2020年、東宝版初演から20周年を迎える
ミュージカル『エリザベート』。全国4都市をめぐる2020年公演が決定! 新キャスト発表に沸いた製作発表の模様をお届けいたします。
写真左から:池田篤郎さん(東宝株式会社取締役演劇担当)、山崎育三郎さん、愛希れいかさん、小池修一郎さん(訳詞・演出/宝塚歌劇団)、花總まりさん、井上芳雄さん、古川雄大さん
【井上芳雄さん、古川雄大さんに加え、新トート・山崎育三郎さん登場!】
200名の一般オーディエンスも参加した製作発表記者会見。配布された資料を確認して驚きの声を上げる方、ガッツポーズをする方、取材陣も含めそれぞれに新たなエリザベートへの期待が高まります!
タイトルロールのエリザベート役は2019年に引き続き、
花總まりさんと、
愛希れいかさんのダブルキャスト。
そして、
井上芳雄さん(大阪、名古屋、大阪公演)、
古川雄大さんに加え、2015年から2019年までルキーニ役として出演していた
山崎育三郎さんが新たにトート役に!(東京公演のみ) さらにルキーニ役を、2015年公演で同役をつとめた
尾上松也さん(東京、大阪公演)と、エリザベート新参加の
上山竜治さん、
黒羽麻璃央さんの3人が演じることも明らかになりました。
会見冒頭でスクリーンに映し出されたのは、2000年の東宝版初演から歴代のエリザベート
(一路真輝さん、涼風真世さん、朝海ひかるさん、瀬奈じゅんさん、春野寿美礼さん、花總まりさん、蘭乃はなさん、愛希れいかさん)、トート役
(内野聖陽さん、山口祐一郎さん、武田真治さん、石丸幹二さん、城田優さん、マテ・カマラスさん、井上芳雄さん、古川雄大さん)が「私だけに」「闇が広がる」「最後のダンス」を歌い継ぐように編集されたスペシャルムービー(
ミュージカル『エリザベート』東宝版20周年記念プロモーション映像)。
感慨深い様子でプロモーション映像を見つめていた演出の小池修一郎さん。
「先程の映像はネットで公開されるのでしょうか? わたし、これほしいです(笑)」
小池修一郎さん: 初演の頃を思いますと、こんなに晴れやかな日を迎えられるとは夢のようです。たくさんの方がバトンを継いで、今日という日を迎えることができました。そのときどきのキャスト、スタッフ全員が才能のベストを尽くしてくれました。
オーディエンスのみなさんのなかで、歴代キャスト全員観たという方いらっしゃいますか? 手があがりました。すごいですね。最後はやはりお客様の力。これは媚びているわけではなく、本当にそうで、初演時はここまで繰り返し上演される作品になるとは誰も思っていませんでした。『エリザベート』を観たいと思ってくださる方がこんなにもいらっしゃることはとてもラッキーだったと思っています。今日の製作発表にも200人の枠に1万人の応募があったそうです。50倍の競争率です。ここにいるということは何かの運に恵まれているということですから、これからも死ぬまでエリザベートを観続けてくださいね(笑)。
新キャスト、みなさん今はじめてお知りになったんですか? 実はネットの噂で事前に知っていたとか…ない? そうですか。私も今日初めて完成したビジュアルを見て「おお…」と驚きました。2020年は20周年ですから、新たなスタートとしての『エリザベート』をお届けできればと思っています。(小池さん)
【エリザベート、トート役の5人が登場】
ここで、エリザベート役の花總まりさん、愛希れいかさん、トート役の井上芳雄さん、山崎育三郎さん、古川雄大さんが登場。まずはそれぞれのご挨拶から。
花總まりさん: 東宝版初演から20年の節目にまたエリザベート役を演じる機会をいただき、感謝の気持でいっぱいです。私としてもこれが最後というつもりで誠心誠意つとめてまいります。
愛希れいかさん: 帝国劇場で3ヶ月間エリザベートを演じさせていただき、幸せな気持ちと、まだまだだな、もっと追求したいなという思いで千秋楽を迎えました。今回またエリザベート役をつとめられること、本当に光栄です。
井上芳雄さん: 20年前の東宝版初演、その1年前くらいに小池先生に見つけていただき、初舞台を踏み、今の僕があります。その大切な作品にまた関われることがとても嬉しいです。『エリザベート』にはたくさんの魅力がありますが、やればやるほど先が見えなくなる、途方も無い作品でもあります。精一杯やらせていただきます。
山崎育三郎さん: 来年、トート役をさせていただきます。…トート役を、させていただきます! ルキーニ役と出会い役者として新しい扉が開いた『エリザベート』、その20周年の節目に新たにトート役として舞台に立てることが嬉しいです。誰よりも近くでトートを見てきた僕だからこそ演じられるトートがあるのではないかと考えています。
古川雄大さん: ずっと目標にしてきたトート役。前回は演じていて、もちろん毎日幸せだったのですが、同時にトートという役をつかむために悩み、演じることの難しさを改めて痛感した日々でもありました。ふたたびチャンスをいただけたので、前回以上にトートに近づけるよう、そして自分自身の成長につながるよう、精進したいと思います。
◆【質疑応答】
──この20年、節目ごとに演出にも変化があった。どういう思いだったか? また今度も新たなバージョンが生まれる可能性は?
