ヨーロッパ、韓国で絶賛されたミュージカル・ロマン『モンテ・クリスト伯』が
いよいよ日本初演を迎えます!
『三銃士』でもおなじみのアレクサンドル・デュマ原作の愛と復讐の物語を
ジャック・マーフィーの脚本・歌詞(『ルドルフ ザ・ラスト・キス』)、
フランク・ワイルドホーンの音楽(『ジキルとハイド』、『シラノ』)で
ドラマティックに描く、この冬必見のミュージカル『モンテ・クリスト伯』!
先ごろ行われた稽古場見学会の様子をレポートいたします。
一般オーディエンスも交えての稽古場見学会、キャストのみなさんの
発声練習の声が稽古場に響き渡る中、お客様の入場です。
普段の稽古とはちょっと違う緊張感を解きほぐすような、演出の山田和也さんによる
ユーモアを交えたキャストの紹介&作品解説、
そして物語序盤から3曲ほど楽曲披露が行われました。
みなさん興味津々の楽曲披露を中心に、レポ終盤では作品をより楽しむための
作品解説をご紹介いたしますので、どうぞお付き合いください。
【楽曲披露】まずはこのシーン、M2(2曲目)
♪さぁ、乾杯だ!、
航海士エドモン・ダンテス(石丸幹二さん)とメルセデス(花總まりさん)の
婚約を祝う場面です。
世界一の航海士とエドモンを称え、美しきメルセデスとの婚約を祝福する周囲の人々、乾杯!!
まさに美男美女カップル!うっとりしてしまいます。
変わらぬ愛を確かめ合い、輝く明日に漕ぎ出す二人の最高にハッピーな瞬間!
幸せの絶頂から一転、エドモンの表情が曇り・・・
警察がやってきてエドモンは
謀反の罪で捕えられてしまいます。
というところでこちらのシーンは終了。
このナンバーはもちろん幸せいっぱいなシーンなのですが、
エドモンを無実の罪に陥れたモンデゴ(岡本健一さん)と
ダングラール(坂元健児さん)の密談など
様々な思惑も描かれるとてもドラマティックな展開にもドキドキです。
警察に連行されるエドモンが友人でありメルセデスの従兄でもあるモンデゴに
一人残されるメルセデスのことを頼むくだりでのモンデゴの「友達じゃないか」というセリフ。
岡本さんが発するその一言の “含み” にしびれた取材班、
誠実さの中に企みがチラリと見えるような芝居・・・素敵です!
続いては、M2B~M3
♪祈り~ただそばにいる(エドモン、メルセデス)
エドモンの無実を信じて無事に帰ることを祈るメルセデスと
独房にいるエドモンの思いが交錯する情熱的なナンバーです。
美しさの中に芯の強さが光る花總さんのメルセデス!
絶望の中でもメルセデスの身を案じ、愛を歌い上げるエドモン!
誠実で力強い石丸さんの歌声が胸を打ちます♪
たとえ引き裂かれても、重なり合う二人の思いが視覚的にも表現される美しいシーン。
歌詞はとても詩的でメロディも高揚感たっぷりです。
お二人が表情豊かに歌い上げる様子は心に迫りくるものがありました!
そして、愛し合う二人を引き裂いた張本人たち・・・モンデゴ、ヴィルフォール、
ダングラールのナンバーM4
♪罪を着せろ へと続きます。
会計士ダングラールには坂元健児さん。
感情を激高させ、張りのあるハイトーンが響き渡ります。(冒頭の低音も素敵です)
検事ヴィルフォールには石川 禅さん。
落ち着いたノーブルな歌声が、法を操るヴィルフォールのキャラクターにピッタリ!
絶対的な権力と悪の力を感じます!
ここに悪のリーダー岡本健一さん演じるモンデゴが加わって歌い繋いでいくのですが、
岡本さんの甘くセクシーな歌声と坂元さんの張りのある声、
朗々と歌う石川さんの絶妙ハーモニー!
タイプの違う
悪い男の色気炸裂 ナンバーですよ♪
演出の山田さん曰く、
「この3曲の後、いろいろとあって製作発表で披露した終盤の2曲♪今日まで(メルセデス)、
♪あの日の私(エドモン)へ繋がります。その間のことをぜひ想像してみてください(笑)。」
無実の罪で牢獄に送られた一人の男の復讐と、
愛する女性との悲劇的な別れと再会が心を揺さぶる物語。
牢獄で出会うファリア神父に村井國夫さん、14年投獄されていたエドモンが脱獄した
あたりで登場する(笑)女海賊ルイザに濱田めぐみさんと彩吹真央さん(Wキャスト)など
ほかにも魅力的なキャラクターいっぱいのミュージカル『モンテ・クリスト伯』。
開幕が待ちきれません!
