【感想追記11/19】
舞台上で起こっていることへの答えは簡単に出ることはない、でも、ひとごとではない。そこに混沌しかなくとも考えることを止めたくないーー
シンプルだからこそ観客の想像力に委ねられるところが多く、それ故により一層登場人物の言動に注視することになる。クレアはどこにいるのだろう。なにをしているのだろう。あるシーンでは、その後に彼女に投げかけられる言葉によって彼女が柵の向こう側にいることがわかり、つまり…そういうことかと状況を理解する。そんな語られることの曖昧さ、ランダムな時系列で展開するのもクレアの状況を思えば当然のことのように思えてくる。
また本作では各上演地で暮らす人々を合唱団として配し、彼らは歌い、ときにコロス的にそこに存在し言葉を発する。そうやって演劇的に観客を巻き込むことで本シリーズのテーマでもある「ことぜん(個と全体)」を感じさせる……演劇の力を感じる作品です。以下、おけぴ会員のみなさんからの感想をご紹介いたします。
「たまらなく涙が出ました。赦すとは何なのか?その答えは?まだまだまだあの物語の続きを観たかった…そして彼女の今を。知りたい。そんな気持ちになりました」
「面白かった。面白い…というのは馬鹿馬鹿しくも楽しいキャイキャイしたという意味ではなく、自分の思考や感情をあぁでもない、こうでもない、と演出家さんと演者さんたちにうまく弄ばれたという意味で『面白い』。
自分がクレアになったような、合唱団の一員になったような、派手な衣装やセットもなく、淡々と進められる舞台なのにグイグイと引き込まれた。この舞台、誤魔化しがきかない。頭の上に聴覚障害の方のために日本語と英語の字幕が出ているのも良かったです」
「答えではなく問いかけをくれる作品です。終演後の心地良い混乱、様々なことを考え誰かとどう感じたか何を思ったのかを語り合いたくなります。観た人それぞれが様々な思いを抱き、おそらく見るタイミングでも感じるものは違うそんな作品です。重い事件をモチーフにしていますが、問いかけてくるのはとてもシンプルで決して遠い世界の話ではなく、私の、あなたの、物語」
「無差別テロ事件を題材にしては残酷さを感じさせない。二人の役者とほぼ素人の男女混声の合唱団のお芝居で、正に教会の讃美歌を感じさせる歌を歌う人々が登場。
犯人がキリスト教原理主義者で反移民の思想の持ち主の様だが、芝居はそれを通り越して事件に遭遇した女性の心の戦い、とそれをどう自分の中に理解させるかの心の格闘が観られる」
「あの日の出来事は、決して遠い国の出来事ではなく日本でも起こりえないとも限らないのでは、と考えさせられました。知らず知らずに異なるものを排除しようとする傾向は、以前にも増して最近強くなっているように感じます。人種だけではなく…コンプライアンスを気にしすぎるマスコミ等が逆にそのような方向に向かわせるのではと感じて怖くなりますね。舞台だけは自由であり、個と全にしっかりと向き合って欲しい」
「実際のテロ事件を題材にしているのに、二人芝居?合唱団?……と思いつつ行ったのですが、お二人の台詞にぐぐっと引き込まれました。合唱団も歌だけではなくて、舞台に不思議な厚みとリアリティを生んでいたように思いました。決して特定の場所や事件のことじゃないですね」
「予習無しで行ったのではじめは戸惑ったが、話が進むにつれて構成が分かり、それまでのシーンが繋がり恐ろしさを感じた。シリーズタイトルである「ことぜん(個と全)」を考えさせる作品でした」
「南果歩さんは銃乱射事件の被害者であるクレアの心の揺れ動き、精神の不安定さ、心に負った傷の深さを十分に伝えてくれました。小久保さんは襲撃犯のほか、その父親、学校の同級生、クレアのパートナーなど複数の役を巧みに演じ分けていました。声も素敵でした。公演チラシでは、二人芝居かと思っていましたが、大人数の合唱団が登場、合唱だけでなく複数の人がインタビュアー役をしたり、クレアに対するセリフもあり劇の重要な要素となっているのは新鮮な驚きでした」
【開幕NEWS】
2011年にノルウェーのウトヤ島で起きた、極右青年による銃乱射事件をモチーフに描かれた話題作がついに日本初演。本日、11月13日に開幕しました。
右から)南果歩、小久保寿人
【分断された世界で“私”を見つめる…】おけぴ稽古場レポートはこちらから 「個人と全体」について考える演劇企画「ことぜん」シリーズの第二弾はデイヴィッド・グレッグ作の「あの出来事」。
本作は2011年にノルウェーのウトヤ島で起きた、極右青年による銃乱射事件をモチーフに描かれたフィクションです。
左から)南果歩、小久保寿人
登場人物は、たった二人。南果歩演じる生き残った合唱団の女性指導者に対し、犯人の少年役の小久保寿人が、他のすべての役を演じます。2013年にエジンバラ演劇祭で初演、高い評価を得た本作の日本初演となります。
新国立劇場初登場のミナモザの瀬戸山美咲が演出、本作の英国公演も見ている谷岡健彦が翻訳をつとめます。
右から)南果歩、小久保寿人
また、戯曲の指示にある「地元の合唱団が登場すること」という条件もあり、今回は合唱団役を公募し、オーディションを実施いたしました。二人芝居を支える合唱団による演出も含め、ぜひご期待ください。
【稽古場&コメント映像】
【新国立劇場公式サイトにて瀬戸山美咲さん、南果歩さん、小久保寿人さんのインタビューが公開されています】
演出・瀬戸山美咲、インタビュー!
出演・南 果歩、小久保寿人 インタビュー!
【翻訳の谷岡健彦さんが公開したnote(ノート)も必読!】
「デイヴィッド・グレッグ『あの出来事』のためのノート」1
「デイヴィッド・グレッグ『あの出来事』のためのノート」2
「デイヴィッド・グレッグ『あの出来事』のためのノート」3
この記事は公演主催者からの情報提供によりおけぴネットが作成しました