【2024年の旅が始まる】ミュージカル『VIOLET』GPレポート~行こう、マイ ウェイ~


1964年のアメリカ南部の片田舎。
ヴァイオレットは人生初の旅に出る!

旅の目的は幼いころに父親による不慮の事故で顔に負ってしまった大きな傷を癒すこと。あらゆる傷を癒す奇跡のテレビ伝道師に会うために、西へ1500キロ!
ヴァイオレットはバスに乗る──

東京芸術劇場プレイハウスで初日を迎えるミュージカル『VIOLET』、開幕に先立ち公開ゲネプロが行われました。(ヴァイオレット:三浦透子さん、ヤングヴァイオレット:生田志守葉さん)
※ヴァイオレットは屋比久知奈さんとのWキャスト、ヤングヴァイオレットは嘉村咲良さん、水谷優月さんとのトリプルキャストとなります。
※記事ラストに4/12 屋比久さんバージョンの感想も追記いたしました!



【GPレポート】

「これは体感型ミュージカル」そんな言葉が心をよぎる。
自ら決意して旅に出た25歳のヴァイオレット。多様な人との出会いを通して、少しずつ彼女自身が変化していく様子を俯瞰で見たり、ヴァイオレットの視線に重ねたり、心動かされる私たちの旅も始まります。



劇中で聴く♪マイ・ウェイは、また格別!

時代は1964年、公民権法が成立して間もないころ。依然として人種差別も残るアメリカ南部の旅。意気揚々と旅に出るヴァイオレットの他者に対するやや攻撃的ともとれる言動、人の視線から右の頬を、自らを守るために築いた心の壁から彼女の傷が確かにそこにあることがわかります。





バスには白人も黒人も乗り合わせる。ヴァイオレットは、そこで黒人兵士のフリックと白人兵士のモンティと出会います。同じくバスに乗り合わせた老婦人のフリックへのまなざし、立ち寄った店のウェイターの対応、街を出たことで見えてくるもの。ヴァイオレットが何気なく発した言葉がフリックを傷つけてしまったときの動揺。パパが教えてくれたポーカーの腕前を発揮して縮まる二人の男性との距離。旅はたくさんのことを教えてくれます。そして幾度となく心象風景や夢として描かれるヤングヴァイオレットとパパのやり取り。それが意味するものとは。


旅の途中、メンフィスでの一夜。



力強く歌い上げるミュージックホール・シンガー
この場面では舞台後方のバンドも姿を現し、劇場空間がミュージックホールに!
カントリーテイスト、R&Bなど豊かな音楽に彩られるヴァイオレットの旅♪



優しく降り注ぐ光

フリックとモンティ、ヴァイオレットの前に現れた対照的な二人の男性。
東啓介さん演じるフリックが自嘲気味に語る、黒人であるがゆえに背負わされてきた「罪」。「生まれながら」、ヴァイオレットとはまた違う心の傷を抱える彼の人間性がとてもとても魅力的に映ります。東さんの力強くダイナミックな声、繊細で優しい声、台詞も歌声もフリックにガチっとハマってお見事! モンティは、スマートな振る舞いとその奥にある幼さが混在するキャラクター。一見、つかみどころのないようなモンティの揺らぎを立石俊樹さんが丁寧に表現。



ヴァイオレットの旅の目的、テレビ伝道師には原田優一さん。パンチの効いたパフォーマンスシーン(映し出される映像にも目が釘付け!)の奇跡のダンス!人を惹きつける 伝道師の実体、一人の人間としての振舞いの残酷なまでのリアリティ。圧倒的なエンターテイナーとしての輝きと悲哀をにじませます。


旅を終えたとき、ヴァイオレットに残るものは。
ヴァイオレットを演じる三浦透子さんのなんとも言えない、意志の強さと触れたら壊れそうな繊細さをもつ立体的な声。聡明な彼女が伝道師を前にはしゃぐ姿、晴れやかな笑顔、そして…。ラストの表情につながるひとつひとつの心の動きがしっかりと積み上げる芝居と歌にすっかり魅了されました。三浦さんの持ち味とすみれ色の衣裳もぴったりです!






