おけぴ管理人より
インタビューの中で一部、物語の核心に触れる部分がございます。
まっさらな気持ちでの観劇を!という方はご観劇後にご覧ください【プロフィール】
山内圭哉(やまうち たかや)
1971年10月31日生まれ。大阪府出身。
13歳の時に映画「瀬戸内少年野球団」(篠田正浩監督)で主演デビュー。
中島らもが主宰する劇団リリパットアーミーを経て2001年よりPiperに参加。
2枚目且つハードなビジュアル、そしてシリアスからコメディまで
柔軟でエッジの効いた演技力を持つ。
「劇団☆新感線」「阿佐ヶ谷スパイダース」「パルコプロデュース」
「東宝」など数多くの舞台出演の中、「The Jizz Monks」のバンドメンバーとして
音楽活動も精力的に行い、自身の出演するPiper公演等では劇中曲の作曲も手がける。
今作キャストの中では唯一、初演から映画まで全作に参加している。
とある古びた病院を舞台に、ひとりの少女パコといじわるな老人・大貫の出会い、
そしてそこから生まれる奇跡を描いた
『Paco〜パコと魔法の絵本〜 from「ガマ王子vsザリガニ魔人」』。
『MIDSUMMER CAROL〜ガマ王子vsザリガニ魔人〜』として2004年に初演、
その後2008年に舞台再演、さらには「パコと魔法の絵本」のタイトルで映画化もされた
後藤ひろひと(作)×G2(演出)の強力タッグの生み出したウェルメイド舞台が
2014年2月シアタークリエに登場です。
初演より舞台版、映画版を通じてただ一人全ての “パコ作品” に
入院患者・龍門寺役でご出演の山内圭哉(やまうちたかや)さんにお話をうかがいました。
―この作品の魅力をひと言で表すと。
山内)
“よく出来た物語” なんですよ。
後藤ひろひと という作家の、ある種、集大成的な作品だと思います。―では、少し具体的にうかがいます。
初めてこの台本を読んだ時の印象は。
山内)
率直な感想は(後藤さんに対し)“残酷なおっさんやなー” と思ったんですよ(笑)。
でも、それと同時に “作家って、ある部分で残酷じゃないと人を感動させられないんだな”
ということにも気づいたんです。―なかなか興味深い感覚です。
山内)
初演の稽古中、6月にがんで2年間闘病していた母親を亡くし、7月、
東京公演と大阪公演の間に僕の師匠・中島らもが亡くなったんですよ。
公演中の二人の身近な人の死というものを踏まえて、
だんだんとこの物語をやっていることが腑に落ちてきたというか…。山内)
大切な人を亡くすということ、それはとても悲しいことやけど、
その人が亡くなったことによって生まれてくるものもいっぱいある。
なんていうんかな、亡くなったけども、
その周りの人がそれをきっかけに心がどっか埋まっていくというか。
そういう話だったりもするんですよね。
そしてそれは誰にでもあることだと思うんです。
だから観客のターゲットを特定しない物語なんやなと。
それこそ、年配の方にもいろんなことを感じていただけるだろうし、
ちっちゃい子も見られるし。― この作品が持つ不思議な感覚の秘密がわかったような気がします。
一見、現実離れしたキャラクターや物語に見えますが、
ものすごく心が動かされるんですよね。
山内)
それはリアリティやと思うんですよね。
(ファンタジックな)この物語の中にお客さんのほうが
リアリティを感じるんじゃないかな。山内)
そうそう、映画化のときに面白かったのは、中島(哲也)監督が“あっち”の
ビジュアルでやりたいとおっしゃったんですよね。
“あっち” のビジュアルにすればするほど、感じる人もいるってことですよね。
↑ “あっち” のビジュアル! ― 確かに強烈なビジュアルでしたが(笑)、やっぱり心は動かされました。
ファンタジーの中にあるリアリティ、この感覚はぜひ劇場で体験していただきたいですね。
さて、映画のお話が出ましたが、舞台が映画化というケースはちょっと珍しいですよね。
山内)
中島監督はそれまでも頭のどこかで “映画にしたら” と思いながら
後藤作品をご覧になっていたらしいんです。
でも、やっぱり舞台のほうが良いなという中で、
これに関しては映画でもやりたい!と思われたそうで。
