左はリッジィーの父、アンドリュー・ボーデン役の【藤原啓児さん】/Doomチームは【倉本 徹さん】)
女性作家、女性演出家が描く「女性であること」に縛られたリッヅィーの苦悩。現在のリッヅィーを演じる【青木隆敏さん】の変わらない表情が、かえって恐ろしい! 劇中の再現劇では一家の女中役を演じる青木さんの、過去の自分を見つめる目が優しくも哀しいのです。そして、幕が下りるときに見えるリッヅィーの真実とは?
“女たちの物語”をスタジオライフの男性俳優陣が演じることで、余計なものがそぎ落とされ、事件の核心が浮き彫りになる舞台『BLOOD RELATIONS~血のつながり〜』。
スタジオライフ俳優陣の“演技力”を堪能できる作品に仕上がっています。お見逃しなく!
新宿シアターモリエールで10月2日まで上演。
感想コメント:おけぴ会員のみなさま
おけぴ取材班(文・撮影):mamiko 監修:おけぴ管理人