もはやおなじみの
「明治座でカブク!」、今年は
市川猿之助さん、
片岡愛之助さん、
市川中車さん、
市川右近さんというまさに花も実もある、今をトキメク顔合わせ!!
演目も、
歌舞伎十八番『矢の根』から、かけがえのない男の友情を描く名作
『男の花道』、対話の妙が面白い
『あんまと泥棒』、そしてエンターテインメント性あふれる
『鯉つかみ』と歌舞伎のさまざまな魅力が楽しめる構成になっています!
舞台に映像に大忙しの人気者が一堂に会し、制作発表が行われました。
【市川猿之助さん】
-今回の演目について(『男の花道』『あんまと泥棒』)猿之助)明治座さんのお客様にどのような素材をご提供したら、ご来場いただき喜んでいただけるかと考え、この二つの演目にいたしました。
劇場の色としては、明治座さんはさまざまな俳優さんが立たれている、歌舞伎もやり、女優さんのお芝居も、歌手の方の公演もあります。普段、歌舞伎座や新橋演舞場でやっている演目ではなく、
明治座さんでしか見られないような芝居をご覧いただくのがいいと思った次第です。
-『男の花道』について猿之助)『男の花道』は、名古屋の御園座で初演いたしましたとき、ご一緒してくださった竹三郎さんから長谷川(一夫)先生直伝のテクニックを教えていただきました。
長谷川先生というと(時代劇の)大スターであり、一見すると歌舞伎に通じるテクニックはないように思われますが、そんなことはございません。この
『男の花道』にも、どうやったら美しく見えるか、考えに考えたものがあります。
そこも含め、僕らがやって次世代へ受け渡していかなくてはならない演目だと思っております。
-具体的には猿之助)ひとつ例を挙げますと、お風呂上がりに独吟で出てくる場面、はじめに上手から下駄の音をさせ、そして暖簾をくぐって登場します。
その時、暖簾の前で一度立ち止まり、まず足元にピンスポ(照明)を当てその光が上がってきたところで顔を出す。そのような
光の使い方へのこだわりなどです。
-『あんまと泥棒』について猿之助)こちらは、元々ラジオ放送劇だったそうですが、
初演を八代目中車とうちの祖父三代目段四郎がやったというご縁のある作品です。あまり馴染みのない作品かと思いますが、先輩方にお聞きしたところ
「しゃれてる芝居」とのことです。中車さんと二人で、一から新作を創っていく気持ちで取り組みます。
【片岡愛之助さん】
-『鯉つかみ』について愛之助)久しぶりの明治座さん、『鯉つかみ』と『男の花道』に出演します。
まぁ、また『鯉つかみ』だと思われるんですけど(笑)、今回は
これまで描かれなかった前の場面、大百足(むかで)退治から作ってみようという試みです。
最初の段階では「4役早替わりで大変ですよ」と言われておりましたが、台本が出来上がってきたら
「6役」になっていてびっくりしました。いろいろと話し合いながら楽しんで作っていこうと思います。
また、私は中車さんとは始めてご一緒させていただくのでそちらも楽しみにしています。
-『鯉つかみ』では本水を使う場面もありますが何か特別な心構えは愛之助)心構えですか(笑)。とにかく風邪を引かないようにするだけですね。
確かに疲れますが、それでお客様が喜んでいただけるなら、疲れも吹っ飛びます。
以前、冷たいだろうからと水温を少し上げてくれたことがあるのですが、ぬるいとかえって気持ち悪いのと、あとは湯冷めするんです。ですから冷たいお水が一番、
何の仕掛けもございません、ただ水に飛び込むだけです(笑)。
【市川中車さん】
-初参加となる明治座歌舞伎について中車)明治座さんは現代劇で一度出て以来の出演となりますが、今回は
猿之助さんと襲名以来となる東京での歌舞伎の舞台となります。
3年経って東京に戻ってきて、猿之助さんにいろいろと教えてもらいながら舞台ができる。そしてひとつステップアップできればと、想いを新たに精進致します。
命がけでやっていきます。
-普段の芝居に臨むときとの心境、意気込みの違いは中車)いつもと比べてというより、歌舞伎となるといっぱいいっぱいですので
意気込みは100%です。
46歳で許していただき歌舞伎をやらせていただき、いろいろな方との出会いがあり、ご意見を頂戴し、わずかなキャリアの中でつたないながらも自分なりに解釈しながら進んでいるつもりです。
-今回の演目について中車)猿之助さんが言われたように明治座さんならではの二つの演目になりますが、
「あんまと泥棒」は猿之助さんとの二人芝居でございます。
約45分の二人芝居をとても楽しみにしています。
昨年、猿之助さんと一本がっぷり四つに組ませていただいた時にも感じましたが、繊細な間、歌舞伎の王道の間、その全てが僕にとって「なるほど!」と勉強させていただきましたので、今回も貴重な時間になると思います。
その希望も含め、意気込みはたくさんあるつもりです。
【市川右近さん】
-明治座歌舞伎といえば右近さん!右近)私にとって明治座さんは思い出深い劇場、東京で初めて舞台に立たせていただいたのが明治座さんです。小学校4年生になる手前の春休み、そのご縁で今日二代目猿翁に師事いたし、今日があります。以後たくさんのことを勉強させていただいた、
学び舎のようなところです。
近年の明治座歌舞伎では一昨年は『鳴神』、昨年11月は『高時』そして『四天王楓江戸粧』では『暫』のパロディ、そして今回『矢の根』を務めさせていただきます。
なんだか明治座さんではいつも目をむいているような気がいたします(笑)。
今回も明治座のお客様層に合う演目として、わかりやすいお芝居(『男の花道』『あんまと泥棒』)、新作部分も含めた復活狂言(『鯉つかみ』)、私は歌舞伎十八番、いろいろな演目がある5月の明治座歌舞伎となります。
お客様に喜んでいただけるよう、私もその一端を懸命に務めたいと思います。
作品解説
『矢の根』曽我兄弟の仇討ちを題材とした“曽我物”で、祝祭劇らしい趣向にあふれた作品。
典型的な荒事の扮装姿の曽我五郎が、荒事独自の型や見得を見せる、大らかで華やかな舞台です。
『男の花道』人気女方の加賀屋歌右衛門と名医土生玄碩(はぶげんせき)の友情を描く名作。
昭和16年には映画化、昭和37年、大阪の新歌舞伎座で劇化、歌右衛門を長谷川一夫、玄碩を二世市川猿之助が演じました。二人の友情の強さ、そして劇中劇に『櫓のお七』を用いるなど見どころが多い作品です。
『あんまと泥棒』泥棒権太郎とあんま秀の市の二人芝居です。元は放送劇で昭和26年NHKにて放送された作品です。権太郎はお金を奪おうとするものの、秀の市の巧妙な話術にはぐらかされてしまうなど二人の話が滑稽で面白く、予想を裏切る展開をお楽しみいただける作品です。
『鯉つかみ』今回は有名な大百足退治から、鯉の精の対時までを早替り、宙乗り、本水を使った大立ち回りに泳ぎ六法などスピード感に溢れた通し狂言としてご覧いただきます。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人