(感想追記12/14)【開幕レポート】長塚圭史演出、白石加代子出演 『常陸坊海尊』【KAAT 神奈川芸術劇場】

【レポ文末に感想コメント追加! たくさんのコメントありがとうございました】



※舞台写真掲載。また物語後半の内容まで触れています。観劇前の方はご注意ください。


 「古今東西、よい戯曲というのは、再びピタッとハマる時代が巡ってくるもので、これもまたそういう舞台だった」(おけぴに届いた感想コメントより)

 シンプルで潔い舞台セット、さりげなく先鋭的な音楽、そしてなにより、贅沢な適材適所に嬉しくなる俳優たちの演技。1964年、東京オリンピック開催の年に発表された秋元松代の傑作戯曲に、現代の息吹が吹き込まれました!

 KAAT神奈川芸術劇場にて、長塚圭史さん演出『常陸坊海尊(ひたちぼうかいそん)』のプレビュー公演が開幕。おけぴ会員のみなさまから届いた感想とともに、開幕レポートをお届けいたします。(以下太字はすべて、会員感想コメント)


終戦を境に変わっていくふたりの少年の運命、そして衝撃のラストとは…?




三幕構成の本作。前半の舞台は、戦時中の東北の寒村です。
東京から疎開してきた啓太と豊は、常陸坊海尊の妻と名乗るイタコのおばば(白石加代子さん)と、おばばと暮らす娘・雪乃(中村ゆりさん)に出会います。
 

雪乃が執着する“銭こ”と引き換えに、海尊のミイラを見せてもらう啓太と豊。

啓太は、安否のわからぬ母親恋しさから、次第におばばの口寄せに依存していくことに…

 生と性、格差、差別、そして罪、赦し…さまざまなテーマを内包した戯曲を生み出したのは、『近松心中物語』『元禄港歌』などで知られる、戦後を代表する女性劇作家・秋元松代。その最高傑作ともいわれるのがこの『常陸坊海尊』です。

 常陸坊海尊とは、源義経に付き従い都落ちをするものの、主人の最期を前に逃亡、その後に不老不死となって源平合戦話を語り聴かせたとされる伝説の人物。

 海尊の妻を自称するおばば役は、17年ぶりに同役に挑む白石加代子さんです。

▼圧倒的な白石加代子さんの存在感!

▼二幕目の白石さんが美しい。言葉も表情も魅力に溢れている。

▼白石加代子さんの魅力あふれる怪演ぶりにより、中村ゆりさんの持つ妖しさがてっぺんまで引っぱり出されていたように感じました。



中村ゆりさん演じる雪乃は、観客の共感をきっぱりと拒否するような存在感。
子供時代から妖艶な娘時代までを演じ分けます。

不思議なことに、源平合戦から750年あまりこの世をさすらったという第一の海尊(大森博史さん)。
18歳のおばばは、ある夜に海尊と出会い、家へといざないます…
ぼうぼうとした月夜の道が目の前に広がるようなステージング、ぜひ劇場で。

不思議な存在といえば、こちらも。
歌舞伎でもおなじみの曽我兄弟、十郎祐成と五郎時致。その妻を名乗り、村外れの家に男たちを招き入れている虎御前(明星真由美さん)と少将(弘中麻紀さん)。
浮世離れしたようなふたりにも、終戦後、近代化の波が押し寄せます…

おばばにつきまとう山伏(大石継太さん)は、一文無しでおばばにすがりますが冷たくあしらわれ…
年齢差があるようにも思えるふたりですが、過去になにやら関係があったよう。白石加代子さん、ふとみせる艶っぽい表情から目が離せません!

