会見レポートに続いてお届けするのはGPレポート。「12人で100人近い役を演じる」「100分ノンストップ」「豪華キャスト」「これは9.12の物語」など、開幕前から話題のミュージカル『カム フロム アウェイ』。そこに生きる人たちのエネルギー、人が人を癒すということ、劇場で味わう舞台の醍醐味が凝縮された作品です。
それぞれの人生が交錯する5日間の幕開けを飾るのは“Welcome to The Rock ザ・ロックへようこそ”。9.11、ニューファンドランド島ガンダーの町の人々が“あの朝”を語り始めます。
2001年9月11日と聞けば、その日に何が起きたのかを私たちは知っているのですが、劇中の彼らはまだその全貌を知らない。何かが起きた、そこからの行動や出会い、葛藤が生々しく描かれます。
当たり前の日常が当たり前でなくなる。
この作品に登場するのは、歴史上の人物や何かを成し遂げた特別な人ではない、人種も宗教も話す言葉も異なる市井の人々。それは観客の私たちもその一人になりうるということです。
一市民たちの群像劇、アンサンブルミュージカルを言ってみれば数々の大作の大看板を担う俳優たちが集結して届ける。その贅沢さに心躍るとともに、作品が持つある種の匿名性のような要素が薄れるのではないかという思いも少しありましたが、それは杞憂に終わりました。それぞれがメインで演じる役のドラマの筋をしっかりと紡ぎながら、兼ねる役で場合によっては一瞬の登場でもその人物たちの生活や人生を見せる。だからこそ、一瞬のドラマが心に焼き付くのです。その中に、ときどき瞬間芸のようなキャラクターが登場するのもご愛嬌!
百戦錬磨の俳優たちが見せる献身が作品を豊かに、ドラマを明確にします。私欲を捨てながらも、出るところはしっかりと出る。作品への姿勢や愛情の深さが、この作品がもつ温かさや力強さにつながるのです。
こうして濃密な5日間を共に過ごしたラスト、それぞれの家へ戻っていった人々、見送った人々、その後の人生が再び“Welcome to The Rock”に乗せて語られます。冒頭でWelcomeされ、登場人物たちとともに時を過ごした観客も、そのころには物語の一員になったかのように感じられる構成も見事。そして100分一緒に駆け抜けた心地よい疲れも、物語を受け止めた実感として身体と心に残ります。バンドのみなさんがキャストの一員として舞台上で奏でる躍動感あふれる音楽も素晴らしく、本作がミュージカルである意義を強く感じさせます。
みなさんに加えてドラムも!!
2001年9月11日、ニューヨークでの同時多発テロ事件の勃発。それに伴うアメリカ領空の閉鎖によって行き場を失くした飛行機が降り立ったのは、給油地としての役目を終えたカナダ、ニューファンドランド島のガンダー国際空港だった。それによって人口1万人の小さな町は、一夜にして2倍の人口に膨れ上がった。当初の目的地はもちろん、人種も宗教も話す言葉も異なる人々はこの地でどんな5日間を過ごしたのか。実話をベースに創られたミュージカル『カム フロム アウェイ』。あの日のニューファンドランド島ガンダーの町での出来事を追体験できる舞台です!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人