2013/09/27 新国立劇場『エドワード二世』稽古場レポート

新国立劇場「Try・Angle-三人の演出家の視点-」シリーズ第2弾は
クリストファー・マーロウ作、森 新太郎演出『エドワード二世』。
エリザベス朝演劇、歴史劇、王位をめぐる裏切りと愛憎の物語・・・の稽古場は
“重そう” というおおかたの予想を鮮やかに裏切る“オモシロ”がいっぱい!


エドワード二世(柄本 佑さん)
戴いた王冠からもお分かりの通り、このときすでに王です!

稽古序盤は小返し(シーンごとの抜き稽古)で丁寧にシーンが創り上げられていく
様子を拝見!
幕開きの1幕1場からのスタートでしたが、率直な感想は
「え、え、エリザベス朝、このテイストでいくんですか?!
笑いがこらえられません、笑っちゃっていいのでしょうか・・・。」

そんな戸惑いの答えは、森さんの様子を見れば一目瞭然でした。

森さん、めちゃめちゃ笑ってらっしゃる!!
そして、次の瞬間には芝居を止めて軽やかに舞台上へ。


後ろ姿で恐縮ですが、演出の森 新太郎さん(写真左)

森さんの口からは「そこ、もっとバカっぽくしましょう!」
という指示なのですが、役者のみなさんは当然、真剣そのもの!


大真面目にこんなことやあんなことを・・・思い出すだけでにやけてきます(笑)

さて、ご紹介が遅れましたが、ここまでの写真でガッツリご登場いただいて
おりますのは、タイトルロール・エドワード二世を演じる柄本 佑さん。

賢き王の資質ゼロながら名君と呼ばれた父を継いで得たイングランド王の地位。
学友ギャヴィストンを溺愛し、分不相応な地位を与えたことなどで
貴族の反発を招いた王、エドワード二世。

玉座にエドワード、王妃の席にギャヴィストン(下総源太朗さん)・・・ありえない

ダメダメなエドワード二世という人物像に奇妙なまでの説得力を持たせる柄本さん。
エドワードの行動に共感できるかと問われると、明らかにNOなのですが、
「愛する人と一緒にいたい」、「王の座は奪われたくない」・・・。
ひとつひとつの場面での彼の感情・行動に嘘がないのです!

こちらは貴族のみなさま。どうです、この重厚感!

木下浩之さん 石田佳央さん 大谷亮介さん 瑳川哲朗さん 原 康義さん

大谷亮介さん、瑳川哲朗さんをはじめとするみなさんの声の響きは幸せ~。
ですが、会話の内容はというと・・・
己の地位、財産、権力第一!の反省しない人々なのです。



人間的には大幅に破たんしているのだけど、物語の登場人物としての
描かれ方の一貫性はあって決して破たんしない。
非常に残念なのだけど、そういう人だったのね。なんだかんだで納得して
しまう人物像が創り上げられています。

森さん曰く
“マーロウならではのとにかくどいつもこいつも反省しない、成長しない人々”
傍から見ていると残念極まりない人々を見事なまでに個性豊かに
創り上げる森演出と力のある俳優陣の強力タッグです。
また、多くの俳優さんが特設Webサイトにて紹介されている
代表的な役のほかにも複数の役を担う!
ベテランのみなさんが舞台上も舞台裏も駆け巡るのです!


気に入らなければあらゆる手段で引きずり落とす!
写真左はエドワード二世の異母弟ケント伯爵(窪塚俊介さん)




細やかな確認作業が済むと、いよいよ通し稽古へ!
一幕を拝見しましたが、その展開のテンポの良さは圧巻。
復権、嫉妬、策略、追放、復権、惨殺・・・それが目まぐるしく展開していくのです。

そんな中でもエドワードとギャヴィストンのシーンは
甘ったるい(失礼・笑!)ムーディーな音楽も流れてきて何とも昼メロチックな雰囲気。

愛おしい!

離れたくないっ・・・?!

別れのシーンでは、心の片隅で「貫一、お宮か!!」とツッコミをいれたくなるほど!!
このバカップル(?!)ギャヴィストンの追放と帰国を繰り返しながら、展開する権力抗争!

そんな王に貴族はしかめっ面

叛乱軍を指揮することとなるモーティマー(石田佳央さん)と王妃イザベラ(中村 中さん)

フランス王の娘であり王妃である美貌と知性のイザベラ。
しかし、夫エドワードの心はギャヴィストン、そしてスペンサーに・・・。
影と気品のある中村さんのイザベラ、二幕の展開も気になります!

異母兄弟の二人の関係はいかに!

父の代からの臣下たちに責められ・・・

ぴょーん!

もうその展開の速さに巻き込まれ、次どうなるの!!気づけば夢中です!


王子エドワード(安西慎太郎さん)の描かれ方にもご注目ください!

一幕もかなりスピーディーながら、どうやら二幕はさらに怒涛の展開を見せるとのこと。
ギャヴィストンを追放し、愛人モーティマーとともに王を幽閉し、
王子への譲位を画策するイザベラの運命は、そしてエドワード二世は・・・。


「ある一人の人物が野心を抱き、ほかの誰かと結託して行動を起こし
ついに権力を掌握する。
しかし、すぐに裏切られて破滅していく。
この流れが幾度となく繰り返される。
虚しい権力闘争の果てに一時的な勝敗はついても、
本当の出口や希望の光を見つけた者は誰ひとりいない。
作品に漂う停滞感は、非常に現代的かつリアル。」(森さん・公式サイトインタビューより)



飄々とした中でふと見せる本気にドキリ!柄本エドワード、必見!!

日本では約半世紀ぶりの上演、
しかもシェイクスピア研究の第一人者でもある河合祥一郎さんによる新翻訳台本
(台詞が面白いほどするすると頭や心に響きます!)と、
この秋注目の『エドワード二世』。
シェイクスピアの歴史劇との違いも興味深いです!!
10代から80代までの屈強な17人の俳優(by森さん)による
新しい歴史劇はなんと小劇場での上演です。
密な空間で堪能できるこの機会をお見逃しなく!

【公演情報】
新国立劇場『エドワード二世』
2013年10月8日(火)~27日(日)@新国立劇場・小劇場

<スタッフ>
作:クリストファー・マーロウ
翻訳:河合祥一郎
演出:森新太郎
美術:堀尾幸男
照明:中川隆一

<キャスト>
柄本 佑/中村 中/大谷亮介/窪塚俊介/大鷹明良/木下浩之/中村彰男
西本裕行/瑳川哲朗/石住昭彦/下総源太朗/谷田 歩/石田佳央/長谷川志
安西慎太郎/小田 豊/原 康義

<ものがたり>
実在のプランタジネット家イングランド王、エドワード二世(在位1307-27)の
起伏に富んだ激しくも短い生涯を描いた歴史劇。
父王の死後、エドワード二世は貴族たちの助言にも関わらず、
フランス人騎士ギャヴィストンを異常なほど寵愛し、多くの役職や地位を授ける。
これが先王からの腹心の家臣たちより反感を買うこととなり、ギャヴィストンは追放される。
エドワード二世は王妃イザベラの自分への愛情を利用しギャヴィストンを呼び戻すが、
その後もエドワード二世から真の愛情を得られないイザベラは、
愛人である貴族モーティマーと謀ってギャヴィストンをなぶり殺し、
王を幽閉する。二人は王子(エドワード三世)への譲位をせまる……。

特設Webサイトはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(文・撮影)監修:おけぴ管理人

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