前編から続く ここからは二人のMAを取り巻く人々、作品と彩る登場人物たちをご紹介いたします。
まずはこの方、王政側にいながら民衆の国王一家への憎しみを焚きつける黒幕オルレアン公。
上原理生さん
小野田龍之介さん
ともに初役となる上原理生さんと小野田龍之介さんが演じるオルレアン公。王位を虎視眈々と狙い、深みのある声で悪の色香漂わせる上原オルレアン、刺すようなシャープさで権力への執着を歌声に乗せる小野田オルレアン。タイプの異なる歌ウマなお二人が歌うオルレアンのロックナンバー♪私こそがふさわしい、♪世間を支配しろ はひと言で言うとそりゃもうカッコいいんです! でも、それは危険! 思わず観客も扇動される民衆の一人になってしまいます。歌声のカリスマ性でコトを進める両オルレアンにはご用心!
自らに陶酔
後ろ姿も素敵
原田優一さん
内向的な国王ルイ16世は原田優一さん。柔らかな表情で歌う ♪もしも鍛冶屋なら では豊かな歌声が劇場内に響き渡ります。♪明日は幸せ(リプライズ) で見せる家族の肖像は切なく映り、そんな大切な家族を守るためでも「自国民への発砲はしない」という確固たる意志を示す終盤。国王として生きた彼の人生にも思いを寄せたくなります。
駒田一さん、彩吹真央さん
マリー・アントワネットが大のお得意様だったヘアドレッサーのレオナール、衣裳デザイナーのローズ・ベルタンは駒田一さんと彩吹真央さん。贅を尽くした生活から逃亡の日々まで、時代やマリーの人生を象徴する存在です。二人のシーンはコメディリリーフ的な、お楽しみでもありますが、時代を生き抜くたくましさを体現するお二人が要所要所で存在感をしっかりと示すことで、時流の変化や王族と民衆の対立構造がより鮮明に浮かび上がる。決して本筋から飛躍しすぎない、肝なシーンになっています。
彩乃かなみさん
♪神は愛してくださる で慈愛の歌声を響かせるのは彩乃かなみさん演じるランバル公爵夫人。常にマリーとその一家に寄り添い、無事を祈り続けた女性の強さとおおらかさが光ります。
そして、マルグリットを革命派の活動に誘うのが詩人のジャック・エベール。上山竜治さんと川口竜也さんのWキャストです
上山竜治さん
川口竜也さん
言葉で人を動かすエベール。川口さんはマルグリットを陰で操り自らは策士に徹して用意周到に仕掛けていく印象、対して上山さんはより積極的に関わりとりわけ序盤はマルグリットとニコイチ感が強い。ただし、これは川口さんとソニンさん、上山さんと昆さんという組み合わせで見た印象ですので、組み合わせが変わるとパワーバランスが変わる面白さがあるでしょう。
怒れる民衆たちはやがて暴徒と化して宮廷へ押し寄せる。いつの間にかマルグリットはその急先鋒に。自らの意思で、自らの正義のもとにこぶしを振り上げたマルグリットですが、次第に周囲に違和感を覚えはじめるのです。
贅の限りを尽くした衣裳を身にまとった天真爛漫な王妃マリーは、すべてを失いすべてを受け入れ断頭台へ、時を同じくして、正義とは──自らに問いかけるマルグリット。
MAたちの運命の交錯をドラマティックな音楽で綴るミュージカル『マリー・アントワネット』、分断、正義の暴徒といった現代だからこそ響くテーマも内包する骨太な作品です! ラストは18世紀のフランス激動の時代を生きた人々が揃って客席を向き歌います。観客は逃げ場なし、歴史から投げかけられる問いの重さと舞台の高揚感のギャップ。それもまたミュージカルの醍醐味かもしれませんね。
国王一家を追う民衆の怖さ
速報レポもご覧ください前編はこちら
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人