2014/05/13 新国立劇場オペラ「アラベッラ」舞台稽古レポ & 舞台監督 大澤裕さんインタビュー(感想追記!)

【6/1】公演をご覧になった方々の感想を追記しました。

演劇やミュージカルをこよなく愛するみなさんに、
「オペラ」の魅力も知っていただきたい!
そんな思いから始まったおけぴオペラ鑑賞応援企画!!

「ヴォツェック」に続く第2弾は、新国立劇場オペラ「アラベッラ」。
「ばらの騎士」で有名なリヒャルト・シュトラウス(今年生誕150年!)の
後半期の名作オペラ、
日本が誇る新たなオペラの殿堂・新国立劇場オペラパレスにて、まもなく上演です!!


ウィーンの貴族社会を舞台に、没落貴族の娘アラベッラと男装の妹ズデンカ、
それぞれの恋模様を美しい音楽で描いた愛すべき喜劇。
愛するがゆえについてしまった嘘が次々に矛盾を引き起こし、
結末は、誰もが思わず微笑んでしまう展開に...!!

前回公演時の映像は ↓コチラ!

「光の魔術師」との異名をとるフィリップ・アルローさん(演出・美術・照明)が
生み出す「青で満たされた世界」
(なんと舞台には「300種類の青」が使われているとか!!)
そして、日本のファッションデザインの第一人者、森英恵さんがデザインした
エレガントな衣裳でも話題のこの公演、
今回は写真中心に舞台稽古初日の模様をお届けします!




衣裳なし、ピアノ伴奏の中で始まった第3幕の稽古。
舞台稽古はこの日が初日ということで、
立ち位置や動きなどを入念に確認しているようです。

↓2階席下手側から見た舞台。まだ本番用照明も入っていませんが、
既に「青で満たされた世界」の片鱗が……


青、あお、アオ!!

これもオペラならではのスケールゆえか、
舞台の各所で打ち合わせが同時進行するんですね。
演出のアルローさんに加え、3人の演出助手の方々も舞台を駆け回る!


楽譜を片手に演技をチェックする演出(・美術・照明)のフィリップ・アルローさん(左)


アラベッラ役のアンナ・ガブラーさんは
くるくると変化していく表情がなんとも魅力的♪


演出助手と打ち合わせをする、マッテオ役のマルティン・ニーヴァルさん(中央)
ズデンカの「嘘」に右往左往。その果てに……


恰幅のよいお体から発せられる、張りのある声にホールが満たされる……
新国初登場のマンドリカ役のヴォルフガング・コッホさん(左から2人目)は
ヨーロッパの一流歌劇場で活躍する「ドラマチックバリトン」として評判の方


姉妹の両親を演じるのは、新国オペラに欠かせない妻屋秀和さん&竹本節子さん
コミカルな演技も息ぴったり、長年連れ添った夫婦感満載です(笑)


一人でこの場面を何度も何度も繰り返し練習されていた竹本さん
おけぴスタッフ、個人的に注目シーンです!


アラベッラ(ガブラーさん)&マンドリカ(コッホさん)カップルのオフショット
とても仲の良さそうなお二人ですが、作品の中では一筋縄ではいきません(笑)


こちらはオーケストラ・ピットのエリア。
まだオーケストラは入っておらず、音楽ヘッドコーチの石坂宏さんの指揮、
コレペティトゥール(伴奏ピアニスト)の越知晴子さんの伴奏で稽古は進んでいきます。


稽古終盤には別会場でのオーケストラ稽古を終えた
指揮者のベルトラン・ド・ビリーさんも駆けつけました。
ウィーン放送交響楽団の指揮者を長年務め、ウィーン気質をよく知る一人。

おけぴスタッフが取材した時間には、残念ながらズデンカ役のアニヤ=ニーナ・バーマンさんは撮影できず……。
稽古終盤に少しだけ拝見しましたが、美しい容姿になんとも艶のあるお声、
有名なアラベッラ&ズデンカの二重唱、おおいに期待できそうです。



舞台稽古の後、今回の公演で舞台監督を担当されている大澤裕さんに、公演の見どころや舞台監督の仕事について伺いました。

【以下の舞台写真】
新国立劇場オペラ「アラベッラ」(2010年10月)
撮影:三枝近志 写真提供:新国立劇場


舞台監督 大澤裕さん

──今回の公演は「光の魔術師」フィリップ・アルローさんが生み出す「300種類の青」が見どころのひとつと伺いました。

大澤)
そうですね。幕が上がればわかりますが、舞台のほぼ6〜7割が青。照明部に聞いたら、照明の色は青と白しか使っていないそうです(笑)。普段使うような、赤、黄色、緑などはまったく使わないんですね。

