5月1日開幕、
新国立劇場バレエ団『コッペリア』公演にて、若き恋人たちスワニルダ、フランツを演じる
池田理沙子さんと
奥村康祐さん。2017年にも同役で組まれたおふたりにローラン・プティ版の魅力、それぞれの役の人物像、コッペリウス役発表時の衝撃などを伺いました。
池田理沙子さん 奥村康祐さん
──まずはお二人によるローラン・プティ版『コッペリア』作品解説から!池田さん) 定番の『コッペリア』の舞台はポーランドの農村ですが、プティ版ではフランスの都会になります。そこに暮らす人々も農民たちから、衛兵や街の娘たちとなります。その女の子のひとりが、私が演じるスワニルダ。彼女が一途に恋する青年が奥村さん演じるフランツです。スワニルダはフランツに夢中なのですが、フランツはコッペリアが気になっていて振り向いてくれない。そんな二人の恋物語も少し現代的に描かれます。また、元は古い作品
※なのでマイムが多く使われているのですが、プティ版はマイムも踊りの中に取り込まれていて、踊りで会話を紡いでいくような振付になっています。例えば、原典版では麦の穂のパ・ド・ドゥとして有名な場面の音楽で踊るシーンに、スワニルダとフランツ、ふたりの関係性が如実に表れているのではないかと思います。コッペリウスの人物像が初老の紳士というのもプティ版ならではです。
※おけぴ注:パリ・オペラ座で1870年に初演、一方、プティ版は1975年にマルセイユ・バレエで誕生奥村さん) 初演時、プティ自身がコッペリウスを演じたことも有名で、僕もその映像を見ましたが、タキシードを着てシャンパン片手に──とてもカッコよく振る舞っている印象を受けました。でも、人形に恋をするちょっと風変わりな人。あと、全体的なイメージを言葉にするとフランスのエスプリがきいた大人の作品。冒頭、フランツが葉巻をふかしていたり、舞台装置の色調もグレイッシュだったり、どこか退廃的なんです。踊りや音楽はとても華やかで、スワニルダもピンクの衣裳を着ていますが、そこはグレーの世界。ジャン・コクトーのそれに通じるような、耽美で独特な世界観があります。
──お話を伺っていると作品への興味がぐんぐん増します!おふたりは2017年にも同役を踊られています。その時の印象をお聞かせください。奥村さん) プティ版の『コッペリア』は、日本では新国立劇場バレエ団でしか上演していませんし、世界的にもレパートリーとしているカンパニーは多くありません。こうして踊る機会をいただいたことはありがたいことでしたし、とても楽しく踊れました。
撮影:鹿摩隆司
池田さん) 入団して間もなかったこともあり、私自身、全く余裕がなく記憶が定かではないところもありますが(笑)。スペイン人形の踊り、スコットランド人形の踊りなどさまざまな人形の踊りをスワニルダ役が踊るので、踊ることはもちろん早替えや小道具の扱いなども大変だった印象があります。踊りについては、プティの振付は身体の使い方が独特で、肩で男性を誘ったり、首のちょっとした角度でコケティッシュな雰囲気を出したりするところに難しさを感じました。足さばきも特徴的です。
奥村さん) シックスポジションとか! 足を揃えてピシッと立つことの大切さを強く意識しました。動いているところからピシッと止まることで、踊りにアクセントがつくんです。衛兵たちの動きなどを見ているとよくわかります。これは『コッペリア』だけでなく、同じくプティ振付の『こうもり』の時にも徹底して指導されたポイントです。
──指導と言えば、前回はルイジ・ボニーノ氏※が指導されたと思いますが、氏の指導で印象的だったことは。※前回公演では芸術アドヴァイザー/ステージング兼コッペリウス役で公演に参加されました。奥村さん) ボニーノさんの身体にはしっかりとプティスタイルが染みついていて、そのスタイルを継承していくことに使命感をもたれている方だという印象を受けました。細かなところまで丁寧に教えていただきました。
池田さん) やはり先ほどお話した、ポジションに入って止めるところと、崩すという言葉が適切かはわかりませんが、身体を緩めるところの使い分けについて多くのご指導をいただきました。それによって踊りに抑揚がつき、ストーリー展開が説得力を増すのです。
──おふたりが演じるスワニルダ、フランツと密接にかかわることになるコッペリウス役には山本隆之さんと中島駿野さんがキャスティングされました。なかなかのサプライズです!奥村さん) 僕らもびっくりしています(笑)。公式発表とほぼ同じくらいに知ったのですが、はじめて聞いたときは「えーっ!」って。ふたりそれぞれに違う驚きがありました。まず隆之さんが戻ってこられることにびっくりしましたが、隆之さんのコッペリウスはすごくハマるだろうと思ったんです。一方で、駿野くんのコッペリウスは予想もつかない!
