浅丘ルリ子さんと上川隆也さんの舞台初共演でも話題!
ポール・ニューマン、ジェラルディン・ペイジ出演の映画版(1962年)も
有名な『渇いた太陽』の公開ゲネプロと囲み会見をレポートいたします。
『ガラスの動物園』、『欲望という名の電車』などアメリカを代表する劇作家
テネシー・ウィリアムズが1959年に書き下ろした、
人間の業と欲とプライドのぶつかり合いの物語。
大女優アレクサンドラ(浅丘ルリ子)は年齢とともに翳る美しさに絶望し、
映画界にも嫌気がさし失踪。
そんな中、ビーチボーイをしていたチャンス(上川隆也)と出会い、
彼を付き人にする。
滞在先のホテルでの二人の濃密なやりとりが繰り広げられる序盤、
何と一幕はほぼ二人だけのシーン(台本にして55ページ)なのです!
上川さん演じるチャンスは上昇志向の強い青年、
ハリウッドで名声を得るためにアレクサンドラを利用しようと画策中。
ぎらぎらした男です!
二人が逃避旅行でやってきた南部の町セント・クラウドはチャンスの故郷。
その土地で暮らしていたころの複雑な思いから非常に屈折したチャンスを
生々しく、力強く演じる上川さん。
全編ほぼ出づっぱりなのですが、終盤に差しかかるにつれ
ますますエネルギーが満ち溢れていき・・・そして・・・。
生のエネルギーがダイレクトに伝わる舞台の醍醐味を再認識させてくれます。
大女優アレクサンドラには浅丘ルリ子さん。
女優としての衰えにうろたえる精神の “脆さ” と
それでもプライドは決して失わない “強さ” の混在する芝居は圧巻!
そんなお二人がテネシー・ウィリアムズのセリフを自らの言葉としてぶつけ合う、
それはそれはスリリングで刺激的。気付くと物語の世界にのめり込んでいます。
アレクサンドラとチャンスの人物像と置かれている状況が濃~く描かれた一幕から一転、
二幕になるとチャンスのかつての恋人ヘブンリーをキーパーソンに
ぐんぐんと物語が展開していくのですが、そこで気づかされました。
あの一幕があってこその面白さなのです。
チャンスのカムバック作戦の結末は・・・
という矢先にアレクサンドラの身に起こる思いもよらない出来事!!
果たして二人の運命は。
アメリカ社会が抱える人種差別や貧富の差、権力、集団心理など大きな視点と
家族の問題、男と女の愛、過去の栄光など非常にパーソナルな心理描写が
両輪となって進む二幕。
とりわけ全編を貫く “若さ” というテーマがどどーーんとのしかかる
ラストシーンは忘れられないシーンの一つとなりそうです。
ちなみに、この戯曲の原題は『Sweet Bird of Youth』、観劇後にその言葉の響きに
胸がざわざわするような作品です。
ほかに、町の有力者で家族の中では絶対的なヘブンリーの父親に渡辺哲さん、
ヘブンリーの兄に川久保拓司さん、チャンスの友人に貴城けいさん、
ヘブンリーに内田亜希子さんらがご出演です。
【囲み会見レポート】
ゲネプロに先立って行われた囲み取材から浅丘さん、上川さんと
演出の深作健太さんのコメントをご紹介いたします。
浅丘さん)
もう、立っているのが精いっぱい、
舞台では気力も体力もすべて使い果たすものですから(笑)。
それほどテネシー・ウィリアムズという方は俳優たちが
ぐちゃぐちゃになるようなタフな芝居を書かれるんですよね。
31回の公演、気力も体力も維持してなんとかやっていこうと思います。
(と仰っていましたが、その後のゲネプロは圧巻のパワフルさでございました!)
上川さん)
先入観からテネシー・ウィリアムズ作品に難しさやテーマの重さといった
大きな壁を感じていました。
ですが、今回演じてみて “こんなに楽しい芝居なんだ” と、演じ甲斐とはまたちょっと違う
面白さを感じています。
やればやるほど発見がありますし、回数を重ねるごとに演じる者が受け取っていけるものが
脚本の中に込められているんです。
その中で、浅丘さんをはじめとする共演者のみなさんのお陰で
一瞬たりとも気が抜けない緊張感を楽しんでいます。
演出:深作さん)
1959年初演のこの作品、50年以上経っても言葉の世界が死んでいません。
テネシーが書いたセリフが海を越えた日本で久しぶりに上演されるわけですが、
稽古の中で毎日テネシーのセリフが広がっていくのは幸せで楽しいことでした。
稽古で創り上げたこの作品が、全国を回って帰ってくるまでに
どんな芝居に育っていくのか楽しみでしょうがありません。
時間との戦いを描いた壮絶な作品『渇いた太陽』、
美しく苦い舞台が出来上がっています。ぜひ劇場にお運びください。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人