日本一の高さの超高層ビル「
あべのハルカス」オープンに伴い、13年ぶりに復活した劇場「
近鉄アート館」。
かつて90年代の関西演劇界の盛り上がりを支えた名門劇場、その
<復活・オープニングシリーズ>の第3弾!
日常を生きる “ちょっぴり変な人たち” を愛情たっぷりに描いてきた劇団スクエアの新作
『アベノ座の怪人たち』稽古場に潜入!!
超高層ビル内に復活した劇場「アベノ座」の裏側で起こる、怪奇な事件(?)。
舞台を愛するあまり、歪みまくってしまった怪人たち。
果たしてその正体とは・・・!?
某有名ミュージカルを連想させるタイトルに、高層ビルをバックに仮面をつけた怪人たちがニヤリと笑う公演ビジュアル。
そしていつものスクエア公演とはひと味違う、
“キャラクター重視” “冒険ファンタジー” というキーワード。
むむ。これは気になる・・・!
エンタメの仮面をかぶったスクエアワールドの真骨頂!?
劇団代表にして看板俳優、そして演出も手がける
上田一軒さんにお話を聞いてまいりました。
劇団スクエア代表・演出・役者を兼ねる上田一軒さん
<スクエアとは>
1996年、上田一軒、森澤匡晴の2人により「スクエア」結成。
主に、脚本を森澤匡晴、演出を上田一軒が担当し、コメディの上演を目的に活動する。2001年に北村守、2009年8月には山本禎顕が入団し、コメディユニットとして舞台、テレビ等で活躍。
独自の人物描写と、質の高いコメディセンスで公演を展開し、演劇祭や、イベン ト・テレビなどへの出演するほか、海外からも、「釜山国際演劇祭」に招聘されるなど、各方面から、独自のセンスが評価を得ている。
2012年1月、劇団員オーディションを開催し、劇団員が倍の人数に増える。現在8人で新しいスクエアを模索中。
(劇団公式サイトより)
大阪を中心に活動する劇団スクエア。
旗揚げメンバーである上田一軒さん・森澤匡晴さん、そしてそれぞれに個性派俳優として外部出演も豊富な北村守さん・山本禎顕さんの4人を中心に、一生懸命に生きている “ちょっと変な人たち” の日常を緻密な作劇と演出で描き、人気を集めています。
なのですが・・・今回の作品はいつものスクエアとはちょっと違っているようで・・・?
アベノ座の“ご近所”に潜む怪人たち!
果たしてその正体は!?
上田:
「これまでのスクエア作品は、照明もセットもほとんど変わらず会話だけで成り立っているような
ワンシチュエーションのコメディが多かったんです。
けれど今回は後藤ひろひとさんが座長をしていた頃の遊気舎さんとか、升毅さんのMOTHERとか、僕らが若いころにアート館で観ていた舞台のように、ちょっと突飛な設定で、変なキャラクターがわちゃわちゃと出てきて、場面もどんどん変わるような
エンターテイメント性を取り込んだものをやってみようと思いまして。
アート館ならではの三方囲いの客席も使って、劇場の裏側を冒険していくような作品になっています」
某有名ミュージカルより、むしろモチーフになっているのは「○○○」?
(ヒントは小道具♪)
上田:
「日本一の高層ビルの中に “アベノ座” という劇場があって、その周囲には
舞台を愛するあまりに怪人になってしまった変な人たちがたくさんいるという設定です。
“アート館でしか上演できないもの” をやろうと、森澤(スクエア座付き作家でもある森澤匡晴さん)がこの設定を考えてきまして、
これはキャッチーやなと(笑)。
アベノ座のこけら落とし公演の主演女優が “あるもの” を取り戻すために劇場の裏側へ入り込むというストーリーで、行く先々にいろんな怪人がいて、そのキャラクターをガッツリみせる構成になっています。
某有名ミュージカルとは全然関係ない展開ですけど(笑)」
女優役を演じる増井友紀子さん
怪人たちとの出会いから、彼女は何を見つけるのか!?
上田:
「特別公演ということで客演さんもたくさん呼びました。(出演者を)選ぶ基準は、
“ぱっと見は普通なんだけど話してみるとなんかおかしいぞ” という人を演じられそうな人。その “人となり” をみて、森澤があて書きをしています。
たとえば
山田かつろうくんに演じてもらうのは、
嘘ばっかりつく怪人。なんで次から次へとそんな意味のないことを言うんやろう?という怪人なんですけど、それがすごく似あうんですよね(笑)。
彼自身がそういう人なわけではないんですけど、なんかシレーっと嘘をつきそうな雰囲気があるというか」
シレーっと嘘をつきそうな雰囲気・・・?
「謎の警備員=嘘八百怪人」を演じる山田かつろうさん(売込隊ビーム)
日詰千栄さんが演じるのは「謎の館内アナウンサー」
アベノ座の周辺は怪人だらけ?
