2013/07/29 交響劇『船に乗れ!』山崎育三郎さん、福井晶一さんインタビュー

今年12月にシアターオーブにて上演される交響劇『船に乗れ!』
ビジュアル撮影現場に潜入したおけぴ取材班(おけぴ撮影レポ)、
さらに!撮影を終えられた、ダブル主演の山崎育三郎さん、福井晶一さんに
お話をうかがいました。



原作は藤谷治さんの青春音楽小説3部作『船に乗れ!』、
2010年本屋大賞ベストテンに選ばれた小説が “交響劇” という
新スタイルのミュージカルとして初舞台化です。

45歳になったサトルによる高校時代の回想というスタイルで綴られる作品。
その主人公、津島サトルの高校時代を山崎育三郎さん、
45歳のサトルを福井晶一さんが演じます!


‐『レ・ミゼラブル』にてジャン・バルジャン役、マリウス役として
共演されているおふたりですが、まずはお互いの印象からお聞かせください。

(※福井さんはジャベール役でもご出演)


山崎育三郎さん

山崎)
福井さんとはレミゼで初めてお会いしましたが、
誰に対しても誠実で優しく、みんなのお父さん的存在です。
舞台上でも、福井さんが持っている深い愛情とバルジャンという役がぴったりと重なって、
ラストシーンではいつもぐーーーっときています。


福井晶一さん

福井)
レミゼの稽古が始まってすぐに、僕は怪我をしてしまったのですが、
その時にすぐに「大丈夫ですか」と連絡をくれたんです。
その頃は、まだあまり話したこともなかったのですが、
すぐに僕のメールアドレスを調べてメールをくれる、そういう青年なんです。

そして、こんなにやわらかい中性的な魅力があるのに、
舞台に立つと内に秘めた情熱を僕にぶつけてくる。
彼ならコゼットを託せる!
すごく男らしいマリウスなんです。

‐深い愛情で結ばれた義理の親子を演じているおふたり、この作品では、
時を隔てた“ひとりの人物”サトルを演じるわけですが。。。


山崎)
僕は青春時代、高校生の津島サトルを演じます。
人間として未熟な分、傷ついたり、挫折をしたりいろいろな思いをするわけですが、
福井さんのような雰囲気の大人になれるのなら、
それも無駄じゃないと思えます!
のちのサトルを福井さんが演じるというだけで、
高校時代のサトルが多少間違ったことをしてしまっても大丈夫!
と安心できるんですよね。
ですので、僕は自由にサトルを演じさせていただきたいと思います(笑)

福井)
なんだか大きなものがのしかかってきたような気が・・・(笑)
何年も経って僕になるんだね。

山崎)
まぁ、僕も高校生に見えるかわかりませんが・・・(笑)
最後だと思って頑張ります!

福井)
大丈夫、ちゃんと見えるよ!!


見えます!

‐では、作品についてもう少し具体的にお話を伺いますが、
“交響劇” というのは耳慣れないスタイルですがどの様なものになるのでしょうか。


福井)
僕も初めて聞きました(笑)

山崎)
そういうジャンルがあるのかもわかりませんが(笑)。
まず、ベースとしてお芝居があり、そして音楽、歌がある。
じゃあ、通常のミュージカルと何が違うのかというと、
モーツァルトやベートーヴェンといったクラシックの名曲を集め、
そのメロディに日本語の詞をはめているということです。

それプラス、40人近い編成の大規模なオーケストラ(東邦音楽大学管弦楽団の
現役音大生のみなさん!)が舞台上で演奏します。
それもただ、BGMや伴奏というだけではなく、
作品の中に一緒に入り込んで学生役をやりながら、弾いたりなんてこともありますよ。

‐ “音楽” の存在が大きいですね!

山崎)
この作品の舞台は音楽高校ですし、サトル自身チェロを専攻しています。
物語もサトルとオーケストラ仲間たちとの関係が中心に描かれているので、
芝居の中でもオーケストラ、クラシックの存在はとても大きいんです。
芝居とクラッシックの融合という新しいスタイルの作品になるので、
“交響劇” という言葉を用いています。

‐音楽に満ち溢れた、素敵な作品になりそうですね。

山崎)
はい、歌もたくさんありますよー!

