「愛だけは、本物だった」──こんな言葉が頭の中に浮かびました。
(おけぴに寄せられた感想より)物語の語り手・ニックを演じる【相葉裕樹さん】
ギャツビーの“友人”になった彼が最後に見つけたものとは…?
第一次世界大戦後、空前の好景気を迎えた1920年代のアメリカ。ジャズミュージックが流行し、女性が髪を切り、もぐり酒場が賑わい、あらゆる価値観が変貌を遂げたこの時代に、ひとりの青年が見つけた“真実”の物語…。 錦織一清さん(演出)、
内博貴さん(主演)のふたりがタッグを組んだ
ミュージカル『グレイト・ギャツビー』が、東京、名古屋、京都公演を経て、7月23・24日に新神戸オリエンタル劇場で上演されます。
ギャツビーが愛し続ける“運命の人”デイジー役は【愛原実花さん】。
衣裳の着こなし、立ちふるまい…可憐のひとこと!
揺れる心を繊細にみせる演技に注目です。
こちらは、美貌のプロゴルファー・ジョーダンベイカーを演じる【大湖せしるさん】。
役柄を自分の個性に引き寄せて、鮮やかな“女優デビュー”を飾りました!
“狂乱のジャズ・エイジ”の象徴的作家、スコット・フィッツジェラルドによる原作小説や、ロバート・レッドフォード(1974年)、レオナルド・ディカプリオ(2013年)が主演した映画版に親しんだ方も多いかと思いますが…劇場に入る前にまずその先入観を一度捨て去リましょう!
◆笑いあり、驚きあり、感動ありの作品で、最後まで目を離せません。内容を知らない人は、何も情報を入れずに観ることをおすすめします。 ドラマ「マッサン」で注目を浴びた羽原大介さんによる脚本は、原作小説のストーリー、時代背景をよりわかりやすく、若い観客にも親しみやすい形でみせてくれています。そして錦織さんの演出は、お約束のギャグも満載。原作通りのイメージかと聞かれると、もちろん誇張があると答えざるをえませんが、そこは舞台のマジック。若い世代の心をぐっと物語に引き寄せる手段として、笑いと耳馴染みの良い音楽が効果を発揮しています(音楽は岸田敏志さんによるオリジナル)。
一番の見どころはなんといっても、主演の内博貴さんが演じるギャツビーの“デイジーしか目に入らない”…そんな恋する男の姿を主軸に組み立てた演技。
◆ギャツビーのデイジーへの想いが伝わり、ヒリヒリした痛みを感じつつ、切ない気持ちでいっぱいになりました。
◆終盤のギャツビーの軍服姿のシーンがとても印象的でした。あの頃の幸せだった記憶を大切に心に抱えていったギャツビー。切なすぎて、思い出すだけでも涙が出てきます。 『ガイズ・アンド・ドールズ』(2010年)、『音楽劇 ザ・オダサク』(2013年)、『ペール・ギュント』(2015年)など、着実に舞台での経験を重ね、華やかな魅力と舞台俳優としての経験値が比例した存在感をみせる内博貴さん。ご本人たっての希望だったという“ジェイ・ギャツビー”役を、甘く切なく、そしてときに驚くほどの“振り切った”演技を交えて、新鮮に見せてくれました。終盤、ギャツビーがもうひとつの姿をむき出しにする場面の豹変ぶり(!)も必見です。
◆ディカプリオの映画を観ていたので、内容はわかっていると思っていましたが、「切ない愛があって、それを貫いたギャツビーは、幸せだったんだ」と映画以上にわかりやすかった。親友と呼べる人に、その事をわかってもらえたのも、良かったです。悲しいけれど、後味が悪くなく、納得できました。 初のミュージカル出演!
