八月新派公演 山村美紗サスペンス『京都 都大路謎の花くらべ』製作発表レポート

『黒蜥蜴』『犬神家の一族』に続く、“新派ミステリーシリーズ”第3弾! 


 ミステリー界の女王・山村美紗の傑作サスペンスを舞台化する「八月新派公演 山村美紗サスペンス『京都 都大路謎の花くらべ』」製作発表の模様をお届けいたします。


写真左から:齋藤雅文さん、長谷川純さん、山村紅葉さん、中村梅雀さん、波乃久里子さん、喜多村緑郎さん、河合雪之丞さん、我孫子正さん(松竹株式会社副社長)


 『黒蜥蜴』『犬神家の一族』『夜の蝶』と意欲的な挑戦が続く劇団新派がこの夏挑むのは、テレビの2時間ドラマでもおなじみの山村美紗ミステリー!

 鍵がかかったままの自室で死亡していた祇園のホステス・桃子。はたして彼女の死因は自殺なのか、それとも…? 祇園の節分の習わし“お化け”にちなんだ仮装パーティーが行われるなか、第二の殺人が起こる…!

 桃子が働いていたクラブのママ 美保子役の波乃久里子さん、桃子と親しかった有名日本画家 沢木役の喜多村緑郎さん、女流人形師 歌乃役の河合雪之丞さんら新派のみなさまに加え、京都府警の狩矢警部役 中村梅雀さん、クラブ常連客の若き社長 山田役の長谷川純さん、そして芸姑 小春役として山村美紗作品には欠かせない山村紅葉さんら、出演者のみなさまと、脚本・演出を手がける齋藤雅文さんが意気込みを語りました。




「大劇場で密室殺人劇をみせるのは、ハードルが高い」という齋藤雅文さん

齋藤雅文さん:
 南座で第一作目を書いたときに、(山村)紅葉さんから「どの作品を使ってもいいですよ」と先生の著作を頂戴しましたが、これが山のような量でして、紅葉さん太っ腹だなと思うと同時に、改めて山村作品の幅の広さ、懐の深さを感じました。今回はその作品群からタイトルの原作だけでなく、さまざまなエッセンスを集め“いいとこどり”をしています。
 映像作品は“見せない場面”を作ることができますが、演劇ではそうもいきません。カメラでいえば“引きの映像”がずっと続くなかで、ミステリーを作るのはスリリングですが、そのなかで人間ドラマを重点的に描くことができればと思っています。小さなお子さんから年配の方まで楽しめるエンタテインメント、心動く情熱的な舞台に仕上げたいですね。歌と踊りもあります。(ざわつく会場)…きっと、あります(笑)! 
 「疑心暗鬼を生ず」という言葉がありますが、登場人物全員が疑わしい人ばかり。あ、梅雀さん(演じる狩矢警部)だけは疑えないかな? たぶん梅雀さんだけは殺意はないと思いますが、他の方はそれぞれに犯人かもしれない動機を作りましたのでお楽しみに。



「『犬神家の一族』はミステリーではないとプロデューサーから聞きましたので、今回が初めてのミステリー作品です」(波乃久里子さん)

波乃久里子さん:
 4歳から役者をやっておりまして、来年でもう70年になりますが、ミステリー作品に出演するのは初めて。クラブのママ役も初めてでございます。『犬神家の一族』はミステリーではないか? プロデューサーに確認しましたがミステリーではないということで…ミステリー…でしたかしら? もしかしたら初めてではなく2回目なのかもしれません。それこそ疑心暗鬼でございますが(笑)、夏の暑さを吹っ飛ばすような楽しい舞台にしたいと思っております。
 (「山村ミステリーのどこに新派らしさを出すか?」)師匠から教わりましたのは、新派とは叙情的リアリズムであるということ。叙情的なだけではだめ、リアリズムだけでもだめ。叙情的リアリズム、これが新派なんだと。齋藤先生がお書きになる本は叙情もリアリズムも入っておりますので、どんな題材でも新派として成立する、それだけでございます。



「『犬神家の一族』に続いて新橋演舞場で新派公演ができる、こんなに嬉しいことはございません」(喜多村緑郎さん)

喜多村緑郎さん:
 長谷川純くんとは京都で撮影した時代劇でご一緒したことがあります。そのときは少年隊の東山さんにご紹介いただき一緒にふぐを食べまして(笑)、深く演劇論を語り合った思い出がございます。そんな素晴らしい好青年である純くんと、こんなにも早く新派の舞台でご一緒できるのが夢のようです。
 齋藤先生のおっしゃるとおり、誰が犯人かは最後までわかりません。もしかすると梅雀さんにも可能性があるかもしれない(笑)。みなさまに疑心暗鬼になっていただければと思います。
 新派らしさということにつきましては、喜多村緑郎や河合雪之丞が出ている舞台はどんなものでも新派になる、と言っていただけるよう、これからますます精進したいと思っております。