ただ、同じ青でも、木製のパネルに当てる青、布地に当てる青……と、全部異なります。アルローさんのプランでは、青い壁にや布地にさらに青い明かりを当てるんです。舞台の随所にはブルーのフィルターを巻いた蛍光管が仕込んであって、青い壁に青い光が当たるんですね。


──先ほど舞台稽古を拝見しましたが、壁の青、階段の青、床の青…と全部色が微妙に異なるんですよね。今日は照明は当たっていませんでしたが、あそこにさまざまな照明が当たることによって、多様な青が作り出されるんですね。

大澤)
そうですね。あと、光の当て方によっても陰影をつけています。シーンによって明かりの強弱や当てる角度を変えることによって、青が立ったり沈んだりする。これらをすべて合わせれば、300…いやそれ以上になるかもしれません。ここまでの舞台はそうそうないと思いますので、ぜひ見ていただきたいですね。

──アルローさんが生み出す光のスペクタクル、とても楽しみです! さて、大澤さんが担当されている舞台監督さんというのはどんなお仕事なのでしょうか?

大澤)
演劇やミュージカルにも舞台監督はいると思いますが、それらの方々と同じように、新作のプランニングなどの初期段階から参加しています。仕事としては舞台を支える各セクションへの連絡や統括、稽古場の仕込みや稽古の進行、本番舞台の仕込み、本番中の進行や安全管理など、ありとあらゆる局面に全部立ち会います。


──中でも特にオペラならではの仕事というと、どんなことになりますか?

大澤)
オペラでは特に、指揮者やオーケストラとの関わりが多くなりますね。すべてが音楽によって管理されているから、舞台の転換や緞帳の上げ下げなどは全部、音に合わせて進行するんです。タイミングは演出家から指示がありますが、我々もまた、それをいかに「音楽的に」進めるかを考えなければなりません。つまり、楽器の演奏と一緒。緞帳はボタンを押せば上がっていくけれど、それをいかに自然に、音楽に合わせて上げていくか、なんです。

たとえば「幕切れ」の部分。曲の最後の音にはたいてい「フェルマータ」があって、指揮者が好きなだけ音を伸ばせますよね。でも、緞帳は一度ボタンを押したらもう止められない。ですから、公演中に「マエストロ、今日はちょっとテンポが速めだなあ」と感じたら、ボタンを押すタイミングを早めたりします。逆に、「今日はすごくいい演奏だから、最後は気持ちよく伸ばしていただきたい」と思ったら、わざとタイミングを遅らせることも。そういう部分も我々に任された部分なんですね。

──まさに、音楽家との共同作業なんですね。

大澤)
演出家や指揮者の要求には最低限答えなければなりませんが、よりよい舞台にするためには、我々もクリエイティブな部分に参加していく意識が求められるんですね。


──今回の公演で裏方の方々が特に力を入れているのはどんな部分になるでしょうか?

大澤)
今回の舞台は、1〜3幕のすべての幕でセットが違うんです。これを我々は「三杯飾り」と呼ぶんですが、この劇場の公演でも、これだけ大掛かりなセットを使うものはなかなかないと思います。
1幕のセットが主舞台にあるときは、2幕のセットは上手側、3幕のセットは下手側の袖舞台にありますから、幕間の休憩時間に次の幕のセットをスライドさせて主舞台に持っていかなければならない。ですから、25分の休憩時間をめいっぱい使って転換作業をするんです。

──私たちがホワイエでワインか何かを飲んでいるとき、裏方さんは舞台を右へ左へ走り回っている!というわけですね。

大澤)
そういうことになりますね(笑)。ちなみに今日は奥の舞台に「カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師」(注:5/14〜30の期間中「アラベッラ」と交互に上演される公演)のセットもありますから、4面の舞台をすべて使っている状態です。


──まさに劇場全体がフル稼働しているわけですね。さて今回は、森英恵さんデザインのエレガントな衣裳も見どころのひとつです。

大澤)
ええ。やっぱり素敵ですよね。演出家の意図を汲み取った上に、森さんの個性や作品に対するイメージも投影された衣裳だと思います。セットの中から飛び出して、単体で見ても素敵な衣裳ばかりですね。

──音楽、美術、衣裳と、オペラならではの魅力が詰まった公演になりそうですね。大澤さんご自身は、今回の公演の中でお好きなシーンやアリアはありますか?