それはやっぱりこの作品の受け皿が大きいってことなんだろうと思いますよ。― 少し話題を変え、続いてはこの作品のあらゆるバージョンに出演されている
山内さんご自身についてお聞かせください。
このように一つの役に長く関わることはそうそうないですよね。
山内)
珍しいですよね、しかも脇役でね(笑)。
主役ならまだしも・・・。― 初演、再演、映画、そして今回と。
山内)
実際は初演があって、映画の撮影があって再演だったので、
再演の時点で3回目だったんですよね。
その段階で、プロデューサーさんには、もういいでしょって(笑)。― もういいでしょ?!そこから今回もご出演されるまでの流れをお聞きしてもいいですか。
山内)
映画や再演、キャストも変わったので、それぞれ新鮮にやらせてもらったんですけど、
自分のやった役の再演ってどうしても “型” になっちゃうんですよ。
古典芸能に近くなってくる部分があるように感じていて。
あと、だんだん自分も年を重ねてきて、
あと何本舞台に立てるのかなとかいうことも考えるようになって。
舞台って長かったら3か月とかあるじゃないですか。
年間4本やったらパンパンなんですよ。
これからどれだけの作品に関わっていけるのかという時に、
同じことをやる時間を持つべきなんだろうか、どうなんだろうかと。
もちろん同じことを突き詰めていくタイプの役者さんもいらっしゃると思うんですが、
僕はどちらかというと新しいことをやっていきたいタイプ。
なので、再演が終わるとき、「もしまたやることがあったら、
今度は全とっかえでやられたらどうですか」とお話ししたんです。
で、今回の話をプロデューサーからいただいてね。
いや、何を聞いていたんですか?と(笑)。
― (笑)プロデューサーさんからはどのような感じでお話が?
山内)
簡単にいうと、“やっぱりやってほしいねん” ってことなんですよ(笑)。
それを言われて、“これちょっとおもろいな” と思ってきて。
役者として一人だけ脇役をずっとやり続けることは他にあまりないし、
それは幸せだな、ありがたいなと思わないとあかんなと思ってお受けしたんです。
あと、この役は後藤さんと組みだして、
お互いの手の内が分かってきた時期の “あてがき” だったんで、
僕もほんま好き勝手に、奔放にやらせてもらっていたので、
これは責任取らないといかんなとも思って。― 作品ファンの一人としてオファーを受けていただきとてもうれしいです。
では、そんな龍門寺という役が作品中で何を担い、山内さんが作家さん、演出家さん、
プロデューサーさんから何を託されているとお感じになっていますか。
山内)
初演の時なんですけどね。
僕と大貫役の木場(勝己)さんの二人だけのシーンで、
毎回いろんなことをやっていたんですよ。
そうしたら、稽古中だったかな、G2さんが、
「開幕して、君がいろいろとやっているところで半分以上の人が笑ったら
僕は止めさせるよ。半分笑って半分泣いていたらそれはオッケーにする」
っておっしゃったんですね。
で、僕はそれをやりたかったから、毎回芝居しながら客席見て、
半分笑って半分泣いている状態をキープする。
中には笑いながら泣いている人もいたり。
あんなことは他の芝居でやれたことはないんで、G2さんもそれが面白いって。
それは本当に偶発的に生まれてきたものなんですけど、
多分そういう部分で作品のスパイスとして毎回呼ばれるのか。
それがプロデューサーさんやG2さんに、
これは圭哉にしかできへんちゃうかって思ってもらえているならば、
それこそありがたいこととしてやらせていただこうと。― あのシーンですね。毎回いろんなことが飛び出しておりましたね(笑)。
ちなみに毎度異なる “あのシーン” はどうやって生まれるんでしょう?
山内)
これまでも日替わり的なことをやってきましたけど、用意したら全然おもろないんですよ。
ただ追い込むんです。何にも考えへんようにしてその場で!
なんやったら3日目ぐらいから舞台袖に出演者がみんな集まって観てますからね。
そいつらのためにも同じことは出来ないわけですよ、
そうやってプレッシャーをかけていくというか(笑)。― それは今回も?
