【感想を追記いたしました5/18】
客席に足を踏み入れた瞬間に、「わっ!」と思います。これは何かが起こるぞ、とワクワクします。イプセンの話が本当に楽しめるのか、正直少し心配でした。
多少難解な部分もあるかも知れません。
しかし、1幕で生じる疑問は2幕で怒涛のように解決へと向かいます。
女性として共感する部分もあり、現代の日本でも充分リアルに味わえるのが、不思議でもあり、考えさせられました。
---------------
効果音など無いはずなのに、波の音や船の音が聞こえてくる、そんな舞台でした。二幕はかなり笑えます。
---------------
小劇場の狭い空間の中央に舞台があり、周りを客席が囲む形で、白一色のデッキに幾つかの椅子があるのみ、衣装も白かきなりと相対する黒のみで、いたってシンプルでそぎおとされたものであった。
そのことが古典で終わらせず、現代との橋渡しをしており、また膨大な台詞、心理描写に観客を没頭させる役割をはたしていたように思います。
演出の宮田さんの作戦成功!ではないでしょうか。
---------------
真面目な芝居かと思いきや(真面目な芝居なんですが)結構笑いがあって、意外でした。
人間の思い込みの滑稽さ、愚かさ、人の幸せって何なのか考えさせられました。
---------------
シンプルなセットに音楽。出演者の演技も大げさなところがなく、セリフの言い方も自然ですてきでした。
そのせいか正直イラッとする(笑)言葉もなんか微笑ましく。
大きな、派手な事件が…!というのでなく、ある家族のとある出来事を切り取ったお話です。ですがあっという間の3時間でした!
---------------
劇場中央に舞台を配置しているのでどの方向の客席にも見せる俳優陣の演技力に圧倒されます。
麻実れいさんの内に秘めたる迫力を村田さんの誠実な穏やかさが吸収していくような、二人は作品にマッチした配役でした。
個人的には橋本淳さんの成長ぶりが嬉しくて。。。自己中心的だけど素直で前向きなリングストランを愛らしく演じていました。
---------------
翻訳劇なのでともすればくさくなる台詞がとても自然に耳に響くのは役者さんの力でしょうか。
---------------
難しいかな?と思ってましたが全くそんなことはありませんでした。
100年以上前に書かれていて、今とは女性を取り巻く環境もだいぶ違うでしょうが何かから自由になりたいという気持ちにはとても共感できました。
実際に身近にいたら絶対友達になりたくないような人たちばかり出てきますが、役者さんがみな魅力的でついつい引き込まれてしまいます。
特に橋本さんの自己中心的で周りの空気を読まない青年がなんだか可愛らしいというか魅力的に感じてしまいました
---------------
ムンクの「叫び」が何度も見えてくるような舞台でした。
波の音、海の香りのする舞台でした。エンタテイメントに向かう頭を、たまには純文学に向けさせるのも良いかな?という舞台。
麻実れいさんの圧倒的な存在感は演劇の快楽。若い共演者の息吹も新鮮。
---------------
100年以上前に書かれ、以来世界各国で幾度となく上演され続けたイプセンの作品の一つ。
現代に生きる私には共感出来ないことが多かったが、当時の女性の置かれた状況、価値観、思考に思いを馳せる一時であった。
一方時代を越えて人間の持つ愛情欲求、(義)母子葛藤、夫婦葛藤、罪悪感、喪失感等々、そして時代を背景として自由と束縛、自立と依存、相対するものを私達にこれでもかと言うほど台詞で語りかけてくる。
結末の台詞は個人的には腑に落ちることはないのではあるが…Japan meets…現代劇の系譜をひもとくにふさわしい作品であった。
---------------【稽古場レポート】
宮田慶子芸術監督が就任以来取り組んでいる新国立劇場の人気シリーズ、日本演劇界に影響を与えた世界の優れた作品を上演する
「JAPAN MEETS―現代劇の系譜をひもとく―」。
記念すべき第10弾!イプセンの傑作『海の夫人』の稽古場にお邪魔してまいりました。
ノルウェーの海辺の町の景色やその匂いまで感じられるような、幸せな感激観劇体験…いやいや、通し稽古取材でした。
でも、そう思えるほど引き込まれてしまったのです。だってもう、登場人物の見つめる先に入り組んだ海岸線、そして海が見えるような気すらしたのですから!!
