この雨は私を断罪する冷たい針か、それとも慈悲の雫か── 2018年に韓国・大邱国際ミュージカルフェスティバルにて「創作ミュージカル賞」を受賞した話題作『BLUE RAIN』の日本上演が決定しました。
物語はドストエフスキーの名作『カラマーゾフの兄弟』をベースに、舞台を1990年後半のアメリカ西部に移し変えたもの。ひとつの殺人事件の真相を追ううちに、ある家族――父と息子たち、兄と弟の憎しみと深い因縁を暴き出し、さらに一家を超え人間といういきものの根源的な業を描き出していく、サスペンフルでありながら文学的な叙情性を持つミュージカルです。
作家は日本でも『SMOKE』がスマッシュヒットしたチュ・ジョンファ(作演出)&ホ・スヒョン(音楽)の夫婦コンビ。チュ・ジョンファの人の業に鋭く切り込むパッション溢れる脚本・演出と、ホ・スヒョンの美しく煽情的なメロディが溶け合う独特の世界観は韓国でも大人気で、熱狂的なファンを数多く生み出しています。
日本版演出は美しく繊細な演出で知られる名匠・荻田浩一が手掛け、ここに吉野圭吾、水夏希、佐賀龍彦(LE VELVETS)・東山光明、木内健人、池田有希子、今井清隆という実力派キャストが集いました。チュ・ジョンファ作品の特徴のひとつでもある大胆な“感情の曝け出し”と、耽美かつ切ない荻田ワールドがどう交錯するか。それを実力派キャスト陣がどう魅せていくのか。どうぞご期待ください。
STORY
──俺を殺したのは、誰だ。
1997年、ユタ。強欲な富豪、ジョン・ルキペールが殺害された。犯人と目されたのは、父と反発し12年間家に戻っていなかった長男、テオ。弁護士となった次男のルークはこの事件の真相を追ううちに、殺害現場から大金が消えていたこと、兄テオの恋人・ヘイドンがジョンの愛人になっていたことなど、兄に不利な証拠ばかり見つけてしまう。現場で倒れていたルキペール家の家政婦・エマはテオをかばうも、新しく入ったばかりの使用人・サイラスらの証言も、テオが犯人であることを示しているようだ。この事件の真相は……そして次第に浮かび上がる、家族の相克。彼らが抱える憎しみの行方は……。
【佐賀龍彦さん(LE VELVETS)インタビュー】
富豪のジョン・ルキペール氏の死から始まる本作で、 ジョンの次男ルークを演じる佐賀龍彦さんにお話を伺いました。
(ルーク役はダブルキャストです)──作品の第一印象からお聞かせください。 日本語訳された台本を片手に本作の韓国公演の映像を拝見しましたが、まず感じたことは日本でも多くの方の心に強く刺さる作品になるだろうということです。様々な要素を内包しているとても面白くよくできた作品だと思いました。そしてそれらすべてが“BLUE RAIN”という象徴的なものに置き換えらえていくのです。
──長編小説を 1 幕ものの作品にということに「いったいどうなるのか?」と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、舞台作品として魅力的なものになっているようですね。 キャラクターの描かれ方、その深さに原作の力と劇作家の力の両方を感じます。台本も普通に読み物としても面白いんです!
