このノートに名前を書かれた人間は死ぬ── そう書かれた一冊のノートを主人公・夜神月が拾ったことから始まる物語。 社会現象にもなった大ヒット漫画『DEATH NOTE』(集英社『週刊少年ジャンプ』)を原作に、日米のトップクリエイターの手で『デスノート THE MUSICAL』が誕生したのは2015年4月のこと。以後、韓国キャスト版上演(2015年6月)、再演(2017年1月)、2017年の日本版再演では海外公演(台湾:台中国家歌劇院)も大成功を果たした日本発のオリジナルミュージカルがオール新キャストで再々演。開幕を約1か月後に控えた稽古場にお邪魔してまいりました。
【ストーリー】 成績優秀な高校生・夜神 月(やがみライト)は、ある日、一冊のノートを拾う。ノートには、「このノートに名前を書かれた人間は40秒で死ぬ」とあった。それは、死神が退屈しのぎに地上に落とした“死のノート”(デスノート)であった。犯罪者を裁ききれない法律に、限界を感じていたライトは、ある日、テレビで幼稚園に立てこもる誘拐犯の名前をデスノートに書いてみる。すると、誘拐犯は突然、心臓発作で息絶えた。 「自分こそが神に選ばれ、犯罪者のいない世界を創る“新世界の神”だ」と、ライトはデスノートを使い、犯罪者の粛清を始めていく。世界中で犯罪者が不可解な死を遂げていく事件が相次ぐ中、インターネット上ではその犯人を「キラ」と呼び、称賛しはじめる。犯罪の数が激減する中、警察は犯人の手掛かりさえつかめないでいた。そこへ、これまであらゆる難事件を解決してきた謎の名探偵L(エル)が事件を解決すべく、捜査を開始する。 【歌唱披露】
これまでにも映画化、ドラマ化されてきた『デスノート』。ミュージカル版の魅力はなんと言っても音楽!歌! フランク・ワイルドホーン氏(作曲)、ジェイソン・ハウランド氏(音楽監督)が手掛けた疾走感のある力強い音楽が物語をけん引します。まずは音楽の魅力の詰まったショウケースが披露されました。
♪正義はどこに
そこは高校の教室、講師(川口竜也さん)が生徒たちに法と正義を説いている。その言葉に異を唱える一人の生徒、彼こそが物語の主人公・夜神月(やがみライト)。
優等生然としたライトを真っ直ぐな歌声で表現する甲斐翔真さん
正義の名のもとに行われる大人たちのご都合主義に嫌悪感を抱くライト
講師役川口さんの歌声の説得力!
はじめは訝しげにライトを見ていた生徒たちも徐々に感化され
鬱屈していたエネルギーが表出し、ひと所へ向けられる。そのスピード感や集団となったときの恐ろしいまでの力が音楽で表現されます。
それを体感させるのは生徒たちを演じるアンサンブルのみなさん。その声のパワーにゾクゾク!そして、その火を付けるライトの恐ろしいまでの力、カリスマ性はこのときすでにその片鱗をのぞかせているのです。
♪死のゲーム
初めてライトとエルが対峙するシーンで歌われる、探り合いバチバチのナンバーです。この日はスペシャルバージョン、ダブルライトvsエルの対決です。
まず登場したのはライト役の村井良大さん。
ライト役の村井良大さん
こちらはエル役の髙橋颯さん
巧みな心理戦の始まり。トリッキーなメロディラインに油断ならない緊張感が表れているナンバー。ライトの村井さんの落ち着きとエルの髙橋さんの曲者感のコントラストが鮮やか!
甲斐ライト登場!
崩れないライトと仕掛けていくエル、こうして二人の頭脳戦が始まるのです。
こちらはキラ信者の弥海砂役の吉柳咲良さん
真っ直ぐな思いを歌い上げる伸びやかな歌声ながら、どことなく不安定な心理も表現するメロディを美しく、切なく歌います。
♪愚かな愛
続いては死神レムが歌う慈愛の歌。自らの命に代えて人間を助ける決意を歌い上げるのはレムを演じるパク・ヘナさん。彼女は韓国版『デスノート THE MUSICAL』初演・再演でレム役を演じ、今回、日本版でも同役を演じます。
この公演のために日本語を学んだパク・ヘナさん。言葉がどうとか……そんなレベルではありませんでした。新キャストでありながら経験者でもあるためレム役の掘り下げは深く、力強さと優しさ、悲しみがミックスした複雑な感情を歌に乗せてしっかりと届けてくれます。劇場でこの歌声が響き渡ると思うと、今からもうそれだけでワクワクします。
しかしまぁ、愛を歌い上げる作品を代表する壮大で美しいナンバー、それを歌うのが死神というのも皮肉な話です。
♪ゲームのはじまり
こちらは世界的名探偵・エルのナンバー。犯罪者を裁くキラの手法を否定し、必ず見つけ出すことを誓う。データ戦、頭脳戦のはじまり、キラへの宣戦布告!