‐楽しみです!
続いては、今、話題にも出た物語について。原作の印象からお聞かせください。




福井)
原作で学生たちが音楽に打ち込んでいるように、
僕は高校時代、甲子園を目指して野球に打ち込んでいました。
音楽と野球という違いはありますが、
青春時代に何かに打ち込んで、挫折して、その中で何かを選択しながら
将来に向かっていくというところなど、自分自身に重なる部分もたくさんありました。
演じる上でも、そのあたりがヒントになるのかと思っています。
まぁ、僕が演じるということは、まずは僕の引き出しから出すしかありませんからね(笑)



山崎)
僕自身、音大の付属高校に通っていたのですが、
自分の学校の話なんじゃないかと思うくらい共通点が多く、
とても感情移入できました!
教室や練習室などの “画” も自然と浮かんできて、
クラスの仲間が同時にライバルだったり、みんな自分が一番だと思って
入学してくる中で自分より全然巧い先輩がいたり、
常にオーディションのような感じで順位が付けられたりする環境。
そしてその中で、恋愛したり、先生に反抗したり・・・思春期ですからね!
しかも、同級生に(この作品の主人公の役名と同じ)津島くんという
チェロの男の子がいたんですよ(笑)
運命的というか、自分にリンクする部分が多いですね。

福井)
僕は足を踏み入れたことのない世界ですね(笑)
育三郎くんにいろいろと教えてもらわないと!!

‐今、お話に出た “チェロ” 。先程の撮影でもチェロを携えてのカットもありましたが、
チェロに触ったのは?

(撮影の様子、詳しくはおけぴ撮影レポをご覧ください!)



山崎)
初めてでしたね。学生時代に触っておけばよかった(笑)。
指の形や手首は真っ直ぐとか、ビブラートの仕方とか指導も受けましたが、
相当特訓しないと弾いていないのバレバレになってしまいそうです。
僕のひとつの課題ですね。

‐ということは劇中でも?

山崎)
さすがに弾く(=音を出す)ことはないですよ(笑)
でも、芝居の中で学生と一緒に席に座り、あて振りというか、
ある程度それらしく見せたいので、それはかなり頑張らないと!

-福井さんはいかがですか?

福井)
僕はもちろん触るのも初めてでしたし、
初めてチェロという楽器の音色をじっくりと注意して聴いた気がします。
すごく(心に)響いてきますよね。

山崎)
チェロは弦楽器の中でも一番人間の声に近いといわれていて、
音域的にも人が歌っているのに近いんです。
なので、あの甘い切ない音色が心に染みるんですよね。

福井)
そうそう、それ感じた!!そういう楽器なんだね。

‐この物語の中で、主人公サトルはチェロ奏者として大きな挫折をしますが、
同じ表現者としてそのあたりはどう感じましたか。


山崎)
学校では譜面通りに歌う、癖のない声で正しい姿勢、正しい口の開け方で歌う、
それが正解で、それによって基礎が身に付くんです。
ところが、実際にミュージカルで歌ったりお芝居をしていると、
それまでクラッシクでやっていたこと、
学校で学んでいたことがすべてではなくなる瞬間というか、
気付きの瞬間があるんですよね。
挫折とはまた違いますけどね。
自分の心が何を感じ、そして何を伝えたいかを表現することは
正解のないことなんです。
もちろん、基礎は大事です。でも、やっぱり最後は気持ち、心で弾き、
心で歌うことの大切さに気付かされました。

‐表現者としての極意ですね。

福井)
バランスなんだよね。
やっぱり基礎が崩れたらダメだし、基礎があって表現が行き過ぎてもだめだし、
そこのバランスは大切だなと感じています。
永遠の課題かもしれないね。

‐では、ここからは少し作品を離れ、おふたりの青春時代のお話に。
どんな青春時代でしたか?やはり、それぞれ歌、野球一色?




山崎)
もちろん “ミュージカルに出る!” という夢に向かって一直線でした。
でも実は・・・僕も野球をやってたんですよ。
小学生のころ、一応、全国大会にピッチャーとして出場して
西武球場で試合やったんですよ!
その後、子役として役者を始める時に、ミュージカルを選んで野球をあきらめたんです。

福井)
僕は逆なんですよ。
子どものころから歌が大好きで、小学校の卒業アルバムには「将来の夢は歌手か野球選手」!

山崎)
僕も同じこと書いてました!!プロ野球選手になりたかったんです!

福井)
ただ、僕は田舎に住んでいたので、歌や舞台の世界がどんなものなのかも
分からなかったので、野球の道を選びました。
小学校3年生で習い始めたピアノも「野球がやりたいからやめさせてください」って
3か月で辞めてね。
以来、楽器はさっぱり(笑)。



山崎)
僕はピアノは副科で必ずやらなくてはいけないので、僕は無理やりやらされていた感じ(笑)
今は好きで、趣味で弾いていますけど。

そうそう、一度は辞めた野球ですが、アメリカに留学した時は野球部に入ったんです。
実は州大会で優勝するくらいの強豪校で、入部にも試験があったんです。
二軍のベンチ、ギリギリで入れてもらえたんですけど、走り込みとノック、
練習が厳しくて・・・何しに来たんだろうってくらい(笑)

でも、一度だけ代打で試合に出してもらえて、
「Iku Yamazaki from Japan!!」とコールされ、気分はイチロー選手ですよ。

‐おおっ、そして結果は?

