ミュージカル『レディ・ベス』取材会レポート


世界初演から3年半。ベスとロビンが劇場に帰ってきます!
(写真左から:加藤和樹さん、平野綾さん、花總まりさん、山崎育三郎さん)


 ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイ&小池修一郎のゴールデントリオが手を組み、2014年に世界初演されたミュージカル『レディ・ベス』、3年半ぶりの再演!

 英国王の娘として生まれながら、王室から離されて育ち、のちにその宿命に導かれ女王となるベス(エリザベス一世)を演じる【花總まりさん】と【平野綾さん】。ベスの秘められたロマンスの相手、吟遊詩人のロビンを演じる【山崎育三郎さん】と【加藤和樹さん】。

 組み合わせによって、作品への印象まで変わると評判になった魅力的なベス&ロビンの4人が初演に引き続きご出演と知って喜んだ方も多いはず!

 今秋、東京(帝国劇場)と大阪(梅田芸術劇場)で再演される同作の稽古開始を前に、4人が意気込みや、初演時の思い出などを語ってくれました。






【初演から3年半。自分の中で「ここが変わった!」というアピールポイント】




「世界初演だった前回はとにかく大変でしたが、カンパニー全員の前向きな姿勢を感じました」(花總まりさん)

花總:自分では特に変わったとは思いませんが…ひたすらに変わらずに日々を過ごしています。いっくん(山崎さん)とは『エリザベート』で一緒でしたし、加藤くんとは観劇時に劇場でばったり会うことがあったのですが、(平野)綾ちゃんとは本当に久しぶり。今日、メイク室で懐かしい綾ちゃんの声が聞こえてきて、「いよいよレディ・ベスが始まったな!」という気持ちになりました。



「初演のときは大役を務めることに精一杯で余裕がなかった。今回はもう少し冷静に自分や周りを見つめることができると思うので、落ち着いて役に対する理解を深めたい」(平野綾さん)

平野:あれから3年半なんですね…。初演時はまだ舞台経験も少なく、足を引っ張らないようにと必死でした。その後さまざまな現場で経験を積ませていただき、少しずつですが自分に自信もついてきました。今回の再演では前回とはまた違うものを皆さまにお見せできるのではと思っています。



「3年半前とは自分自身が全く変わっている。今の自分が感じるロビンを作り出したい」(山崎育三郎さん)

山崎:あれから3年半、いろいろなことが大きく変わりました。今までは(劇場が多く集まる)銀座・有楽町界隈で「山崎さんですか?」と声をかけられるくらいだったのが、今は別の場所でも見ず知らずの方から「育三郎だ!」と言われるようになって。それが一番変わったことですね。他の3人については、花總さんは『エリザベート』で一緒だったし、綾ちゃんとも『レ・ミゼラブル』のパーティで会いましたし、かーくん(加藤さん)とは同じLINEグループに入っていて、しょっちゅう「ラーメン食べたよ」という報告をもらっているので(笑)、あまり久しぶりという気はしませんね。(初演が)ついこの間のような気もするし、もう3年経ったんだとも思うし、なんだか不思議な感じです。



「作品を作り上げる上で皆さんとディスカッションしながら、自然と新しい『レディ・ベス』になるのでは」(加藤和樹さん)

加藤:自分の中では特に何かが大きく変わったということはないのですが、この作品は自分にとって初めての帝国劇場出演作でもありましたし、その再演ということで気持も新たに、初心に戻って、力を尽くしたいと思います。(他の3人の)活躍はもちろん拝見しております。平野さんはニューヨークに行って勉強されたとか。皆さんすごく前に進んでいるなという印象があります。自分も頑張りたいと思います。





再演の稽古開始を前にこちらのお二人には、こんなメールが届いたようで…

山崎:実はこの前、小池先生からメールが来まして…「ロビンは60~70年代のフォークシンガーだからね」とだけ書いてありました。それがどういう意味なのかはまだわからないのですが、フォークシンガーっぽい男らしさを出せたらいいなと思います(笑)。それから、今回も“ターザン”があるのかどうかについては、とても気になっています。

花總:私のところにも小池先生から「20歳以上も若返るので、アンチエイジングを頑張ってください」とメールが来ました(笑)。これは私に対しての小池先生からの頑張れコールなのかなと。…あまり気にせずに頑張りたいと思います!




