大怪盗・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎が「世界で一番綺麗な宝石」を巡って華麗に対決!9月の開幕が待ち遠しい話題の
新作ミュージカル『怪人と探偵』に大怪盗・怪人二十面相役でご出演の
中川晃教さんにお話をうかがいました。
作・作詞・楽曲プロデュースは森雪之丞さん、演出は白井晃さん、作曲は『SONG WRITERS』にて主題歌をはじめとした3曲を作曲したWEAVERの杉本雄治さん。さらに東京スカパラダイスオーケストラがテーマ音楽を書き下ろすなどワクワクいっぱいの本作。加えて、登場人物もこれまでの描かれ方とはちょっと違うようで……。その辺りもたっぷりうかがいました。
【中川晃教が演じる怪人二十面相】
──かの怪人二十面相を演じることになりました! 実は、僕は江戸川乱歩の原作の世界をあまり知らないんです。でもだからこそ、それを逆手に取って、今回の森雪之丞さんが書かれた台本から得たファーストインプレッションを入口にこの作品世界へ入っていこうと思っているんです。もちろん作りあげる過程では原作を読み理解を深める作業も必要になってくると思いますが。特に今回は新解釈の怪人二十面相ということですので、原作を大切にしつつも斬新なものになるんじゃないかな。
──台本を読んでいると自然と絵が浮かんできて、ワクワクしてきます。 でしょう!だから、まずはそこに忠実にアプローチします。音楽についても、キャッチーなものをお届けしようという意図を第一に感じます。ただ、その裏には何かが潜んでいる。それは愛とは、真実とは……人間の中に渦巻く葛藤であり、そんな人間臭さを兼ね備えた二十面相になったらと思います。今の段階では爽やかにさらりと愛を吐露できる、でもそこに人がハッとさせられる刺激も持ち合わせる。そんな人物像を思い描いています。これまでこういった描かれ方はあまりされていませんよね。
──中川晃教さん=怪人二十面相というのも、最初はやや驚きをもって受け止められたところがあります。 この作品の1幕に♪世界で一番綺麗な宝石というナンバーがあるのですが、そこに秘密があるんじゃないかと思っています。オリジナルの二十面相をミュージカルという表現様式で舞台上に立ち上げる。それに対するあらゆるエッセンスがこの一曲に集約されている気がするんです。なぜ僕がこの役を務めるのかということも含めてね。
実は、この曲に関して本稽古よりだいぶ前に演出の白井晃さんや雪之丞さんと検証会を行ったんです。ひと言で言うと、この曲はロックで激しい。二十面相って少なくとも表面上はもっとクールで、相手に何かをけしかけてヒートアップしている相手を見て涼しい顔でほくそ笑む。そうやって人の心を自在に操るようなイメージがありました。だから愛を激しく歌い上げる、それも高音域を使ってというところに意外性を感じましたが、検証会を通して、愛に対してストレートな二十面相という雪之丞さんが思い描く人物像、そして中川晃教にこの役をと思ってくださった理由のようなものを肌で感じました。
この曲は物語の構造の中でもとても大きな意味があるとも思っていて、言ってみれば“ハブ”のような曲です。二十面相自身にとっても、明智にもリリカにも見ているお客様にも、愛とは、真実とは……問いを投げかけるようなところがあるので。
──ビッグナンバーの予感!!それを歌い上げる中川二十面相がますます楽しみです。新しい怪人二十面相像になりそうですね。 ご覧になった方にどのような印象を与えるかは、僕だけでなく明智小五郎を演じる加藤和樹くんがどんな名探偵として二十面相に対峙するかにもよりますよね。二十面相は「盗む」ことで守るべき秩序とは、真実とは、何が尊重されるべきなのか、そんな社会に対する問いかけをしているように感じます。そこにはやっぱりライバル明智小五郎の存在が不可欠です。彼がいるからこそ成り立つスリリングな“VS(ヴァーサス)関係”を繰り広げたいと思います。
【オリジナルミュージカルに集った心強いメンバー】
──多彩なキャストが揃って日本を舞台にしたオリジナルミュージカルが創作されます。 近年、ミュージカルが盛り上がっていると言われていますが、まだまだ劇場に足を運び、2時間なり3時間なりの作品を観るというところに敷居の高さを感じている方も多いと思います。そこで何が必要なのか、それは常日頃から考えていることです。ミュージカルの懐の深さ、魅力ってなんだろうと。ミュージカルそのものの魅力はここで僕が語るまでもないことですが、それに加えて僕が可能性を感じるのは音楽や映画が入口になる間口の広さ、宝塚や歌舞伎のようにスターを生で見られることの醍醐味、最近ではさらに2.5次元ミュージカルや声優さんの活躍によって若い世代が気軽に劇場に足を運び、物語のキャラクターに純粋に憧れる環境もあります。本当に様々な層で形成されているミュージカルシーン、作り手である僕らもそれを再認識する段階にいるのではないかと思うんです。その多様性をひとつの作品の中にどのように混在させるか、それが日本のオリジナルミュージカルを確立させる大切な要素なのではないか。そして、このミュージカル『怪人と探偵』はそれができる企画だと感じています。
そして和樹くんや大原櫻子さんはもちろん、六角精児さん、高橋由美子さん、今拓哉さん、樹里咲穂さんをはじめとする共演者のみなさんも歌手、グランドミュージカル、宝塚、2.5次元から小劇場までそれぞれがメソッド、成功方程式を持ちながらも新しいもの、オリジナルミュージカルを作ろうと純粋に作品に向き合ってくださる方々です。才能豊かなみなさんとの共演は楽しみでなりません。僕自身もまだまだですが、それでも僕なりにこれまでの経験を活かしてカンパニーをまとめ、引っ張れたらという抱負というか責任も感じています。
