ついに開幕!ミュージカル『カム フロム アウェイ』!
2001年9月11日、世界が停止したあの日。
カナダのニューファンドランド島の小さな町ガンダーで起きた奇跡の物語。
ニューヨークでの同時多発テロ事件の勃発。それに伴うアメリカ領空の閉鎖によって行き場を失くした飛行機が降り立ったのは、給油地としての役目を終えたカナダ、ニューファンドランド島のガンダー国際空港だった。それによって人口1万人の小さな町は、一夜にして2倍の人口に膨れ上がった。当初の目的地はもちろん、人種も宗教も話す言葉も異なる人々はこの地でどんな5日間を過ごしたのか。本作はクリエイター陣が現地に赴いて取材をし、島民たちと仲良くなって聞いた数々の話や、“カム フロム アウェイ(遠くから来た人)”―あの日、島に降り立った人々―の話をもとに創られた実話ベースの作品です。
日本初演の開幕を前に、12名のキャスト、演出のクリストファー・アシュリーさんが勢ぞろいしての会見が行われました。みなさんのコメントをGP速報ソロカット
(レポ最後にand more)とともにレポートいたします。
後列)吉原光夫、橋本さとし、田代万里生、加藤和樹、浦井健治、石川禅
前列)クリストファー・アシュリー、安蘭けい、シルビア・グラブ、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音
オリジナル演出家 クリストファー・アシュリーさんご挨拶『カム フロム アウェイ』を作ってからの9年間、この世界では大きな分断、そしてたくさんの紛争が起こっております。その中で優しさや他者への寛容な思いを描く作品を手掛けられていることを幸せに思います。この作品は、今も生きている実在の方々をモデルにした作品です。それは僕にとっても初めてのことでした。彼らはメイキング段階からとても協力してくださって、今ではこの作品のファンとして世界中、『カム フロム アウェイ』を“追っかけ”ています。
また、大好きな日本キャストのみなさんからは、なにもかも知り尽くしたと思っていた作品やその登場人物たちについて改めてたくさんのことを学んでいます。そしてこの作品では、音楽も重要な、大切な役割を果たします。素晴らしいバンドのみなさんとご一緒できることも幸せです。このホリプロさんがご用意くださったコミュニティに感謝の気持ちでいっぱいです。
──キャストのみなさんは、初日を前にした今の思いをお聞かせください。キャストのみなさんはメインで演じる役以外にも複数役を演じ、12名で100ものキャラクターが舞台上に登場する本作。ここでのご紹介はメインとなる役を表記してあります。ダイアン役:安蘭けいさん
足掛け6か月準備してきましたが、あっという間過ぎて、明日が初日だなんて今も信じられません。でも、すごくすごく密度の高いお稽古をしてきたので、きっと明日は素晴らしい初日になると思っています。今、クリスさんがくださった素敵な言葉がとても嬉しい!日本キャストにしかできない味を皆様にお届けできたらなと思っています。
ニック役:石川禅さん
半年間、本当にいくつもの高いハードルをみんなで一緒に乗り越えてきました。
僕らは実在した人物を演じることはよくあるのですが、今も元気に実在していらっしゃる方を演じることはあまりありません。この作品は限りなくドキュメントに近づけたフィクション。嘘をつかずに、モデルとなった方たちに成り代わって気持ちを表現する。それが最後の高いハードルです。愉快なキャストたちと笑い合いながら、最後のハードルを越えたいと思います。
ケビンT役:浦井健治さん
昨日、舞台稽古をしていたとき、(舞台)袖中で安蘭さんとちえちゃん(柚希さん)と話していたら、安蘭さんが「始まるってことは、終わっちゃうんだよね」とおっしゃいました。
そのことを寂しいなと思いました。そのくらい6か月、毎日8時間くらいみんなで一緒に濃密な稽古をしてきました。舞台稽古では、僕らを見守るスタンバイキャストの4人の表情も心なしか寂しそうに見えました。彼らも含めた、この16人で5月の千穐楽まで完走することを目標にこれまで積み上げてこられたこと、ここからも公演を重ねていけることへの幸せを感じています。ガンダー空港の奇跡の物語、そこで描かれる「人って温かいんだな」ということを僕自身、この現場で体感しています。大切に作品をお届けしたいと思います。ぜひ劇場にお越しください。
ボブ役:加藤和樹さん
稽古開始前は、このミュージカル界のアベンジャーズたちとの共演にドキドキしていました。でも、みんなで同じ時間を共有し、失敗も笑いに変えながら前に進んでいくうちに本当にひとつの“カンパニー”、いや、それ以上の“ファミリー”になっていきました。初日を前に不安ももちろんありますが、長い稽古期間で培ってきたものを信じて、舞台上で出し切りたいと思います。とてもエネルギーのある作品に仕上がっていると思いますので、ぜひ劇場に観に来ていただければと思います
ジャニス役:咲妃みゆさん
稽古場を振り返ると、本当に壮絶でしたが、その分、本当に愛おしい日々でした。ひとりの人間として今後の人生で心に持ち続けたい大切な考え方を、この作品からたくさん学ばせていただいていることに感謝しています。この作品のモデルとなった方々への敬意を胸に、一回一回大切にお届けしたいと思います。舞台セットも見どころ、必見です!
ボニー役:シルビア・グラブさん
初めて舞台上で照明とセットのある状態で通したとき、最後の「Somewhere in the middle of nowhere」で、みんなで一列になって上を向いて窓の外を見た瞬間、涙が溢れてきました。めっちゃ感動してしまいました。いや、スゴイですよ!ここに最後のピースであるお客様が入ったとき、どこまで冷静でいられるかわからないくらい最高でした。出ている側が言ってしまうくらい最高なので、観る側もかなり最高だと思うんです(笑)! 劇場へぜひお越しください!