山内)
それはもうバランスですよね。
ほかのキャストのみなさんがどういう風にシーンを立ち上げていって、
どういう風にパスを回していくのか、
必要であればやるし必要なければやらないほうがいいし。― このカンパニーの龍門寺も楽しみです。さて、この龍門寺という役もそうですが、
この作品の登場人物は強烈な個性は持っていますが、
一人ひとりの人物像がぎっちり書き込まれているわけではないようにお見受けします。
どうやって龍門寺というキャラクターの肉付けをされているのでしょうか。
山内)
実はそれって役者の仕事の本質なんですよ。
情報量が少ない中でどういう風に舞台で立っていくかというのは、
役者の想像力と演出家とのコミュニケーション、
あとは稽古の中でということになるんですけど。
でも、えらいもんで、何回も何回も台本を読んでいくとどっかに情報ってあるんですよ。
それは具体的に「おまえは中卒じゃないか」というセリフじゃなくて、
たとえば、なにか言われたときに、「はぁん」と返すこととかもヒントになるわけ。
この人ってこういう生き方をしてきたんじゃないかって。
だから、逆に説明されていないときのほうが楽な時もあるんですよね。
あんまりセリフで説明されていると遊びしろがないというか(笑)。― なんだか目からうろこ&納得です。
では、いよいよ今回の舞台についてうかがいます!
とても素敵なちらしが出来上がっていますが、全体的にさわやかなビジュアルですね!
山内)
(ご自分の写真を指して)なんかね。これ絶対ダメでしょ、これ(笑)。さわやかなビジュアル
― いえいえ、とてもさわやかです!
今回のキャストのみなさんは初共演の方が多いですよね。
山内)
ほとんど初めて、ご一緒したことあるのはマギーと(上山)竜司と德馬さんぐらいですね。
でも、僕、「今回大貫は誰がやるんですか」と聞いたときに、
西岡德馬さんと聞いて、あっ面白そう!と思いましたね。
ここへ来て一番リアルな人が出てきたなと(笑)。
木場さんはやっぱ優しいしゃべり口でね、
そこからもちろんお芝居で怖い人になられましたし、
吉田鋼太郎さんは王様で、それがものすごくはまっていたんですけど。
で、ついに等身大の大貫が来たというか。德馬さんともう一回、
しかもこの芝居でご一緒できるのは楽しいなと思ったんです。― 確かに!それぞれ唸ってしまうほどの素晴らしい大貫ですが、西岡さんの大貫、
とっても楽しみです。
ちなみに小劇場出身の役者さんはこれまでに比べ少ない気がしますが、
アウェイ感とかってありますか?
山内)
アウェイ感で言ったら、僕みたいにいろんなプロデュース公演に出たりすると
どの作品でもあるんですよ。
今年も『しゃばけ』は(鄭)義信さんの現場初めてだったし、
小野寺(『小野寺の弟、小野寺の姉』)も完全にアウェイでしょ(笑)。
むしろアウェイのほうが面白かったりしますしね、生まれることが多いんで。
単純に役者の仕事の醍醐味の一つでもある、
“人と出会う仕事だ” という意味ではアウェイのほうが楽しいですよ。
だって、麻実れいさんと一緒に舞台に立つなんて昔では考えられなかったですけど、
一緒に立ったら意外と合ったりしてね、しかも仲良くなったり(笑)。
そういうこともありますから。
今回だったら、吉田栄作さんと僕が二人でしゃべってるとか面白いじゃないですか。― (ちょっと想像してみたら)面白いです(笑)。
他にも様々な出自の俳優さんが集まっていて、また新しい面白さになりそうですね。
では、ここで『Paco』で始まる2014年の抱負をお聞かせください。
山内)
2013年は『デキルカギリ』、『しゃばけ』、『小野寺の弟・小野寺の姉』、
『鉈切り丸』、舞台の間の5月にタイでライブ、8月にはトークイベント、
12月に大阪と東京でライブ。
ばらばらの日替わり定食のような生き方をしてきたんで、
日替わり定食をなるだけ続けていきたい、同じものは食べたくないな。
今年もそうできたらいいなとそんなところでしょうか。― 最後に、この作品のお誘いキャッチコピーをお願いします。
お誘いキャッチコピー?!
山内)
“繰り返し上演されている意味合いを観に来て確かめませんか” ですかね。
あと、作品を知ったうえで僕が客だったら、德馬さんの大貫を観たいですね。
“一番大貫かも知れんぞ!”
なんかこの作品、シアタークリエに合っているんじゃないかな。
ひとりで観に来ても、誰と観に来ても、
連れてこられた人も喜んでもらえる作品だと思うんで。
銀座でお買い物帰りのお母さんも、クラブへ行く前のおじさんもね。
これ観て目腫らしてクラブへ行ったらいいんですよ(笑)。
― ありがとうございました!
作品の魅力から役者さんとしてのスタンスまで、本当に興味深いお話を聞かせてくださいました。
2014年版のPacoも多くの方の心に残る素敵な作品になりそうな期待でワクワクです!
おけぴ取材班:おけぴ管理人(撮影)chiaki(インタビュー/文)