小池修一郎さん: 東宝版はこれまで3つのバージョンがあります。
宝塚版はトートを中心としたテキストでしたが、東宝版の初演はエリザベートを軸にオリジナルのウィーン版に寄せたものになりました。宝塚以外のスタッフと組んで「いろいろなものを鍋に入れて煮込んだら一体どんな味になるのか」と楽しみなのと同時にこわごわと作ってみました。当時はお客様の反応も賛否両論でしたが、刺激的な作品になったとは思います。
その後、ロングラン、地方公演も考慮して舞台転換や装置などを変えていきました。
2015年にキャストが一新されたときには『エリザベート』がヨーロッパだけでなく韓国などでも大ヒットしていて、国や人によってこんなにも作品の受け止め方が変わるのかと見せつけられました。今の時代にこのキャストで作る『エリザベート』はどんなものになるのだろうと考え、いまのバージョンに至っています。
そもそも、この作品が生まれたのはベルリンの壁が崩壊した頃。ヨーロッパの東西の線引き、体制が変わり、再び中央ヨーロッパの復権と再構成が始まる、そんな思いを感じたクンツェさんが書いた作品です。ウィーンではハプスブルク帝国時代のように中央ヨーロッパがもう一度台頭するかもしれないという思いがあったはず。あれから20年、ベルリンの壁崩壊から30年以上経っていますから、その思いもまた変わってきた。「世界が変わったから演出も変える」と常に意識しているわけではありませんが、これからの日本、世界の変化によってこの作品の受け止め方が変わるようなら、そこでまた視点を変えて(新演出になる)ということもあるかもしれません。ただこればっかりは私の寿命もありますので、わかりません(笑)。
──新たにトート役を演じる山崎さんにお訊きします。ルキーニを演じたからこそできるトート役とは?
山崎育三郎さん: トートとルキーニの関係性が大切だと思っています。今回もルキーニとのディスカッションを重ねていきたい。ルキーニを演じてきた僕が思うトートは恐怖心を与えるような存在。氷のように冷たく、でも触ったら火傷するくらい熱い、そんなイメージです。ビジュアルは小池先生のこだわりで前髪が真ん中分けのトートになりました(笑)。宝塚版も含めて、これまで真ん中分けの(髪型の)トートはいなかったということなので、視覚的にも注目していただきたいです。
小池修一郎さん:これはね、ロック歌手。70年代のロック歌手のイメージです。彼(山崎さん)の違う顔が出てきますから(笑)。ま、どうなるかわかりませんが、楽しみにしていますよ。
「あのー、僕らも真ん中分けにしようかなと。古川くんと前々から相談していて。育三郎だけというのも、あれなんで」(井上さん)
「え、みんな真ん中分け?」(山崎さん)
「だめだめ!」(小池さん)
「じゃあ、オールバックとか? …どうなるかわかりませんが、僕らの髪型も楽しみにしていてください!」(井上さん)
──『エリザベート』の魅力とは?花總まりさん: エリザベートだけでなく、彼女と同じ時代を生きた人々、それぞれの人生があの3時間にとても色濃く描かれていること。どの役に注目しても、その人生を感じられる。私たちも自分の人生に重ね合わせて、さまざまなことを感じることができる。そんな奥深いミュージカルだと思います。
愛希れいかさん: 現代を生きる私たちにも届くメッセージがある。エリザベートは、自分の意思を貫く。これはあの時代の、特に女性にとっては難しいことだったと思う。そのなかで自分の思いを貫く、そんなメッセージをもらえることが魅力なのでは。
井上芳雄さん: 演じるたびに驚くほど、“熱狂のミュージカル”だと思います。お客様の熱狂がすごい。これは自分の手柄ではないんだぞと、常に言い聞かせていないと「みんな俺に熱狂してるな」と思っちゃうくらい(笑) 特にトート役はそういうところがあると思います。初演のときに一路真輝さんから「この熱が他の作品に出演したときも同じようにあると思ってはだめだよ」と言われました。この熱狂はその瞬間に生まれて、消えていくもの。でもその熱のおかげで日本のミュージカル界が盛り上がるのも事実で、それくらいすごいパワーを持っている作品。その熱をうまく享受しながら溺れないようにしないと。僕なんか『エリザベート』のおかげで営業しているようなもんですから(笑)。
山崎育三郎さん: 役者の立場から考えると、とにかく歌いたい楽曲が多い。「夜のボート」「最後のダンス」「闇が広がる」「私だけに」、あと一応「キッチュ」と「ミルク」も入れておきます(笑)。役者が「この歌を歌いたい!」と思う楽曲が多い作品はヒットするのではないかと。『レ・ミゼラブル』もそうですが、お客様が聴きたいだけでなく、出演者が歌いたい楽曲が多いことは、大きな力だと思います。
