『絵本合法衢』
左から中村時蔵さん、片岡仁左衛門さん、中村歌六さん
「初めての歌舞伎」でも、わかりやすい! おもしろい! そして…
かっこいいっ! 仁左衛門さんがみせる、
「極悪人二役」&
「ほのぼの夫婦愛」。
7月3日に初日を迎えた、大阪松竹座『七月大歌舞伎』。
そうか、歌舞伎ってこんなふうにミーハーに楽しんじゃっていいんだ! と目からウロコが落ちました。
「歌舞伎…一度は観てみたいけど、楽しめるかな」と不安に思っているみなさま。
大丈夫です!
(先日、夜の部を観劇してきました。…大丈夫でした!) 同じく
歌舞伎鑑賞・超ビギナーのおけぴスタッフが開幕レポをお届けします♪
『鈴ヶ森』
左から片岡孝太郎さん、中村錦之助さん
昼の部の演目は、四世鶴屋南北が描いた江戸のダークサイド名場面『御存鈴ヶ森(ごぞんじ すずがもり)』からスタート。
処刑場近く、不気味な雰囲気の鈴ヶ森で、
お尋ね者の美少年(しかも強い!)「白井権八」(片岡孝太郎さん)と、
超・大物侠客の「幡随院長兵衛」(中村錦之助さん)が出会い、一時のあいだ心を通わせる…というおはなし。
(ざっくりしすぎていて、すみません!)もともとはなが~い作品の一部分ですので、ストーリーそのものというよりも、歌舞伎的な様式美あふれる立ち回りや、名セリフ、そして
南北作品独特の「闇」的な雰囲気を楽しむ演目です。
「お若(わけ)えの、待ちなせえやし」
「雉(きじ)も啼かずば打たれまいに」などの名セリフ、きっとみなさまどこかで聞いたことがあるはず。実際に舞台で聞くと、おおっ、これが本物か! と感動しますよ!
『雷船頭』
中村時蔵さん
続いての『雷船頭』では、夏らしい雰囲気の中、雷さまが粋な女船頭を口説きます(!)。
吉原へ向かう猪牙舟
(ちょきぶね/小まわりのきく水上タクシーのような船)を漕ぐ女船頭を演じるのは中村時蔵さん。
雷さまと船頭さんのデュエットダンス♪ 楽しくて艶やかな踊りで、夏のお江戸を感じましょう。
『ぢいさんばあさん』
左から中村時蔵さん、片岡仁左衛門さん
そして、お待ちかね。片岡仁左衛門さん登場!
ほのぼの夫婦愛『ぢいさんばあさん』で胸キュンタイムです!
「森鷗外原作」「昭和26年に作られた新歌舞伎」そしてこのタイトルですから、なんとなく地味な老夫婦の物語と思われていた方もいるかもしれません。
…が! 主人公夫婦を演じる仁左衛門さんと時蔵さん、初登場シーンは仲睦まじい新婚さん
(多分)なのでございます。
思わぬことから37年間(!)離れ離れになってしまうふたりが、長きの別離を経て再会するというストーリー。
いつか必ず会えると信じていたふたりが、とっても、とってもいじらしい!
お互いに年老いた姿になった再会シーン、感動の涙と、なぜかほのぼのユーモラスな気分が同居する名場面
(米吉さん&隼人さんの同い年コンビが演じる若夫婦との対比も感動ポイント♪)。
おじいちゃん姿になってもかっこいい仁左衛門さんのやさしい笑顔にハートを撃ち抜かれる観客続出の予感です♪
続いて夜の部では…
ほのぼの愛から一転、どこまでも極悪非道な男を(しかも二役!)存分に魅せてくれる『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』で、仁左衛門さんの
「悪の魅力」に酔いましょう!
『絵本合法衢』
左から片岡秀太郎さん、片岡仁左衛門さん
本家乗っ取りをもくろんで、騙し討ちに返り討ち、女子どもお構いなしにやりたい放題の
極悪武士・大学之助と、どことなく愛嬌もある
市井の悪党・太平次を、仁左衛門さんが鮮やかに演じわけ。
どちらも思わず拍手したくなるほど
悪い! 悪すぎる! そしてそれぞれにどことなく色っぽく…いやー、にざ様! カッコいいです!
毒蛇を噛み殺す(!)悪婆・うんざりお松役の時蔵さん(後半では正反対の役柄でも登場!)、昼夜とも若カップルを演じる米吉さん(可愛すぎる!)&隼人さん(男前すぎる!)、ぼんぼん風の錦之助さんなど、周りのキャラクターも魅力的(しかしその運命は…ううっ)。
ちょっとやり過ぎじゃない? と言いたくなるような凄惨さ、と同時にどこかユーモラスな
鶴屋南北ワールド。
(おけぴスタッフは観劇しながら、三池崇史監督の映画を思い浮かべました!)通し狂言なので、ストーリーもわかりやすく、南北作品らしいトリッキーな仕掛けも満載。
思わず、えっ!? と舞台にむかって叫びたくなるバイオレンスな展開に
「歌舞伎ってこんな話もあり、なんだ…」と驚かれる方もきっといるはず。
そして、なにより…悪の限りを尽くす
仁左衛門さんがめっちゃくちゃカッコいいんです!大学之助の片眉をぐぐーっと上げる表情、太平次のナマ脚
(すみません…)から放出される色気…。
悪人ながら、どことなく憎みきれないところも“憎い”! 仁左衛門さんの悪の魅力、悪の色気に当てられないようにご用心を。
充実の芸をみせてくれる仁左衛門さん・時蔵さん、すっきり、のびのびとした魅力の錦之助さん・孝太郎さん、そして若手ならではのフレッシュさとビジュアルで楽しませてくれる米吉さん・隼人さん、ここぞというところをググっと締める秀太郎さん・歌六さん。
昼夜とも歌舞伎ファンからビギナーまで楽しめそうな演目、座組の大阪松竹座「七月大歌舞伎」。
歌舞伎の約束事や、物語の背景を知らないし…という方も、心配ご無用です。
もちろん、そういった知識があれば、より深く歌舞伎の世界を楽しめるのかもしれませんが、まずは第一歩から!
今回の演目は、その第一歩にちょうどオススメ♪…とおけぴが勝手にプッシュします!
(少なくともおけぴスタッフは夜の部を観てそのかっこよさ、そのハチャメチャさに興奮! リピートしたい!)文字でも写真でもお伝えしきれない、ナマの舞台、ナマの歌舞伎の魅力。
ぜひ大阪松竹座で感じてきてくださいませ!
写真提供:松竹株式会社
おけぴ取材班:mamiko 監修:おけぴ管理人