劇団Patch版『破壊ランナー』
それはまさしく “男の世界”!!
音速を超えたレース
「ソニックラン」で10連覇を狙うチャンピオン・
豹二郎ダイアモンド、そして個性豊かなライバルたちがみせる奇跡を、俳優の肉体のみで表現!
その斬新な手法が当時の演劇界に衝撃を与えた惑星ピスタチオの代表作
『破壊ランナー』に、関西発の若手俳優集団
「劇団Patch」が挑みます!
「西暦2707年という遠い未来、人々は生身の人間が音速で走るプロスポーツ『ソニック・ラン』に熱狂していた。そんな中、デビュー以来負け知らずでどんな相手も寄せ付けない人類最速1.71音速のレコードを持つ男がいた。はたして、彼を抜くランナーは現れるのか」(公演公式サイトより)圧倒的な運動量とセリフ量の豹二郎ダイアモンド役に抜擢されたのは、
先日の『れみぜやん』でも大健闘していた竹下健人さん。
初演から20年以上の時を経た今、伝説の作品に挑むのは
「演劇で関西を盛り上げたい」と若手メンバーが集まった
劇団Patch。
その旗揚げ時から運営に関わり、これまでの全公演で作・演出を手がけてきた
末満健一さんが
「ようやく劇団らしくなってきた」と語るPatchメンバーの
芝居力、
がむしゃら力に、取材をしたおけぴ関西スタッフも心が動きました。
「イケメン俳優のアイドル的ステージ」そう思っている方にこそ是非観ていただきたい
「男の世界」。さらなる進化を遂げた『破壊ランナー』をみせる、それがPatchの
劇団力です!
そしてこの公演のもうひとつの大きな見どころは元・惑星ピスタチオメンバーである
末満健一さん(潤色/演出)、
保村大和さん(黒川フランク役)、
遠坂百合子さん(レディ・カルリシア役)の3人による15年ぶりの顔合わせ。
93年の初演時から出演し続けている惑星ピスタチオ旗揚げメンバーであり、
不動の黒川フランク役の保村大和さん、かつて女性ランナー役を演じ今回は
選手を見守る監督役でご出演の遠坂百合子さん、そして当時
最若手としてピスタチオに所属し劇団解散後は自身の演劇ユニット
「ピースピット」を主宰、いまや関西を代表する劇作家・演出家のひとりとなった末満健一さん。
元・惑星ピスタチオメンバーとして舞台上で再会するこの3人のみなさまに、今あらためて
『破壊ランナー』に挑む想い、そして
劇団Patchの未来まで、いろいろとお話を聞いてまいりました。
限界に挑むランナーたちと同じように、俳優として劇団として飛躍を目指すPatchメンバーが奮闘する稽古場の様子とあわせてお届けいたします!
(写真左から:保村大和さん、末満健一さん、遠坂百合子さん)
「3人以上で集まるのは15年ぶり(笑)」―劇団Patch版『破壊ランナー』に元・惑星ピスタチオのおふたりが客演する。当時のファンには本当に嬉しい驚きですね。
末満)
この3人が共同作業という形で集まるのは99年の『ナイフ』以来15年ぶり。惑星ピスタチオが解散してから、当時のメンバーが2人単位で集まって作品を作ることはあったんですが、3人以上で集まることはなかった(笑)。
大和さんと遠坂さんは解散後も小劇場を中心に活動されていることもあって、いつかこのおふたりと一緒になにかやりたいと虎視眈々と狙っていたんです。
劇団Patchで『破壊ランナー』を上演すると決まり、これはチャンスだな、と。
保村)
“惑星ピスタチオの西田シャトナー作品” という印象が強い『破壊ランナー』を 末満演出でやってみようという話が持ち上がったこと、さらに自分に出演依頼が来たこと、これは嬉しい驚きでしたね。
初演からずっと “黒川フランク” という役を演じていますが、今回また新しいフランク、新しい破壊ランナーが作れるなと。
もしこの企画に誘われなかったとしたら、きっと悔しい思いをしただろうと思います。
遠坂)
私は出演依頼をもらって「わーい!嬉しい」と思うと同時に、不安もあったんです。
最近は小さくて静かな作品に出演することが多かったですし、当時のようなアクションはできないだろうし(笑)。
それでもこの話を受けないという選択肢はないな、と思って出演させていただくことになりました。妖しい魅力の黒川フランク健在!