──本作で佐賀さんが演じるのは、ルキペール家の次男ルーク。 ルークは弁護士です。私事ですが、うちは法曹一家なんです。祖父母宅へ遊びに行くと六法全書や判例時報などが並んでいて、食卓で親戚が法律の話をしている風景が幼少期の記憶として残っているので“弁護士”に対しては自分なりのイメージがあるんです。
とはいえこの作品の舞台はアメリカ、また特殊な家庭環境で育ったなど、ルークをどう表現するかは難しいところでもあります。弁護士でありながらどう生きる人なのか......、そこは稽古でしっかりと突き詰めていきたいと思います。
──ルークには異母兄のテオがいます。 父親からひどい折檻を受けていた兄弟はともに父という存在から離れたかった。長男は家を出る、物理的に父の元を離れる道を選び、僕が演じる弟はひたすら勉強し弁護士になることで父親から離れていくという道を選んだ。それぞれ母親が違うこともその関係性やキ ャラクターに影響していて、読めば読むほど奥深さを感じる人物描写です。それはルークのみならず、すべての登場人物について言えることです。長男テオの考え、生き方、彼の中でうごめいている思いも痛いほど伝わってきますし、父ジョンもそう。さらに人間関係の描写もその瞬間ごとに非常にリアルなんです。僕が今感じているこの“リアル”や“ドキドキ感”を、 荻田さんをはじめとする素晴らしいスタッフ、共演者のみなさんとともに膨らませ、お客様に伝える。それを僕自身も楽しみにしています。
──音楽の印象はいかがですか。 狙ってキャッチーな曲を作るのではなく、芝居に沿った音の作り方、和音の作り方をしているという印象を受けました。その中で、すこし違う印象を受けたのがテオの恋人で歌手の ヘイデンが歌うタイトル曲「BLUE RAIN」。この曲はとてもキャッチーです。だからこそ、それが耳に、頭に残るような。
──作品を貫く“BLUE RAIN”、先ほどの作品・物語の印象と見事にマッチしていますね。 そうなんです!つまり物語と音楽がしっかりと融合しているんです。実は、最初にミステリーのミュージカルと聞いたときは、いったいどんなタッチの音楽なのか懐疑的なところもありました。もちろんそれはすぐに覆されるのですが(笑)。たとえば恋愛もので「好きだ」という思いを歌に乗せるというのはイメージしやすいのですが、ミステリーで「あいつが疑わしい」というところを歌にすることで、それがどう人の心に刺さるのだろうかと。でも本作では、芝居の中で自然に音楽になり歌う。物語の起伏を大きくするための音楽がとても効果的で、その点からもよくできたミュージカル作品だと感じています。
──韓国での公演が人気を博したことも納得ですね。1 幕ものに凝縮された怒涛の展開を楽しみつつ、それだけでなくしっかりと持ち帰るものもある作品と評判です。 確かに怒涛の展開です(笑)。ただその中にある台詞の一つひとつが深くて、人とはどういうものなのか。それも長男テオが思う「人とは」、次男ルークが思う「人とは、そして神とは」、それぞれの登場人物たちの考えを知ることで、見ている人それぞれが考えをを巡らせるような作品でもあります。
──そこは古典の力でもありますね。こうして佐賀さんのお話を伺っていると、作品への興味がますます大きくなってきます!ちなみに韓国創作ミュージカルといえば、昨年、ミュー ジカル『最終陳述』にもご出演されています。 はい。『最終陳述』ではじめて韓国創作(小劇場)ミュージカルに出演しましたが、これ からの日本でもっと盛んになってほしいスタイル、ジャンルだと思いました。韓国ならではのオリジナルの作品がたくさん生まれては淘汰されていく、そして力のあるものが残っていく。そんなシステムが韓国にはあり、そこには国を挙げて支援しているという話も耳にしています。日本でも、いきなり国まで動かすのは大変なことですが、こうして作品を通じた交流を続けていくことで生まれ、育まれていくものがあるのではないかと思っています。こうして、韓国の力のある作品を自分の身をもって体験する機会に恵まれていることはありがたいことですし、とても勉強になります。
──では最後に、佐賀さんご自身のことを。お誕生日を迎えられ......。 39 歳になりました!
──30 代ラストイヤー、2020 年に取り組みたいことは。 いつも思っていることですが、今やれることをやりきる!その積み重ねが将来につながると信じています。僕は LE VELVETS の一員、このグループをいかに前進させていけるか ということを考えながら自分も成長していきたいと思います。
──昨年はミュージカルアルバム「WORLD MUSICAL」のリリース、同タイトルのコンサ ートツアーも行われました。 こうしてメンバーのみんながミュージカルに出ていることで、個々の表現力の幅や思いの強さが増しています。グループを離れ一人で舞台に立ち、いつもとは違うエネルギーを使うことでさらに個がパワーアップし、そんな 4 人がグループに戻ったときには以前より大きな推進力になる。それを昨秋のツアーで感じました。ここからも、もっともっと前に進んでいきたいと思っています。
【BLUE RAIN、雨はお好き?】 雨にネガティブなイメージはないです。好きなんですよ、雨。多少の降りなら傘もささずに濡れていたいくらい(笑)。
──佐賀さん、素敵なお話をありがとうございました。
★アフタートークショー開催★
【東京公演】
7月7日14時 MC木内健人 水夏希・東山光明
7月9日19時 MC水夏希 吉野圭吾・今井清隆
【大阪公演】
7月22日14時 MC池田有希子 吉野圭吾・水夏希・東山光明・木内健人・今井清隆
※アフタートークは本編終了後に、その回のチケットをお持ちのお客様が対象となります。トークショーは終演後にお席でそのままお楽しみいただけます。
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました
佐賀さんインタビュー(おけぴ取材班:chiaki)