相葉裕樹さん デビュー15周年ロングインタビュー【前編】~『レ・ミゼラブル』、見える景色が変わった~



 今年、デビュー15周年を迎える相葉裕樹さんにお話をうかがいました。現在公演中の『レ・ミゼラブル』について、自らのターニングポイント、これからについてなどたっぷりとお話いただきました。



相葉裕樹さん


【見える景色が変わった】


──はじめてアンジョルラス役を演じた2017年の『レ・ミゼラブル』公演のお話から。

 舞台・ミュージカルの仕事を本格的にはじめてから、帝国劇場の舞台に立つことを1つの目標にしてきました。うれしさはもちろんありましたが、いざその時が来て、それも『レ・ミゼラブル』という作品、当然それだけではありませんでした。ちょうど前回は1987年の日本初演から30周年の記念公演、僕は1987年生まれなので『レ・ミゼラブル』と同い年なんです。それだけの歴史があり、たくさんのファンの方に深く愛されている作品です。自分にアンジョルラスが務まるのだろうか…、正直に言うと怖かったです。稽古から大きなプレッシャーも感じていましたし、開幕の帝国劇場での公演中はずっと緊張していました。

──『レ・ミゼラブル』にはアンジョルラスと同年輩のマリウスという役も登場します。はじめからアンジョルラスを?



 はじめはマリウスも考えていました。というかむしろアンジョルラスよりマリウスでした(笑)。アンジョルラスは屈強で強いリーダーシップをもった男というイメージを持っていたので、どこかで「僕がアンジョルラス?」と思うところもありました。

 出演が発表された時も、「マリウスじゃないんだ」と言われることが多かったです。その時は、周りからもそう見えるんだなと思いましたが、実際に幕が開いてからは「アンジョルラス、合っているね!」と言っていただけることが多くなり、それは素直にうれしかったです。自分自身でも、アンジョルラスでよかったと思いました!

──凛々しい佇まい、伸びやかでスコーンと通る歌声…、「アンジョルラスだ!」と思いました。強い信念と儚さ、脆さが印象的なデビューでした。



 儚さを出そうと意識して演じてはいませんが、そう映るんですね。演じている時に僕の中にあるのは、とにかく革命に真っ直ぐひた向きにという思いだけです。ただ、今回は2017年とは見える景色が変わっています。ABCカフェでも、より広い視野で学生のみんなのこともしっかりと見られるようになれたことを演じながら感じています。それによって自分が受け取るもの、発するものも変わってきます。

──ご自身の変化を感じることができるのは再演ならではの経験ですね。そして、個々人の変化とともに今回は演出補も変わったということですが、それによる変化は。

 2017年の稽古では、「もっとパワー、エナジーを」ということを言われていました。それはそのまま僕が発するエナジー、つまりアンジョルラスとして板の上に立つにあたっての統率力や求心力が物足りないということだったのだと思います。今回の演出補クリス(クリストファー・キー氏)からは、そこについてはあまり言われることはなく、それよりも細かなニュアンスについてアドバイスをもらいました。例えば、エポニーヌの死の場面で歌うときに、「そこではもっと冷徹、クールでいてほしい」というような。



 ただ、それを踏まえてやってはいるものの、実際にその光景を目の当たりにすると感情的になってしまうこともあります。演出をつけられたから、何が何でもクールに徹する。それよりも、そこで起こることに着目し、自分の中でわき起こる感情を大切にすることが大事なのではないかと思っています。これはもちろん常に板の上でアンジョルラスを生きていることが前提ですが。だからこそ、僕らは毎回新鮮に取り組むことができ、お客様は何度観ても新しい発見があるのだと思います。

──その通りですね。私たちは、そこで起こること、それに対する正直な芝居に心を揺さぶられるのだと思います。感情表現という点では、全体的に自由度が増したというか、台詞のように発する場面が増えたような印象を受けます。

 確かに、感情の高ぶりによって叫んだり、部分的にはしゃべるような表現が多くなっているかもしれません。それでも「歌うように」と言われていないということは自由度が上がっているということなのでしょう。
 でも、その塩梅は難しいところでもあります。シンプルに音に乗せたほうが『レ・ミゼラブル』という世界観は作りやすい。「そこは歌ってほしいな」、これは長年ご覧になっている方ほどそう感じるのではないかと思います。当然、ミュージカルですので音楽の中で表現するのが正解なのかもしれない。一方で、その瞬間の生の感情を台詞のように表現することで伝わるものもある。その見極めは、カンパニー全体として本番を重ねながら突き詰めていくことになると思います。


おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)おけぴ管理人:撮影

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