『ONE PIECE』×歌舞伎、猿之助ならできると思っていただいたことに対する喜び、そして使命感、これはもうやんなきゃいけない!
奇跡のコラボレーションの実現には猿之助しかいない、
自らに白羽の矢が立ったことに“縁”を感じ挑戦を決意した猿之助さん。
「歌舞伎でワンピースをやるんだって!」
「どうやって?!?!」初めて耳にしたときは、何のことかさっぱり…でした。
そこからヴィジュアル解禁、配役発表とその現実味が増すなかでもやはり頭の片隅には、どうなるの?
正直、依然として未知なところは多いながらも、
これ、見たい!面白そう!そう思わせる言霊いっぱい!
名優にして名プロデューサー
四代目市川猿之助さんの心意気に惚れた製作発表記者会見の模様をレポートいたします。
まずはこちらをご覧ください。
(C)尾田栄一郎/集英社
(C)松竹株式会社
奇跡のコラボレーション!にワクワク
海賊王をめざす主人公ルフィとその仲間「麦わらの一味」の「ひとつなぎの大秘法」を巡る海洋冒険ロマン『ONE PIECE』とスーパー歌舞伎セカンドが奇跡の融合!
会見にて気になる配役や、ものがたりの舞台となるのが、ワンピースファンの中でも今なお人気を誇る<頂上戦争編>であることなどホットな情報続々解禁。
そんな中、演出、主演の市川猿之助さんから飛び出したのは、ちょっと意外なこの言葉でした。
「原作は第1巻の10ページまでしか読んでいません」
「ワンピースを本当に好きなもの同士が作るとオタク的にこだわった作品になってしまう。
脚本・共同演出の横内謙介さんはワンピースに精通しているので、私もそうなってしまうとワンピースを知らない人の視点がなくなり、観客を置いてけぼりにしてしまうのではないか。
そう思い、私はあえて触れないようにしています。
ずばり今回は
ワンピースを知らない人にも楽しんでいただけるような作品にしようと思います」
なるほど!ワンピースを知らないおけぴスタッフとしてはなんとも心強いお言葉。
(ちなみに、このスタンスは大のディズニー通の中村亀鶴さんの助言によるところが大きいそうです)
現在78巻まで続いている膨大な原作をいったいどうやって3時間ほどのお芝居にするのだろう…と思っていると。
「歌舞伎というのはワンピースを上演するには一番ふさわしい演劇形態だと思うんです」
「歌舞伎というのは鶴屋南北の作でも
名場面だけを上演するんですね。
決してはじめから終わりまで上演しない。
そういう上演形態が当たり前の中で、ワンピースの頂上戦争の一場面だけを上演する。
なかなかほかの演劇では難しいことですが、歌舞伎では長いものがたりのひと場面をクローズアップするというのは昔からやってきている。そういう意味でふさわしいと思うんです」
ものがたりの展開についても…原作の冒頭部分(しかお読みでないのでね・笑)の印象として。
「酒場にみんなが寄り集まって、そこから旅が始まる。
八犬伝とか、ああいった
大長編の冒険活劇だなという印象を受けました。
そうみると
非常に伝統的なものがたりの形式で、そこに新しい思想なりを入れているのではないでしょうか。
勧善懲悪もあるし、悪がはびこっている中で窮地を誰かが救って…とかね。
ものがたりも歌舞伎に適していると思います」
気になる配役についても猿之助節炸裂!
「ルフィって『義経千本桜』の義経みたいなんですよね」
猿之助さんは主人公ルフィと絶世の美女、女帝にして女海賊のハンコック、海賊団船長の赤髪のシャンクスという人気キャラクター3役を演じます!
「知らないからできるんですよね、知っていたら恐れ多くて出来なかったでしょうね。
ただ、ルフィは頂上戦争ではあんまり活躍しないんです(笑)。
歌舞伎で言うと
“いい役”ではない。
ものがたりの主人公ながらあまり活躍しない、『義経千本桜』の義経みたいに。
他になにかいい役ないかなとなったとき、私はおじと違って
女方が主ですから、そこも活かし、
早替わりもできて…ということでハンコックをということになりました」
一人が何役も、というのも実に歌舞伎らしいですよね。
「できれば一人一役がいいんですよ(笑)。ですが、歌舞伎は登場人物が多いので一人何役もやらざるを得ないんです。
しかも猿之助の売りは五十三驛(※
『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』)だと一人18役。ただ、それをやってしまうと、全部お前がやればいいじゃんということになり、そして出来ちゃうのでね(笑)。
でも、出演者一人のスーパー歌舞伎ではあんまり面白くないので、みんなが活躍できる形でやります。
今回はいつもだったら自分がやってしまう場を、やっぱり次の世代、若手の(坂東)巳之助くんや(中村)隼人くんに譲りまして、かれらにも大活躍してもらう。そういう試みも考えております」
さらりとおっしゃった「出来ちゃうのでね」という歌舞伎の凄さ、でも、次世代への継承も視野に入れるクールな配役!やはりスゴイぞ、猿之助さん!