宮田慶子さん演出作品らしい、美しさと生命力の強さを感じる作品です。
-ものがたり-HPより
北部ノルウェーのフィヨルドにのぞむ小さな町。
灯台守の娘エリーダは、医師ヴァンゲルと結婚し、先妻の二人の娘とともに穏やかに暮らしていた。エリーダには、かつて結婚の約束を交わしていた船乗りの恋人がいた。恋人との関係が途絶え、生活が保証されたヴァンゲルの後妻となり愛される日々を過ごしてきたが、生まれたばかりの息子を亡くし、ここ数年は精神が不安定で空虚な生活を過ごしている。毎日海で泳いでばかりいるエリーダを近所の人々は、「海の夫人」と呼んでいた。
タイトルロールとお呼びしていいでしょう、海のような強い生命力を秘めた神秘的な
主人公エリーダには麻実れいさん。
舞台に登場した瞬間の眩しいほどの存在感、スケールの大きさ、そして声の引力はまさに「海の夫人」。泳いでばかりいるエリーダ、はじめはその言動を少し奇妙に感じましたが、気が付くと彼女に共感している自分がいました。
麻実れいさん
麻実さんのエリーダ、もうこの時点で「必見です!」と締めのひと言が飛び出してしまいそうなのですが、さらにエリーダに関わる登場人物の描写、そして適材適所なキャストが奏でるお芝居のアンサンブル、緩急のあるストーリー展開もご紹介せずにはいられない素晴らしさなのです。
エリーダを大きな愛で包み込む
夫ヴァンゲルには村田雄浩さん。穏やかなよき夫、妻を愛するがゆえに悩み苦しむ姿に…ため息です。こんな旦那様…。
村田雄浩さん
ヴァンゲルの先妻の娘たち、
姉のボレッテには太田緑ロランスさん、
妹のヒルデには山﨑 薫さん。
自分の人生を考えはじめる年頃のボレッテ、まだまだ幼さが残るヒルデ、継母エリーダとのそれぞれに微妙な距離感の二人を見ていると、ときどき鼻の奥がツーンとするような切なさがあります。
太田緑ロランスさん
橋本 淳さん、山﨑 薫さん
かつてボレッテの家庭教師だった
教師アーンホルムには大石継太さん。
このアーンホルム先生が何とも言えずいいんです!癒し系です♪
大石継太さん、麻実れいさん
こちらはこの夏だけここに滞在している芸術家の
リングストラン役の橋本 淳さん。
このリグストランさんはなかなかビビッドな存在です。橋本さんのお芝居、軽やかで飄々とした振る舞いが鮮やかに映れば映るほど見えてくるものもあって…。
橋本 淳さん
町の自由人、なんでも屋さん
バレステッドには横堀悦夫さん。
自然体で生きているバレステッドさんは…実はかなりの哲学者なんですよ!!
横堀悦夫さん
そして最後に、
“見知らぬ男”を演じるのは眞島秀和さんです。
決して多くはない登場場面ですが、出てきたら瞬間最大緊張感を記録します!
それは息をするのも忘れるほど…立ち去った瞬間に思わず大きく深呼吸してしまいました。
眞島秀和さん
この8人の登場人物が織りなす物語。
エリーダとヴァンゲルの夫婦関係がその軸にはなるのですが、それだけではない幾重にも折り重なったドラマが展開しそれぞれの人生が浮き彫りになっていくのです。終わってみると、「登場人物8人だけ?」と思えるほどの厚みのある物語です。ですから、3時間ほどの上演時間があっという間に思えます!
物語の“緩”
“急”!
フィンランド、フィヨルド、白夜、閉塞感、陸、海、地方…「そこに生きる人間と土地」の関係についても考えたくなる戯曲。
ひと言で言うと
「イプセンってこんなに面白いんだ!」。
そう思えた理由のひとつ、ノルウェー語からの新翻訳を担ったのはシリーズ第1弾に続いて、
アンネ・ランデ・ペータスさんと長島 確さんのお二人です。
宮田さんを交えて練りあげられたセリフを生身の肉体、役者さんが発した時、更なる進化を遂げた血の通ったセリフにもご期待ください!
自由を求めた海の夫人エリーダ、彼女が最後に選択するのは…。
人が生きる上で何が必要なのか、それを鮮やかに描き出す傑作舞台をぜひ劇場でご覧ください!
<おけぴ関連記事~麻実れいさん~>
2014/09/28 世田谷パブリックシアター企画制作 『炎 アンサンディ』 観劇レポート2014/05/20 ハロルド・ピンター×デヴィッド・ルヴォー『昔の日々』稽古場レポート2014/04/17 ハロルド・ピンター×デヴィッド・ルヴォー『昔の日々』製作発表会レポート
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人