──続いては中川さん演じる二十面相に大きく関わるお二人、加藤和樹さん、大原櫻子さんの印象について。和樹くんはこれまでにも一緒に作品を作ってきた仲間なのですごく信頼していますし、役者としても魅力を感じています。大原さんははじめましてですが、出演作の『リトル・ヴォイス』や『ファン・ホーム』を見たとき、その芝居心と歌心にすっかり魅了されました。そして今回彼女が演じるリリカという役が持つ少女と大人の女性の顔、その両方を秘めているようなところは彼女にぴったりだなと思います。
──WOWOWプライム『生中継!第73回 トニー賞 授賞式』で楽曲披露をされましたが、実際に三人で声を重ねた印象は。 すごく早かったんですよ、声が重なるのか。まだ全く稽古していなかった時期なので、曲の前後の芝居は作られていませんでしたが曲の中でちゃんとそれぞれのキャラクターとして存在し歌うことができたんです。お互いのセンサーをちゃんと働かせながら、歌で、声で三角関係が作られていた。これから芝居を深めることで、さらに歌も進化していくと思うのでますます楽しみです。
──そして、念願の白井晃さん演出作品です。 ひと言で言えば、僕は白井晃ワールドのファンなんです(笑)。最初に見たのは秋山菜津子さん主演の『LULU』。独特の世界観、音楽がとても効果的に用いられていてスタイリッシュでダンス公演のようでいて、でもしっかり演劇。この世界好きだ!理屈より先に嗅覚が反応したというか、つまり僕の好きな“匂い”がしたんです。それ以来、ずっとご一緒したいと思い、そのチャンスを掴みかけたこともありましたが、ここまでタイミング合わず実現しませんでした。そしてようやく本作が決まり、今年上演された白井さん演出の『恐るべき子供たち』を拝見したら……僕の中では少し前の作品で更新が止まっていた白井晃ワールドはものすごい進化を遂げていて、想像のはるか上をいく素晴らしさ!観劇後に居ても立っても居られずに白井さんの元へ駆け寄り僕の思い、愛を伝えました。その時、ちょうど白井さんもこの作品の音楽をどうやっていこうかと考えていらっしゃった時期だったので、「じゃあ一度、僕がナンバーを歌ってみて検証してみましょう」ということになって行われたのが先ほどの検証会というわけです。
──本作に関わる方それぞれの情熱や並々ならぬ愛が詰まった作品になりそうですね! うまく言えないんですけど、ピュアな原動力に突き動かされている気がするんです。雪之丞さんのこの作品への思いも、『SONG WRITERS』が終わったころからずっと聞いていたので、それが実を結ぶことも心から嬉しいと思うんです。そんなピュアな思いで繋がった『怪人と探偵』なので、素敵な作品にしたいと思います。みなさんも楽しみにしていてください。
──楽しみにしています!【おまけ:音楽活動とミュージカル】
シンガーソングライター中川晃教さんとして全国ツアー中だった中川さん。音楽活動がもたらすものということもちょっぴり伺ってみました。
(インタビューは7月に行われました)──演劇・ミュージカルの舞台からちょっと離れて、現在はコンサートツアー真っ只中です。 各地を回っていますがとっても楽しいです。初めての場所で初めて見に来てくださるお客様を前に歌うことにも大きな幸せを感じています。全国を回るからこその出会いが確実にあるんです。それも含めて全国ツアーをすることの意味を全身で感じる毎日です。
── 各地一回限りのスペシャルな公演が続いています。 客席にお子さんもいてね。すごく楽しそうに聴いてくれているかと思ったら、途中集中が途切れそうになる瞬間もあって(笑)。そうすると僕は「あの子を覚醒させるぞ!」と気合が入ったりして。そうやってみんなが楽しめる空間を作る、そのために幅広いセットリストで回っています。本当に毎日、毎公演楽しい。名古屋以外は、基本的にどこも1回限り(東京も追加公演を設け2回公演)。その瞬間に全てのエネルギーを凝縮させつつ、それと同時に毎回オープンな気持ちでお客様と向き合う。とても有意義な時間を過ごしています。
──客層も豊かなんですね。 お子さんだけでなく、音楽だからこそ興味を持ってくださるお客様もいらっしゃいます。演劇はまだちょっと敷居が高くて……という。僕自身、もともと演劇っ子というわけではなかったのでその気持ちはわかります。でもそこで中川晃教という人間に出会っていただき、音楽もあるなら行ってみようかなと思っていただけるかもしれない、ミュージカルの強みはそこにもあると思うんです。ただ、ミュージカル公演は大所帯になるのでなかなか全国津々浦々まで回るというのは容易ではない。『ジャージー・ボーイズ』が珍しかったくらい。それを実現させたのは何かと考えたとき、それほどのソフト、万人がなじめる音楽というのが成功のカギだったように感じるんです。『ジャージー・ボーイズ』と今回の全国ツアーを経て、これからのミュージカルにおいては、それも視野に入れて作っていければと感じました。『怪人と探偵』にもその経験が活かせればと思っています。
◆ 検証会という理論性とピュアな思いやそれぞれの豊かな感性、それが両輪となってオリジナルミュージカル『怪人と探偵』が立ち上がることを確信するインタビューでした。KAATという言わば白井晃さんのホームで生まれる、大怪盗・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎という日本文学史上最も有名な二人の華麗なる対決、昭和モダンに彩られた大興奮のエンターテインメント作品誕生の予感です♪開幕は9月14日です!!
ヘアメイク:井上京子/スタイリスト:AKIRA
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)hase(撮影) 監修:おけぴ管理人