1918年、帝政ロシア最後の皇帝ロマノフ二世とその家族が殺害されたというニュースが駆けめぐるなか、末娘の皇女アナスタシアだけは難を逃れて生き続けているという噂が──
そんな歴史上の謎“アナスタシア伝説”にもとづいた壮大な物語。
2020年3月に本国クリエイティブチーム&日本キャストで日本初演を迎えるミュージカル『アナスタシア』は、同名アニメーション映画に着想を得て制作されたミュージカルです。記憶をなくした主人公アーニャが自分を取り戻し、帰るべき場所を見つける壮大な愛と冒険の旅路を描いた本作は世界各国で上演され、2020年6月には宝塚歌劇団・宙組による宝塚歌劇版の上演も決定しています。
そんな大注目の『アナスタシア』にて、主人公アーニャ役を演じる葵わかなさん、木下晴香さん、彼女とともに旅をする若い詐欺師・ディミトリ役の海宝直人さん、相葉裕樹さん、内海啓貴(うつみあきよし)さん、ボルシェビキ(のちのソ連共産党)の将官・グレブ役の山本耕史さん、堂珍嘉邦さん(もうひと方の遠山裕介さんはご欠席)、孫娘アナスタシアを探し続けるマリア皇太后役の麻実れいさんご登壇の製作発表会見が行われました。歌唱披露の様子と合わせてレポートいたします。
【製作発表会見】
──出演が決まったときの気持ち、本作への意気込みから。葵わかなさん(アーニャ役ダブルキャスト)
葵さん) 日本で初めて上演される『アナスタシア』に携われることを光栄に思いました。アーニャというキャラクターは自分自身共感できるところのある強い女性です。現代は働く女性も多いですし、その強い女性像はみなさんにも共感していただけるのではないかと思います。
木下晴香さん(アーニャ役ダブルキャスト)
木下さん) 私も日本初演のこの舞台にアーニャ役で出演できることを光栄に思っています。すごくうれしいです!オーディションのときからクリエイティブチームの熱い想いを感じました。そんなみなさんと一緒に『アナスタシア』の物語を創っていくことが楽しみです。先輩方に支えていただきながら創っていくことになると思うのですが、しっかりと務められるように頑張っていきたいと思います。
海宝直人さん(ディミトリ役トリプルキャスト)
海宝さん) 海外のクリエイティブチームによるオーディションは一回歌って終わりではなく、ワークショップのように背景の説明などを受けそれに合わせて表現を変えていくような形式のものでした。そこで、この方たちと一緒に仕事ができたら俳優としてまた一歩前進できると感じました。ですので、出演が決まったときは嬉しさと楽しみな気持ちでいっぱいでした。僕は本作をドイツで観ましたが、美しくロマンティックなメロディと華やかなドレスや映像など、とてもエキサイティングでした。これをこのまま日本でも上演できることにワクワクしました。
相葉裕樹さん(ディミトリ役トリプルキャスト)
相葉さん) 『アナスタシア』日本初演にディミトリ役で出演できることを光栄に思います。海宝くんが言ったようにオーディションのときからクリエイティブチームのみなさんが情熱的で、役への解釈、物語の背景への理解も深めることができました。その情熱に負けないように、僕らもさらに熱いものを表現し届けていきたいと思います。役に真摯に向き合って参ります。ぜひ劇場に遊びに来てください。
内海啓貴さん(ディミトリ役トリプルキャスト)
内海さん) 僕はブロードウェイミュージカル、グランドミュージカルに出演するのが初めてなので、出演が決まったときはただただ嬉しかったです。日本での『アナスタシア』もすごかったと言ってもらえるように頑張りますのでよろしくお願いします。
山本耕史さん(グレブ役トリプルキャスト)
思わず山本さんの衣裳をのぞき込む葵さん
山本さん) この作品がブロードウェイでの上演時から大変注目されていたことは噂では知っていたのですが、日本初演に際しこうしてお集まりのみなさんを前にした今、改めて注目度の高さを感じています。こんなに眩しいシャッターを浴びてね(笑)。今日の衣裳、上からボタンをつけていて最後の1個まできたときに掛け違えていたことに気付き、ボタンの多さにショックを受けました。本番ではボタンの掛け違いがないように気をつけようと思います(笑)。
