魂の片割れを求める紅天女が、そこにいました!
主演の貫地谷しほりさんが女優魂を見せつける舞台『ガラスの仮面』開幕!
原作漫画の雰囲気を完全再現し「舞台化決定版」と話題を呼んだ初演から2年。
天才演劇少女・北島マヤがふたたび劇場に帰ってきました!
作演出のG2さんが新たに書き下ろしたのは、登場人物の背景にある物語、関係性がさらに深まった“大人の”『ガラスの仮面』。
原作漫画ファンも違和感なく入り込める世界観には、テンポよく“ガラかめ”エッセンスを盛り込んだG2さんの脚本に加え、衣裳やメイクなど細かな工夫がありました。
「紅天女降臨」「劇中劇の充実」、そして胸キュン「三角関係(四角関係?)」をクローズアップ! 語りどころ多数の舞台『ガラスの仮面~惹かれあう魂~』大阪公演初日観劇レポートをお届けいたします。
◆一路真輝さん演じる「月影先生」こと往年の名女優・月影千草。
原作漫画そのままのビジュアルに客席のテンションもUP!
若き日の千草と、紅天女の作者・尾崎一連とのエピソードも追加され、
恋する少女から女優へ、そして紅天女への変貌を見せる一路真輝さんの演技に息を呑みます。
【初演とは異なる脚本・演出で、“演劇的”魅力が倍増】
幕が上がると、そこには紅天女の打掛(うちかけ)が。
主演の貫地谷しほりさんが
稽古開始前のインタビューで語った“紅天女の登場”に期待が高まりますが…まずは月影先生(一路真輝さん)、姫川亜弓(マイコさん)、桜小路優(浜中文一さん)、速水真澄(小西遼生さん)と主要キャラクターがつぎつぎと登場。マヤ(貫地谷しほりさん)が憧れの紅天女候補となるためには、2年以内に演劇界の大きな賞を取らなければならないことが、テンポよく説明されます。
初演時は青山劇場の舞台機構を最大限に活用した演出・舞台転換で、スピード感溢れる“『ガラスの仮面』ダイジェスト版”といった趣きでしたが、今回の舞台はまた別の味わい。
松井るみさんが手がけた舞台美術は、3階建ての階段状になっている高さのあるセットと、曲線の屋根で覆われたステージを盆の上に二面に配し、場面ごとに回転させて情景を変えていく仕掛け。
初演舞台よりもシンプルな仕掛けになっているぶん、脚本の原作からの切り貼りのうまさ、エピソードへのスポットの当て方の的確さが強調されます。花道を使った演出も、キャラクターをより身近に感じさせる効果大!
白熱の演技合戦!
左から、オリゲルドを演じる亜弓(マイコさん)とマヤ(貫地谷しほりさん)
コスチュームプレイの豪華さも堪能できる劇中劇「ふたりの王女」は、初演よりもボリュームアップ。高さのある装置を活かした演出や、出演者がさまざまな役を演じるおもしろさで、“演劇ならではの醍醐味”を味わえます。
冷酷な王女オリゲルド(を演じる姫川亜弓)を演じるマイコさん。普段のふんわりとした印象からは想像できないような迫力、凄みを見せての熱演。ほんの一瞬ですが、特技のバレエを活かした『一人芝居ジュリエット』の美しい場面もお見逃しなく!
一方の北島マヤ(を演じる貫地谷しほりさん)も、愛にあふれた王女アルディスを優しい春風のような笑顔で演じ、これもまた原作漫画のとおり、“別人のように魅力的”な姿を見せてくれます。潤んだ瞳とあの笑顔。これは“紫のバラのひと”でなくても、マヤちゃんのファンになってしまいそう。
アルディスを愛するユリジェス役・桜小路くん(を演じる浜中文一さん)にもかっこいい見せ場あり。ここはぜひおもいっきり上を見上げて(高いセットの上で演じるのです)胸をキュンキュンさせちゃいましょう♪
「ふたりの王女」の役作りのためにマヤと亜弓が冷凍庫に閉じ込められる場面など、
今回もまた原作の名場面が多数登場!
