“沈まぬ船”と謳われた豪華客船タイタニック、その処女航海での悲劇。
モーリーイェストンとピーター・ストーンによるトニー賞受賞作品、
ミュージカル『タイタニック』再び!
今回上演されるのはロンドンで新たに生まれ変わったトム・サザーランド演出の新バージョン。
オーナー、船長、設計士、乗組員といった船に関わった人々、一等客から三等客までそこに乗り合わせた人々、タイタニック号の最期とともに彼らの人生にスポットを当てたヒューマン・ドラマへと創り変えられ、ロンドンでも大ヒット!
ロンドン公演同様にサザーランド氏の手で創り上げられることでも話題の作品より、タイタニック号の生みの親、設計士・アンドリュース役の加藤和樹さんにお話をうかがいました。
(インタビューは『SONG OF SOULS』神奈川公演と大阪公演の間に行われました)
加藤和樹さん
-2013年の『ロミオ&ジュリエット』出演以降、『レディ・ベス』『ボンベイ・ドリームス』と大型ミュージカルへの出演が続き、ついに『タイタニック』では主演に抜擢の加藤和樹さん。
『タイタニック』のアンドリュース役はオーディションで勝ち取った役とのことですが、初めからアンドリュース役をとお考えでしたか。加藤)ちょうど『レディ・ベス』に出演し、ミュージカルへの興味が大きくなっている時期でしたので、
どの役をというより、まずはミュージカル『タイタニック』という作品に関わりたいという気持ちが大きかったですね。チャンスがあればオーディションに参加したい、そしてその中で自分に合う役がみつけられればと。
-オーディションでの演出家トム・サザーランド氏の第一印象は。加藤)トムさんの第一印象は
「デカいな!」ですね(笑)。
-背の高い加藤さんから見ても・・・?加藤)ええ、僕よりかなり大柄な方なんですよ。なので最初は“わぁ”と思いましたが、お話しさせていただいたら
とても気さくで温かみのある方でした。
-オーディションではどのようなことをされたのでしょうか。加藤)ざっくばらんにお話をして、歌う。オーソドックスなオーディションでしたね。
-歌は劇中のナンバーなどご指定があったのですか。加藤)いえ、僕のほうで用意していきました。これまでに出演したミュージカルのナンバーを歌いましたが、それをまずは準備した形で歌い、その後トムさんから「こんな風に歌ってほしい」との要望がありもう一度歌ったんです。
-その結果、アンドリュース役に大抜擢!その報せを聞いた時の第一声は。加藤)驚きが大きすぎて、
第一声は「あ、そうなんですか・・・」でしたね(笑)。
改めてオーディションを振り返ると、僕自身ミュージカルにすごく慣れているほうでもないですし、クラシカルな歌が歌えるわけでもないので、思うがまま、ありのままでがむしゃらに歌った結果なのかなとは思います。
トムさんからも、今回の『タイタニック』は
そこに生きる人々の“リアル”を描く群像劇なので綺麗に歌うというより、その人たちの生き様を表すような
“感情をあらわにして歌う”歌い方を要求するので、ぜひそのままでと言っていただきました。
今回のバージョンを一度ロンドンで上演しているからこそ、次の日本ではどのような作品になるか。日本公演キャストの僕たちがどれだけのものを出せるかというのをトムさん自身も楽しみにされていると思うので、それには精一杯応えたいと思います。
-感情をあらわにした歌という点では加藤さんのもう一つの顔であるシンガーとしての経験も活きてくるところでしょうか。加藤)そうですね。これまでは、今やっている『SONG OF SOULS』のようなロックミュージカルは別にして、ミュージカル作品でシンガーとしての歌い方が直接的に役立つとはあんまり感じたことはないんです。
でも、『タイタニック』に関してはどちらかというとバックで流れている音楽はクラシカルなものでも、歌でむき出しの感情を表現することが求められると思うので、その意味ではロックに通じるところもあるかもしれませんね。
ミュージカルの経験はまだまだですが、シンガーとしての活動に限らずドラマなど映像での経験など、そのひとつひとつを自分の強みにしていくことで、さまざまな要求に対応できるようになっていきたいとは思っています。引き出しは多いほうがいいですから。
それと同時にミュージカルの基本の発声をもう一度しっかりと身につける必要もあると感じています。
-また、サザーランド氏はその歌声のみならず加藤さんが持つ「カリスマ性」にも期待を寄せている様子ですね。キャスト紹介でのサザーランド氏のコメントをご覧になっていかがですか。演出家からのコメント(公式HPより)
加藤さんのカリスマ性に非常に感銘を受けました。
人間という存在に対しての深い洞察力を持つアンドリュースに相応しいと思います。
加藤)「カリスマ」、全く無縁のものだと思うんですけどね(笑)。
