【日本初演から50周年、愛され続けるミュージカル】
「アナテフカのユダヤ人はみんな、屋根の上のヴァイオリン弾きみたいなもんだ。
落っこちてクビを折らないように気をつけながら、愉快で素朴な調べをかき鳴らそうとしている。
どうして、そんな危ない場所に住んでいるのかって?
それは生まれ故郷だからさ」 ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』のブロードウェイ初演は1964年。トニー賞ミュージカル部門の最優秀作品賞、脚本賞、作曲賞など7つの賞を獲得。日本では1967年秋、帝国劇場での2か月公演で幕が開きました。
森繁久彌さんのテヴィエ、
越路吹雪さんのゴールデ以下、豪華キャストで初演。その後、1996年からはエネルギッシュで愛嬌のある
西田敏行さんのテヴィエが登場。
そして、2004年からは21世紀版『屋根の上のヴァイオリン弾き』と銘打ち、
市村正親さんがテヴィエ役を務められています。妻のゴールデは市村さん曰く「最強の女房」
鳳蘭さん、2009年以来の名コンビです♪
後列)神田恭兵、唯月ふうか、入野自由、実咲凜音、広瀬友祐、神田沙也加
前列)市村正親、鳳蘭 (敬称略)
【ご登壇は♪サンライズ・サンセットに乗せて】
4組のカップルとして、キャストのみなさんが歌いながら登場。
1905年、帝政ロシアの時代、アナテフカという寒村で酪農業を営むお人好しで働き者のテヴィエとその妻ゴールデ、上の3人の娘と彼女らと運命を共にする男たち…そんな家族の物語。
入野さん、実咲さん、市村さん、鳳さん、広瀬さん、沙也加さん
広瀬さん、神田沙也加さん、神田恭兵さん、唯月さん
あの家族の物語が帰ってくるんだ!そんな記憶を呼び起こさせるナンバーです。
もの悲しさのあるメロディですが、どんなときでも“陽はまた昇る!”そんな人間の営みの力強さが込められています。
結果…、この日は一日中頭の中で♪サンライズ・サンセットが流れ続けるのでした
【ご挨拶】
テヴィエ:酪農業を営み、ユダヤのしきたりを重んじる父。5人の娘には厳しい父親だが妻には頭が上がらないテヴィエ役:市村正親さん
「50年色あせない理由。まず、(初演の)森繁久彌さんなしに、この作品が日本に定着することはなかったと思います。それと同時に作品の持つ力、非常に豊かなドラマです。家族の物語というのは普遍的なんですよね。娘たちがそれぞれの道を歩み出すのですが、(子供は)親が望むのとは違うほうに行く…それは僕も家庭で痛感していることです(笑)」
この作品、役は特別、役者冥利に尽きるとお話しされる姿が印象的でした。
ゴールデ:テヴィエの妻、口うるさいが愛情深く5人の娘を育てている肝っ玉母さんゴールデ役:鳳蘭さん
「私はちょっとしか怒っていないのに、いっちゃん(市村さん)はすごく怯えてくれるんです。そうやって芝居で私をかかあ天下に押し上げてくれるんです。いっちゃんのお陰で成立する恐妻です。このミュージカルが長く愛されるのは、3大要素、ドラマ、音楽、ダンスのすべてが揃っているから。すべてが良い!」
それに対して、市村さんは「鳳さんは大らかで、コミカルで、泣き虫で、“女房”のあらゆる部分を兼ね備えている。素晴らしい女優さんであり、母親であり、女性です」と仰っていました。40年来のお付き合いという、息ぴったりのおふたりです。
ツァイテル:肉屋のラザールに求婚されるが、モーテルとの結婚を望む。貧乏でも愛に生きる強い心の持ち主長女ツァイテル役:実咲凜音さん
「宝塚退団後、初めてのミュージカルが初演から50周年を迎えるこの作品であること、素晴らしい共演者のみなさんと一緒に舞台を作れることを楽しみにしています。いよいよ始まるワクワクと身の引き締まる思いでいっぱいです。自分の殻を破りたいとチャレンジを決めました」
ホーデル:自分の考えをハッキリと言う活発な子。革命を志す学生のパーチックと恋に落ちる次女ホーデル役:神田沙也加さん
「歴史ある作品への出演が決まったときは興奮しました。憧れの先輩方とご一緒させていただく中で、たくさんのことを勉強したいです。個人的には、私は一人っ子なので姉妹で、家族みんなでワイワイ楽しい場面、ときに切ない場面、そういう時間を過ごせることを楽しみにしています」
チヤヴァ:本が大好きで好奇心旺盛。ロシア人青年フョートカと出会い…三女チャヴァ役:唯月ふうかさん
「50周年の記念すべき年に初参加できることをとても嬉しく思っています。それと同時に頑張らないと!という気持ちです。私も一人っ子で、姉妹のいる役も初めてなので、今から楽しみです」
