現在、新国立劇場・中劇場にて上演されているシェイクスピア作『リチャード二世』。2009年10月に開幕した『ヘンリー六世』から続く、新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズの最終作であり、そこで描かれるのはその後に続く争いの発端となった出来事。
その『リチャード二世』公演終了後となる10月27日から、特別イベントとしてシリーズ最初の作品
『ヘンリー六世』三部作と、それに続く
『リチャード三世』の映像上映会が開催されます。
浦井健治さん 中嶋朋子さん
『ヘンリー六世』撮影:谷古宇正彦
この歴史劇シリーズが上演されてきた新国立劇場・中劇場、まさに歴史が息づいているその場所で見る過去作品。劇場に宿る力を感じながら、ともに歴史を振り返るようなスペシャルな時間になりそうです!
というのも、「シリーズ」と銘打つ一連の作品、『ヘンリー六世』三部作、『リチャード三世』、『ヘンリー四世』二部作、『ヘンリー五世』は演出の鵜山仁さんをはじめとするスタッフ、そして主要キャスト、同じメンバーで上演されてきたのです。これは、日本はもとより世界的にも稀なことで、演劇史としても大変貴重な試みなのです。
中でも今回上映される2作は、いろんな意味で超おすすめ!
【『ヘンリー六世』三部作】
『ヘンリー六世』三部作はシリーズ化への起爆剤になった作品。三部作を同公演期間に上演する、一挙上演となるとその上演時間はトータル9時間にも及ぶ。発表された時は、二度見、三度見してしまうほどの衝撃でしたが、チケットは通し上演から売れていったという事実からもお分かりの通り、物語の大きなうねりの中に身を置く──観劇を体験として記憶することを選択した多くの観客が支持し熱狂したのです。この上映会は、もはや「伝説」になった、この『ヘンリー六世』三部作を追体験するチャンス到来なのです!
中嶋朋子さん 渡辺徹さん
『ヘンリー六世』撮影:谷古宇正彦
─浦井さんのコメントをご紹介―
『ヘンリー六世』の三部通し上演のとき、カーテンコールで舞台上から客席に向かってみんなで拍手しました。お客様も本当にすばらしかったので。それに対して、お客様同士も互いにいっぱい拍手をしてくださって。
(中略)
ある種、フェスティバルです!一日がかりになるでしょうし、もしかしたら完全に肉体疲労が回復するには二日、三日かかるかもしれません(笑)。でも、その心地よい疲労、満たされた気持ち、その感覚は経験として、みなさんの中にずっと残るものです。シェイクスピアのメッセージとともに、そんな幸せな感覚も一緒に共有できることを僕自身すごく楽しみにしています。(
新国立劇場『ヘンリー四世』浦井健治さんロングインタビューより)
◆【『リチャード三世』】
そして、『ヘンリー六世』に続くのが、シェイクスピア作品の中でも高い人気を誇る『リチャード三世』です。上演当時の芸術監督・宮田慶子さんの言葉を借りると、個性的で、屈折した野心の持ち主で、人間の弱さとしたたかさを併せ持った非常に魅力的な人物……そんなリチャードを前作に引き続き岡本健一さんが、同じく夫ヘンリー六世を亡くしたマーガレットを中嶋朋子さんが演じ、浦井健治さんはキーパーソンのリッチモンド、後の……というシビレル配役!
左より)倉野章子さん 中嶋朋子さん 那須佐代子さん
『リチャード三世』撮影:谷古宇正彦
左より)津村雅之さん 浦井健治さん 浦野真介さん 勝部演之さん 立川三貴さん 関戸将志さん
『リチャード三世』撮影:谷古宇正彦
─岡本健一さんのコメントをご紹介─
グロスター公リチャードは生まれながらにして五体が満足でなく、道を歩けば犬に吠えられ、周りからは罵倒されながら育った人間。ものすごくコンプレックスを抱えた子供時代。そんな彼が上り詰めていったのは、父親の愛が大きく、それが彼を強くしたと思います。そして、父上のため、兄上のために命を削り、最後に兄に王冠を被らせました。その9時間上演の最後、僕は王冠を被りたくて被りたくてしょうがなかったのです。そして、遂に被るのです。
(中略)
若き日のリチャードは剣で、力でのし上がり、今回は剣を言葉に代えて王に上り詰めていきます。シェイクスピアの台本を読んでいると言葉の重要性、力、言葉によって人がどれだけ簡単に動かされるかをすごく感じました。そして『ヘンリー六世』では、若さで王に向かっていく勢いがあったリチャードが、今度は死に向かっていくんですよね。(
新国立劇場『リチャード三世』制作発表レポより)
─中嶋朋子さんのコメント─
このリチャードという男がすごいんです(笑)。不器用だけど巧み、技を感じさせる人物です。今しゃべっていた健ちゃん(岡本さん)も、リチャードきてるなと(笑)。本当に言葉巧みで、その音色が素晴らしいのです。
マーガレットとリチャード、もし憎しみ合う立場でなかったなら最も似ていて、分かり合える存在だったなと。前回9時間の芝居の間、そう思いながら戦い続けてきました。(
新国立劇場『リチャード三世』制作発表レポより)
最後に、同じく『リチャード三世』制作発表での鵜山さんのコメントを。
─鵜山仁さん(演出)のコメント─
シェイクスピアが400年以上前にこんなものを書いてくれたおかげで、またこの劇場で気心の知れたメンバーと一緒に、大嵐の中で格闘するという経験が出来ることをひたすら楽しみにしています。3年前にした得難い経験、自ずとその経験の蓄積がわれわれを支えてくれると信じています。
そして、このお三方には歴史があるっていうか、背後霊のようなものがついているんですよ、すでに(笑)。岡本さんはすでにグロスター公リチャード、グロってるし、マーガレットは中嶋さんの(色々と)背負っている感じがぴったり。浦井君はヘンリーの片鱗をきらめかせながら出てくるわけだし。不思議なものですね。(
新国立劇場『リチャード三世』制作発表レポより)
新国立劇場『リチャード三世』制作発表レポより
新国立劇場『リチャード三世』稽古場レポより
『ヘンリー四世』浦井健治さんロングインタビューより
◆ 足掛け12年、ついに完結したシェイクスピア歴史劇シリーズ。11年前に出会ったみなさんも、今年出会ったみなさんも、そのスタートとなった『ヘンリー六世』、それに続く、薔薇戦争の終結となる『リチャード三世』の上映会で、シリーズの完結を祝いましょう!
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舞台写真提供:新国立劇場
おけぴ取材班:chiaki(編集)監修:おけぴ管理人