成河さんのメルマガ『male de songha 』会員募集中!2019/1/19追記
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◆ ミュージカル『エリザベート』全国公演にあわせ、
“帝劇ロビーで豚まんを”、
“博多座ロビーできんつばを”、
“梅芸ロビーでドーナツを”と各劇場で開催してきた、成河さんメルマガ会員限定イベント『成河プチ一人会』。
最終公演地、名古屋・中日劇場でも、もちろん開催!中日劇場さんおすすめの「名古屋コーチンサブレ」をいただきながらの白熱演劇トーク、今回もまた、素敵な時間でした。
恒例となった…
「名古屋コーチン」「サブレ!」「さぁ、食べよう」で
プチ一人会スタート!
「今日、初めて『エリザベート』をご覧になった方はいらっしゃいますか」まずはこの質問から
このような感じで目を見てガッツリ対話するのがプチ一人会の魅力!
初めてご覧になった方、何度もご覧になった方、時間が許すならお一人ずつみなさんに感想を聞きたい!そんな成河さんの思いが溢れます。成河さん) この作品は東宝ミュージカル屈指の人気演目なので、王道の、これぞミュージカル!と思われがちですが、実はとても変わった作品です。見る人によって、さまざまな見え方があり、また、それを許す作品なんです。だから、みなさんにはどんな作品に見えたのかが知りたい。なんでもいいんです!どうぞ!
「みなさんが感じたことを聞かせてください」 とはいえ、最初のひとりは勇気がいるものですよね(笑)。成河さん) 気楽に質問してくださいね。ここは答え合わせの場所ではありません。みなさんが感じたことを知りたいな。それに対して演者として、「その通り!」と思うこともあれば「へぇ~」と思うこともあります。でも、みなさんの感じたもの、それでいいんです。そして僕は「私はこう見えた」「ああだったよねー」という感想を聞かせてもらえることが一番、死ぬほどうれしいんです。
こうして、成河さんのリードで徐々にみなさんの手が挙がり始めます。まずは、『エリザベート』に関する質問をご紹介いたします。お客さま) (2幕冒頭の)キッチュの場面で、途中から手拍子ができなくなるんです。周りは盛り上がっていますが…。
成河さん) ウィーン版をご覧になった方はいらっしゃいますか。僕は(ウィーン版でルキーニを演じた)セルカン・カヤさんが好きで、何度も見ているんですが、ウィーン版のあのシーンは、手拍子ができる雰囲気ではないですよね。
手拍子に関しては、悪いことではないと思いますが、♪キッチュでは「聞きたいことと違うだろ」「おとぎ話じゃないんだぜ」ということを歌っています。それに対して客席全体が手拍子、そうだそうだ!というのは正直微妙ですよ。ただ、エンターテインメントとしてギリギリのところなのかな。そこは我々の腕の見せどころなんですけどね。
だから、今、質問してくれた、キッチュに対して「何?」と手拍子できないという感覚を否定したくはないですね。
僕らは、「手拍子できないわ」という方の中にもすっと入りたいですし、「2幕冒頭、今日もキッチュ、キタキタ!」という方にも応えたい。どちらのお客様にも嫌な思いはさせたくないんです。
そういうことを考えるときに、思うことがあるんです。僕はとにかく劇場という場所が好きだなって。僕らは舞台にはなぜ価値があるのかを一生考えていかなくてはならないのですが、その時に思うことを少しお話します。
成河さん) 僕は、劇場はみんなが気持ちをひとつにする場所ではないと思うんです。もちろん、そういう劇場があってもいいんですよ。ただ、それは劇場、演劇でなくても、ミュージシャンのライブとかたくさんあると思うんです。
それに対して、たとえばある1つの物語に対して、客席では片や涙を流し、片や大笑いしている、それが舞台の面白さなんですよね。一人ひとりのプライベートに入り込む。僕は、そんな劇場空間が大好きなんです。どうしても、日本人特有の、周りに合わせるというか、泣かなきゃいけないの?泣けないって私って変なのかしら?とか、笑っちゃいけなかったのという感覚。それは本当にもったいない。その人に入ってきたものを柔然と解釈してほしいですし、誤解を恐れずに言うと、もう、好き勝手楽しんでほしい(笑)。もちろん人の邪魔はしちゃいけませんが、みなさんそんなことはしないですよね。それは日本のすごくいいところ!