【この作品が多くの観客に受け入れられた理由】


花總:クンツェさんリーヴァイさんの名コンビが、日本ではまだあまり浸透していなかったエリザベス一世の人生に焦点を当てて、彼女が戴冠するまでの生き様を壮大な音楽、華やかな衣裳、ラブロマンスを含めてすごくうまく大作ミュージカルに仕上げてくださった。それがお客さまに受け入れていただけた要因なのかなと思います。でも本番ギリギリまで歌や場面が変更になるなど、世界初演ならではの大変な思い出もたくさんあって…。カンパニーが団結して作り上げた作品なので、ほぼ同じメンバーで再演できることがとても嬉しいです。

山崎:「ベスの決断」がこの作品の大きなテーマ。誰もが生きていく中で大きな決断をする瞬間がある。お客さまがベスに自分を重ねて感情移入できたのではないでしょうか。実は僕の母も『レディ・ベス』が僕の出演作の中で一番好きだと言っています。特に女性の方に愛される作品だと感じますね。

加藤:楽曲の素晴らしさはもちろん、作品で描かれる芝居の部分がとても魅力があったと思っています。ベスは女王であると同時にひとりの若い女性。彼女が経験する初めての感情、葛藤。「幸せとはなにか」「自分はなんのために生まれたのか」そんなベスの思い、彼女もひとりの人間なんだというところに共感していただけたのではないかと思います。

平野:ベスはただのヒロインではなく“闘うヒロイン”。自分で道を切り拓いていく女性です。女王になる人だからといって完璧なわけではない。人間らしい部分を持ち合わせているひとりの女性であることに共感していただけたのだと思います。一方、男性陣はそれを見守るような包容力のあるキャラクターが多かったですね。



【「世界初演」ならではの苦労もあった前回公演のエピソード】


花總:本当に大変でした! ここでは言えないようなエピソードもたくさんあって…。二幕の台本がなかなか出来上がらなかったり。あ、言っちゃった(笑)。大巨匠の小池先生も、より良いものを作るためにご苦労されていたんです。私たちも焦りを感じながらも、どこかで「世界初演というのはこれだけ大変なものなんだ」とわかっていましたし、稽古場では山口祐一郎さんはじめ先輩方が、諦めずに頑張ろうと引っ張ってくださって、スタッフも含めて全員が、最後の最後までより良いものを作ろうという空気がすごくありました。ラストの場面は開幕直前まで変更があったりして大変だったのですが、とにかく全員がものすごく前向きだったことを思い出します。


言っちゃった♪


加藤:さっき育三郎くんが気にしていた“ターザン”ですが、あれは初演の本番ギリギリまで小池先生が悩んでいらして。場当たりで育三郎くんと僕の“ターザン”を見た小池先生が「行けるな」とおっしゃった瞬間が印象に残っています。僕としては「本当に行けるのかな」と(笑)。“ターザン”に関しては帝国劇場公演中にもいろいろとありましたが、地方公演の場当たりで、勢いがつきすぎて、下手から上手の袖に行って、そのまま消えてしまい壁にドンとぶつかってしまうというアクシデントがありました(笑)。逆に勢いがなくて途中で止まってしまったことも…。もし今回も“ターザン”があるなら、もうちょっとうまくやりたいな、と思っています。


「勢いが止まらず袖に入って、そのまま壁に…」


山崎:かなり傾斜をつけた盆がまわる舞台装置だったので、腰と足がすごくきつかったことを覚えていますね。ずっと斜めで、女性はさらにヒールを履いていますし、ロビンも結構かかとの高い靴だったので、体のメンテナンスが大変だったことを思い出します。あ、それからフェリペ役の平方元基くんが、千秋楽にいつもの10倍くらいファンデーションを塗りたくった顔で出てきて…公演の最後に全部使い切りたかったんでしょうね(笑)。フェリペってちょっと浅黒い肌の役だったので、もう焦げたパンケーキみたいな色で、しかも化粧が厚すぎてシワもなにもないツルッとした黒い顔の人が現れて…舞台上の全員が堪えられずに吹き出しました(笑)。