そして、猿之助さん曰く「我々がやりたいことを全部熟知され、歌舞伎の手法もご存知、このお話が来た時に真っ先に名前が浮かんだ」というのが
脚本を担当される横内謙介さん。
「一歩先をゆくスーパー歌舞伎セカンドにしたい」
1990年代から先代猿之助さんのもとでスーパー歌舞伎製作に携わり、
自称“澤瀉歌舞伎学校の留学生”の
横内謙介さん「打ち合わせの際に、ルフィをルフィ之助に、セリフを歌舞伎言葉にしますかとお尋ねしたところ、「いや、それはしたくない、ルフィの言葉でやりたい」と猿之助さんがおっしゃいました。
ヴィジュアルは白塗りなんですけどね(笑)。
さらに演出についても新しいことをやっていきたいという、猿之助さんの
スーパー歌舞伎を古典化したくない、進化させたいというところを、私自身も楽しみにしています。
先代が掲げた3つのS、ストーリー、スピード、スペクタクル、さらに一歩先をゆくスーパー歌舞伎セカンドにしたいと思います。
世界にはワンピースファンがどっといて、日本には歌舞伎ファンがどっといて、お互いの意見が合うはずがないと…思うんですが(笑)。
この仕事に臨む以上は、大秘法を見つける覚悟でやらなければいけないと思っています」
頂上戦争の件を選んだ決め手は。
「
“麦わらの一味勢ぞろい”は歌舞伎っぽいですよね。
勢ぞろいしているのが50巻あたり、頂上戦争の前になるので、まずはそこがターゲットになりました。また、初めて見た人でもわかるということで、
海軍と海賊の一番大きな戦いである頂上戦争編となりました」
実は…というお話も。
「姑息な手も色々と考えたんです(笑)。なんとか劇中劇構造にできないか、ちょっとワンピースやってごまかすか…。
でも、この
神話的ともいえる世界的に愛されているものがたり。そこから逃げずに、たとえこの船が難破しようとも、王道を行こうと決めたところです。私が猿之助さんの伸びる手足になって、まだ見ぬ秘法を探す旅に出るという感じです」
そして冒頭にご紹介した猿之助さんの言葉。
これは原作に特に思い入れがあったわけではない猿之助さんが、なぜ、この作品に挑もうと思われたのか。という質問に対する答えです。
「私が先代と違うところは、がむしゃらにやっていく強さよりも、なんというか非常に受け身、
縁を大事にし、
待っていれば人と人との縁で何かが生まれてくる。それを面白いと思う性質なんですよね。
実はスーパー歌舞伎セカンド第2作目の構想も考えていました。それを絶対死守していたらこの話はありませんでした。でも、
『ONE PIECE』×歌舞伎、猿之助ならできると思っていただいたことに対する喜び、そして使命感、これはもうやんなきゃいけない!
ただただそう思っていただいたことに対してお応えしたい、それが一番です」
よっ、四代目!!聞いているこちらがテンション上がってしまう、男前なお言葉です!
原作者の尾田栄一郎さんからのコメント演劇と歌舞伎の境界線はどこにあるのかと尋ねると「全ての所作が美しいのが歌舞伎です」と猿之助さんは言われました。
僕はONE PIECEを美しく描いた事はありません
つまりこれは、海賊と美しさのコラボレーション。
歌舞伎というフィルターを通すと、海賊達がどんな美しさを放つのか
制作の片鱗を見せていただくに、すごいものになるという予感しかいたしません。
言わずもがな、市川猿之助さんという才能に超ご期待ください!!
会見後に行われた囲み取材ではさらなるワクワクが!
──ルフィは手足が伸びるゴム人間ということですが…猿之助)
なやみどころですよね、やっぱり伸ばさないといけないですかねぇ。
ゴムっぽさをどう出すか…
ないからね、歌舞伎にゴムの表現(笑)。
──ルフィのフルネームはモンキー・D・ルフィです。猿之助)
モンキーってね。それで選ばれたの?なんてことも言われます。
それも縁だなと思います。
あと!水が苦手なところ!
泳げないんだよね、すごい親近感!──ルフィはゴムゴムの実を食べ、泳げなくなる代わりにゴム人間という特殊能力を得ましたが。猿之助)
僕は何もないですけど、泳げません。特殊能力…歌舞伎ができるくらいかな(笑)。
──衣裳も楽しみです。猿之助)
ルフィはね。本当にやったらシャツに半ズボンですからね。
でも、
やっぱり豪華なものも着たいじゃないですか。そこはハンコックでね。
──演出で考えていることは。猿之助)
新橋演舞場では初めてとなる
斜め宙乗り(客席の上をフライング!)、
本水を使ってのスペクタクル、そして尾田先生の言葉にあったように
美しい光景をお見せしようと思っております。
火や氷の戦いもスペクタクルにしたいですね。
──今後の展開は。猿之助)
今回は<頂上戦争編>です。みなさまに支持していただけれは、
スターウォーズのようにものがたりを戻していくのも面白いですよね。
──海外での上演は。猿之助)
フランスでやりたいです。この間、仕事で行ったときに本屋さんにワンピースの本が並んでいたことにびっくりし、日本人としてすごくうれしかったです。
フランスをはじめとする海外でも、
歌舞伎に対する興味もワンピースに対する興味もあるので、それが合体したものをお見せできればいいのかなと思います。どなたかお力添えをよろしくお願いします(笑)。
──実は、スーパー歌舞伎セカンド第2作目の構想があったとのことですが。猿之助)
次は一から創ろうと思っていたんです。前作『空ヲ刻ム者』もそうでしたが、もっと大胆に
僕らが洋服を着て芝居やったらそれも歌舞伎かなとか思っていましたが、当分先になりそうかな。
──楽しみにされているみなさんにメッセージを。猿之助)
作っている本人も、出演するみなさんも、お客様もどうなるのかまったく想像がつきません。どんな宝が見つかるか冒険に出たところですので、温かく見守ってください。【こぼれ話】
どうやって手足を伸ばすか…なやみどころとおっしゃっていた猿之助さん。
報道陣のマイクに興味深々。
このマイクは軽いですか。ほほう。わかりました。
※澤瀉の「瀉」のつくりは、正しくは"わかんむり"です。
おけぴ取材班:chiaki(文・撮影) 監修:おけぴ管理人