大澤)
月並みかもしれませんが、やっぱりアラベッラとズデンカが愛への憧れを歌う、1幕の二重唱は好きですね。
実はここに仕掛けがあって、この二重唱の前に、ズデンカの「姉さんは明るいところに行き、私は闇に降りていく」という歌詞があるんですが、そのときにアラベッラが心の中で「そうではないのよ」と思って、窓のブラインドをゆっくり開けるんです。すると、外の光が入ってきて、ズデンカを越えて反対側の壁に当たる。そのシーンば僕はすごく好きです。

そして、そのあとに2人の二重唱が始まります。いい曲ですよね。わりと短いので、聴くたびに「もっと長く歌ってくれればいいのに」と思います(笑)。

ほかには、2幕のアラベッラとマンドリカの二重唱。これは、マンドリカのプロポーズの歌なんですね。雄大な感じの曲で、かっこいいんですよ。男として聴いていても、プロポーズでああいうふうに歌えたらいいだろうなあと思います(笑)。


──女性の立場からしても究極のプロポーズかもしれませんね(笑)。では最後に、レポをご覧のみなさんにメッセージをお願いします。

大澤)
我々オペラに関わる者は、劇場じゅうをいかに生の音で響かせられるか、そして、舞台装置、照明、衣裳、小道具を一体にして、いかに観客のみなさんに訴えかけられるかということを常にテーマとして製作に取り組んでいます。
ミュージカルや演劇をよくご覧になる方も、今回はオーケストラの楽器が発する生の音、そして、それを飛び越えて耳に届く歌手の生の声を、ぜひ客席で体感してみてください。

私も舞台監督の仕事で客席の真ん中にいると、よく「音の渦に巻かれる」「音の波に飲み込まれる」感覚を味わうことがあるんです。みなさんもぜひ劇場に足を運んでいただいて、生の音が身体の中にどう入ってくるかを感じていただいて、普段とはちょっと違った体験をしていただきたいなと思っています。

リヒャルト・シュトラウスの曲はクラシック色が濃いというよりは、どちらかというとオペレッタに近いような、親しみやすい作品なので、きっと演劇やミュージカルを好んでご覧になっているみなさまにも楽しんでいただけると思います。

──ありがとうございました。公演を楽しみにしています!





【6/1追記】公演をご覧になった方々から感想が届きましたのでご紹介しますね!


三幕が進につれて涙が流れて、久しぶりに震えるほど感動しました。幸せです。
指揮のベルトラン・ド・ビリーの巧みな音楽にすっかり持っていかれました。
また、マンドリカ役のコッホの声、アラベッラの美しさ、皆様役柄にはまっていました。
ヴァルトナー伯爵の妻屋さんが、どこまでも達者で、笑いました。
オケも素晴らしかったです。

楽しくかったですし、R.シュトラウスの美しい音楽も手伝い、
心洗われる場面もあり、行って良かったです。
「バラの騎士」を彷彿とさせる美しい二重唱などが、素敵でした

アラベッラは作品名は知っていましたが、生は初鑑賞でした。
姉妹二人の声が美しくて感動でした。 個人的には妹役の方がよかったです。
セットも青と白でシンプルで美しかったです。

楽しかった! 舞台美術が綺麗で、音楽も美しく、
出演者の歌声も素晴らしかった。目と耳の両方で楽しめました。
ストーリーはコミカルで、登場人物達は笑ってしまうようなキャラ
(特に男性陣)でしたが、ヒロインの姉妹が魅力的ですね。
賢く優しい女性がダメ男を赦すお話は普遍的なのでしょうか。

アラベッラ、ズデンカ、マンドリカ役の方々が素晴らしく、
特にバリトンのヴォルフガング・コッホが良かったです。
ブルーと白の色の舞台装置も綺麗で、今まで観てきたオペラとは異なった印象でした



「アラベッラ」
2014年5月22日(木)〜6月3日(火)5回公演
新国立劇場オペラパレス

<役&出演>
ヴァルトナー伯爵:妻屋秀和
アデライデ:竹本節子
アラベッラ:アンナ・ガブラー
ズデンカ:アニヤ=ニーナ・バーマン
マンドリカ:ヴォルフガング・コッホ
マッテオ:マルティン・ニーヴァル
エレメル伯爵:望月哲也
ドミニク伯爵:萩原潤
ラモラル伯爵:大久保光哉
フィアッカミッリ:安井陽子
カルタ占い:与田朝子

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

<スタッフ>
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
衣裳:森英恵

<あらすじ>
没落貴族のヴァルトナー伯爵には、二人の娘アラベッラと男の子として育てられているズデンカがいる。美しいアラベッラには士官マッテオなど多くの求婚者がいるが、誰にも関心がない。彼女の元に資産家の甥マンドリカが現れ、お互いに一目惚れ、将来を誓い合う。密かにマッテオを愛するズデンカは、彼を慰めようと姉の部屋の鍵と偽り自分の部屋の鍵を渡す。マンドリカはアラベッラの不貞を疑うが……

公式サイトはこちらから


おけぴ取材班:hase(文/写真) 舞台写真提供:新国立劇場 監修:おけぴ管理人

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