宝塚歌劇星組 シアター・ドラマシティ公演『ドクトル・ジバゴ』開幕レポート

 運命に翻弄され、それでも生きること、愛することをやめない人間の姿…
専科の轟悠さん、星組生徒のみなさんが熱演! 見応えありの大河ロマンミュージカル開幕! 




どんな時代になろうとも、自分の心に正直に生き、愛することを貫くユーリを演じるのは、専科の【轟悠さん】。圧倒的ビジュアルはもちろん、軽やかさと貫禄が両立する演技でカンパニー全体の力をぐぐっと引き上げます! ハラショー!!


 ロシア革命の大混乱のなか、運命的に出会ってしまった男と女…。

 どんな時代になろうとも、生きること、愛することをあきらめない人間の姿を、主演の轟悠さん以下出演者全員が熱演!

 宝塚歌劇星組 シアター・ドラマシティ公演 ミュージカル『ドクトル・ジバゴ』開幕レポートをお届けいたします!!





 原作はロシアの作家ボリス・パステルナークによる大河小説。『アラビアのロレンス』などのデヴィッド・リーン監督による映画版もよく知られていますよね。
(原作小説はノーベル文学賞を受賞。映画版は1965年のアカデミー賞で5部門を受賞しています。2015年にはブロードウェイでもミュージカル版が上演されました。)


 …が、その長さ(小説・映画とも)や、ロシア文学特有の名前のややこしさなどにおののき、「タイトルは知っているけれども、なかなか手が出せなかった」という方も多いのではないでしょうか(かくいう、おけぴスタッフもそのひとりです)

 けれども、宝塚歌劇なら心配ご無用!

 オープニングから大迫力のダンスに心つかまれ、わかりやすく整理されたストーリーと人物関係に頷き、麗しいビジュアルに見惚れているうちに、『ドクトル・ジバゴ』の世界へと自然に引き込まれていく感覚。幕が下りてみれば、上演時間以上に、大河ドラマをまるごと味わった満足感でいっぱいです!



轟悠さんが演じるのは、医師であり詩人でもある貴族のユーリイ・アンドレーヴィチ・ジバゴ(=ユーリ)。
これから訪れる民衆の時代を予感し、愛する家族を守っていこうとするユーリですが、時代の流れに翻弄され、思わぬ運命=ラーラ(有沙瞳さん)に出会ってしまうのです…。
単なる不倫メロドラマにはならないのは、原作の力と、轟さん&有沙さんの繊細な演技あってこそ!


 物語が始まるのは20世紀初頭、ロシア革命前後の混乱の時代。

 ほぼ同じ時代を舞台にした宙組公演『神々の土地』では皇帝やロマノフ王家の人々が描かれていましたが、この『ドクトル・ジバゴ』では、革命を叫ぶ民衆やソビエト側の軍人、混乱に怯える貴族、そしてそのどちらでもなく、ただ日々の安定を求め生きていく人々…と、さまざまな立場の人間が登場。それぞれの運命が交錯していきます。

 轟悠さんが演じるユーリは、初登場シーンではまだ医学生という設定。婚約者のトーニャに向ける眼差しの優しさ、素直な笑顔が素敵な「初々しい好青年」です。二幕でラーラとの愛に溺れていくユーリとはまるで別人のよう。でもその根底に流れる優しさは変わらなくて…。轟さんの役作り、そして男役として演じる役の幅の広さに、改めて驚かされました。



こちらはユーリとトーニャ(小桜ほのかさん)の婚約パーティ。
小桜ほのかさん、ユーリへ向ける素直な愛情を感じさせる表情、声、佇まい、パーフェクト! この役が愛らしければ愛らしいほど、この後の展開が心狂おしく、胸に迫ってくるんです…。
トーニャのこのドレスも、物語の後半で「革命」について考えさせられるキーワードに。


 妻を愛しながら、運命的に出会ってしまった女性ラーラへの思いも消せずにいる…という設定だけを聞くと、なんてだらしのない男だと思ってしまいそうですが、轟悠さんの良い意味で肩の力が抜けた演技、存在感で、ごく自然にユーリの行動に納得感が与えられているのが特筆ポイント。どんな時代が訪れようとも、生きることと愛することをあきらめないユーリ。貫禄と軽やかさが両立する轟さんの存在感に、男役として、役者としてのキャリアを感じました。

 <ちなみに、おけぴスタッフの細かすぎるオペラ・ポイント(=オペラグラスを上げるべき、必見ポイント)は、妻のトーニャを思い切り抱きしめるときと、おずおずとラーラに触れるときとのユーリの手の動きの違い。子どもの頃からよく知っているいとこでもある妻と、運命の女・ラーラ。ユーリにとってどちらも愛する人でありながら、その存在は全く別の意味を持っていたのだろうな…なんて、妄想が広がってしまう演じ分けなんです!> 


 有沙瞳さんが演じるラーラも、一言で説明するのはなかなか難しい複雑な役柄です。姿をくらました夫パーシャを探しながら、ユーリとの愛にも目覚めていくラーラ。ただの寂しさからではなく、現代からは想像もつかないような大混乱の時代をひとりで生きていたラーラの心にふっと寄り添ったユーリの存在、それを自然に受け入れるラーラを、落ち着いた演技でみせてくれた有沙さん。歌も演技も安定していて、轟さんとの並びにも違和感なし。ふたりが“出会ってしまう”雨の場面。これから待ち受ける運命を悟っているような、はかない笑顔に惹きつけられました。




ユーリたちのパーティで騒ぎを起こしたラーラに寄り添うパーシャ(瀬央ゆりあさん)。
『ガイズ・アンド・ドールズ』の新人公演に主演した頃から、少しずつ男らしさが増してきていた瀬央さんですが、本作ではその魅力が一気にスパーク!! なにかひとつ覚悟を決めたような思い切りの良さで、振り幅のあるパーシャ役を熱演、快演、怪演! でございます。

 そして…ぜひ注目していただきたい、というよりも、おそらく観客の目を奪ってしまうであろう大躍進をみせてくれたのがこの方! 瀬央ゆりあさん! 