(左から一路真輝さん、貫地谷しほりさん、マイコさん)
【数々の名場面、名セリフ、個性的なキャラクターの再現度に原作ファンも納得!】
今回新たに登場する真澄の父・速水英介役のたかお鷹さん、真澄の婚約者・鷹宮紫織役の中山由香さんも、髪型からしゃべり方まで、まさに原作漫画のイメージそのまま! (英介が車椅子で登場するたびに、脳内で原作漫画のコマが再現されて困るほどでした…(笑))
主要キャスト以外でも、原作から抜け出てきたようなキャラクターが多数登場。2.5次元舞台では当たり前のこと、と思われるかもしれませんが、ヒーローが登場するわけでも、ユニフォームがあるわけでもないこの作品でここまでの再現ができたのは、やはり素直に賞賛すべきポイントですよね。
特に前田文子さんによる衣裳は、一見なんでもない地味な洋服のように見えますが、原作の熱烈ファンならわかる圧倒的な再現度! 真澄様のスーツのカッティング、マヤちゃんのなんとも素朴な稽古着、そして亜弓さんの女優ファッション…どれもこれも、それを着た役者が登場するだけで、原作漫画のコマがぱっと思い浮かぶほど、忠実に再現されています。(カラーページの色合いまで記憶によみがえってきます♪)
ちなみに…今回追加された新場面でマヤにアルディス役のアドバイスを与える元花形オペラ歌手・北白川夫人(九里みほさん)と、月影先生に付き従う源蔵(齊藤裕亮さん)、そして小野寺理事(篠原正志さん)がおけぴスタッフ的MVPキャラクター♪ 原作そのままのビジュアル、立ちふるまい…すべてに拍手! みなさんもぜひ、お気に入りキャラクターを舞台の上で探してみてください。(マヤが受けたオーディション課題“感動を生む”に登場する“レストランの支配人”も「原作完コピ」でありました♪)
【ついに目の前に現れた“紅天女”! さらに進むマヤたちの物語】
マヤたちが紅天女の里へ向かうところで終わった初演との大きな違いは、やはり、実際に月影千草が紅天女を演じる場面があることでしょう。
紅天女の里で、阿古夜と一真がお互いを魂の片割れとして求め合うさまを見たマヤ。
「恋とは相手の魂を乞うること」─そのことに気がついたマヤと真澄の運命は?!
真澄の婚約者・紫織が登場することで、マヤの“紫のバラのひと”への想いがよりいっそう色濃く見えてくるのも、今回の再演の大きな特徴です。
苦悩する姿が美しすぎる真澄さま(小西遼生さん)と、鋭いツッコミを入れる秘書・水城(東風万智子)のコンビも健在。小西さん、舞台が進むほどに“昭和の男前”っぽさが増してきて素敵ですよ!
このほか、巧みな演技で笑わせる松永玲子さん、尾崎一蓮役を渋く演じる小林大介さんなどもご出演。
いまなお執筆が続く『ガラスの仮面』。今回の舞台化ではいったいどこを物語の着地点にするのか? それはぜひ劇場でお確かめください。
舞台『ガラスの仮面 惹かれあう魂』は大阪松竹座にて9月11日まで上演。9月9日(金)11時の回終演後には原作者の美内すずえさんトークショーも開催されます。
その後、東京公演は9月16日(金)から26日(月)まで新橋演舞場にて。トークショーなどイベント詳細については
劇場公式サイトをご確認ください。
【♪おけぴスタッフの初日レポート<おまけ>】
大阪公演初日の公演では、一幕の終盤で舞台装置のトラブルがあり、一旦上演が中断される事態となりました。
しかし! この日の観客は幸運でした。
客席が装置の不具合に気がついてどよめいても、まったく動ぜずに演技を続けた貫地谷しほりさんの女優魂はまさしく“リアル北島マヤ”。
さらに舞台再開前には演出のG2さんによるこんな前説が。
「さあ、みなさん思い出してみましょう。月影先生が“うっ”と発作を起こし、マヤたちが急いで駆けつけるシーンでしたね? スタッフ、キャスト、各セクション問題無いですね? それではいきます。よーい、はいっ!」
ふたたび幕が上がり、危篤の先生のもとへ駆けつけるため、花道から登場するマヤと桜小路くん! あまりにもタイミングよく“切羽詰まった”場面からの再開となったため、しばらくはざわついていた客席ですが、ここであらためて迫真の演技を見せた貫地谷さん、そして続く千草と一真の回想シーンでの一路真輝さんの演技に、あっという間に“ガラスの仮面の世界”に引き戻されます。
アクシデントを味方にする。不可能を可能にする。これぞまさしく、漫画『ガラスの仮面』で繰り返し描かれているテーマのひとつ。
リアルとフィクションが重なるような不思議な体験。これもまた“演劇ならではの魅力”。あらためて「あたし、お芝居が好き…!」とマヤ気分になれた観劇体験でした。
写真提供:松竹株式会社
おけぴ取材班:mamiko 監修:おけぴ管理人