僕自身いたって普通の人なので・・・どうなんですかね。
トムさんがそう感じてくださったということは何かあったのかなとも思いますが。僕はそれに奢ることなく、ひとつひとつ自分にできること、このカンパニーでの自分の役割を果たせるように精進するのみです。
-でも、“カリスマ性”というのはデビュー以来(伝説の跡部!)加藤さんを形容するワードとして常に付いて回っていますよね。先日拝見した『SONG OF SOULS』の天海役もどこかそういった印象でしたし。お話をうかがっていても実年齢よりだいぶ落ち着いた雰囲気を感じます。加藤)確かに年齢より年上に見られることは多く、以前は年上の役を演じてばかりでした。
21歳の時に28歳の人物を演じましたが中身が全然伴っていないので大変でしたね。
最近、やっと役が追い付いてきたかな、いや、でもやっぱりまだかな(笑)。
演じてきた役柄もクールな役や比較的キャラクターの強いものが多かったですね、口数が少なかったり孤高だったり。そういう役だとセリフが少ないんですけど、セリフが無いことほど難しいことはないんです。結局その間何をするかということですから。そこは常に考えさせられます。
-演じる役に対してはどうアプローチされますか。加藤)かつては「役に自分を近づける」方向性でしたが、白井晃さん演出の『オセロ』で「自分に役を近づける」ということを学びました。それによってシェイクスピア作品でありながら自然体で演じることができたんです。『レディ・ベス』でもそうしましたし、今回も
アンドリュースを自分に近づけて、自分の中から出てくるものを活かしたいと思います。
-今の話に出た『レディ・ベス』のロビンはダブルキャストの違いが色濃く出て、見ている側はとても楽しませていただきました。加藤)やっぱり二人の元のキャラクターが違いますからね。いっくん(山崎育三郎さん)はどこか“王子様的”になるし、僕はどうやったって“流れ者”、王子にはなれませんからね(笑)。
-では、ここからはアンドリュース役についてうかがいます。現時点でどのように役をとらえていらっしゃいますか。加藤)アンドリュースはタイタニックの生みの親ですから、
誰よりもこの処女航海を楽しみにしていて、そして誰よりも悔しい思いもする人物です。はじめの意気揚々とした「どうですか、この僕が設計したタイタニックは!」というところから、絶望へと落ちていく
落差を追及していきたいですね。
タイタニックが沈没することは観客のみなさんご存知ですよね。その上で夢と希望に満ち溢れたところからどん底までの感情のうねりをドラマで感じてもらう。
知っていながらも一緒にその落差を体感してもらえるように創り上げたいです。
-最後にミュージカル『タイタニック』を楽しみにされているみなさんにメッセージをお願いいたします。加藤)“タイタニック”という名前はとても有名ですし、その顛末はみなさんご存知だと思います。また、ミュージカル版も以前日本で上演されています。でも、トム・サザーランド氏の新バージョンのミュージカル『タイタニック』では新たな形で創り上げる芝居で「そこに生きる人々の物語」を表現します。ぜひ劇場で、目の前で繰り広げられる誰も見たことのない人間ドラマを体感してください。
-ありがとうございました。設計士アンドリュースの心の振れ幅、そしてタイタニックに乗り合わせた人々のドラマを楽しみにしています。【加藤さんのもう一つの顔紹介コーナー♪】
2014年は『真田十勇士』にはじまり、『レディ・ベス』『SONG OF SOULS』と数々の舞台に引っ張りだこ。2015年も『ボンベイ・ドリームス』ではインド人弁護士、続いてこの『タイタニック』主演とその勢いは増すばかり!
そんな加藤さんですが、シンガーとしても2006年のデビュー以来CDリリース、ライブツアー活動を行っています。
12月3日には11thシングル「snowdrop」をリリース、2015年5月からは
Kazuki Kato Live"GIG"2015TOUR~Ever Onward~も決定!
加藤)舞台作品では役を生き、作品の中での役割を果たすことを第一に考え、
僕自身が伝えたい思いは音楽で届けられたらと思っています。ぜひ一度、ライブにも足をお運びください。もしかしたらちょっと引くかもしれないですけど(笑)。
ご自身を
「子どもがそのまま大きくなってしまったような人間ですよ」という加藤さんの笑顔は舞台上で放つ孤高のカリスマ性とはまたひと味違う魅力を放っていました。ライブでの加藤さんもみなさん要チェックですよ!!
加藤和樹さんオフィシャルブログは
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おけぴ取材班:おけぴ管理人(撮影)chiaki(インタビュー・文)