モーテル:村一番の貧乏仕立屋。純真な心でツァイテルを愛しているが、気が弱く、なかなかテヴィエに二人の仲を言いだせないモーテル(仕立屋)役:入野自由さん
「前回はパーチックとして出演し、今回はモーテル。気持ちを新たにこの伝統ある作品に真摯に取り組んでいきたい。前回は経験も浅かったこともあり、自分がやることに一生懸命すぎて、作品を掘り下げることはできませんでした。今回お話をいただき、いろんなことを経験した今なら、もっと役や作品を深く深く掘り下げられると思い、出演を決めました」
パーチック:キエフ出身の学生で、テヴィエ一家の家庭教師。進歩的な行動で、保守的な村人たちを驚かせる。唯一の理解者はホーデルパーチック(学生)役:広瀬友祐さん
「この作品に出演でき、そして市村さんとご一緒できることを嬉しく思います。この気持ちを責任に変えて自分らしいパーチックを演じたいと思います。この役は前は自由くんがやっていた役です。こんなにもタイプの違う人間が同じ役で(笑)。これまで演じてこられた先輩方とはまた違うパーチックにしたい」
フョートカ:本屋でチャヴァと出会い、想い合う。ユダヤと異教徒との結婚にテヴィエからは大反対されるが…フョートカ(ロシア人青年)役:神田恭兵さん
「50年続いたミュージカルに出演できることは本当に嬉しい一方で、ここからさらに先へ繋いでいく使命を担ったと思うと身が引き締まる思いです。チャヴァとの結婚を許してもらえるように、頑張っていきたい」
結婚を許してもらえるようにという言葉に、テヴィエパパは…あれれ(笑)
【♪マッチメーカー歌唱披露】
最後は三姉妹による♪マッチメーカー(結婚仲介の歌)の歌唱披露です。
結婚仲介人のイエンテが素敵な結婚相手を見つけてくれることを夢見る乙女たちの可愛らしい楽曲です。
「今、♪マッチメーカーを後ろで聞いていて、素晴らしいミュージカルだなとしみじみ思いました。ウルウルしちゃった。今回は娘たちも、娘たちを奪っていく男たち(笑)も、新しいメンバーです。さらにラザール(娘ほど年の離れたツァイテルに求婚するお金持ちの肉屋)を今井清隆さんが演じます。僕が、ぜひ彼のラザールを見たいとお願いして実現しました。僕も13年前からやっていますが、またゼロから稽古場で作り上げたい。前より楽しく、新しい発見のある作品になると思います。ご期待と応援をよろしくお願いいたします」(市村さん)
【全国ツアー公演もあります】
今期の公演は2018年2月12日(月・祝)のウェスタ川越大ホールにて大千穐楽を迎えます。川越は市村さんの故郷!
「川越に素晴らしい劇場ができ、こけら落としのときにご挨拶に行きました。いつか何か上演できればと思っており、今回、この作品を上演することになりました。1回公演だと思ったら3回も!大変だ!川越に入り浸って、チケットを売り歩かないといけないな。動員に励みます(笑)。父も母もすでにこの世を去りましたが、二人が見に来るつもりで頑張りたい。当然地元の友だち、応援してくれる方々、きっと盛り上がる大千穐楽になると思います」(市村さん)
そして、1月24日(水)からは博多座さんでの公演です!
テヴィエ一家の三姉妹の博多公演への意気込みは…もちろん!
「博多座さんは、お客様との距離感が近くて大好きな劇場です!」(実咲さん)
「楽屋も居心地がよく、ロビーはクラシカルですよね」(沙也加さん)
「カーテンコールで客席が明るくなったときにお客様の笑顔がよく見える素敵な劇場です!」(唯月さん)と劇場大絶賛!
(唯月さんは来年3月、博多座での『舞妓はレディ』も控えています) そして、みなさんが口々に仰っていたのは“美味しいもの”、姉妹でのお食事会が開催される模様です!
全国ツアーは大阪・梅田芸術劇場、静岡・静岡市清水文化会館、名古屋・愛知県芸術劇場、そして、福岡、埼玉公演となります。
【こぼれ話】
“しきたり”というのがこの作品のキーワードの一つ。我が家のしきたりと言えば?との質問にユニークな答えをされたのが入野さん。
「物心ついたときから両親のことをお父さん、お母さんと呼ばずに愛称で呼んでいます。(どんなふうに呼んでいるかは)それは恥ずかしいのでやめておきます(笑)」気になる!!
長年愛されている…のだけれど、意外にもまだ観たことがない。これは名作あるあるの1つだったりします。まだご覧になったことのない方もぜひぜひこの機会に!長年観続けている方は、名コンビの両親とフレッシュな3姉妹とお相手役が織りなす新しい『屋根の上のヴァイオリン弾き』をお楽しみに。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人