「南座での公演を拝見しまして、なんと面白い芝居だろうと感激しました。その作品に私が出させていただけること、とても嬉しく思っています」(河合雪之丞さん)

河合雪之丞さん:
 現代を舞台にした作品の女性役を女方が演じるというのはなかなかないこと。6月の『夜の蝶』も昭和の始めという時代設定でしたが、このような作品で女優さんとご一緒させていただけるのは、新派の女方の一番の特色だと思うんです。歌舞伎ですと全員男性ですから。現代劇に女方として出るときに、異色なものという違和感をお客さまに覚えさせては意味がない。舞台に溶け込んでいるけれども、女方としての魅力もきちんと出す。それが重要だと思います。今回も現代劇ですが、お客さまに女方の存在感をお伝えしながら異物ではなくいられるよう、これからますます精進し、またこのような作品に呼んでいただけるような女方をしていきたいと思っております。
 


「ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』でも大ベテラン、大御所のみなさまと共演させていただきました。今回の舞台も素晴らしい先輩ばかりで大変緊張しています」(長谷川純さん)

長谷川純さん:
 初めて尽くしで大変緊張しております。新橋演舞場には『滝沢歌舞伎』でご縁がありましたが、今回はフライングなし、歌や踊りもなしということで…え、歌と踊りはある? あるんですね(笑)。とはいえいつもとは勝手が違う、大人の芝居をみなさまにお届けできることを楽しみにしています。いまこの製作発表会の場にいることも夢のようで、ふわふわしています。先日、母と映画を観に行ったのですが、その映画に出演されていた梅雀さんがいま隣にいるなんて…僕の中のミーハー心が踊っております。
 出演が決まり誰よりも喜んでくれたのが、若い頃から山村美紗さんの本をずっと読んでいた母でした。夏の旅行の予定をキャンセルしてまで新橋演舞場に来るのを楽しみにしているようです。「めっちゃ、観に行きたい」と言われまして。母の口から「めっちゃ」という言葉が出るのを初めて聞きましたね。人間なにが起こるかわかりません。母が「めっちゃ」と言いましたから…(笑)。いまはそれが一番のミステリー、謎ですね。母も含め、幅広いお客さまに楽しんで頂きたいと思います。



「やっと親孝行できた」というのは山村美紗さんを母に持つ山村紅葉さん

山村紅葉さん:
 母の作品はたくさん映像化されていますが、舞台化されたものは生前には1本もありませんでした。トリックの解明や、目まぐるしく変わる場面展開を見せるのが難しいこともありますが、(舞台化されなかった)一番の理由はキャスティング。いいお話があっても大抵これで揉めまして(笑)。自分の作品の登場人物は美男美女として書いているのだから、それ相応の方でないと嫌だとか、殺したり殺されたりした経験のない人が演じるのだから演技力がある人でないとだめだとか、いろいろと申しておりました。母いわく、演技がヘタで美人でもないのは紅葉だけでいいと(笑)。今回の新派公演では、母も絶対に納得してくれるという方々に出演していただけて大変嬉しく思っています。
 母は新派の舞台が大好きで、よく一緒に南座で観ておりました。その新派が山村美紗作品を上演する。母もきっと喜んでいると思います。これで私もやっと親孝行ができたかなと。これまでずっと母のスネをかじり、コネを使いまくって生きてきましたから(笑)。



「私がトリックかもしれません」(中村梅雀さん)

中村梅雀さん:
 久里子さんの(芸歴)70年には到底及びませんが、僕も今年芸能生活54年になります。それでもこの舞台は初めて尽くし。歴史ある新橋演舞場の舞台に上がるのも初めて、山村美紗さんの作品に出るのも、舞台で刑事役を演じるのも初めてです。
 さきほど紅葉さんのお話を聞いていて謎がひとつ解けました。山村先生の作品は美男美女でないとだめだと。だから先生がご健在の頃は(出演が)叶わなかったんですね。ようやく謎が解けました(笑)。狩矢警部はこれまでたくさんの方が演じていらっしゃいますが、ついに中村梅雀がこの役についてしまった。もしかしたらこの私がトリックなのかもしれません(笑)。
 新派といえば、祖父の中村翫右衛門が、先代の水谷八重子先生と共演したときの舞台姿が今も目にはっきりと残っています。「ああ、おじいちゃん、かっこつけているな」と(笑)。自分はあまりかっこつけてない感じでいこうかなと思っております。とにかく新派の空気感を初めて経験しますので、それに合うように、そしてさらにおもしろくなるようにしたいと考えております。