Patch版ならではの新たな趣向にも期待♪
制御室から豹二郎に指示を出す監督レディ・カルリシア。
Patchメンバーを優しく見守る遠坂さんと重なるような役柄です。
「当時、彼は高校生だった」―惑星ピスタチオの活動期間は約10年。末満さんは96年に劇団に参加、2000年の解散時までずっと最若手だったとか。
末満)
僕が入った後に、誰も入団しなかったんですよ(苦笑)。
保村)
当時僕たちは劇団員募集というのをしていなかったんです。希望者が来ても断っていたのに、それでも諦めずに食らいついてくる少数の中に彼(末満さん)もいたというわけ。
遠坂)
私、彼が初めてピスタチオの現場に来た時のことは鮮やかに覚えています。
学ランを着ていて…あ、当時彼は高校生だったので(笑)。椅子をすすめても「このままでいいです」って、立ったまま見学していてね。―その末満さんが今回おふたりを演出されるわけですが。
保村)
といっても、ピスタチオはいわゆる体育会系の縦社会がある劇団ではなかったので。
当時は劇団員が制作業務なんかもやっていたんですが、末満は印刷物のチーフをしていたんですよ。僕はある意味、彼の部下だった(笑)。
末満)
独立した人間同士、横のつながりがある劇団でした。だから今回もあまり先輩、後輩という気構えはないですね。
保村)
新しい環境で、新しいものを一緒に作るというかんじ。
遠坂)
『破壊ランナー』という作品自体が世代を超えて、新しく受け継がれていくというのは単純に嬉しいですよね。稽古開始前のひとコマ。
おふたり、なにを話しているのでしょう?
「自分に負荷をかけることに挑戦したかった」―劇団Patchで『破壊ランナー』をやろうと決めたきっかけは?
末満)
あまり面白くない回答になってしまいますが・・・今回はオファーを貰った時点で新作を書き下ろす時間がなかったんです。
そこで他の作家に新作を書いてもらうとか、既成の戯曲を取り上げるとか、いろいろと案は出たのですが、どれもこれも「無難だな」と。
今のPatchでやるには面白みに欠けるというか、もっとPatchにも自分自身にも負荷をかけるようなことに挑戦したいなと思ってしまったんです。
惑星ピスタチオが解散したあと、僕は自分のユニット(ピースピット)を主宰して10年間、作演出を続けてきた。
初期の頃はどうしてもピスタチオそして西田(シャトナー)さんの影響がありましたが、これから演劇活動を長く続けていくためには、少しずつ自分自身の道にシフトしていかなければならないとずっと意識していました。あえてピスタチオ的なものとは距離を取ろうとしてきたんです。
ですから今回『破壊ランナー』をやることになって “怖さ” を感じたのも事実です。せっかくピスタチオから距離をおいて、自分の作品世界というのを確立したのに「またそこに戻るのか」という(笑)。
・・・ただやっぱり純粋にこの作品が好きですし、自分が芝居の道に進んだ原点でもあるし・・・。
今は、改めてこの作品に向き合って “next” な『破壊ランナー』にできたらいいなという気持ちがあります。惑星ピスタチオの代名詞ともいえる「一人多役」「カメラワーク」にも挑戦!
音速を超えた『ソニックラン』。
独特のフォームで走り続けるPatchメンバー、演劇ならではの身体性の魅力がつまっています!