「謎の清掃員」=北村守さん(写真中央)と「謎のお客」=小池裕之さん(空晴)
上田泰三さん(MousePiece-ree)は「右脳怪人」!?
上田:
「今日は稽古場に来ていないですけれど、うちの森澤は
非常にバカバカしい台詞を書くのが得意でして。とにかく人間の変な部分をじーっと観察している。人間の悲哀というか、でも愛すべき部分というか…偏った人間ですよね(笑)。演劇人なのに人付き合いもあまり良くない。でも明るく誰とでも付き合える人間だったら、こんな台本を書けないと思いますね。たぶん生活しながら腹がたったことや面白かったこと、いろんなことを溜め込んで、それで書いているんだと思います。
そのほかのスクエアメンバーも俳優として(演技が)うまいんだかヘタなんだかよくわからないんです。なんか・・・
変な奴らなんですよ」
上田さん曰く「演出家に好かれる人」という北村守さん。
「彼は役の解釈が人とはちょっと違うところにくる」
上田:
「北村の演技は
“え?いまなんでその台詞そんな言い方したん?” ということがよくある。本人はひねっているつもりはないと思うんですけど。コメディ劇団にいながら、いわゆる
“笑いのお約束” がわかっていないというか(笑)。でも彼なりに一生懸命考えて演じている。そこで
本人が持つ歪みなのかなんなのか、独特のものが出てくるのがおもしろいんですよね。だから外部舞台への客演も多いのではないかと」
こちらも外部出演多数!の山本禎顕さん
上田:
「山本も最近良く外部舞台に呼ばれてますね。なんでやろうなあ。期待通りに器用に演じてくれるから?あ、それで呼ばれてるんや(笑)。うちでは逆に
“それおもろくないから、やめて” とダメ出しされてますね。
真面目でなんでも器用にこなすタイプやけど、ひたすら追い込まれてから出てくる彼の個性というか人間味というか…
“気持ち悪さ” がおもしろいんですよね。追い込まれると、あの
ほそーい目からなんか気持ち悪いもんが出てくるんですよ」
上田:
「僕も森澤も学生時代に
イッセー尾形さんの一人芝居が大好きで、あんな役者になりたいと思っていたんです。イッセーさんはいろんなおもしろい人物を作り上げて演技で見せるのが本当にうまいんですけど、僕らはあんなふうにはできなかったから(笑)、俳優それぞれの持ち味を生かして、なんとかあのおもしろさが出せないかな、と。
身近にいる “おもろい人たち” が好き?そうですね。好きというか…気になりますよね。実際に近くにいたら腹が立つこともありますけど、舞台の上だとその変なところがすごく愛らしかったり、自分の中にもそういう部分があることに気がつかされたりして。
スクエアという劇団名も、僕と森澤が融通のきかない不器用な人間だったので、四角四面という意味合いでつけたんです。
融通のきかない人間たち、
自分たちは完全な人間ではないというところからスクエアの芝居は始まっている。
誰もがみんなどこか片寄っていたり、性格がひねくれたりとかしていると思うんです。そういう完全ではない人間たちが頑張ってなんとか暮らしている、それを
コメディという表現でみせていきたい、という思いが常にあって。
今回は特に “日常的なお芝居” という枠からはずれて、さらにその変な人たち、キャラクターにグッと寄った舞台になると思います。
むずかしいメッセージとかありません。
変なキャラクターがたくさん出てきます(笑)。
とにかく気軽に劇場に来てもらって、
“演劇って楽しい” “コメディって楽しい” と思ってもらえれば嬉しいです」
上田さんのお話をききながら、自分の中にも “謎の○○怪人” の要素があるかも・・・と、妙に納得してしまったおけぴ関西スタッフ。
かっこ良くて美しい人たちが、愛と正義のために活躍するスペクタクルストーリーももちろん大好きですが、ふっと力を抜いて「いるいるこういう人!」と笑えるスクエアの舞台は、毎日を一生懸命に生きている人の息抜きタイムにぴったりなのでは。
「スクエアといえば!」の柴田隆弘さんによる作りこまれた舞台美術も、作品の設定同様にいつもとは一味違うテイストのものになるとのこと!
※柴田隆弘さん…2008年に史上最年少の33歳で、日本で唯一の舞台美術専門賞である「伊藤熹朔賞」奨励賞を受賞した舞台美術家。旗揚げから関わるスクエア作品のほか維新派、MONOなど多数の舞台を手がけています。これまでのスクエアとはちょっと違う、けれど何よりもスクエアの真骨頂を味わえそうなキャラクターコメディ『アベノ座の怪人たち』。
屈折しまくった怪人たちの “どうでもいい秘密” に思いきり笑っていらしてくださいね♪
おけぴ取材班:mamiko(文/撮影) 監修:おけぴ管理人