旅の終わりは、新たな旅の始まり。
ヴァイオレット、フリック、モンティ、伝道師様、老婦人……すべての人に幸あれ!そんなことを思うのでした。

ひと足先に初日を迎えた三浦さんのゲネプロの様子をレポートいたしましたが、ヴァイオレット:屋比久知奈さん、ヤングヴァイオレット:嘉村咲良さんバージョンのお写真も届きました。(撮影:岡千里)



オレンジ色の衣裳を纏う屋比久さんのヴァイオレット


この場面、三浦さんのヴァイオレットはまた違う表情を見せていました。
同じ物語の中でヴァイオレットの居方、見え方が異なるというダブルキャストの妙、いろんなところで感じられるのだろうと屋比久さんバージョンにも期待が膨らみます!



最後になりましたが、物語の導入部ではアフリカ系アメリカ人公民権運動の歴史映像が映し出され、そこに黒人役を演じる3人の俳優、東啓介さん、saraさん、谷口ゆうなさんが登場します。痛めつけられても、また立ち上がる。メイクアップではなく、芝居で情報を観客に受け渡し、そこからは観客の想像力に委ねる。藤田俊太郎さんらしい演出。


【ふたつの色のヴァイオレットの物語!】

屋比久知奈さんのヴァイオレット、嘉村咲良さんのヤングヴァイオレット回も拝見。これまでに聴いたことのない、見たことのない歌声、芝居を見せてくれる屋比久さん。

三浦さんのヴァイオレットが他者との間に石の壁を立てているとしたら、屋比久さんのヴァイオレットはガラスの覆い。光が届くほどの透明度は感じますが、触れることはできないヴァイオレットの心。また旅を始めた高揚感や、賢さの中の危うさから、自分の世界で生きてきたゆえの少し幼い印象も受けます。

そして、spiさん演じるおっきな手のパパ。武骨な印象から、娘を愛し、娘に傷を負わせたことで自らも心に大きな傷を負った父親の姿までを誠実に、鮮やかに、そしてとてもナチュラルに演じます。ヴァイオレットの中のパパ、ヤングヴァイオレットのシーンがじんわりと心に響きます。雪解けのように感情があふれ出す終盤のパパとヴァイオレットのシーンは大きな見どころです。

意図して2つのエンディングを作り上げたというより、三浦さんと屋比久さん、お二人の感性で自然にたどり着いたように感じられます。感じ方は人それぞれなのでくわしい言及は避けますが、ラストシーンの印象の違いが二人のヴァイオレットの衣裳の色の違いと重なります。そこにヤングヴァイオレットの色も混じり合うと、藤田さんが会見でお話されていた「6通りのある」の言葉の説得力が増すのです。

二人のヴァイオレットがどんな旅をするのか──それは劇場で!

藤田さんのインタビュー記事も併せてご覧ください。

公演は東京を皮切りに、大阪、福岡、宮城へと続きます。
ヴァイオレットとともに、行こう、マイ ウェイ♪

STORY
1964年、アメリカ南部の片田舎。
幼い頃、父親による不慮の事故で顔に大きな傷を負ったヴァイオレットは、
25歳の今まで人目を避けて暮らしていた。
しかし今日、彼女は決意の表情でバス停にいる。
あらゆる傷を癒す奇跡のテレビ伝道師に会う為、西へ1500キロ、人生初の旅に出るのだ。
長距離バスに揺られながら、ヴァイオレットは様々な人と多様な価値観に出会い、
少しずつ変化していく。長い旅の先に彼女が辿り着いたのは―。



【公演情報】
ミュージカル『VIOLET』
<東京公演>
2024年4月7日(日)~4月21日(日)/東京芸術劇場プレイハウス
<大阪公演>
2024年4月27日(土)~4月29日(月・祝)/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
<福岡公演>
2024年5月4日(土・祝)/キャナルシティ劇場
<宮城公演>
2024年5月10日(金)~5月11日(土)/仙台電力ホール

音楽:ジニーン・テソーリ
脚本・歌詞:ブライアン・クロウリー
原作:ドリス・ベッツ『The Ugliest Pilgrim』
演出:藤田俊太郎

出演:三浦透子/屋比久知奈(Wキャスト) 東啓介 立石俊樹
sara 若林星弥 森山大輔 谷口ゆうな 樹里咲穂 原田優一 spi
生田志守葉 嘉村咲良 水谷優月(トリプルキャスト)
木暮真一郎(スウィング) 伊宮理恵(スウィング)

ミュージカル『VIOLET』公式HP

一部舞台写真提供:梅田芸術劇場
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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