小山ゆうなさん(翻訳/演出)
お客様がとても暖かく見守ってくださり、出演者にも初日で緊張があったと思うんですが、客席の反応にすごく助けて頂いて、演者とお客様の間でどんどん作品が一緒に作られていくという感じがしました。『チック』にはとても普遍的な要素が詰まっていて、特に戦争や移民、性的指向の話題に関しては、初演時よりも演じる側やお客様の方も触れている情報が多くなったことで、よりタイムリーに伝わり、さらにこの作品を深くお分かり頂けているように思います。時代によって戯曲のとらえ方も変わっていくことを感じました。毎日少しずつ違う事が起こったり、お客様の反応によって変わる場面がいくつかあるので、たくさんの方に楽しんでご覧いただけたらと思います。柄本時生さん(チック(アンドレイ・チチャチョフ))
楽しかったのと、何と言うか初演の時よりもすごく劇場全体の空気が「柔らかく」感じました。それは初演にはない、新しい感覚でしたね。今回やってみて、この作品は思いのほかライトなんだって思いました。思いのほかライトで、でも思いのほかキツくて、その振り幅がすごくはっきりしているんですけど、その両方が綺麗に混ざっている感覚。それが『チック』なんだと思いました。再演によって色々なことがいい意味でフラットになって、今日のお客さんの姿を見ていると、観やすくなっているんじゃないかと思います。楽しんで観れると思いますので、ぜひ観に来てください。篠山輝信さん(マイク・クリンゲンベルク)
稽古場で何回も何回も稽古をしてきましたけど、お客様という、マイクにとって初めて話を聞いてもらう相手役が表れて、ようやく完成したというか、始まったなと感じました。土井ケイトさん(イザ/タチアーナ/看護師 ほか)
この作品自体が、もう全く予想不可能というか、常に新しく進化し続けていて、時としてぶれそうなところは、演出の小山さんが軌道修正してくれました。今日はついにお客さまが入って、また違ったいい意味で変わりました。舞台上でいろいろ事件が起きるんですが、それらも組み込まれてしまうような、お客様と一体になった、本当の意味での体験型だと思える何かがある舞台です。何でもありだけど、すごく強いしっかりとした芯みたいなものが通った作品なんじゃないかと思うんです。だからこそ千穐楽まで、いろんな遊びを入れていけたら…。ぜひ、お楽しみに!那須佐代子さん(母/フリーデマンの母/カバおばさん ほか)
初日を終えて、やっぱり笑っていただけると嬉しくなってはずみが出ますね。お客さまからの反応をもらえて嬉しかったです。大鷹明良さん(父/フリーデマン/フリッケ/ライバー ほか)
お客さんがリズムを作ってくださってようやくお芝居が完成したな、ああ、こんな風にお客さんと旅する芝居だったなと感じています。今回は再演ですが、チックとマイクの家庭環境や置かれている立場など、初演時の2年前より他の国の話ではないという実感があります。ですが、どうしたらいいのかわからない閉塞感のなかで、チックとマイクのふたりが“生きていく”という希望を表している作品だと思いますので、いろんな年齢層の方に観ていただいて、感想を言っていただけるとありがたいです。ぜひ21日の選挙にも行って、お芝居も観にいらしてください。小山ゆうなさん(翻訳/演出)
作家が亡くなる直前に書かれたこの作品は、彼の人生の中での様々な要素が描かれていて、すごく凝縮された作品です。だからこそ詩的な部分もあり、そこがすぐには理解できなくても、触れていくとどんどんわかってくるような、想像力を刺激する、すごく深くて面白い、綺麗な戯曲だと思います。土井ケイトさん(イザ)
初演のときには、『イザ』の戯曲が手元になかったので、『チック』だけを読んで臨ませていただきましたが、イザというキャラクターはすごく深いなと感じました。作っていく時はとても難しくて、稽古しながら探ってきたんですが、最初とずいぶん変わってきているんです。そして今回初めて『イザ』の戯曲を読んで、わたしの考えるイザと“本当のイザ”との違いがわかった部分がすごくあって、そこがターニングポイントになりました。朗読は初めてなので、普段はあまりそんなことしないのですが、亀田さんに助けを求めたんです。そうしたら、本当に親身になっていただき、的確に教えてくださいました。ものすごく感謝しています。亀田佳明さん(男)
初めて戯曲に触れたとき、圧倒的な言葉の存在にまず驚かされました。イメージをどんどん膨らませていく詩的で、はかない言葉。頭で理解するというより、ただひたすら感じていたいと思える言葉にあふれた戯曲だと思いました。国広和毅さん(音楽・演奏)
『イザ』を初めて読んだ時、感覚的にはとても分かる、けれど細部を正しく理解するのは難しい戯曲だと思いました。後で小山さんの説明を受けて、敢えて多様な解釈が可能なように書かれていることを知り、なるほど挑みがいがあるな、と。イザのモノローグが中心なので土井さんの作り出すイザの性格や声質をヒントに音楽を作り始めました。稽古では土井さんの素晴らしくエモーショナルなセリフに即興的にギターで絡むのがとても楽しい。楽しみすぎかもしれないのでこれから少し冷静に整理していく予定です。小山さんには随分自由にやらせて頂いています。アイデアを上手く拾って頂けるのでさらに提示したくなります。きっと乗せ上手なのでしょう。それから亀田さんの一人多役ぶり!演じ分けるだけでなく沢山の役を通して一本の筋が通っているんです。この辺もお客さんには楽しんで頂きたいと思います。新国立劇場 演劇『デカローグ5』福崎那由他さん&渋谷謙人さん&寺十吾さん鼎談
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