では、ここからは
【作品をより深く楽しむための解説】by山田和也さんをお届けします。
<この作品について>原作小説『巌窟王』の名でも知られているこの物語ですが、
ミュージカル『モンテ・クリスト伯』は2009年3月14日、
スイスのザンクト・ガレンシアターで初演されました。
この劇場には60人の合唱隊が所属しているため、
合唱をお聞かせするようなシーンがあります。
それがこの作品の音楽的特徴のひとつとなっています。
そして、2010年にはお隣の韓国・ソウルで上演し大ヒット、
つまり我々は3番目の上演カンパニーになります。
韓国版が上演される際に大幅な改変が行われたので、
我々はより新しい韓国版に準じて上演します。
ただ、韓国版でカットされた部分を復活、
ザンクト・ガレン版の要素を持ち込んだりしていますので、
韓国版とまったく同じものをやるわけではないんですね。
また違うバージョン、
最新版の『モンテ・クリスト伯』をお届けいたします。
具体的には、ザンクト・ガレン版にあった
ヴァランティーヌ(ジェイミー夏樹さん)が歌う曲の復活などが挙げられます。
<ワイルドホーンナンバーについて>日本でも毎年というか毎月のように彼の作品が上演されているので
もうおなじみかと思いますが、ワイルドホーンナンバーの特徴は
キャッチーなシングルカットしやすい楽曲が豊富なことが挙げられます。
また、音楽を作品世界によって使い分ける幅広いスタイルも魅力で、
たとえばアメリカの禁酒法の時代を舞台にした『ボニー&クライド』ではジャズ、
アメリカの南部を舞台に南北戦争を描いた『シビル・ウォー』はカントリー音楽、
『アリス・イン・ワンダーランド』ではポップスやロックなど、現代的な音楽になっています。
『モンテ・クリスト伯』はフランスの19世紀のお話なので、
音楽的には『スカーレット・ピンパーネル』や『シラノ』の曲調に近いですね。
<物語の時代背景>モンデゴらの歌う♪罪を着せろの中に
“ナポレオンの手紙” という言葉が登場します。
ナポレオンの手紙と謀反の罪の関係を簡単に説明すると。
フランス革命の結果、フランスは共和制になります。
それが倒れてナポレオン・ボナパルトの第一帝政へ移り、
そのナポレオンも1814年に失脚、エルバ島に流されます。
その後ルイ18世が即位しますが旧態依然とした政治をしたことから
ナポレオン待望論が沸き起こってきた。そんな時代のお話です。
ナポレオン復活への危機感から当時の政権(王政)は
ナポレオン派の動向には目くじらを立て弾圧していたために、
ナポレオンからの手紙を持っていたことが大きな罪となるのです。
原作小説では物語の始まりは1815年2月24日、史実ではその2日後
2月26日にナポレオンはエルバ島から脱出するので、この架空の物語に
巧みに史実を織り込んでいることが分かります。
<おまけ>ミュージカルをお楽しみいただくためにはほとんど役には立ちませんが(笑)。
1901年(明治34年)に翻訳された『史外史伝巌窟王(しがいしでんがんくつおう)』は
登場人物を日本人に置き換えた翻案バージョンだったんです。
ということで、
各キャラクターの日本名が発表された時のみなさんのリアクションをどうぞ!
林アキラさんの役・船主モレルは森江(もりえ)さん
写真中央はジャコポ役の岸 祐二さん
ちなみにそれぞれの役名は下記の通りに訳さたそうです。
エドモン・ダンテス(石丸さん):團友太郎(だんともたろう)
モンテクリスト伯爵(石丸さん):岩窟島(いわやじま)伯爵
船主モレル(林アキラさん):森江(もりえ)
ダングラール(坂元さん):段蔵(だんくら)
ヴィルフォール(石川さん):蛭峰(ひるみね)
モンデゴ(岡本さん):次郎(じろう)
なぜ次郎?これには場内爆笑!
メルセデス(花總さん):お露(おつゆ)
翻訳者さん、そのココロは?
ファニア司祭(村井國夫さん):梁谷法師(はりやほうし)
しっくりきているものもあれば、苦しいものもありますね(笑)。
おけぴ取材班:chiaki(文・撮影) 監修:おけぴ管理人