【レポ後半に舞台写真UP! 】
間もなく開幕するTSミュージカルファンデーションの新作『familia~4月25日誕生の日~』稽古場へお邪魔してまいりました。
セットは白地にブルーの絵柄のポルトガルのアズレージョを彷彿とさせるデザイン
謝珠栄さん率いるTSミュージカルファンデーションの新作は、1970年代にポルトガルで実際に起こった“カーネーション革命”を縦糸に、エヴァという名の女性が自分を捨てた両親を探す旅を横糸に紡ぐ人間ドラマ!
脚本は斎藤栄作さん、ドラマを彩りポルトガルの風を感じさせる音楽は玉麻尚一さんによる書下ろし、演出・振付・作詞はもちろん謝珠栄さんです。
-ものがたり-
1973年、ポルトガル。
独裁政権から続く圧政に苦しむ人々の姿が、親の顔も知らず孤児として生きてきたエヴァの目にはまるで、悲しみを抱えながらも黙って耐える子供達の様に映る。
置き去りにしたままの過去から目を背け生きていくことは、自分も反発を忘れた民衆と同じだと思い、不安な気持ちを奮い立たせ、エヴァは自分を捨てた両親を探す為に首都リスボンへと向かう。
そこで出会った陸軍少佐フェルナンドと革命派に身を投じた幼馴染のアリソン。エヴァと二人の人生が大きく交錯しながら運命の日、1974年4月25日、ポルトガルの革命“リスボンの春(カーネーション革命)”が訪れる・・・。
親の顔も知らず孤児として生きてきたエヴァには大空祐飛さん。
柳下大さん、大空祐飛さん
エヴァは常に孤独の影をまとっているような印象の女性。
大空さんのお芝居からは、その哀しさと同時に自らの業を引き受けようとする芯の強さを感じます。そしてセリフ回しや表情はもちろんですが、佇まいと動きがさらに凛々しく美しい・・・孤高の美しさが切なさを倍増させます。
ダンスシーンもカッコよさと心情描写の両面をお楽しみいただけます!
今回TS初参加のこの方からご紹介いたします。
柳下大さん
革命に身を投じる若者アリソン役の柳下大さんです。
このシーンは“抑圧された現状に疑問を抱き自由や平和を勝ち取るべく立ち上がる”熱い気持ちのこもったナンバーです。アリソンとしての思いがあふれる歌唱に心揺さぶられます!
残念ながらこの日は出番が少なめでしたが確かな存在感、陸軍少佐フェルナンド役の岸祐二さん。
岸祐二さん
そして、陸軍大尉ジルベルトには渡辺大輔さん。
渡辺大輔さん
渡辺さんの実直な声で届けられる台詞は、現政府への怒りと民主主義を勝ち取らんとする熱さと同時に知的で冷静なリーダーの資質を十分に感じさせます。
エヴァとアリソン、そして岸祐二さん演じる陸軍少佐フェルナンドを軸に物語は進みますが、その物語を彩るのはポルトガルの民族歌謡「ファド」のもつどこか懐かしい魅力を取り入れた楽曲たち。
実はこの日、お稽古場ではワンシーンごとにオーケストラの生演奏とお芝居、ミュージカルナンバーの融合作業が行われていました。緻密で妥協のない仕事の結果としてオリジナルミュージカルが誕生するのですね。
なかでも印象的だったのはギターの調べに乗せた情熱的なナンバーです♪
歌の力をこれでもかと感じさせます!!
坂元健児さん、海宝直人さん、吉田朋弘さん
写真左)中山昇さんのハンドクラップもイイ!
坂元さんと海宝さんのハーモニーが素晴らしい。ギターにカスタネット、ハンドクラップも加わり、物悲しくも力強い、曲終わりには稽古場でも掛け声がかかるほどの盛り上がりです。
それぞれの役者さんの歌声の魅力が最大限に発揮される音域でのナンバーというのは書下ろしオリジナルミュージカルならでは!
拝見したのは一部のシーンですが、ほかにも弦楽器の音色が心情に寄り添うBGMなど音楽面でも全編観る日が待ち遠しくなりました。
そして、TSミュージカルで忘れてはならないのがダンス!
青山航士さんと千田真司さんらダンスの名手を中心に群舞、リフトなどなど多彩なダンスシーンが繰り広げられます。
力強いダンスと坂元さんの歌声が重なり合い、見ているだけでテンションUPなシーン!
忘れてはならないといえば、TS作品に欠かせないミュージカル界のMr.オールラウンダーはこの方、照井裕隆さん。今回も歌にダンスに芝居に作品の要です!
照井裕隆さん
最後はこの方!
登場すると稽古場の空気は和やかに緩み、芝居はグッと引き締まる、退役軍人アーニーバル役の福井貴一さん。
福井貴一さん
エヴァとアリソンそして周囲の人々、彼らが生まれた意味、本当に求めているものとは・・・。1970年代のポルトガルを舞台にした物語ながら、そこで描かれているのは人間ドラマ。
そのテーマは普遍的で今を生きる私たちの心を大きく揺さぶります。
音楽・ダンス・芝居、ミュージカルの魅力がギュッと詰まった『familia~4月25日誕生の日~』。
本番が待ち遠しくなる熱気あふれる稽古場でした。
エヴァの表情が和らぐこのシーンは・・・
帰り道、ギターを掻き鳴らしながら歌うこのナンバーが脳内リピートし続けました♪
【舞台写真が届きました!!】(12月5日)
いよいよ東京公演開幕!
兵庫公演初日前に行われた最終舞台稽古より、舞台写真が届きました!
孤児院で育ち、自分を捨てた両親を探す旅に出る主人公エヴァ=大空祐飛さん。
切ない表情、そしてふっと笑うときの柔らかな魅力も素敵です♪
滋味あふれる歌声&演技の福井貴一さん。
大空さんとふたりの場面、その存在が心にジーンと染み入ります。
心寄せ合う仲間たちとの出会い。
人と人との絆が描かれるストーリー、タイトル『familia』に込められた意味に涙が…。
このほかにも、自分の信念・立場と真実との間で葛藤する陸軍少佐フェルナンドを演じる
岸祐二さんの強く響く歌声、運命に抗い必死に生きるアリソン役・
柳下大さんの秘めた熱さ、冷静な中に熱く燃える魂を感じさせる
渡辺大輔さん、そしてキーワードとなる「音楽」そして「家族」を体現する
坂元健児さんと
海宝直人さん…と見どころ聞きどころ盛りだくさんの作品に仕上がっている『familia~4月25日誕生の日~』。
ポルトガルの民族歌謡「ファド」の持つどこか懐かしい魅力を取り入れ、登場人物それぞれの心情を表現する素晴らしい音楽の力…その説得力、ぜひ劇場で確かめていただきたい!
ポルトガルで起きた実際の民主化運動が物語の縦糸になりますが、歴史に詳しくなくても大丈夫。
描かれているのはあくまでも「人が人を愛し、求める心」です。
愛を、そして家族を探し続けるエヴァの旅の果てにあるものは?
彼女の名前に込められた思いとは?
ぜひ劇場で彼女を待ち受ける運命、そして愛に、温かい涙を流していらしてくださいませ!
おけぴ取材班:おけぴ管理人(撮影)chiaki(文)