▼みなさん素晴らしかったですが、やはり特筆すべきは白石加代子さんの演技。
白石さん無しでは、この作品は成立しなかったであろうと思わせる存在感と演技。

▼おばばの生き抜くバイタリティーに感服。おばばの語るとおりに受け取るもよし、彼女の生い立ちに思いをはせるもよし。どちらにしてもその語り口に引き込まれます。






三幕目で描かれるのは、終戦から16年後。
東京に戻り、成人してサラリーマンになっている豊(尾上寛之さん)は、神隠しにあい疎開先から姿を消した啓太(平埜生成さん)と神社で再会します。

 ありえないことがさりげなく現実のなかに存在する、それを深く追求することもなく暮らす人々。戯曲もその全てを親切に説明してはくれません。けれども、白石加代子さんが演じるおばばの身のこなし、いつまでも聞いていたくなる鮮やかな語り口、そのすべてに身を委ねているうちに、物語は思いがけない方向へ…

▼あの時代の、地方の閉塞感が醸し出す世界感だけで終わらなかった。

▼前半は白石加代子(おばば)が引っ張っていく感じで、客は謎に引き回されていくけれど、3幕目の畳み掛けていく感じが良かった。

▼説得力のある演技で、時代が移り変わっているのがわかる。
が、そのなかでも時間に囚われない感じもあり、脳内はとても混乱しますが、「演劇を観てる感」は物凄い。終演後に誰かと話したくなります。受け取り方が色々ありそう。



美しく成長した雪乃に骨抜きにされ、下男となった啓太。
雪乃の腕のなかには子どもが…

雪乃に運命を狂わされたのは啓太だけではないことを知る豊。
神社の宮司補(深澤嵐さん)の決心とは?

自分もまた雪乃にとらわれていたことを自覚した豊は…
啓太、豊、そして雪乃。三幕での緊張感あるやりとり、見応えあり!

▼出番は短いのですが、平埜生成さん、尾上寛之さんの演技対決から目が離せませんでした。16年の間にそれぞれの身に起こったことを想像せずにはいられません。

▼中村ゆりさんのどこまでも冷たい眼差しにゾクゾクっ! 美しい顔を思いきり歪める笑顔、甲高い笑い声に背筋が凍りました。



▼とにかく皆さま、演技が上手い。

▼人が否応なく巻き込まれていく「運命」が描かれており、3時間に渡る長丁場でしたが、ぐいぐいと引き込まれました。

▼啓太の罪とは? そしておばば、雪乃は何者だったのだろう? どのようにも解釈できる、けれども物語としてもきっちりと成立している(横溝正史ミステリーのような楽しさあり!)。観劇後にたくさん考えて、たくさん語りたくなる!


 不老不死の仙人に、イタコのおばば、妖しい魅力を持つ美少女。少しばかりこの世をはみ出たような登場人物たちが、観客に感じること、思考することを求めている。そんな思いにとらわれた観劇後。

 出演はこのほか、長谷川朝晴さん、高木稟さん、真那胡敬二さんなど。どの役柄も、断片的な場面やセリフで、人物像がくっきりと浮かび上がります。第二の海尊として登場する平原慎太郎さん(コンテンポラリーダンスのダンサー・振付家。本作ムービングも担当)の“語り”にもご注目ください。

 FPM(ファンタスティック・プラスチック・マシーン)のほかDJ・プロデューサーとしても活躍する田中知之さんによる音楽は、ノイズの要素も取り入れながら、抑制の効いた働き。ふと聞こえるフランツ・リストのメロディ、曲名を思えば「ああ…」と。(ぜひ劇場でお確かめを♪)

 このほかのスタッフワークも、どこまでも誠実で品がある印象。こけおどしの“エンタメ感”がなくても、戯曲と役者、そして演出の力が一体となり客席を惹き付けます。

▼シンプルな舞台構成で幻想的な世界が広がります。
海尊とは一体何者なのか。その答えを求めて最後まで惹き付けられます。
そしてその答えは、誰の心の中にも海尊はいるということと感じました。

▼女は現実に生き、男は女に呑み込まれ虚構の世界に生きたがる。
海尊は、さまよう霊なのか、それとも誰しもが内在しているものなのか。


 日本の演劇の豊かさをまだまだ信じたくなる、長塚圭史さん演出『常陸坊海尊』は、12月7日・8日のプレビュー公演を経て、 12月11日(水)から22日(日)までKAAT 神奈川芸術劇場にて上演されます。(地方公演あり)



