大学教師と女子学生。2人だけの研究室で、本当は何が起こったのか?
全世界を話題の渦に巻き込んだ衝撃の問題作!緊迫のパワープレイ!大学教師と女子学生の密室劇━
それはもう緊張を強いられるのですが、結末を迎えた瞬間、「なにこれ、面白い…」と薄ら笑みすら浮かべてしまうような、演劇好き必見の舞台『オレアナ』稽古場レポートをお届けいたします。
これは面白くなりそう…、その予感的中!
現代アメリカ演劇界を代表する劇作家の1人、デイヴィッド・マメット作の、アメリカ中、そして全世界を議論の渦に巻き込んだ問題作を栗山民也さんの新演出、小田島恒志さんの新翻訳で上演。キャストは前途洋々の大学教師に田中哲司さん、女子学生には舞台初挑戦となる志田未来さん。これは面白くなりそう…、お稽古段階ながら、その予感的中を確信!
なにかが“変”…
いわゆる二人芝居というと、どんな対話劇が繰り広げられるのかなと期待が高まりますよね。
ノーガードの殴り合い(もちろん言葉の!)、それとも息詰まる心理戦が繰り広げられるのだろうか。はじめはそんなイメージを持っていました。
確かに『オレアナ』も“パワーゲーム”と称され、パワーバランスがその時々に変わるのですが、それ以前になにかが“変”なのです。
そんな不思議な感覚を抱いて向かった取材、稽古場に入った瞬間にドキッ「そう、こんな感じ!」、舞台セットの説得力に息をのみました。
対等じゃない二人の対話劇
二人の登場人物の間には、教師と生徒、もう少し言うと昇進を目前に控えた教師と彼の授業についていけない(単位を落としそう)という女子学生という上下関係が存在します。
そこから一転、女子学生がある理由で教師を大学当局に訴えると、訴えた側と訴えられた側という新たな関係が生まれます。
さらには絶対的な、男と女という関係も作用し、対等じゃない二人の対話劇が繰り広げられるのです。
そんな二人の間では“言葉の意味の取り違え”も起き、それは、まるで果てしなくボタンの掛け違いが続くよう。ワンシチュエーションで二人芝居、シンプルな中では、やはり“言葉”、“台詞”が効いてきます。
嘘のない二人
志田未来さん、初舞台ということですがその演技力は折り紙付きですよね。
キャロルのもつ、20歳の女子学生特有の感情の振れ幅をみごとに表現されます。
過剰な芝居をせずに、地に足の着いた台詞まわしで、台詞のその裏にある感情も込めて届けます!
お稽古の中では、思わず感情があふれだし言葉に詰まるような場面もありました。これからそこをコントロールしていくのか、そのままあふれさせるのかはわかりませんが、少なくともその時に見ていた限り、非常に共感できる感情の高ぶりでした。
そこに象徴されるように、志田さんのキャロルは嘘のない人物なのです。
いっぽうで田中哲司さんが演じるジョンはとても紳士的なふるまいをし、成功者の余裕すら漂う男性。
はじめは「ジョン、変な子に捕まっちゃったな…」と自然とジョン目線でいました。
でも、ふと気づくと、その余裕、さらには背の高さまでも(小柄な志田さんと長身の田中さんなので…ついつい)が“上から”目線とも感じられます。ただ、キャロル同様にジョンの言葉にも嘘はないのです。
そんなジョンがキャロルとのやり取り、そして時折かかってくる妻との電話でのやり取りなどで、徐々にダメージを受けていく過程、そしてそこからの…。
女子学生、あえて言うならひとりの小娘に対して決して動じるはずのないジョンの内面の変化にもご注目ください。
栗山民也さんの新演出
この、ある意味濃密、ある意味空虚な密室劇を創り上げる司令塔は演出家の栗山民也さん。
お稽古場では、ときに栗山さんがそれぞれの台詞を発してニュアンスを伝えたり、舞台上で実際に動いてみたりすることで、その裏にある感情を積み上げていく作業が続きます。翻訳劇の難しさでもある、日本語にしたときに“その言葉・台詞の持つ圧力”が変わってしまう箇所など、ひとつひとつ違和感を解消していく過程は、地道な作業ながらとても興味深いものでした。
今、上演することの意義や面白さ
ことの成り行きを客観視しているつもりが、ときどきどちらか側に重心を移している自分に気付く面白さもある。とにかく信頼のおけるクリエイター&キャストが創り出す空間に身を置けば、その劇世界の魅力にとりつかれます。ただし、公演HPによると、初演では…「クライマックス・シーンで思わず『ブラボー』と拍手する者、ブーイングして席を立つ者……観客を騒然とさせた」とのこと。
その衝撃をどう受け止めるのか、なにはともれ体感してみないことにはわかりません!
栗山さんが手がけるお芝居ならではの、今、上演することの意義や面白さを存分に味わえる『オレアナ』、開幕はもう間もなくです!
【TV番組情報】☆11/1(日) フジテレビ「ボクらの時代」7:00~7:30 田中哲司出演
☆11/1(日) 日本テレビ「誰だって波瀾爆笑」9:55~10:55 志田未来出演
【アフタートークショー開催】☆11/9(月)19:00 公演終了後
登壇者:詩人・社会学者 水無田気流さん × 英文学者 小田島恒志さん(「オレアナ」翻訳)☆11/11(水)19:00 公演終演後
登壇者:黒田絵美子さん(中央大学 総合政策学部教授、翻訳家)×英文学者 小田島恒志さん(「オレアナ」翻訳)☆11/13(金)19:00 公演終了後
登壇者:湯山玲子さん(著述家・ディレクター)×英文学者 小田島恒志さん(「オレアナ」翻訳)☆11/16(月)19:00 公演終了後
登壇者:田中俊之さん(武蔵大学社会学部助教授、博士)×清田隆之さん(恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)※公演終了後、若干の休憩をはさみ、アフタートークを行います。
※公演当日の公演チケットを持ったお客様が対象です。ご観劇時と同じ座席でご覧ください。
写真提供:株式会社パルコ
おけぴ取材班:chiaki(文) 監修:おけぴ管理人