 革命派の学生パーシャとして、学生たちと竜騎兵が衝突するオープニングの場面から客席の心をぐっとつかむ大活躍。ラーラの恋人として素朴な優しさを見せる一幕から一転、二幕では名を変え、反対勢力への粛清を続ける赤軍派の軍人として登場。恐ろしくも、かっこよすぎる軍服姿、キラリと光る丸メガネ…と完璧なビジュアル。上背のあるスタイルも男臭さ満点です! 以前からその端正な美しさは際立っていましたが、どこか優しげというか、とぼけた可愛らしさが透けて見えるような印象がありました。が、しかし! 今回は親しみやすい笑顔は完全封印! とにかく、かっこいい! 舞台の真ん中に立つ姿に違和感なく、轟さん演じるユーリとは好対照の役柄を大熱演です。


登場したとき、客席が息を呑んだのがわかったこちらの軍服姿。もっとキメキメのシーンも多数ですが、あえてこちら、乱れた髪(と部下たち)の写真をご紹介。
キメキメ場面はぜひ劇場で♪

 <本レポではご紹介しきれなかったあんな姿、こんな姿…必見オペラポイント多数! 瀬央ゆりあさんの名前が少しでも気になったことがある方は、絶対に!劇場にお出かけになることをオススメいたします。役者としてひとつ殻を破った瀬央さんが見られますよ。
(写真でもっとご紹介できないのがなんとも残念。でも劇場での生の迫力&かっこよさは格別です。ぜひ旬の輝きをお見逃しなく!)>





 ラーラの運命(というよりも、ユーリやパーシャ、主要人物全員の運命!?)を狂わせるきっかけとなる存在、弁護士のコマロフスキー役を演じる天寿光希さんの“ゲスい”演技も必見。このコマロフスキーも単なる悪役ではなく、いわば革命、時代の流れにうまく乗って「生きた」人。物語の後半での彼の行動もまた、ロシア文学っぽい人間の多面性を見せてくれます。
<それにしても天寿さん、喜々としてノリノリで演じているように思えるのは…気のせいでしょうか。ちなみに戦闘シーンにも軍人役として密かに登場。キレキレのダンスもお見逃しなく>

 このほか、ラーラの友人で革命後は党の委員として接収されたユーリたちの家を管理するオーリャ役・紫りらさんの“社会主義”的な演技(きびすを返すときのギリギリまで体重を残す身体の角度がツボでした)、ユーリの友人役として轟さんとの演技をごく自然にみせた天華えまさんの大器ぶり、さらに野戦病院で治療を受ける兵士や、パルチザンたちまで、出演者全員の質の高い演技に驚かされた『ドクトル・ジバゴ』。出演者たちへの良い刺激になるであろう専科の轟さんが主演する意味は、こんなところにもあるのかもしれません。 

 演出を手がけたのは『南太平洋』『For the people-リンカーン 自由を求めた男-』に続き轟さんとタッグを組んだ原田諒さん。ビジュアルの美しさ、舞台セットや転換のストレスのなさなど、原田演出ならではのポイントは本作でもますます進化しています。原作の複雑な人間関係を宝塚歌劇としてわかりやすく仕立てていますので、なかには説明が急すぎて戸惑う展開もありますが、そこは出演者たちの腕の見せどころ。説得力のあるセリフ、歌、なによりその存在感に気持ちよく流されていくうちに、この物語が単なるメロドラマではないことに気付かされるはずです。

 舞台のどこをとっても見応え充分! 星組公演『ドクトル・ジバゴ』。梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、2月13日まで上演中です。お見逃しなく!!
(東京公演は2月20日(火)から2月26日(月)までTBS赤坂ACTシアターにて上演)


梅田芸術劇場 公演詳細情報
オリジナルノベルティがあたる抽選会開催回や、特典付きチケットも♪(ジバゴ髭をつけたマトリョーシカ・キーホルダーが可愛すぎる♪)

【公演情報】
宝塚歌劇星組 シアター・ドラマシティ公演
ミュージカル
『ドクトル・ジバゴ』
~ボリス・パステルナーク作「ドクトル・ジバゴ」より~

2018年2月4日(日)-2月13日(火) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2018年2月20日(火)-2月26日(月)TBS赤坂ACTシアター


脚本・演出 原田 諒

出演
専科 轟 悠
星組 白妙 なつ/天寿 光希/輝咲 玲央/瀬稀 ゆりと/麻央 侑希/
紫 りら/瀬央 ゆりあ/白鳥 ゆりや/朝水 りょう/有沙 瞳/
天華 えま/天希 ほまれ/小桜 ほのか/天路 そら/蒼舞 咲歩/
朱紫 令真/颯香 凜/夕陽 真輝/天飛 華音/都 優奈/
澄華 あまね/星咲 希/紘希 柚葉/瑛美花 れな

宝塚歌劇団 公演情報




おけぴ取材班:mamiko , yone  監修:おけぴ管理人

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