ケビンJ役:田代万里生さん
作品の魅力についてはみなさんがお話してくださっていますので、僕からは──ご覧の通り、今回、衣裳はとてもナチュラルと言いますかカジュアルと言いますか(笑)。普段着なのか衣裳なのかわからないぐらいです。男性キャストはメイクもしていません。僕は、帽子もかぶるので整髪料すらつけていません。それはガンダーの町での突然の出来事の最中の物語だから、きれいに着飾っていないのです。こんなにも日常の延長線上にある作品は僕も初めてです。明日、日生劇場で開幕し、ツアーも入れると全部で50公演以上。単純計算で、100分×50で、5000分以上、ここから僕らは一緒に歩き、たくさんの方にこの作品を届けていきます。
クロード役:橋本さとしさん
普段着っぽいと言われましたが、僕は普段は絶対に着ないような衣裳です(笑)。自分の役者人生の中で、最も過酷な稽古だったような気がします。僕、そんなにミスしないんですけど、めちゃくちゃミスってね(笑)。でも、ミスしてもみんなで笑い飛ばしながら、ようやくここにたどり着きました。みんなと、明日の初日を迎えられることは本当に嬉しい限りです。たまに営業トークで「観に来てください」って言うのですが、今回は本気で「観に来てください!」、お待ちしています。
ビバリー役:濱田めぐみさん
私は、みなさんとちょっと違い、アメリカン航空の初の女性パイロット役ということで機長の衣裳となっています。お稽古場から1日8時間、ずっと一緒にいました。1メートル以内に必ず誰かいるような状態でお芝居してね。本当に他人とは思えない、ファミリー、まるで親族の集まりのような雰囲気です(笑)。劇場入りしてからも同じ。舞台上でちょっと不安になっても、周りを見ると家族がいる。その輪に、毎公演、観客の皆様も加わってくださることが今からとても楽しみです。
ハンナ役:森公美子さん
ハンナを演じます。私の場合は、眼鏡をかけたときにはハンナ、眼鏡を取ったときは島民ということでございます。このファミリーから、たくさんの幸せをいただきました。稽古の中で一緒に9.11のドキュメントを改めて見るなど、たくさんの勉強もさせていただきました。みんな頑張っておりますので(笑)、ぜひ観に来てください。
ビューラ役:柚希礼音さん
私はこの作品で「演じない」ことがテーマでした。稽古中から、何度もそれを求められ、とても難しかったのですが、いつもキャストの皆様が「こうしたらいいんじゃない?」「ああしたらいいんじゃない?」と自分事として考えて教えてくださいました。本当に家族のよう! 『カム フロム アウェイ』という作品の温かさ、キャストの皆様の温かさ、もう温かさでどうにかなってしまうのではというくらい(笑)。このぽかぽかの心で、まずは明日、お客様にこの物語を心込めてお届けしたいと思っています。5月の千穐楽までよろしくお願いします!
オズ役:吉原光夫さん
そうですね、難しい。僕は人の言うことを聞きたくなくて役者になったのですが(笑)、この稽古期間中は、番号が決まっていたり、言うことを聞かなくてはならなかったり、それが地獄すぎて稽古が早く終わればいいと思うこともありました(笑)。でも、この穏やかで誇り高い作品を商業演劇として上演することのノイズ、軋みをどうホリプロさんはじめ、このミュージカル界のポンコツスターたちが乗り越えるのか。互いに思いやりを持ち、手に手を取ってお客様にこの作品を届ける、それはここからがスタート。そのためには気持ちを緩めずに、人の言うことを聞いて頑張ろうと思います(笑)。3.11があった日本で、今もなお地震が起きて不安な状況で、また、人と人とが傷つけ合ってしまう時代に、この作品は穏やかな風を届けてくれると思います。劇場に来て楽しんでください。
──稽古中のエピソードは。咲妃さん)
1人3役を担う4名のスタンバイキャストの方々が、(今日はこの役、翌日はあの役と)3日間違う役で代役に入って通し稽古を行いました。本当にすごいものを目撃させていただきました。そんなスタンバイキャストの方の底力に支えられて、この作品をお届けできることはとても心強いと改めて感じています。
シルビアさん)
パズルのように立ち位置や動線が組まれているので、ただ覚えただけで代役に入れるという作品ではありません。かなり入るのが難しい中でやり遂げたことに、とても感動しました。
一同)
同感!!
──アシュリーさんよりお客様へメッセージを!アシュリーさん)
Please join us!
ぜひこの美しい劇場で、この素晴らしいキャストをご覧ください。
この作品は、優しさ、そして寛大さについての物語です。先程、光夫さんもおっしゃっていましたが、日本の皆様に穏やかな風をお届けできれば幸いです。
──やっぱり締めはこの方!橋本さん)
今、悩んでいる方、壁にぶつかっている方、前に進もうと思っても不安になっている方々にエールを送りたいと思います。町長クロード役の橋本さとしが僭越ながら締めさせていただきます。せ~の!ウェルカム・トゥ・ザ・ロック!
(これがTake1だったか否かはご想像にお任せします(笑))アシュリーさんのお話にも合ったように、ケルト音楽が心地よく、音やリズムでガンダーの風土やそこに住む人々の気質を伝えてくれるバンドのみなさんです。
公演は3月7日から29日まで日生劇場にて上演、その後、大阪、愛知、福岡、熊本、群馬公演がございます!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人