2013/04/30　こまつ座第九十九回公演『うかうか三十、ちょろちょろ四十』稽古場レポート

劇作家・井上ひさしさんの原点！幻のデビュー作がこまつ座初上演！
来年の創立30周年に向けて始まる「こまつ座30－1周年」企画の第一弾は
全編東北弁のこまつ座第九十九回公演！
『うかうか三十、ちょろちょろ四十』！
その稽古場の様子をお伝えします。

福田沙紀さん、藤井隆さん

昭和33年、井上ひさしさん24歳。
上智大学に籍を置きながら、浅草のストリップ劇場で文芸部員としても働いていた、
そんな時代に書かれた作品です。

桜咲き乱れる季節、東北の田舎を舞台にした
“とのさま”と働き者の娘“ちか”、
ご家来、お侍医（おじい）、大工の“権ず（ごんず）”のちょっと不思議な20年の物語が
心地よい東北弁に乗せて届けられます。

“とのさま” 役には、最近舞台での活躍著しい藤井隆さん。

ころころと変わる表情！

若い娘に惚れてしまい、“お侍医”（小林勝也さん）に胸のうちを明かす“とのさま”。
“お侍医” のクールな切り返しが笑いを誘います。

“とのさま” と “お侍医” （小林勝也さん）

働き者でしっかり者、
かわいらしいけれど、どこか大人びている村の娘“ちか”を演じるのは福田沙紀さん。
可憐さの中にも意志の強さを感じます。

身寄りのない村娘に諭されるとのさま

大工の “権ず” 役にはD-BOYSの鈴木裕樹さん！

“権ず” （鈴木裕樹さん）

背中の演技、せりふのない場面でも存在感を示す“権ず” 。
ひとつひとつの仕草にもご注目下さい！

後半、“ご家来”役の田代隆秀さんの登場で
ドラマはぐぐぐぐぐっと動き始め、
物語は井上流ブラックユーモアの波に包まれていきます！

演出は井上作品ではもうお馴染みの鵜山仁さん。
お稽古場では、せりふのやりとりと動きの密接な結びつきを改めて感じる、丁寧な作品創りがされていました。

そして、この作品のイメージを膨らませてくれる劇中音楽は
荻野清子さんによるオリジナル！
(最近では「ホロヴィッツとの対話」、NHK連続テレビ小説「純と愛」の音楽等)

子役さん（阿部夏実さんと松浦妃杏さんのWキャスト）が歌う
わらべ歌もとっても耳なじみがよくて印象に残ります♪

耳なじみといえば、やはりとても印象的だったのは東北弁の響き。
～のし
～だべし
井上作品の魅力のひとつ、お国言葉の味わい深さや面白さは初期の作品からも
しっかりと感じられます！
大阪府出身の藤井隆さんをはじめとするキャストのみなさんの東北弁も
見事にしっくりはまっていますよ。
話す言葉、そのリズムで人物像が透けて見えるようなお芝居って素敵です！

さらに言葉の響きの魔法！
もちろん衣裳やセットなど本番とは異なりますが、その言葉の響きで
とき　むかし
ところ　東北の、とある村はずれ
平和なんだろうなぁ、でも、ちょっと貧しいのかな。
そんな情景が思い浮かびます。

プロローグ、本編、エピローグで構成される一幕もの、
昔話のようでちょっとファンタジックな物語と毎年変わらず咲き誇る桜、
そんなコントラストにもしみじみしながら、“仕合せ”について
考える帰り道でした。

井上ひさしさんが作家としての第一歩を踏み出し、
文部省芸術祭脚本奨励賞を受賞した記念すべき作品が鵜山仁さんの演出で蘇る！

こまつ座第九十九回公演『うかうか三十、ちょろちょろ四十』
舞台に咲き誇る桜とともにどうぞお楽しみください！

＜公演情報＞
2013年5月8日～6月2日＠紀伊國屋サザンシアター
上演時間は約1時間15分。
作品HPはこちら

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