(写真左から:竹下健人さん、杞山星璃さん)
それぞれに個性がにじみ出るランニングフォーム。
(写真左から:中村圭斗さん、村川勁剛さん)
悩みぬいて上演を決めた作品だからこそ、
出演者へのダメ出しもシビアなものに。
「僕たち劇団Patchです!」―みなさんの想いが詰まった作品に今回挑戦するのが、若いPatchメンバーです。
遠坂)
はじめて稽古に参加したときに冒頭のレースシーンをみせてもらって、「お、思った以上にいいな」と(笑)。
テクニカルな意味でパーフェクトなわけではないんだけれど、そこを目指す姿勢が素敵だし、嬉しい。
舞台に立つ以上は「いつもの自分よりちょっと頑張っています」くらいの気持ちではなくて、もっと別の次元のなにかに気づいていかなくてはいけないんです。彼らからそこへ向かう気配を感じた。
それはもちろん『破壊ランナー』という作品が持つパワーであり、彼らを牽引していく末満の演出家としてのパワーでもあるのですが、より高いところに向かっていこうとするものを感じましたね。
ですから今回はもちろんですけれど、5年後10年後の彼らにも大きな期待をかけたいなと。
保村)
僕はPatchが劇団であることを最近まで知らなかったんですよ。
稽古が始まってしばらくしてから、家でテレビをみていたらメンバーが「僕たち劇団Patchです!」って言いながら出てきた。それで「あ、劇団だったんや」って(笑)。
でもその前から稽古場で、ああでもないこうでもないってワーワーやってる姿をみて「ああ昔の僕らみたいやな」と思っていたんです。
やっぱり劇団でなくては出せないものってあるんですよ。何かひとつの目標を全員で目指す姿、役の大小も関係なくみんなで芝居を作っている魅力というか。
“劇団” という言葉が持つ力もありますしね。だから「僕たち劇団Patchです!」という自己紹介はとてもいいと思う(笑)。
末満)
僕は旗揚げの時からPatchに関わっているのですが、若い男の子がチャラチャラ何かをしているという集団には絶対にしたくなかった。だからメンバー募集の時から明確に「劇団です」と銘打っていました。
今回で4回目の公演ですが、だんだんと “劇団特有の空気感” というのが出てきました。本当に劇団らしくなってきた。最初は大変でしたけど・・・(笑)。豹二郎の前に現れる最強の敵・ライデンとのデッドヒート!!
―Patchメンバーの稽古を拝見して、思った以上のポテンシャルに驚きました。豹二郎ダイアモンドを演じる竹下さんは『れみぜやん』でも大先輩たちに交じって健闘されていましたね。
保村)
どの役も、もちろん大変なんですけど、この豹二郎という役は特に大変なんです。本当にしんどいと思う。でも彼は手を抜かないんですよね。ここはネタのシーンやからちょっと休んだらいいのに(笑)なんて僕らだったら思うところでも全力投球。
でもめちゃくちゃしんどい中で彼が頑張っているという姿は、他のメンバーにもいい影響を与えると思いますよ。
末満)
そこは僕の教育が行き届いているということで・・・(笑)。
でも真面目な話、これから先も骨太な役者としてやっていけるようになってほしいんです。
体力的には本当にしんどいと思いますが、なかなか頑張っていると思います。身体はどんどん痩せ細ってきていますけど。
遠坂)
この2週間位でどんどん顔つきが変わってきている。余計なものが削ぎ落とされて集中している表情というか。プロフィール写真のツルンとした顔と全然違いますよね。
保村)
やるからには逃げ出すわけにはいかないですから。本人はきっと怖いと思います。
これから劇場に入って本当にこの役ができるのか、体力が持つのかって。
舞台に上がった時にどんな次元に突入していくのかという恐怖と戦っているはず。
豹二郎最大のライバルであるライデンを演じる三好大貴くんとの競り合いとか、みていても本当にしんどいですよ!お互いに絶対に譲らない。
役柄、ストーリー上でもそうですが、役者同士としても一歩も譲らないんです。
芝居も肉体訓練もお互いのためにもっともっと追い込んでいくという、しんどいことをやっていますね。ライデンを演じる三好大貴さんの存在感、気迫に
取材中のおけぴスタッフも引き込まれました!
どちらも一歩も譲らない!!
