創作スランプに陥った映画監督グイド・コンティーニの心象風景が美しい音楽とともに描かれていくミュージカル『NINE』。白と黒の世界に鮮やかに浮かび上がり、愛を体現する8人の女性たちとグイドが紡ぐものがたりに身をゆだねるひととき。
イタリア映画界の名匠と名高いフェデリコ・フェリーニの自伝的作品「8 1/2(はっかにぶんのいち)」を原作に、アーサー・コピット(脚本)、モーリー・イェストン(作詞/作曲)といったブロードウェイの巨匠たちにより生み出されたミュージカル『ナイン』。そのタイトルの意味は……。切り取る角度によって多様な色を見せる、見る人ごとの景色のある『ナイン』が開幕です!演出は藤田俊太郎さんです。
舞台装置は映画撮影所のような、無機質な空間。
何もないところにドラマを作り出す創作の苦悩、そこはまるでグイドの頭の中のような印象を受けました。そして骨組みだけの装置、それを動かすのがDAZZLEのみなさんです。硬質なパイプとしなやかな人間の身体、無機と有機、連続と不連続……。現実と虚構が交錯する幻想的な舞台に迷い込んだかのような観劇体験でした。
性愛と情愛、グイドが求めた愛とは。
少年時代のグイド(熊谷俊輝さん・トリプルキャスト)、グイド(城田優さん)
グイドを取り巻く女性たち、その真ん中でカサノヴァにも幼子にも見える城田優さん。ものがたりを背負っているようでも、そこにもたれかかっているようにも見える。迷う人間の危うさを巧みに見せます。そして、繊細な表現から枢機卿や二幕のクラシカルな発声も自在に変化させる歌唱の幅は圧巻。これまで聞いたことの内容な声にドキッとします。
年齢もキャラクターもさまざまながら、皆それぞれに肝の据わった女性たちと、城田さんが演じる繊細なグイドとの対比も印象的です。
グイドが妻ルイザ(咲妃みゆさん)とともに訪れたベネチアのスパのマリア(原田薫さん)
原田さんが作り出すマリアとものがたりとの距離感が絶妙。手の動きひとつからドラマが生まれる!
グイドとの結婚生活に不満を募らせ、ついにその関係を終わらせようとするルイザ
ルイザのいら立ちと愛……複雑な心境を丁寧に演じます。
愛人のカルラ(土井ケイトさん)が滞在先にまでやってきて……
電話のシーンからラストまで、辿るドラマは一番落差が大きい女性がカルラ、ドラマティック。
評論家のネクロフォラス(エリアンナさん)
映画プロデューサーのラ・フルール(前田美波里さん)
業界人の華やかさと冷酷さを見せつける評論家のネクロフォラスとプロデューサーラ・フルール。前田美波里さんの幻想的なレビューシーンは思わず息を飲む迫力と美しさ!劇場空間を支配します!
娼婦サラギーナ(屋比久知奈さん)
本作で強烈な印象を残したのはこの方です。健気なキャラクターを懸命に生きる“みんなの屋比久ちゃん”はそこにはいません。しなやかな肉体と誘うまなざし……そこにいるのは娼婦サラギーナ。
グイドのミューズ・女優のクラウディア(すみれさん)が見せる強い意志
すみれさんの美しさ、まさに映画のワンシーンのような絵になる二人です。ラストの近況を語るシーンの穏やかさが印象的。
ものがたりのカギを握るともいえるのがグイドの母(春野寿美礼さん)
グイドにとって「母」というほかの女性たちとは異次元の存在、春野さんの歌声に浄化されました。柔らかな歌声と裏腹に聖職者になることを強く強く望み続けた母。
イタリア、愛……ラテンのものがたりを生々しさより、どこか映画的な引きの演出で見せる藤田さんの手腕。芸術的で大人な舞台です。
愛と才能、同じくコピット×イェストン作品(城田優さん演出・主演)で上演された『ファントム』の印象と重ね、対比させる面白さもある「愛」の物語。ミュージカル『ナイン』は11月29日までTBS赤坂ACTシアターにて、12月5日~13日は梅田芸術劇場メインホールにて上演。
DVD発売&ライブ配信決定!
公演映像ディスク2枚&特典ディスク1枚の豪華3枚組DVD(舞台写真をふんだんに盛り込んだ豪華ブックレット付)の発売が発表されました。12月13日までのお申し込みで先行特典もつきます!詳細は
こちらをご確認ください。
11月22日17時、23日13時公演はライブ配信が実施されます。映像ならではのアングルで、お好きな場所でリアルタイム観劇!詳細は
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おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人