【レポート掲載後もたくさんの感想コメントが届きました! 一気にご紹介♪(順不同/一部抜粋)】

長塚さんがこの作品を引き寄せた理由、伝承していくことの大切さを感じる舞台。今、観ることができて良かったです。

レジェンド白石加代子さんに酔いしれ、3幕の尾上寛之さんと平埜生成さんの情念篭るやりとりには夢中になる。
戯曲を思わず帰りに求めた。
中村ゆりさん(美しい!)に翻弄され、追い詰められる者達。しかし罪を認める清らかな心を持つ者には奇跡が おこる。
長塚圭史さんの演出によりこの戯曲がさらに輝きを増す。
高さと奥行きのある舞台の シンプルさを極めた 繊細な美しさを堪能した。

予想もしないラストでした。先にプレビュー公演の感想を読んでいましたが、それを遥かに越えた内容でした。
作品の解釈はいろいろあるでしょうが、底流に反戦があるように感じました。大ホールらしくないシンプルな舞台美術が気に入りました。長塚さんの演出に拍手、星5つ。

白石さんの童女のような可愛らしさに癒される。女性の強さよ!
長谷川さんと 高木さんの 素晴らしさ。
そして三幕、平埜生成さんの壮絶な演技に涙し、それが自分の心の中の罪を洗い流した後 あの奇跡がおきる。
見終わった後、自分の罪を赦されたような 昇華された光をもらえました。

まず舞台美術が良かった。シンプルで。だからこそ白石加代子さんを始め役者の方々の世界観の表現がよく伝わる舞台だった。
おとぎ話かホントのことか交錯して終わったあとに色々思いをめぐらせられる舞台だった。

バスガイドさんが面白かった。昭和感がたまらない。シーンが息抜きとして成功している。
無知識で拝見したので何人も海尊が出てきて混乱した。自分の中の答えが見つからないので、原作本を読んで色々考えたい

平埜生成さん目当てで拝見しました。非常に重要な役どころで、かつ私自身は今まで見たことのないタイプのお役を印象的に演じられていて、さらにファンになりました。

人間が藹々と紡いできた「生」を、日本の中世から説き起こす、とても巨大な作品でした。観た後、ズシッと来ます。
俳優さん達が子役も含めて皆素晴らしく、とくに白石加代子さん、中村ゆりさん、平埜生成さんは、ゾクゾクする演技でした。
題名のみ知っていた作品ですが、このカンパニーで見られて良かったです!

シンプルな装置で、観てる側の想像力を掻き立てる舞台でした。
白石加代子さんは圧巻でした!3幕が特に引き込まれました。

今までにちょっと得たことのない感覚が得られます。怖そうなんだけれど、思わず触れてみたくなるような。俳優さんたちがこの世の人ではないような不思議な景色・舞台でした。
東北の厳しい冬、そこで語られてきた伝説。そこで生きている人たちそして海尊様や不思議な不思議な白石加代子さんのおばば。魅力あり過ぎてパワーに圧倒されました。雪乃のミステリアスな感じも悪くなかった。
啓太と豊の3幕目のシーンは固唾をのんで見入りました。
登場人物が皆魅力的。謎めいていて惹かれます。

疎開先の宿屋のご主人も引率の先生もなんだか味がありました。あと山伏の男も良かったな。
シンプルな舞台なんだけれど、印象的なシーンが続きます。
ミュージカルや楽しい芝居も好きだけど、常陸坊海尊のちょっと不思議舞台、好きです。



何だか良く分からない、特に、何故啓太が罪の意識に悶え苦しんでいるのか?どのように腑抜けのようになってしまったのか?…(先生がそうなったのなら理解しやすい)
が、俳優陣の演技の確かさで、そのような状態になっているということは感じられる。やはり、白石加代子さんのおばばは、確かにそこに存在している。凄い! 中村ゆりさんの冷酷さも平埜生成さんの悶獄も本当のようだった。