独特の美学を持つランナー・キャデラック役を演じるのは “諸岡先輩” こと中山義紘さん(写真右)
―『ごちそうさん』出演で一躍人気者となった中山義紘さんもキャデラック役のほかたくさんの役を演じています。
保村)
朝、家のテレビで諸岡(『ごちそうさん』で中山さんが演じている役名)をみて、稽古場にくると中山がぜんぜん違うキャラをやっている(笑)。
末満)
朝ドラをみて中山のことが気になった方には、また違う彼の一面、「え、こんなこともできるんや」というところをみてもらえると思います(笑)。
本当にいろんな役をやってもらっているんで。中山さんと杞山星璃さんが演じたシーンに大爆笑♪
いやー、ふたりともすごい!体の動きも勘もいいっ!
(もちろん格好いいおふたりのシーンもたくさんありますので、ご安心を)
Patch版『破壊ランナー』のキーポイントとなるスガタ・ハイウィンドウ役。
劇団最年少の井上拓哉さんが演じます。
末満)
井上くんが演じるスガタという役は、以前のバージョンでは女性という設定だったんです。
今回僕が潤色するにあたって男役に変えさせてもらいました。
そのことによって作品の質も変わってきているのが自分でも面白いなと思っているところ。
そこを彼がしっかりやってくれないと物語の構造がみえてこない・・・だから「がんばりや」と(笑)。
どんどん良くなってきているので、本番に向けてもっと上がっていってほしい。
保村)
芝居の上で実際の年齢はあまり関係ないかもしれないですけど、最年少の彼が主役の豹二郎の親友として対等な立場の役をしている。芝居もしっかりしていると思いますね。
遠坂)
え、井上くんって最年少なの?お芝居していると全然そうはみえない・・・。
保村)
なんでも本番中に彼の高校の卒業式があるらしいですよ(笑)。
末満)
だからそこだけ本公演ではなくイベントになったんです。
彼の学校のスケジュールで公演予定が決まった(笑)。エンターテイメントな手法に頼らず、
ぐっと骨太な男の世界をみせる演技は見ごたえあり。
「破壊ランナーの世界を、よりクリアにみせたい」―Patch版『破壊ランナー』ズバリ見どころは?
保村)
男同士のレースの話になっているところは、やっぱり注目ですね。
この変更があったからこそ、より骨太な作品になっていると思う。
末満)
よかった(笑)!
これ、西田(シャトナー)さんに伝えるときも怖かったんですよ。
西田さんに電話したとき「男に変えるっていう案やけどな・・・」って話し始めてドキーッ!としたんですけど、そのあとに「こっちのほうが面白いんちゃうか」って言ってもらえたんです(笑)。
―西田シャトナーさんお墨付きですね!
保村)
次に自分が演出で全員、男でやるときは「末満の許可をもらわなアカンのかな」って言ってたよ(笑)。
末満)
いやいや、そんな。光栄です。許可とかいいので、ぜひやってもらいたいです。
遠坂)
単純に考えて、肉体や筋骨の強さ、エネルギーは男性の方が強いと思うんです。
そういう意味で今回のPatch版では「究極のスポーツレースをみせる」という作品の魅力が、よりクリアになっていると思います。
男性の肉体が持つ強さ、美しさ・・・私も客席に座っていたらその世界をみてみたいですね。
末満)
男同士の友情や、抱えているコンプレックス、言葉をかわさなくても存在する信頼関係・・・、ソチオリンピックのフィギュアスケートをみていても感じたのですが、アスリート同士にしかわからない絆ってあると思うんです。浅田真央選手のフリーのノーミス演技にライバルたちも喜んだりして・・・。
Patch版『破壊ランナー』でもアスリート同士の「男の世界」を、よりクリアにおみせしたいと思っています。豹二郎がつかもうとしているもの、それは・・・?
これまでPatchを応援してきた方はもちろん、惑星ピスタチオが大好きだった!という演劇ファンの方も、限界を越えていく男の話が好きだ!という方も必見!の、劇団Patch第4回公演
『Patch stage vol.4 破壊ランナー』は、3月6日から9日まで
大阪・ABCホールにて上演されます。
“その先の” 破壊ランナーの世界を劇場で確かめましょう!
保村さんと山浦徹さんのやりとりに腹筋崩壊です(笑)
おけぴ取材班:mamiko(文/撮影) 監修:おけぴ管理人