 最後に、記者だけでなく出演者のみなさまも驚いていた「歌あり、踊りあり」発言について、演出の齋藤雅文さんから補足説明が。

齋藤さん:
 祇園では節分会に“お化け”という風習がありまして。もともと芸妓さんや舞妓さんが、置屋さんや普段お世話になっている方々にお礼の気持ちを込めて一夜限りの扮装、仮装をするという一種の楽しみのような風習なんだそうです。宝塚のオスカルや、ハロウィンのような衣裳の方もいます。今回の舞台でも、久里子さん演じるママのクラブで一夜限りの仮装パーティーをすることにしました。集まる人たちはみんな覆面をつけたり、仮装をしたりしていて誰が誰だかわからない。その混乱のなかで殺人がおこるという設定です。で、せっかく扮装をするんだし、長谷川くんもいるんだから、歌って踊ろうかということになりまして(笑)。実はわたしは長谷川くんの出演していた『8時だジェイ』という番組で歌われていた「Can do! Can go!」という歌が大好きでして。今回の舞台でも使えたらいいなと考えています。雪之丞さんもいらっしゃいますし、今一番切れ味のいい振り付けをしている尾上菊之丞さんに洋物、和物を混ぜて振り付けをしていただきます。緑郎さんから「僕は踊らないよね?」と聞かれましたが…踊ってもらいます(笑)。

久里子さん:
 私はいいんでしょう?

齋藤さん:
 いやいや、だってパーティーを主催する本人だから。…みなさん、楽しみにしていてください!





 これまで京都南座などでの3度の舞台化を経て、ついに新橋演舞場に登場する山村美紗ミステリー。映像作品とは異なる舞台ならではのトリックを、新派作品だからこそ描ける繊細な人間模様とともに堪能できる「八月新派公演 山村美紗サスペンス『京都 都大路謎の花くらべ』」は、8月3日から17日まで新橋演舞場で上演されます。


【公演情報】

八月新派公演 山村美紗サスペンス『京都 都大路謎の花くらべ』
2019年8月3日(土)-17日(土) 新橋演舞場

原作:山村美紗(「京都西大路通り殺人事件」より)
演出:齋藤雅文

出演:
波乃久里子/河合雪之丞/喜多村緑郎/
長谷川純/山村紅葉/中村梅雀/

川上彌生/久藤和子/山口竜央/市村真吾/只野操/伊庭朋子
/大野梨栄/斉藤沙紀/下あすみ/喜多村次郎/河合宥季/河合穂積/河合清三郎/喜多村一郎

<あらすじ>
京都・祇園のクラブ「牡丹」に飛び込んだ1本の電話。それはホステスの桃子が自宅で死んだという突然の知らせ。しかも部屋には鍵がかかったままだという。桃子は、ホステスでありながらも、女流人形師の歌乃(河合雪乃丞)や日本画家の沢木(喜多村緑郎)という二人の天才芸術家が取り合うほど、モデルとしての魅力に溢れた女だった。
桃子を偲ぶ会に、「牡丹」のママ・美保子(波乃久里子)をはじめ、祇園はち熊の芸姑・小春(山村紅葉)やベンチャー会社社長の山田二郎(長谷川純)ら、桃子と親交のあった常連客たちが集まる。皆は警察が、桃子の死を服毒自殺と判断したことに疑いを持つ。はたして本当に自殺なのか。密殺殺人の可能性は……。美保子や小春はあらゆる可能性を排除せず、独自に真相を探り始め、京都府警の狩矢警部(中村梅雀)もまた、自身の経験と勘から”他殺”の可能性を追求し始める。
一方、沢木に想いを寄せる歌乃は、彼が20年前に関わった贋作事件に再び巻き込まれていることを知り、救い出すことを密かに心に誓う。
花街での節分の習わし、"お化け"が「牡丹」でも仮装パーティーとして定着している。すっかりパーティームードの中、第二の殺人が起こる。その犯人として警察の捜査線上に浮かんだのは沢木であった。
「牡丹」で起きた密室殺人。常連客の中に犯人がいるという事実。皆が疑心暗鬼になる中、事件に疲れ果てた美保子は常連客を集めて店を閉めることを宣言する。しかし、こともあろうに第三の殺人が起こる……。
謎はますます深まるばかり。はたして犯人は。そして歌乃、沢木を取り巻く恋の行方は――。

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おけぴ取材班:mamiko 、おけぴ管理人   監修:おけぴ管理人

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