デイジーの夫・トム役は【山口馬木也さん】。
超のつくお金持ちで、元フットボールのスター選手、そして白人至上主義…デイジーの夫・トム役を演じるのは、これがミュージカル初出演となる山口馬木也さん。数々の舞台でみせてくれているその芝居力、存在感は今回も健在。制作発表会では「不安です(笑)」とおっしゃっていた歌も、噛みつくような歌い方がまさしくトム・ブキャナン! 朗々と歌い上げるようなスタイルではありませんが、上等なスーツの下に嫌~な汗をかいていそうなキャラクターをリアルに感じさせる芝居歌!
◆山口さんトムの鼻持ちならない人種差別の金持ちでありながら、心の不安定さがかいま見える演技がよかった。 愛原実花さんも抜群のスタイルを活かし、ギャツビーの運命の女性・デイジー役をチャーミングにみせてくれます。時おり、瞳に暗い影がさして、デイジーの闇を感じさせる演技が秀逸です。
夢のなかを生きているようなギャツビーとは違い、“現実”を生きていくニックとジョーダン
◆相葉くんが演じるニックの素直さに救われました! 物おじしない歌唱もいい。◆宝塚を退団されて、色っぽさがさらに増した大湖せしるさん! 衣裳の着こなしもさすがの美しさでした。 相葉裕樹さん演じるニックは、素直で等身大の若者。ご本人のキャラクターもあいまって、物語に爽やかな風を吹かせてくれます。オープニングのソロナンバーも堂々と。秋の“ピンパーネル軍団”も今から楽しみです♪
宝塚退団後の初舞台となった大湖せしるさん。ヘアスタイルは黒髪のショートボブ。初登場シーンでは無表情のユニークな役作りが光りました。開幕前の
インタビューで“謎な感じ”と語っていたジョーダン役を、ご自分の個性に引き寄せるような形で好演です。
ウィルソン夫妻を演じる【コング桑田さん】と【木村花代さん】。
歌、演技、そのパフォーマンスに拍手喝采!
圧倒的なパフォーマンスを見せつけたのが、トムと不倫関係にあるマートル・ウィルソン役の木村花代さんと、その夫の自動車修理工・ジョージを演じたコング桑田さん!!
上昇志向が強く、夫を裏切り、肉感的な女の魅力でトムに迫る…これまでのイメージをくつがえすような役柄を完璧に見せた木村花代さん。まさに“絶唱”といったソロナンバーに客席からも大きな拍手が送られました。
妻を愛し、貧しい暮らしの中にも幸せを感じていたジョージ役のコング桑田さんもとってもチャーミング。ある事実を知ったときの狂気を感じさせる演技はさすがです。コングさんのエンターテイナーぶりが発揮される“とある場面”もぜひお楽しみに♪ (ギャツビーのパーティ、演奏メンバーに注目です! まるでル◯・アームストロング? な、その歌声は必聴!! トランペットを吹いているのは…? メンバー3人とも要チェック!)
このほか、灰の谷の住人ミカエルを演じる高田翔さん、マートルの妹・キャサリン役のRiRiKAさんなど、それぞれのキャラクターにソロナンバーがあり、見せ場十分。
ギャツビーの裏の仕事のパートナー・ウルフシャイム役(岡本悠紀さん)も原作とは異なり、ぐっと若い設定で、「ギャツビーが“やばい奴ら”と関わっている」という事実がわかりやすい! 岡本さんのキレのあるダンスと歌唱にも注目です。
◆ベテランと若手のパワーがぶつかり合う熱い舞台でした。 普遍の名作だからこそ、さまざまな形で上演される“力”を持つ『グレイト・ギャツビー』。
今回のミュージカル版は、“ザ・錦織一清演出!”と言いたくなるような熱さと楽しさ、そしてその錦織さんの思いをしっかりと受け止めて、男・ギャツビーを見せてくれる内博貴さんの情熱を、舞台から感じられる作品に仕上がっています。
ミュージカル『グレイト・ギャツビー』は、週末の新神戸オリエンタル劇場公演で千秋楽を迎えます。お見逃しなく!
※赤字はすべて、おけぴに寄せられた感想です。
感想コメント:おけぴ会員のみなさま
舞台写真提供:松竹株式会社
おけぴ取材班:mamiko 監修:おけぴ管理人