古川雄大さん: 僕自身はあまり主張するタイプの人間ではないので、エリザベートのような強い生き方に憧れます。日本人の感覚だと共感できない部分もあるかもしれませんが、僕にとっては人間的に必要な要素かなと。エリザベートの強い生き方が周りの人間を動かし、ハプスブルク、時代、そして“死”という生命を超越したものまで動かしていく。そのエネルギーが作品の魅力かなと思います。
──『エリザベート』という作品を一文字で表すと?(困惑して、ざわつくキャスト陣。司会:では思いついた方から順番に…)
「(回答を)断ることも出来るんですか?」(井上さん)
「ぜひ回答おねがいします」(記者)
「はい! じゃあ、僕は“愛”だと思います。これ、言ったもん勝ちだと思うんで(笑)。“偉大なる愛だー”って言ってますからね、やっぱり愛なんじゃないかな-って」(井上さん)
「あの、僕も“愛”で」(古川さん)
「お前もか(笑)!」(井上さん)
「エリザベート的には“生”。どんな事があっても生きる、生きていく、ということで」(花總さん)
「はい、“生きる”。次は?」(井上さん)
「“熱”! お客様の熱狂!」(山崎さん)
「あ、さっき言ってたやつね、熱狂」(井上さん)
「はい! えーと…“欲”!」(愛希さん)
「おおーっ」(井上さん)
「“欲”…人間の欲望…が、人間らしくて、良いかと、思う…」(愛希さん)
「いいと思います! (記者に)はい、これでよろしいですか?」(井上さん)
──キャストの皆さまそれぞれにとって『エリザベート』という作品はどんな存在?
花總まりさん: 私にとっては人生を変えるほどの作品です。宝塚の初演のときはまだ22歳でした。その役を今も演じる機会をいただけることを奇跡だと思います。私にとって、なくてはならない作品であり、役です。
愛希れいかさん: ずっと憧れの作品でしたので、演じながらも「これは夢なのではないか」と思う瞬間もありました。同時に、なかなか乗り越えられない壁がある作品。登れたと思ったら、さらに高い壁が待っているという感じ。憧れであり、高い壁でもある存在です。
井上芳雄さん: 奇跡のようなバランスで生まれたミュージカル。何十年に一度の奇跡の作品です。その素晴らしさが僕たちにチャンスをくれると思っています。熱狂が保証されているからこそ、チャレンジができる。僕自身もそのチャレンジの一環として生まれたと思っています。今もなおたくさんの人に新しいチャンスが与えられている。僕や育三郎、古川くんのように新しい役にチャレンジさせていただいたり、新人の方が出演したり。そういったこともひっくるめて奇跡の作品だと思います。
山崎育三郎さん: ルキーニとして出演していたときは自分のセリフから舞台が始まるのですが、何度やっても緊張していました。毎回緊張する、そういう舞台は初めてでしたね。やればやるほど難しさを感じる、ゴールが見えない、ずっと試されているような…自分を試していく場所、そんな作品です。
古川雄大さん: ルドルフ役で初めて出演させていただき、今回で5度目(の出演)になります。初めて出演したときは、それまで出演した作品に比べてテーマも、舞台装置も重厚で、挑むのがとても大変でした。オーディションのときを思い出すと、本当に失礼な態度を取っていたな、と…。稽古でも小池先生に反抗的な態度を取ったり…。でも愛を持って接していただいたおかげで、今では何かを言われたら「はい」とちゃんと返事ができるようになりました(笑)。自分が成長できた作品だと思っています。
「それって“飼いならされた”ってことじゃなくて?」(井上さん)
「いえ、“成長”です」(古川さん)
◆ 最後に花總まりさんが登壇者を代表して、2020年公演の成功に向けてキャスト・スタッフ一丸となって邁進することを宣言し、“熱狂”の製作発表記者会見は終了。
ミュージカル『エリザベート』は、2020年4月9日(木)から5月4日(月)まで東京・帝国劇場、5月11日(月)から6月2日(火)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、6月10(水)から28日(日)まで名古屋・御園座、7月6日(月)から8月3日(月)まで福岡・博多座にて上演されます。
「(新トートの山崎さんに先輩としてアドバイスは?)企業秘密なんで教えられません! 僕のほうが真ん中分けの髪型を盗むかも」(井上さん)
「トート役はみなさん本当に自由(笑)。それぞれのトート像が千秋楽にむけてヒートアップしていくのでおもしろいです」(花總さん)
おけぴ取材班:chiaki(撮影)、mamiko(撮影/文) 監修:おけぴ管理人