堂珍嘉邦さん(グレブ役トリプルキャスト)
堂珍さん) 日本で初めて上演される『アナスタシア』に参加できることを大変光栄に思います。グレブのように、僕自身も自分が信じる道を真っ直ぐ進んでいきたいと思います。
麻実れいさん(マリア皇太后役)
麻実さん) ロマノフ王朝最後の皇太后マリアを演じます。宝塚卒業後、ミュージカル『シカゴ』から私の舞台人生が再スタートいたしました。その後はプレイの世界へ入ってしまい、最後に出演したミュージカルが『蜘蛛女のキス』。そこから22年が経ち、このミュージカルとの出会いがございました。壮大な歴史劇、ロマンあふれる本作に参加できることを嬉しく思い、このカンパニーのみなさんとご一緒できることを大変幸せに思います。
【質疑・囲み取材より】
──ダブルキャスト、トリプルキャストのみなさん、ご一緒されるお相手の印象は。 葵さん) はるちゃんとは、私のミュージカルデビュー作『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役でもトリプルキャストとしてご一緒しました。あれからちょうど1年が経ち、自分が次のステップに進もうという本作で、デビュー作で共に切磋琢磨したはるちゃんがそばにいてくれることは心強いです。さきほどの歌唱披露の前もすごく緊張していたのですが、はるちゃんの顔を見たら「やってやろう!」とプラスの気持ちになりました。親友であり同志でありライバルでもある、本当にいい関係です。アナスタシア役ではより大きな責任を担うことになりますが、お互いにいいところも悪いところも見つけ合いながら頑張っていこうと思います。
木下さん) 今、わかなちゃんが言ってくれた通り、切磋琢磨できる関係というのはこういうことなんだと思える相手です。今回、ダブルキャストの相手がわかなちゃんだと聞いたときは安心しました。プライベートでもよく会うのですが、気も合うし何でも話せて、だからこそお互いに欠けているところを補い合える人。普段話をしていて感じるのは、彼女は映像作品で真ん中(主役)を経験されているので作品の全体を考えられる人だということ。私にとって本作は初めての主演です。その意味でもわかなちゃんの存在はとても心強いです。
海宝さん) ご本人を前に照れますが、相葉さんとは同じ作品でご一緒し長い時間を共に過ごしてきました。早替え小屋でもね(笑)。これまでは相棒役だったのに対して、今回、同じ役ができることはとても嬉しいです。猫好きという共通点もあり。猫島の話とかね。
(葵さんも猫好きとのこと)え?猫好き?
相葉さん)(猫島へは)結局、行けなかったけどね。
海宝さん)僕だけ行ったんですけど(笑)。
海宝さん) 内海さんは(ご出演された)コンサートを拝見した際の印象になりますが、若さ溢れるエネルギーと胸に迫りくる歌声を素敵だなと思いました。楽屋にご挨拶にうかがったときもとても爽やかでにこやかに挨拶してくれて。この3人で一緒にディミトリ役を創り上げていきたいと思います。
相葉さん) 海宝さんと同じ役をやるということは楽しみでもありますが、一緒に舞台に立てないことへの寂しさもあります。今日の製作発表がおそらく最初で最後になるのではないかと思いますが、ディミトリの歌を3人で一緒に歌わせてもらいました。歌う前は緊張もしましたが、海宝くんがいるだけでものすごく安心感があるというか(笑)。年下ですがとても頼りになる存在です。内海くんは昨日の製作発表リハーサルで初めてお会いしましたが、本当に人懐っこい笑顔がかわいらしく、ついついこちらまで笑顔になってしまいます。これから同じ役を演じる者同士、たくさん話をしたり一緒にご飯を食べに行ったり交流を深めていきたいと思います。
内海さん) まず初めに、僕は猫アレルギーなので……猫は苦手です(苦笑)。
僕は稽古場に行く前にいつも海宝さんのアルバムを聴いて気持ちを上げたり、海宝さん主演のミュージカルを観てその歌声に心打たれています。相葉さんは僕が今出演しているミュージカルの本当に大先輩の方なので、これまでにも何度も動画を拝見してきました。共演できて嬉しいです!