おばば役の白石加代子さんは流石です。雪乃役の中村ゆりさんの魔性ぶり、笑い声が怖いくらいでした。平埜さんは日の浦姫の時とは真逆の役で最初は気が付きませんでした。なぜおばばは啓太を手元に置いたのか。最後に納得させられました。

3時間の長丁場ですが、俳優の方の演技で引っ張られていきました。
おばば様と雪乃が本当に素敵! 怖くて美しい女の人を堪能しました。
話の筋は余白を残し、俳優さんの演技や観客の想像力に委ねるところの多い舞台。
幻想的な感覚に浸りたいかたは是非。

話の筋に余白の多い舞台では、俳優さんの演技がものをいうと思います。
おばばも雪乃も大人の啓太も、どうしてこの人はこんなことを言うのか、こんな行動をするのか、話の中では分からないことが多くても、確かにこの人ならこんな風にするんだろうと納得させられる。それだけ俳優さんがたが役柄を作り込んでいらっしゃるのだと感動します。宿のご主人や観光ガイドさんなどもやはりその人なら、と思わせてくれました。

柳田國男の世界を思わせる民間伝承を下敷きに現代の時間軸を交差させた重厚な芝居でした。
分かりやすい芝居ではないかもしれませんが、東北を舞台にしてを時間を越境させながら進む舞台は3時間という長さを感じさせませんでした。
おばば役の白石加代子さんの存在感は言うまでもなく、役者の演技はそれぞれ、役どころを得て素晴らしいと思いました。中村ゆりさんの魔性!?の女ぶりもなかなかです。シンプルな舞台装置、琵琶の音色も観客の想像力を掻き立てられ、引き込まれました。

昭和の代表的な新劇作品の上演。演出(長塚圭史)は新劇的リアリズムを超えて、KAATの広い舞台いっぱいに人の動きを作り出したり、ほとんど素舞台に月や雪を描いてこの山深い里を表現する。
イタコのおばば(白石佳代子)の存在感、その孫娘の男を誑かす悪女ぶり(中村ゆり)が舞台を異形で妖艶なものに。
海尊とは何者か? 社会に・人生に忸怩たるものは皆、心のうちで海尊になると考えてみた。

白石さん怪演ではなく、快演です。そして妖艶です。平埜さんラストには「日の浦姫物語」とはまったく異なる姿を見せてくれました。

男達は自分の奥底で望むものを押し付けそれに縋り、女はそれを与え飼い慣らす。
ふりまわされている男達から見れば『悪女』なのかも知れないが、私は自分の信念を持つ女が、強く美しく気高いものに見えました。
白石さんのお年も関係無く色気ある女性になるのですから。

何と言っても白石加代子さんの存在感ありきの作品だと思います。
劇場でいただいたリーフレットの中に長塚圭史さんの言葉がありましたが、こちらとあちら、虚と実の目に見えない『線』の存在とその曖昧さに畏怖と心地よさを感じました。古い戯曲が演出の力で現代や後世にも通じる作品になっています。

奇想天外な物語世界も、白石加代子さんが演じると信じられてしまいます。
戦後の東京の子供の言葉づかい、バスガイドの発声、細部まで研究していることがよくわかる丁寧なお芝居です。

おばばの強烈な意思が恐ろしいが、たまに見せる可愛らしい表情がなんとも言えない。
雪乃、 少女時代の清楚さと巫女姿の冷ややかな美しさに目を見張りました。
虎御前と少将のなぜかおかしみのある哀しさにホッとします。
戦後の混乱期に少年時代を過ごし、成人した啓太と豊の心の奥底は想像を絶しています。
厳かで美しい舞台でした。

