回を重ねてまさかの“その3”まで参りました。
みなさまお付き合いありがとうございます。
完結編ではその人物像と今後の出演作について大いに語っていただきます。(伊礼さんインタビューその1は
こちら、その2は
こちらから)
--まずは役者さんにとって重要な<記憶力>、膨大な台詞を覚えるというのは永遠の神秘です。伊礼)
台詞覚えは早くなりました。
毎回、初めて本をもらった瞬間は覚えられるのか不安になりますけど(笑)。一番記憶しやすいのは声に出すことですね。
ただ、
公演が終わるとすっぽりとその記憶は抜け落ちます。
--それは意識的に手放すのですか。伊礼)
そういう感覚はないですが、次を入れるには必然的にそうなるのかな。
ちなみに
昨日何を食べたかは覚えていません、そういうことは全然ね・・・(笑)。
--続いては<集中力>こちらも高そうですね。伊礼)
以前アルバイトで
接客業をしていた時に培ったものが大きいと思います。
レストランのウェイターでしたが自分が受け持つフロアの各テーブルに注意を払う、
常にアンテナを張っているような集中力が必要とされていましたから。こっちのテーブルに料理を出しつつ、あ、後ろでフォーク落としたな。とか、向こうのテーブルの料理が遅れているなとか。
あとは記憶力にもつながりますが、常連さんの好きなメニューを覚えたりしてね。
--なかなかデキるウェイターですね!!伊礼)
今は、それを
“ここぞという場面で”発揮しています。
鴻上さんには「一日で15分だけ賢いね」と言われました(笑)。
普段は相当ダメな人間なんだけどポイントが来た時にポンとね。
--<運>はどうでしょう。伊礼)
良いほうでしょ~!かつて音楽をやっていた頃、運に恵まれて出会えた人をおざなりにして失ったこともあり、今はそういう良縁を繋いでいけるようにしています。
--その甲斐もあってか素敵な作品や人との出会いが続いていますよね。しっかりと繋がっていますね!伊礼)
ありがたいことにそうですね。
繋げるということに関しては、一度お仕事をしたら、やっぱりまた呼んでもらいたいので、自分の中には“いただいた仕事は毎日オーディション”という気持ちや、何があっても(チャンスを)掴んでやるって気持ちが“それじゃ(相手が)引くから”って思われるくらい強くあるんです。
その一方で“失っても怖くない、この世界で生きていきたいけれど、生きていく手段は他にもいくらでもある”と考える自分もいるんです。
そうやって一歩引いて俯瞰することでプレッシャーを和らげ、自分の心を安定させているんでしょうね。
例えば何らかの理由で芝居が出来なくなったとしても「命までは奪われない」ですからね。
そういう精神状態に身を置くことで冒険もできるし、冷静な判断もできる。そういうバランスのとり方をしています。--お話をうかがっていて感じたのは、熱い方であるのと同時にかなり俯瞰するタイプですね。伊礼)
いろいろと現実を受け止めて、方向修正していきたいんです。それが俯瞰ということになるんでしょうね。
現実を知らないと面白くないというか。
たとえば雑誌を出したら○部売れた、それが思ったより売れなかったとします。
それは中身が問題なのか、表紙なのか、値段なのか。
どこを改善すればいいかは突き止めて実行したいんです。--それ、かなりのビジネスマン気質ですね。伊礼)
結果的にそうなっちゃいました。※
でも難しいですよ、商品が自分だから(笑)。俯瞰にも限界がありますしね、そこは周りの意見にも助けてもらいながらやっています
会計書類の数字にももちろん目を通しますし、そこから分析もしますが、
数字だけじゃないところもありますからね。仮にもし数字がそう指示したとしても、僕が脈略なくピンクの服着て踊るなんてことは違うなと思いますし。
--興味深いです!社長ですね。
ここでぐっと話を戻しまして、いよいよ締めに向かおうと思います。
まずは次回作、結果的にひさしぶりのミュージカルということになりますが『スリル・ミー』への意気込みは。伊礼)
プロデューサーさんにもお話していることですが、客観的に観て、
この作品がここまで盛り上がることに疑問を持った状態でのスタートです。
ネタバレになるのであまり言えませんが、物語でどうしても引っかかるとことがあるんです。
ただ演出の栗山(民也)さん、ペアを組む(田代)万里生くんとそこをどう消化してどんな芝居になるのかはとても楽しみです。
ある意味これまでご覧になった方、
『スリル・ミー』ファンを裏切りたいという気持ちもあります。稽古初日までにしっかりと歌と台詞を入れて、それがどう崩れるのか深まるのか、栗山さんとの時間を大切にしたいと思います。
僕、万里生くんの芝居好きなんです。彼の“私”を観客としてみましたが、すごくよかったんです。歌も叫んだり泣いたりとか、こんなに歌を放棄できるんだって。皆さんご存じのように万里生くんは音程も良くて絶対音感もあるので、相当苦痛だろうと思ったんですけど、それをやるというのが
美しいなと感じました。万里生くんとならいい芝居ができるだろう、万里生くんでよかったなと思います。
--ますます楽しみになりました。伊礼)
ご期待ください。
「万里生くんの“私”を僕色に染めます」くらい言っとけばいいのかな
(笑)?
『スリル・ミー』イベントより
--ちょっと気が早いですが『ヴェローナの二紳士』についてもうかがいます。宮本亜門さんの演出は初めてですよね。伊礼)
はい。亜門さんとはぜひ一度と思っていましたが、タイミングが合わずにいました。
それがこの時期に一緒にできることになり、ご縁を感じています。
スケジュール的にはややタイトで大変なこともありますが、
メンバーもちょっとユニークで亜門さんの演出、なにか新しいことが生まれそうな予感がしたので、それはちょっと頑張ってでもやりましょう!となったわけです。
こうしてミュージカルをまた始める、いや、やめていたわけでもないんですけど(笑)。
でもまたミュージカルでとそういう方向に気持ちを向けると、そのタイミングで不思議とミュージカルのお話が来るんですよね。
年明けには梅田芸術劇場さんのミュージカルコンサートもありますし。面白いですよね。
--たっぷりと伺ってきたインタビューもいよいよ終わろうとしています。すでに出尽くした感もございますが(笑)、最後に改めて、俳優・伊礼彼方さんは今後どこに向かっていくのでしょうか。伊礼)
とにかく
伊礼は○○という枠が無くなればいいなと思っています。“歌も欲しいな、あいつ呼んどくか”“あいつだったら面白くやってくれるだろう”“でも本物の王子やらせたらやっぱり伊礼だよな”“あいつだったらなんかやってくれそうだな”そんな風に何でもできるから呼んでおこうって、言葉は悪いですが消耗品でいいんです。僕は消耗せずにそれを次への糧にしますから。
そんな役者になれたらいいなと思っています。
--ぜひ5年後10年後にまたゆっくりお話を聞かせてください。伊礼)
この世界にいるかな?(笑)いや、居たいですよ、もちろん。
--違う業種になっていたりして?!伊礼)
いや、想像できないですけどね。
でももし違う職業をしていても、変わらずきっと熱いことを語ってると思いますけど(笑)。
--それはそれで面白いですね、いやいや、ぜひこのままでいらしてください。今後のますますの活躍を楽しみにしております。3回にわたってお届けしてきた伊礼彼方さんロングインタビュー。
お付き合いありがとうございました。
そして、伊礼さん、とっても興味深く、熱いけれど冷静なお話をありがとうございました。
※ 伊礼さんは2013年4月1日に株式会社KANATA LTD.を設立。
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おけぴ取材班:おけぴ管理人(撮影)chiaki(インタビュー・文)