──若さと老いのコントラストというのも作品のポイントになりますが、その辺りもどうなるか楽しみですね。おふたりは中島さんのコッペリウスと組むことになります。奥村さん) どういう作り方をするのか、どんな関係性が築けるのか、これからのリハーサルが楽しみです。彼はとても真面目で、黙っていると涼しげでカッコイイのだけど、どこか抜けているところもある独特のキャラクターの持ち主なので、それが活きるのではないかと思っています(笑)。
池田さん) 隆之さんは、バレエ団でご一緒した時期はないのですが、新国立劇場の設立当初からスターダンサーとして活躍され、私もそんな隆之さんの踊りをずっと見ていました。みんなの憧れの存在であり、いろんな役を演じてこられた隆之さんがコッペリウスとして、また新しい輝きを見せてくださると思うと、私たちもワクワクしています。
また、コッペリウスはダンサーの個性が強く出る役柄です。駿野さんも、これまでの方とはまた全然違った面白さを出してくれると思うので、リハーサルで3人で高め合っていけたらと思います。
──スワニルダ、フランツ、それぞれの人物像についてはどうとらえていますか。奥村さん) フランツは街のなかでも目立つ存在で、女の子たちもちやほやしてくれる。その中で一番かわいいスワニルダと恋人同士なのですが、コッペリアも気になっています。若さゆえの・・・と言うか。そこでも人形を愛するコッペリウスとの対比が生まれます。
──ご自身と通じるところは(笑)。奥村さん) どういう意味かわかりませんが、みんなからは近いと言われます(笑)。確かに、そんなにやりにくい役ではないかもしれません(笑)。演じる上では、なるべくフェロモンが出るように意識しながら踊っています。そういう振りが結構あるんです。若く男性的で生きる力に溢れたフランツを「表現」しています。
池田さん) 逆にスワニルダはフランツに対して、無邪気に、純粋に恋心を抱いています。そこがプティ版のスワニルダの人物像の核になると思っています。スワニルダの若さゆえの一途な思いをしっかりと表現することで、ラストのコッペリウスの哀愁、ほろりとしてしまうところに繋がると思います。
撮影:鹿摩隆司
撮影:鹿摩隆司
──少し視点を変え、鑑賞する側として『コッペリア』の好きなシーンは。奥村さん) やはりコッペリウスが人形と踊るシーンです。まるで人間と踊っているようなあのシーンは振付としても本当に感動的です!どうやったらあんな振りを思いつくのか、その発想力にも驚愕します。
それまで何者かわからなかった存在だったのが、あの一連のシーンの中でコッペリウスの人間性や生活、日常が一気にクローズアップされ、コッペリウスという人間が見えてくる。『コッペリア』の世界観が凝縮された、そのすべてが詰まっていると言っても過言ではないほど素晴らしいシーンです。
池田さん) 私もあのシーンは大好きです。それに加えて、単なるハッピーエンドで終わらない。大団円を迎えた後で、ひとりバラバラになったコッペリア人形を持ってたたずむコッペリウス。プティ版ならではのメッセージ性の強いラストも好きです。
──最後に公演を楽しみにされているみなさんへメッセージを。池田さん) なかなか上演機会のないプティ版を、こうして新国立劇場バレエ団で上演できることを嬉しく思っています。若者たちの真っ直ぐさと年老いていくコッペリウスの哀愁のコントラスト、アイロニーが表現される、大人のエッセンスを加えたプティ版『コッペリア』をお楽しみください。
奥村さん) 大変な時期ですが、ぜひ劇場へ足を運んでいただきフランスの雰囲気を味わい、海外旅行に行った気分になっていただければと思います。
──新国立劇場で出会うフランスのエスプリ!素敵なゴールデンウィークになりそうですね!
撮影:鹿摩隆司
《新国立劇場バレエ団からのスペシャルプレゼント企画》
♪第一弾: ダンサー直筆サイン入りポスター ご観劇いただいた回の主役ダンサー直筆サイン入り『コッペリア』ポスターを各公演5名様に、抽選でプレゼントします。さらに各回1名様だけに当選する「特賞」には、主役ダンサーに加え、吉田都芸術監督とコッペリウス役ダンサーのサインも!
♪第二弾: プリンシパル・奥村康祐イラスト入りオリジナルポストカード 新国立劇場バレエ団プリンシパル・奥村康祐が『コッペリア』をモチーフに描いたイラストを用いた、オリジナルポストカードを、抽選で各回20名様にプレゼントします。
いずれも事前のご応募は不要、チケットをご購入いただいた全ての皆様が抽選の対象となります。どうぞお楽しみに!詳細はHPにてご確認ください♪
写真提供:新国立劇場バレエ団
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)監修:おけぴ管理人