井上ひさしさんが大切にされていた
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに~」観劇後には自然とその言葉を反芻している、井上芝居の原点のような作品!
音楽劇
『それからのブンとフン』を舞台写真を交えながらご紹介いたします。
フン先生(市村正親さん・中央)とブンたち!!
まずは作品について、
劇作家井上ひさしさんの処女長編小説「ブンとフン」をもとに、
ご自身の手で1975年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした戯曲、
それが
『それからのブンとフン』。
大友憤役 市村正親さん/ブン役 小池栄子さん
腐った世の中に憤る、その名も憤(フン)という貧乏作家が主人公。
彼の小説から飛び出した大泥棒 “ブン” が
あんなものやこんなものを盗み出してさぁたいへん!!
しかも四次元のブンは一人じゃない?!。
たとえば、修道女ブン、典型的馬鹿殿ブン、コソ泥ブンに猫ブンなどなど、
老若男女、動物まで、本の数だけ増殖し飛び出してくるのです。
(冒頭の写真をご覧ください)
てんやわんやの大騒動の中で、フン先生はブンとともに人の心の
邪悪な虚栄心や権威を盗み始めて・・・
井上さんの分身ともいえるフン先生に市村正親さん、
ちょっと風変わりなんだけど、憎めない、物語の主人公。
かなりのインパクトのある風貌ながら、そこは違和感なしの人物像を
作り上げられています!!
隣に寄り添うのは最初に姿を現したオリジナル・ブン役の小池栄子さん。
小池さん、いいんです!舞台での佇まい、声の圧、表情、いいんです!
無邪気だったブンがどんどんと変化していく、その姿を通して、
感じるものは・・・大きいです。(これはぜひ劇場で)
悪魔役 新妻聖子さん/クサキ・サンスケ役 橋本じゅんさん
そこにブンを追いかける警察長官や悪魔が登場してブン捕獲大作戦が!
その警察長官クサキには橋本じゅんさん、いわば “悪役” ってやつなんですが、
“上り詰めた地位にはしがみついていたい、権力に媚びる”
実は一番生々しい人間。彼もまた“こころ”を持った人間なのです。
そして、意外や意外、“悪魔” 役に新妻聖子さん。
この悪魔、これぞコケティッシュ悪魔ちゃん!悪魔たるもの、やっぱり
“悪いんだろうけど、なんか惹かれちゃうんだよね~” 要素、大事です。
物語の中では、悪魔目線の世の中の姿にドキリとさせられること多々あります!
作品のキーパーソン!
ほかにも、山西 惇さん、久保酎吉さん、吉田メタルさんら個性派キャストが
ご出演!
ドタバタコメディな展開のそのあとは、
あっと驚くどんでん返しの果てに出会うメッセージ、警鐘。
そして、その後数々の名作を、文字通り身を削って生み出す井上さんの
覚悟のようなものまでが感じられるラストシーン。
劇中の音楽も♪常識ソングや♪ブンチャッチャのような面白いものから
♪ただ好きなのさストレートに心に染みてくるものまで、多彩。
ピアノ演奏はおなじみの朴 勝哲さん♪
井上作品初参加の方も多くいらっしゃる中で、井上さんの想いをしっかりと
舞台作品として創り上げる司令塔は、数々の井上作品を手がけられてきた
演出家・栗山民也さんです!
【おまけ】
ちょうど開催された終演後のトークショーでも
(記憶を頼りに記しておりますので、構成、細部など不確かで申し訳ないのですが、
思わずホロリとしてしまう素敵な内容でしたので一部ご紹介)
橋本じゅん)
この作品、アニメやCGなどを使えば簡単にできるんだろうけど、
どうやって舞台で4次元を創り上げるのだろうと思いました。
でも、それこそが演劇のするべきことなのかもしれません。
舞台裏でも役者はなりふり構わず着替えています。
僕はひと役なので、それを見ながら一丸となるために台本をさらに読み込んだり。
角川裕明さん)
僕らが早着替えの時、じゅんさんは台本で、小池栄子さんは扇子で
一生懸命にあおいでくれるんですよ(笑)すごくうれしいです!
橋本じゅん)
一応、参加しています(笑)
そうやって僕らが理想に向かって、諦めずに(邪魔するものから)逃げ切る。※
そこに音楽、照明などなどが加わって、最後にお客様が受け止めてくれて
成立する、そんな “演劇” にできることがあると思います。
僕らにとっても演劇の力を改めて信じたくなる作品です!
※このコメントのニュアンスはご観劇いただけるとお分かりになるはず!!
井上さんからのメッセージ、警鐘、激励をもらい、
演劇の力を改めて感じる素敵な作品『それからのブンとフン』。
75年に書かれた戯曲のさらに
“それから” な現代を生きる私たちに
ズドンと響きます!!お見逃しなく!
おけぴ取材班:chiaki(文)写真提供:こまつ座 監修:おけぴ管理人