僕はミュージカルが大好きなのですが、心からミュージカルを楽しいと思ったのはここ2、3年のことです。まだまだミュージカルのことは知らないことばかりなので先輩おふたりとご一緒できることを嬉しく思っています。
山本さん) 堂珍さんとは10年以上前にテレビのバラエティ番組で共演させていただいて以来ですが、世代も近くとても心強い存在です。ただ相葉さんが言ったように同じ舞台に立つことはできないんですよね。それどころか本番が始まると一切会うことがないとまではいかなくても、すれ違うくらいかな。もう一人の遠山裕介くんがグレブをやっているときにご飯でも(笑)。稽古場ではほかの人を見てカッコいいと思うところはガンガン盗んでいきたいと思いますし、もし自分からそういうものを感じていただけたならそれを盗んでいってもらいたいと思います。同士のような気持ちで、とても頼りにしています。
堂珍さん) 僕から見た耕史さんはずっと前からテレビに出られている大先輩ですが、気さくに接してくださり──僕の方こそ心強い限りです。一緒に、自分たち(個)を超えた日本のグレブは面白いというところを目指したいと思っています。
山本さん) 改めて思うと、麻実さんだけがここに居る全員と共演するんですね。
──では全てのキャストを見届ける麻実さんからもひとこと。麻実さん) もう、やめてください(笑)。今日、みなさんと初めてお目にかかったのですが芝居の青年たちとはまた空気感が違っていて、なんて素敵な方たちがミュージカル界にいらっしゃるのだろうと感じました。
“素敵な青年たち”の言葉に思わず(笑)
麻実さん) 部外者に近いような私ですが、わかなさんや晴香さんのいいおばあちゃまになりたいなと願っています。どうぞよろしくお願いします。
──グレブのおふたりはキャラクターをどう捉えていますか。その魅力は。堂珍さん) グレブはもしかしたらマイナスからプラスに移り変わっていく唯一のキャラクターなのかな。物語のなかでいいスパイスになれればと思っています。
山本さん) グレブはこういう話に必ず出てくる大きな壁。お客さんがアーニャを応援する気持ちを掻き立てるための壁として存在したい。つまりグレブが出てくるとなんか嫌な雰囲気になるな……壮大できらびやかな世界観のなかで、それとはちょっと違う闇を抱えた風を吹き込むことができれば、それがグレブの魅力になると思います。楽曲もちょっと雰囲気が違う感じがするんです。そんなどこか怪しげなところがこの役の1つのポイントであり魅力になるでしょう。
──ディミトリ役のみなさんはいかがですか。海宝さん) 心根はピュアで素直、でもシニカルな面もあるチャーミングな役です。食えないヤツというところから、いろんなことを経験し人を愛することを知り少し大人になる。ディミトリの旅路もしっかりと創れたらと思います。
相葉さん) ディミトリは育ちがいいわけではないのでヤンチャなところもあるキャラクターです。そんな彼が旅をしながら自分たちに起こることに素直に反応していき成長する過程を、素晴らしい楽曲に乗せて愛嬌たっぷりに表現したいと思います。
内海さん) ディミトリはサンクトペテルブルクで嫌な思いをし、それを抱えながらも純粋さを持つ男の子。アーニャと出会って愛を知るディミトリの成長を見せられたらと思います。
フォトセッション、囲み取材ではアーニャ役のお二人は本番でもお召しになる衣裳で登場!!木下さんが着ているのは、インタビューでお話されていた早く着てみたいブルーのドレスですね。おふたりとも素敵★
楽曲披露の様子はこちらから♪
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人