始まりと終わりの群衆の不可思議な動きがとても印象的でした。
話を辿っていくのは問題ないのですが、とても深いものが所々窺えて一度観ただけでは理解が難しいです。

3幕3時間弱の舞台。平安時代の言い伝えが戦中と60年代を繋ぐ不思議な物語。
1、2幕は物語の展開を淡々と見せてあまり感情の動きがないので、ぶっちゃけ少々退屈なんだけど、それが助走であるかのように3幕目では様々な感情が爆発する。
演出面でも1、2幕は凡庸に見えたが3幕では抽象的で日本の様式美を感じさせる表現と、琵琶の音楽を効果的に取り入れて過去と現在を交錯させ、終わってみれば圧倒されている自分がいた。ラストが冒頭のシーンに繋がって円環をなし、物語は終わらない。

難解な戯曲だが面白い。白石さんが凄いのはもちろんだが、啓太と豊、三幕のその後の2人の場面が一番印象に残った。

時間の流れを印象づけられる舞台でした。たくさんの予備軍のなかで観客の前に現れた海尊はなぜケイタだったのか。
各人が引き受けなければならない運命とか業とかについて考えさせられました。

不思議でちょっと怖い物語でしたが、幕開きから一気に引き込まれました。
役者さんは、子役含め、皆さん素晴らしいです。全編、遠野物語のような民間伝承を三次元で見ているような気分でした。
舞台って面白いと改めて感じました。

シンプルだけれども美しさが印象に残る装置に演出、物語の世界観に一瞬にして引きずり込む白石加代子さんの存在感はじめ、子役含め役者一人一人が秋元松代の戯曲のなかに息づいている。
新しい、けれども、決して色は褪せていない作品に仕上がっている。



「常陸坊海尊」は、以前から興味がありながらも実態の解らない存在でした。
チラシの題名に惹かれて今回、観劇させて頂きましたが…東北地方に伝わる義経伝説の影の部分が、不可思議な人びとにより受け継がれていくのを自分もそれに関わっているような感覚で幻視しました。
白石加代子さんの語り口、耳に甦ります。

「海尊さま!」心の中で呟きたくなるかもしれません。日本人の心の奥底にある何かを思い出す不思議な作品です。
時間が許せば、もう一度、二度、観劇したいです。

伝承と、戦中戦後の日本との境界があいまいな世界。でも白石さんのおばばの存在が、そんな舞台に観客をしっかりと繋ぎ止めてくれます。よく考えられた移動式のセットもその世界観らしい。
現在にも通じる喪失感や行き場のなさがある。その答えはないのかもしれないけど、ラストはとても力強く、心を動かされました。

白石加代子さんの舞台を初めて観て、大女優とか怪演と言われる所以を目の当たりにすることが出来ました。

今まで不思議だった東北各地の非科学的な伝説の、その理由が素直に飲み込めた気がします。

女性と子供(ひいては弱者、社会を構成する上で重要とみなされていない人たち)の物語だと感じました。
そのように自分を処していくか、流されるのか、流されないか。
飲み込むのか、飲み込まれるのか。等々、対軸に振られながら観劇しました。
全体として辛い筋ばかりでしたが、随所随所でほっとしたり、笑ったり、不思議な明るさがありました。2回の休憩込みで3時間を越える作品でしたが存外長さは感じませんでした。

いつまでも生き方に迷い続け、異なる姿となって750年も生き続ける常陸坊海尊。
そこには、拠り所を見つけるのが難しく、自信をもって生きることができない現代の人の姿が投影されているように思う。

オルガンワークス代表でコンドルズのメンバーでもある平原慎太郎さんのお名前に惹かれステージングを楽しみに観劇しました。
オープニングでいきなり心を掴まれバスツアー客のバラバラなようでバランスの良い配置。二階席からの景色は彼のお仕事が隅々まで眺められて圧巻でした。
終盤、這いつくばってもがき立ち上がれない青年安田君の動きもムービングによるものだろうなと、感慨深くエンディングを万巻の思いで見つめました。

初めて白石さんの舞台を観ましたが、とにかく圧巻でした。
言葉が聞き取りやすく、引き込まれます。他の役者さんもさすがでした。
舞台装置はシンプルながら暗闇や霧や月明かり。物語を神秘的に演出されてる感じがしました。
最後まで結末が見えず、終わった後友達と本物の演劇だねと話しました。