平野:よく覚えているのは衣裳の重さです。一番重いのがメアリー役の10kgくらいで、ベスも確か7、8kgある衣裳で…

花總:当初はさらにマントも、ね。

平野:あ! そうでした。5メートル級のマント。

花總:舞台稽古まではマントをつけて頑張っていたんですが、最後にハシゴのようなセットを上っていくときに、あまりに重くて…

平野:体が後ろに持って行かれちゃうんですよね。

花總:それで舞台稽古のときに「マント無し」になりました。

加藤:こっちも見ていてヒヤヒヤしましたよ。

平野:今回もあの重量級と戦うのかと思うと、体もちゃんと作っておかなければと思います。それともうひとつ、初日の幕が開く前にみんなで集合写真を撮ったのですが、センターの一番いいポジションで小池先生がイモーテルのお花を持ってすごく可愛らしく写っているんです(笑)。その写真は今も家に飾ってあります。



【ベスとロビン、Wキャストそれぞれの印象】


花總:悪いことを言わないようにと、隣(山崎さん)から声が…(笑)。でもふたりとも持ってらっしゃるものが全然違いますからね。言葉で表現するのは難しいですが、お客さまからも「相手役によって全然印象が違う」という感想をいただきました。稽古場からアプローチの仕方も違いましたし。

平野:うーん、本当に言葉で表すのがむずかしいのですが、山崎さんはすごく“天然型”ロビンで…

花總:かーくんも“天然”だよ。

平野:たしかにそうですね。お二人とも“天然”ですね。でもその方向性が違っていて。同じシーンを稽古していてもこんなにアプローチが違うのかと驚きました。…“天然”って言い方は失礼ですかね…えーと“ピュア”? 

山崎:僕は“天然”じゃないよ?

花總:じゃあ“マイペース”(笑)?

山崎:え、それは僕が? ロビンが? 普段の僕のこと? いや、“天然”じゃないでしょう。かーくんはそうだけど。

加藤:って、おいっ! “天然”の人って自分では気が付かないらしいですよ。

花總:お二方とも、黙々と自分の道を歩んでいます。その方向性が全然違うんです。

山崎:違いますね。僕とかーくんでは真逆。髪型も違うし。

加藤:持っている雰囲気も全然違いますし。


天然型ロビンと、強く美しい女王ベス。
Wキャストの組み合わせによって、胸キュンポイントも違ってくるのがまた魅力です♪


山崎:ベスの二人は、花總さんは秘めたエネルギーを感じるベスで、平野さんは爆発するエネルギー、かな。

加藤:確かに。

山崎:ベスが変わると作品が変わるくらいに、ロビンとして感じること、心が動く場面も毎回変わりました。

加藤:花總さんは内から出てくる強さ、平野さんは爆発する感情に乗せる力強さがあったような気がします。



内に秘めた強さを持つ花總ベス!



【シルヴェスター・リーヴァイ氏による楽曲について】


花總:ベスの曲はわりと激しい、歌い上げる歌が多い。一幕目の「♪我が父は王」も歌い上げがあって、登場してすぐに大きな曲を歌うのが大変でした。二幕の冒頭も牢獄に入れられたベスが「なぜ殺されるのか」と激しく歌い上げる曲で。私にとってこの作品は、自分の感情をぶつける歌が多かったという印象です。そしてそれが本当に素敵な曲なので、なんとか歌いこなしていきたいなという思いがありました。

平野:リーヴァイさんの楽曲は、日本人の私たちにどこか懐かしさを感じさせるメロディが多いなと思っています。稽古中にとても衝撃を受けたのは、日本語が話せないはずのリーヴァイさんが、ある曲について「日本語の発音的にこの音程では成立しないのではないか」と提案して譜面が変わったこと。言葉ではなく気持ちで、音楽で会話させていただいた、とても幸せな稽古場でした。

山崎:リーヴァイさんの楽曲はジャンルを超えている。クラシカルな楽曲からポップス、ロック、ラテンまで、キャラクターにあわせてさまざまなジャンルの楽曲が作られているのがとても面白いですよね。音楽を聞けば次に出てくるキャラクターがわかるくらい、役柄に合わせた音楽作りが素晴らしいなと思います。

加藤:この作品の初演で初めてリーヴァイさんの楽曲を歌いました。改めて聞き直してみると、複雑な音階に行くところが心地よかったりするんですよね。ベスとロビンのデュエットでも、ベスの音階がものすごく難しいところに行く箇所があって。でもやっぱりその音じゃないとしっくりこない。すごく緻密に作られているんだなと感じました。(歌う側としては)難しいですが、そこがはまった時はすごく気持ちいいですよね。


