ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(METメト)の世界最高峰の最新オペラ公演を大スクリーンで楽しむMETライブビューイング。今シーズン第5作目となる
ベルク《ヴォツェック》新演出が2月28日(金)~3月5日(木)まで1 週間限定で全国公開となります。
(c)Paola Kudacki/Metropolitan Opera
貧国に喘ぎながら内縁の妻と子供を養う兵士にしのびよる人生の魔の手!人生の不条理、社会の歪みを描いたベルクの大傑作《ヴォツェック》を
ビジュアル・アート界巨匠ウィリアム・ケントリッジ氏の演出でお届けいたします! ケントリッジ氏は、
「動くドローイング」と呼ばれるアニメーション・フィルムで国際的な名声を確立した現代を代表する美術アーティスト。METではショスタコーヴィチ《鼻》、ベルク《ルル》に続き、本作が3作目のオペラ演出となります。 昨年2019年に世界文化賞の絵画部門を受賞した、ケントリッジ氏のインタビューをまじえ、彼が手掛けるオペラとアートの魅力をお伝え致します。
【ウィリアム・ケントリッジ 世界文化賞記念インタビューより】
──高松宮殿下記念世界文化賞の絵画部門を受賞されて。「これまで 30 年間にわたって素晴らしい芸術家の方々が同じ、世界文化賞を受賞されて きたことを思うと、本当に嬉しい気持ちで一杯です。18 歳の時の私に、こんな賞をもらえるといったら、どれだけワクワクしたでしょう。」
──普段、アトリエでどのような仕事をされているか。 「世界中から写真、新聞の切り抜き、Eメールやハガキなどをアトリエに集めることから始まります。バラバラに分断されたものから、イメージを一つのものにリアレンジし、それを木炭のドローイングなど、色々なカタチで世界に発信します。このとき重要なのは、その意味を受け取るだけではなく、 それを我々が構成し作り上げることです。暫定的に作ったものに、不確実さや疑念が入ることもあります。このようなアトリエでの制作活動は、我々が世界を理解する方法でもあると思います。」
(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
──木炭のドローイングでアニメーションを制作する発想のきっかけは? 「木炭でのドローイングという方法自体が私の作品のテーマを表しています。木炭は通常のインクと違って簡単に消したり、ブラッシングして状態を変えることができます。考え方を変えるのと同じ様に、 絵も変えることができます。“絵を描いては消す”というプロセスを繰り返し、それを撮影しながら、そこから物語のあるフィルムが作れることに気づきました。絵の制作のプロセス、移り行く姿、消した絵の一部を残し、さらにそこに付け加えるなど、 変わっていく過程をフィルムに撮ることで、記憶や 忘却、過ぎ去る時間を作品に示したいと思っていま す。アトリエで作業する時には、自分がどういうことに実は関心があるのか、自分が本当はどういう人間なのかと考えながら作業しています。」
──オペラや舞台美術に取り組んでいるが、一つの活動に留まらないのは なぜ ? 「舞台で行う芸術には、学生時代から関わってきました。色々な新しい発想が――演劇から絵画、絵画から新しい劇の形式へと――どんどん発展することをその時分かりました。ただ、私にとっては結局、全てがドローイングに結び付くのです。それが一次元、二次元だったり、 「動く」ドローイングですと三次元となります。ステージで行う私の作品は、プロジェクションとして、まず二次元があって、時間があり、さらに劇場の奥行きがあってそれだけでも四次元になるのです。」
(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
──オペラやクラシックなどのテーマに、何かこだわりはあるのか? 「私にとって大事にしているテーマは、オペラや台本以外の部分でも興味をもたらすことです。そしてオペラのテーマを、インクや木炭などを使って舞台に反映させられることです。」
──メトロポリタン・オペラで《ヴォツェック》を演出されますが、選定された理由は?「まず一つに私は招かれる側ですので、自分で作品を決めることはできません。(笑) 《ルル》や《ヴォツェック》に関しては、音楽に非常に心を動かされました。ストーリーの部分では、《ルル》は刹那的な欲望を不思議な形で肯定しているところ、《ヴォツェック》は失望や落胆、虚しさを描いているところに関心を持ちました。実際の舞台は100年以上前のドイツやオーストリアのことを描いておりますが、それを南アフリカに置き換えて考えるのも非常に容易でした。」
(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
──空間全体で作品を体験することは、どれくらい大切なことなのか? 「作品を見る人に、構想のコンストラクションの中に入り、その一部であると感じてもらいたいです。オペラですと観客は外から見ることになりますが、美術館ですと見に来る人に作品の中に入ってもらう展示も可能です。私としては、観客が作品の中に入ってオペラを体験できるような作品作りが出来るオペラハウスと一緒に仕事がしたいです。」
ウィリアム・ケントリッジ/ William Kentridge プロフィール 1955 年、南アフリカ・ヨハネスブルグ生まれ。木炭による素描をコマ撮りした「動くドローイング」と呼ばれる独自のアニメーションに、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)の歴史や社会状況を反映させ、1990年代から世界的な注目を集めてきた。「動くドローイング」は、木炭画を部分的に消しては描き加えていくという変化を一コマごとに撮影してつなげた動画。代表作の一つ『流浪のフェリックス』(1994)では、南アフリカの風景に溶けて見えなくなった陰鬱な歴史の痛みを見事に表出させた。独裁や植民地主義に反対し、その病理に迫ろうとする知的探求が作品群の底流をなす。最近は、第一次世界大戦に動員されたアフリカ兵の戦争参加を題材にした脱領域的な総合芸術などで高評価を得ている。得意のドローイングを駆使した舞台でオペラ界に新風を吹き込んでいる。
♪METライブビューイング♪ 世界屈指のオペラハウス、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(通称 MET=メト)の最新オペラ公演をライブ撮影し、映画館で上映する オペラ・エンターテインメント。ダイナミックな音響と高精細な映像に 加え、生の劇場でも観られない舞台裏や歌手へのインタビューも収録し、世界73か国 2200 か所以上の映画館で上映されています。日本では現地 MET上演のわずか数週後に、日本語字幕をつけて上映。
(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
“第一次世界大戦を予感させる時代設定に。
音楽で表される世界の大変革や爆発を舞台でも描きます”(本編のインタビューより)妻に裏切られ、上官に虐げられる兵士の悲哀!
人生の不条理をえぐり、深い感動を与える傑作オペラ! METライブビューイング2019-20
ベルク《ヴォツェック》新演出 2019 年 2 月 28 日(金)~3 月 5 日(木)
東劇・新宿ピカデリーほか全国公開
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:ウィリアム・ケントリッジ
出演:ペーター・マッテイ、エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー ほか
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この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました