祝! 朝夏まなとさんトップお披露目
宝塚歌劇団宙組公演『王家に捧ぐ歌』
観劇レポート
宝塚歌劇団・宙組新トップコンビ
【朝夏まなとさん&実咲凛音さん】お披露目公演『王家に捧ぐ歌』を観劇してまいりました。
古代エジプトの将軍ラダメスと、敵国エチオピアの王女アイーダ。
ふたりの決して滅びない【愛】を描いた、“宝塚的”グランドロマンの世界が、12年ぶりの再演。
そこに立ち上がっていたのは、キラキラと明るく、まっすぐに輝く「新生・宙組」。
そして芝居でじっくりとみせる「新生・王家に捧ぐ歌」でした…!
今回、舞台写真はございません…。
こちら、南口側から観た宝塚大劇場♪
【息ピッタリ! 黄金色に輝く新トップコンビ】
「エジプトの息子」と呼ばれる、将軍・ラダメス役は、もちろんこの方、宙組新トップスターの
朝夏まなとさん。
長い手足と、くったくのない笑顔。その明るさ、まっすぐさが、すがすがしい!
この方、歌も演技も、なんといいますか、とても “大きい” んですね。
劇場のすみずみまで、その心が届くような “強さ” がある。スケールが大きいんです。
一方で、芝居はとても細やか。
繊細な演技を、客席のいちばんうしろまで届ける。
これこそまさしく、客席数2000以上の劇場で、毎日公演をする宝塚スターに必要とされる資質だと思います。
役作りとしては、ただ力を誇るだけではなく、賢さもあり、大らかにのびのびと育ったんだろうな、と思わせるラダメス像で、「この人ならきっと、明るく正しい道にすすんでいく」と確信できる、“陽のオーラ”がまぶしいほど!
(初演よりさらに “キラキラ増量” の衣裳も、まぶしさを倍増させます!)
それだけに、ラダメスが地下牢に入ったときの独白、絶望から光を見出すまでの心の動きをみせる、あの演技の迫力は圧倒的。
小細工なしの演技一本勝負、暗闇のなかでのセリフ…朝夏さん、きかせます。
まっすぐな眼差し、2階席のいちばんうしろまでラダメスの心が届くような力強さで歌われる、大ナンバー『世界に求む』はぜひ劇場で!
小ネタポイントですが…、とっても手足の長い朝夏さん。
王族の前に跪くときの、足(膝と腿)の角度が…たいへん美しく、かっこいいです。ご注目ください。◆国や家族に縛られながら、愛する心を止められない「ひとりの女」、アイーダを演じるのは
実咲凛音さん。
歌、演技、ダンス、どれをとっても実力抜群の彼女が、ついにその実力をあますことなく発揮できる役にめぐりあいました。
“宝塚らしい” といわれるような清楚で可愛らしい役柄も、なんなくこなす彼女ですが、その魅力が一番発揮される役柄は、ちょっと気が強くて、心に葛藤を抱えた女性像だと思うのです。
(…おけぴスタッフの個人的見解でございます。)
アフリカの大地を感じさせる野性的な魅力と、女性としての柔らかさが同居するアイーダ。
ラダメスに惹かれながらも、国と家族への想いに揺れ、まよう、アイーダの心、しっかりと客席に届きます。
歌も伸びやかで、歌詞もはっきり(セリフが音楽になっている作品で、これはほんとうに大事なポイント!)。
ラダメスと抱きあうシーンは、娘役ならではの甘やかさが出ていて、おふたりの姿にうっとり♪
抱きしめられるアイーダの手と首の角度が、絶妙の美しさ! こちらもぜひ劇場でお確かめくださいませ。
【相性抜群! 幸福感に包まれるデュエットダンス】
花組時代から、何度となく共演してきた、朝夏さん&実咲さん。
舞台上での相性の良さは、やはり抜群!
声の重なりも美しいですし、動きもどこか似ているんですよね。
銀橋と舞台上で、ふたりがおなじ方向をむく演出があるのですが、ここの動きのシンクロぶり! お見事!
そして、このおふたりの最大の魅力 が、そう、“デュエットダンス”です。
(こちらも、おけぴ的独断でございます)
こちらのレポでもお伝えしたとおり、「一緒に踊れてうれしい!」、そんな声が聞こえてくるような、幸福感。
これこそ、技術だけではない、宝塚ならではのダンスの魅力!
デュエット最後にリフトがあるのですが、その回転数、高さはもちろんのこと、最後にそっと降りる(降ろす)ところが、とっても、とっても、美しい!!
【新生・宙組を彩るスターたち。華やかな個性が満開!】
今回、宙組デビューとなったのが、5月に星組から異動となった
真風涼帆さん。
幕開き、いきなり彼の独白からはじまる、アイーダの兄・ウバルド役。まずはそのビジュアルの完成度に、客席からどよめきが(聞こえたような気がします)。
黒塗りのメイクに、ダイナミックで野生的な動き!
もともと、男くささが魅力の真風さんですが、今回はさらにスターの魅力がよりいっそうギラギラと…宙組に新風を巻き起こしています!
(ひとことで言いますと…かっこいいです!)星組的な押しだしの強さと、宙組の軽やかさ、このふたつが融合した真風さん、これからの活躍もとても楽しみ!
◆硬質な美貌で、ファラオの娘・アムネリスを演じるのは
伶美うららさん。
登場するたびに、まずはその超豪華な衣裳にうっとり。それを着こなすだけでもすごいのですが、今回はぜひ彼女の芝居力にもご注目ください。
ファラオの娘として、ある決断をくださなければならないアムネリス。その心の揺れを、ひしひしと感じさせる演技。
ただの意地悪お姫さまではなく、ファラオの娘としての誇りを持った、ひとりの女性として、地に足がついている印象の役作りで、アイーダに対する態度も、さまざまな感情が入り交じるふたりの関係性がくっきりと! 同期生のふたり(実咲さん&伶美さん)だからこその、かけあい芝居が小気味いい!
物語のクライマックス、アムネリスが人々に語りかける感動的な場面。ああ、この人きっといい為政者になりそう…と思わせる説得力でございます。
(ちょっと不器用な感じの歌声がまた、庶民に迎合しないアムネリス様っぽい!)◆このほか、初演から引き続き出演の専科・
箙 かおるさん(ファラオのあっと驚く登場シーン…やっぱりすごい)、
一樹千尋さん(鳩ちゃーん…の怪演、健在です)など、すべての役柄がぴったりはまって、見応えあり。
すこし残念なのは、中堅から若手スターの見せ場が少ないことでしょうか。
ラダメスの友人を演じる
愛月ひかるさん、
桜木みなとさん、エチオピア側の青年を演じる
澄輝さやとさん、
蒼羽りくさんなど、いまが旬 のスターたちの魅力を、もっと満喫したかった…!
(いえ、細かい見どころはいろいろあるんですよ。たとえば、蒼羽りくさん演じるサウフェはきっと幼い頃からアイーダを愛していたのにちがいない! などなど勝手に脳内妄想を繰りひろげるとか…)といっても、この4人をはじめ、男役のみなさまは、精悍かつきらびやかな(エチオピア側は野性的な)衣裳の着こなしが素敵ですし、凱旋のシーンでのダンスがとにかく素晴らしい!
初演版では、なんとあのマイヤ・プリセツカヤさんが振付をしていた場面ですが、今回は羽山紀代美さん、麻咲梨乃さんが振付を担当。これが、宝塚の男役らしい魅力をぎゅぎゅっとつめこんだダンスになっていまして、群舞のなかに、お気に入りの生徒さんをみつけると、テンションが上がります!
一方、娘役のみなさまは、さまざまなテイストの楽曲でその魅力を発揮。
アムネリスの女官たちが歌う『♪ エジプトは強い』『♪ ファラオの娘』は、初演と変わらずやっぱりとっても…インパクト大! 観劇後いつまでも耳から離れません。
エチオピアの女たちが、故郷を想い歌うナンバーのハーモニーの美しさも絶品です。
(伝令1,2,3 の登場や、こわーい顔の神官たちの“女の子”選びなど、これからさらに進化しそうなプチポイントも多数! みなさま、それぞれの見どころを発掘いたしましょう♪
ちなみに、おけぴスタッフ的には…伝令2・風馬翔さんの横っ腹を抑える演技がツボでした)【フィナーレのショーに大満足!】
永遠の愛にむかって漕ぎだすラダメスとアイーダ…感動的な物語の後には、もちろんフィナーレショーもたっぷりと♪
「!」とおどろく選曲・編曲&ダンスに、気づけば手拍子がとまらない宝塚マジック。やっぱりこうでなくっちゃ、これはぜひノリノリで楽しみましょう!
(『パッショネイト宝塚!!』に続き、打ち込みっぽい電子音で踊る真風涼帆さん&男役’s がピッカピカにカッコいい♪
実咲凛音さん率いる娘役ダンスの選曲はまさかの…! 笑顔セクシーなみなさまと妙な違和感が癖になりそう。
男役の大階段ダンスの衣裳は、黒の変わり燕尾服。朝夏まなとさん登場、せり上がり時のポーズには、ラダメスの想いが込められているとのこと。指の先までご注目を!)◆高さのあるセット、大勢口のコーラス(出演者総勢約70名!)など、1階後方や2階席から舞台全体を見渡すのもオススメの『王家に捧ぐ歌』。
オペラが原作ということで、とっつきにくいかも…と思われている方がいたら、それはもったいない!
宝塚的なやわらかさ満載、そしてロマンチックな“愛”、ただひたすらに“愛”に生きるふたりの物語でございます。
大きなテーマとなる男女の愛だけではなく、国への家族への愛。
それぞれの立場で変わる正義、そして平和とはなんなのか…と、深読みしようとすれば、なかなかに複雑なテーマもありそうで…。
(深読みしないで、ひたすら愛! を楽しむのも、また正しい宝塚歌劇鑑賞かも♪)なにより、芝居力を武器にした、トップスターコンビそれぞれの魅力が絡み合う、“いま”の宙組をたっぷりと感じられる公演です。
宝塚大劇場公演は、6月5日から7月13日まで。
東京宝塚劇場公演は、7月31日から 8月30日まで上演されます。
さあ、ともに武庫川…ならぬナイル川を下り、新生・宙組とともに、広い海へと漕ぎ出しましょう!!
おけぴ取材班:mamiko、yone 監修:おけぴ管理人