【最後に改めて作品への意気込みを】


花總:初演から3年半ぶりということを今日改めて実感しました。スタッフ、共演者の方々と一丸となって、世界初演のあのエネルギー、パワーを持ったままこの作品に取り組んでいきたいと思います。

平野:再びベス役に挑戦させて頂けることを幸せに思います。前回よりもさらに良いものを目指して、責任を持って役に取り組みたいと思います。

山崎:この2,3年でいろいろと新しいチャレンジをさせていただいています。今の僕がどんなロビンを演じることができるか楽しみです。今年はミュージカル作品への出演がこの『レディ・ベス』だけですので、“ミュージカル俳優”としてしっかり演じられるように、このロビン役に懸けたいと思います。

加藤:初演のときは右も左もわからず、すごく悔しい思いをしたこともありました。そこから自分なりに一歩ずつ経験を積み、今の自分ができる限りのものを全力で出して行きたいと思います。初演よりも凄かったね、また見たいねと言われるように、全員で力をあわせて作り上げたいです。






 歴史に詳しい方もそうでない方も楽しめる、丁寧かつ大胆な物語設定。美しく壮大なナンバーから、エレキギターを駆使したロックやポップスまで取り入れたバラエティ豊かな音楽。登場人物たちの運命を司るかのような星空(天文学)をイメージしたセット。たっぷりとした布地や刺繍が素晴らしい豪華な衣裳…と見どころいっぱいのミュージカル『レディ・ベス』! 

 東京・帝国劇場にて10月8日(日)から11月18日(土)まで、大阪・梅田芸術劇場メインホールにて11月28日(火)から12月10日(日) までの上演です。

2014年初演時の花總まりさんインタビュー♪
初演時開幕直前スペシャルイベントレポート


【こぼれ話♪】
「決断」「選択」がひとつのテーマでもある『レディ・ベス』。もしベスのように「平穏な生活」と「激動の人生」のどちらかを選ばなくてはならないとしたら…どうしますか?
花總:平穏な生活はとても手に入れたいものではありますが…良い意味で名を残せるのであれば「激動」にチャレンジしていきたいです。悪い方で名を残すのはイヤだけど(笑)。
山崎:僕も「激動」かな。新しい一歩を踏み出さないと自分が変わっていけない。チャレンジをしていきたいですよね。もっといろんな世界を見てみたいと思うと、やっぱり、しんどい方に行きたい。
平野:私も「激動」かなあ。平穏な生活はすごく羨ましい、手に入れてみたいなという気もするけれど、どうせたった一度の人生なので、止まれないですね。いろんなものを知りたい欲求のほうが勝ってしまうので。常に激動を選んでいます。
加藤:平穏な日々に憧れはありますし、たまに「休みたいな」と思うこともありますが、基本的には刺激的な毎日のほうがいいですね。「激動」の中でほっと一息つく瞬間のほうが僕にとっては大切ですね。




【公演情報】
ミュージカル『レディ・ベス』
2017年10月8日(日)~11月18日(土)東京 帝国劇場
2017年11月28日(火)~12月10日(日) 大阪 梅田芸術劇場 メインホール

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞・修辞:小池修一郎

出演:
レディ・ベス:花總まり/平野綾
ロビン・ブレイク:山崎育三郎/加藤和樹
メアリー・チューダー:未来優希/吉沢梨絵
フェリペ:平方元基/古川雄大
アン・ブーリン:和音美桜
シモン・ルナール:吉野圭吾
ガーディナー:石川禅
ロジャー・アスカム:山口祐一郎
キャット・アシュリー:涼風真世

大谷美智浩/中山昇/加藤潤一/寺元健一郎/石川新太
朝隈濯朗/榎本成志/奥山寛/川口大地/黒沼亮/後藤晋彦/杉山有大/武内耕
田中秀哉/福永悠ニ/港幸樹/山名孝幸
秋園美緒/池谷祐子/石原絵理/樺島麻美/島田彩/真記子/安岡千夏/山田裕美子

公演公式サイト


おけぴ取材班:mamiko(文)、hase(撮影)  監修:おけぴ管理人

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