一球目、初球は甘いと思い、打ったら・・・センター前ヒット!
我が野球人生に悔いなし!!
今でも野球大好きです!



福井)
今、育三郎くんの話を聞いていて思い出したんだけど、
僕は中学の時に合唱やっていたんですよ!

‐ええっ!

合唱部には女子しかいなくて、秋の合唱コンクールのために助っ人で入ったんです。
本当に数か月だけでしたが、みんなで歌うことがすごく楽しかったんです。

‐ちなみに結果は?

北海道で準優勝!!

‐素晴らしい!

初めは、野球と音楽、全く違う青春時代を過ごされたのかと思っていましたが、
実は共通点がたくさんあるおふたり、
こうして“ひとりの人物”を演じることも、ごく自然なことのように思えてきました。
『船に乗れ!』、12月が楽しみです!!
では、最後に、この作品中で悩み葛藤する青春真っ只中の若者、
若者世代に向けてひとこと!


山崎)
自分が好きなことがみつかったら、それを一生懸命やるのもいいと思うし、
そうじゃない子はいろんな友達と遊ぶことも勉強することも、
無駄な経験はないと思うので、全力で学生時代を謳歌して欲しいと思います。

あきらめずに自分が好きなことを自分を信じて頑張れば、その生活が
大人になったときに繋がってくると思うので
夢はかなうと、諦めずに一生懸命進んでください!

福井)
そのとおり!人生に無駄はない!
全部言ってもらった感じなので、僕からは。
この作品に参加してくれるオーケストラのみなさんは、
育三郎くんの母校の方々なんですよね。
彼らも自分たちの中からスターが出て、
素晴らしい仕事をしていることに刺激を受けると思います。
ご覧いただく方も、若い世代も、大人の方も、クラシックがお好きな方もそうでない方も、
それぞれ響くものがある作品です。
ぜひ、劇場に足をお運びください。

‐ありがとうございました!


【こぼれ話】
‐作品のスタイルに沿って、高校時代の自分に声をかけるとしたらの問いから
次回作の構想ならぬ、妄想が・・・




福井)
甲子園を目指していた高校最後の夏、僕が最後のバッターだったんです。
キャプテンをやっていたんですけど、僕まで回せって、みんなで繋げてくれて。
その打席、最後に僕は外角のストレートだと思って振ったら!!
カーブでした。結局、泳いでライトフライだったんです・・・。
あの時の自分に、
「もう一球待て!」と言いたいですね(笑)

山崎)
それ、面白い(笑!!!)
あ、今度野球のミュージカルやりたいですね!

二人)
タイトルは「一球待て!」で(笑)



交響劇『船に乗れ!』ビジュアル撮影レポはこちら

【公演情報】
100年分のありがとう。ハウス食品PRESENTS
アトリエ・ダンカンプロデュース
交響劇『船に乗れ!』
2013年12月13日(金)~21日(土)@東急シアターオーブ

<スタッフ>
原作:藤谷 治(ポプラ社刊「船に乗れ!」より)
脚本:鈴木哲也
演出・作詞:菅野こうめい
音楽監督:宮川彬良
プロデューサー:池田道彦
指揮:西村 友

<キャスト>
山崎育三郎/福井晶一
小川真奈 平方元基 増田有華・谷口ゆうな(Wキャスト)
松岡卓弥 加藤雅美 入野自由・石井一彰(Wキャスト)
輝馬 前山剛久 木内健人 西岡優妃 吉田萌美
金沢映子/加藤虎之介
田中麗奈/木の実ナナ/小野武彦
東邦音楽大学管弦楽団

大人になったサトルが振り返る、音楽高校での3年間。
同級生や教師達との恋・希望・挫折に彩られた怒涛の学校生活。
彼を残酷な運命へと導いたドイツ留学。
美人ピアノ教師とのミステリアスな関係・・・。
思い出されるのは心優しく、もの哀しく、
あらわれてたちまち消えていくメロディだけだ。
そして曲が終わっても、彼の乗り込んだ船は揺れ、航海は続いて行く。

公式サイトはこちら



おけぴ取材班:おけぴ管理人、chiaki(インタビュー/文) hase(撮影) 

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