この日はピアノに合わせての歌唱でしたが、初演・再演時にはこのナンバーの電子音も印象的でした。髙橋さんのやや硬質な張りのある歌声と合わさったとき、どのようなエルの世界が浮かび上がるのか楽しみです。
♪正義はどこに(リプライズ)
一幕ラストのビッグナンバーの登場です。「彼こそ正義」とキラに熱狂する人々、ライトは自らの正義に目覚め、貫くために動きだす。「正義」を権力者の都合でいいように使われる絵空事だと否定していたライトが「我こそ正義」「新世界の神」という言葉を発する。その恐ろしさが村井ライトの表情にもありありと表れています。慎重だった♪死のゲームのときと目つきが違う!!
(村井さんの印象はやっぱり「きみはいい人~」が強かったりするのですが……、当たり前ですが180度違う!) ライトという一人の人間の恐ろしさとともに、自らは手を下すことなく彼を祭り上げる群衆たちの存在も恐ろしいのです。
ライトの正義が行き着く先は──。
♪秘密のメッセージ よりほんの少し
夜神粧裕役の西田ひらりさん
透明感のある歌声、もっと聴きたい!!
こうしてデスノートの音楽とともに駆け抜けた15分はあっという間!!音楽が時代や心理、キャラクターを巧みに表現していることを改めて実感する歌唱披露でした。
歌唱披露はライトとエルを中心に行われましたが、本作にはほかにも魅力的な登場人物がたくさんいます。ライトの父であり警視総監としてキラ事件の指揮を執る夜神総一郎(今井清隆さん)、物語の発端となる“デスノート”を人間界に落とした・死神リューク(横田栄司さん)らとライト、エルの関係というのも大きな見どころです。捜査班の刑事たち一人ひとりにもドラマがある!
【歌唱披露オフィシャルダイジェスト映像】
VIDEO
レポラストにはフル映像も♪ 【囲み取材】
歌唱披露の緊張から解き放たれ、和気あいあいとした稽古場の雰囲気伝わる囲み取材
──大ヒット作『デスノート THE MUSICAL』の新キャストとしてプレッシャーは。 髙橋) 僕が演じるエルはミュージカル版初演・再演は小池徹平さんが演じられ、映画版などでも数々の名優と呼ばれる先輩方が演じてきた役です。そこにはとてつもないプレッシャーがあるのですが、演出の栗山さんのもと、頼れる先輩の村井さんを筆頭に素敵なスタッフ、共演者のみなさんと楽しく稽古しています!
村井) みなさまの期待を裏切らない出来にしなければいけないとの強い思いのもと稽古しています。今日もみなさんの「新生『デスノート』はどんなものかな」という期待のエネルギーを感じました。それに負けないように、2020年版、我々の『デスノート』の完成度を高めて行こうと思います。
甲斐) 一流のクリエイターが手掛けた世界的に知られているこの作品の真ん中に立たせていただくということは初ミュージカルとか、新人とか抜きにして200%、300%でやらなくてはもったいない作品。死にそうになるくらい、その緊迫感が伝わるくらいやりたいと思っています。
──作品の魅力は。 村井) 改めて思うのはミュージカルも何度も再演され、ほかにも映画やドラマなどいろんな形で作品になっているのは『デスノート』が持つ世界観の強さゆえだということ。メディアを変えて作られるたびに新鮮で、また何度見ても新たな発見があり考えさせられる。この作品のなかで描かれるいろんな人の思いを感じていただきたいと思います。
髙橋) いろんな人に刺さるものがある作品です。そして世界中で起こっている様々なこと、それについて考えるきっかけになると思っています。♪正義はどこに の教室のシーンのようにリアルに高校生たちの中には胸の内に秘めた怒りや不満が渦巻いている。そんな風に現代社会を描いているんです。それを僕らも考えながら、この作品と向き合っていきたいと思います。
甲斐) 僕は稽古が始まって、新聞を読むようになったんです。栗山さんは「演劇はその時代を投射するところに意味がある」とおっしゃいます。だからこそ演じる上でも日本や世界で起こっていることを知りたいと思うのです。
質問への答えの合間には、互いの印象・キャラクターをクールちゃん(甲斐さん)、真面目ちゃん(村井さん)、不思議ちゃん(髙橋さん)と定義したり、裸足で演じるシーンの多いエル役の髙橋さんのために村井さんがスリッパを差し入れたエピソードなど笑いも満載!また、歌唱披露の出番を終えていた甲斐さんがお客さん目線で「パク・ヘナさんの歌が凄すぎで鳥肌が立った!」のコメントには大きくうなずく取材班でした。
作品が長く続くためにとオール新キャストで挑むニュージェネレーションで挑む『デスノート THE MUSICAL』!2020年1月、その歴史に新たな1ページが加わります。東京公演は1月20日~2月9日まで東京建物Brillia HALLにて。その後、静岡・大阪・福岡公演あり。
【歌唱披露オフィシャルフル映像】
VIDEO
一部オフィシャル写真提供
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人