なんだろう…ごめんなさい。上手く紹介や感想が書けない舞台です。
とにかくすごい。役者さん達の熱と迫力。物語の展開。何の予習もしないで観に行ってしまい少し後悔。
白石加代子さんはそれはもう特別な存在ですが、若い役者さん達の3幕に圧倒されました。

素晴らしい舞台です。何の先入観を持たないで見た方が驚くと思います。
終わったときに放心状態になるかもしれないくらいです

キリスト教のユダを思い出しました。戦争がなくなっても、
事件や事故、災害がある限り、常陸坊海尊はこれからもずっと生き続けるのだろうと思いました。

観客も集中力のいる舞台でしたが、「人は罪を作らずに生きてはいけない」という言葉は終盤に改めて重く思い起こされました。
白石加代子さんは別格の存在感で、そこにおばばとして生きていて、その姿から目を離せなくなります。
啓太と豊が迷う姿は、この難役に挑む俳優さんの姿ともダブり、その苦悩に迫力がありました。

山深い森に差す陽射し、月光、灯台…照明がシンプルな舞台に効果的に使われて美しかったです。

白石加代子さんの迫力はもちろん、中村ゆりさんの少女から大人への変貌ぶりも狂気的でよかった。
方言がしっかりしているので、雰囲気で理解する場面も多かったが、シンプルなセットで派手さではなく、芯の強さを感じた。

雪に閉ざされた村で作られたであろう海尊伝説を思わせる一幕と二幕、現在の東京と繋ぐ三幕。シンプルな舞台装置に三時間閉じ込められたようでいい息苦しさでした。
苦しい時の神頼みという言葉について考えさせられました。

海尊が象徴するものが逃げ出すことの罪だというのならば、それは恐らく普遍的な出来事で、啓太の末路がキリストの贖罪のように映りました。

(12/14 感想コメント追加)


【公演情報】
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
「常陸坊海尊」
2019年12月07日(土)~2019年12月22日(日) 神奈川芸術劇場 ホール

作:秋元松代
演出:長塚圭史
音楽:田中知之(FPM)

出演:
白石加代子 中村ゆり 平埜生成 尾上寛之
長谷川朝晴 高木稟 大石継太
明星真由美 弘中麻紀 藤田秀世 金井良信 佐藤真弓 佐藤誠 柴一平 浜田純平 深澤嵐
大森博史 平原慎太郎 真那胡敬二
<子役> 山崎雄大 白石昂太郎 室町匠利 木村海翔 藤戸野絵

上演時間:3時間10分(途中休憩15分含む)

<あらすじ>
東京から疎開に来た啓太と豊は、ある日雪乃という美しい少女に出会う。常陸坊海尊の妻と名乗るおばばと暮らしている雪乃に二人は海尊のミイラを見せられる。烈しくなる戦争で両親を失った少年たちは雪乃に魅かれていくが、啓太は母恋しさで次第におばばに母親の姿を重ねていく。
東京に戻って成人した豊は、十六年後、岬に近い格式の高い神社を訪ねる。そこには巫女をつとめる雪乃と戦後おばばたちと共に消息を絶った啓太の姿があった。
再会をなつかしむ豊は、雪乃の妖しい美しさに魂を抜かれてぬけがらとなった啓太に衝撃を受け、あざわらうかのように子守歌をうたう雪乃に魅入られていく自分の平凡な人生の、基盤がくずれていく恐怖に自失する。
取り残された啓太は、生きながら死に腐れていく自分の運命を嘆き、現れた第三の海尊に救いを求めるが、やがて自分自身が海尊となり、自らの罪を懺悔するため琵琶を抱いてさまよっていく。

公演詳細情報

おけぴ取材班:mamiko(文/撮影)  感想コメント:おけぴ会員のみなさま 
監修:おけぴ管理人

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