こうして『エリザベート』のような(多角的に楽しめる)作品をやっていると、みなさんはどこに感動したか、どう楽しんでいるのだろうか、そんなことが尚更気になります。それぞれ全然違うと思うんですよ。だって、シシィに共感するのって難しいですよね、実際、共感できないように描かれていますから。
「誰も知らない真実エリザベート」、誰も知らないんですよ。史実として残るさまざまな材料、エピソードを一定の距離を保ちながら選び積み重ねている。そして、シシィに共感しそうになると、それを断ち切るようにできている。僕はこの作品にそんな印象を持っています。ですから、シシィに共感できなくても悩まないでください。
登場人物に共感できるということはとても素敵なことですが、僕は簡単に共感できない作品のほうが好きだったりするんです。群像劇とかね。
こうやって、ひとつの質問に対して延々としゃべるから長くなるんだよね(笑)。
成河さんはそうおっしゃいますが、どの答えも非常に誠実で、示唆に富んでいるので、ずっと聞いていたくなるのがこの会の特色でもあります。さあ、『エリザベート』からもう1ついってみましょう!今度は、ルキーニによるシシィ(エリザベート)暗殺について…。お客さま) ルキーニは(死を望んだ)シシィを手助けしたということになるのか。有名な一枚の写真、警官に連行されるときのルキーニの得意げな表情から「やってやったぜ!」といううれしさを感じます。
成河さん) 僕もそう感じます。一緒です(笑)。
あのですね。ルキーニのセリフで「毎晩同じ質問ばかり、100年間も」というものがあります。これはなかなか言えない、一番難しいセリフと言ってもいいかもしれません。
このセリフは、この作品が現代劇であるためのとても大事なセリフです。初演の時がエリザベート暗殺から94年目、そんな100年近く前の歴史を語る作品ですが、ルキーニのこのセリフによって、過去の話が急に、今、みなさんと同じ次元、時代にいる人間の話になるのです。「100年前にこんなことがあったんだぜ、教えてやるよ」と彼が語りだすことで、これが現代劇になるんです。
そんな大事なセリフですが、「100年間、毎晩同じ質問…」って想像できます?なんとか想像したとして、その状況でこのセリフは絶対言わないんじゃないかなと。もちろん、そこに無理やりリアリズムを持ちだす必要もないんだろうけど、俳優が1つのセリフを言うときには、必ず自分の中で納得できる何かが必要になるんです。それが非常に難しい。
そこで思ったのは、つまりこの話は巡っているということ。ある夜、突然ルキーニがこの話を語りだしたという見方です。そして物語の最初と最後が繋がっている、最後に首をくくったあと、ルキーニはポーンと最初にとばされ、「またですか…」というような。描かれているのはそっちなのかなと。
一方で、オーストリアの人々にとって、自国の歴史におけるルキーニという人物は、死刑でさえも手ぬるいというような対象です。そこで解釈の助けになるであろうキーワードとして挙げたいのは「自殺」。この「自殺」という観点から作品を見ると、さまざまな知的な遊びがちりばめられているんですよ。
みなさんお気づきかとは思いますが、シシィは自殺をしたかった。ドイツ語の歌詞では、「あなた(トート=死)だけが私の理解者」などのように、そこがより強く打ち出されています。 ただ、キリスト教文化圏では自殺は大罪、決して許されないものです。ここは我々の文化とは違うところですね。
自殺したいのにできなかったシシィが、人に刺されて、やっと死ねる…。殺したルキーニはそんなつもりではなかったのに、「これ、よかったんだ!」というような。先ほどの写真の表情はそんな解釈もできるかと思います。ただし、その先、ルキーニを待っていたのは、100年続く尋問と自殺という大罪。 結局、最後の最後まで赦されることのない罪人。ルキーニという人物は、そんな烙印を押されているように感じています。 よく考えてみると、ルドルフに関してはあいまいではありますが、この作品の中で、はっきりと自殺したのはルキーニだけなんですよね。こういった観点で見ることもできる作品です。
なるほど、実に深い。さらには、ルキーニ役を演じる上で演出の小池修一郎さんに言われた素敵な言葉として、「作品を通して、25歳で罪を犯したルキーニの青春をぼんやり匂わせてほしいな」を挙げる成河さん。それがどうみなさんの目に映るか…それはみなさんに託します!とのことです。(DVD見なきゃ!笑)
さて、続いては『エリザベート』をちょっと離れた話題をご紹介いたします。お客さま) 成河さんは海外公演を経験され※、また、インタビュー本
「Actor’s Mind」(徳間書店 トリックスター編集部/編集)での小川絵梨子さんのコメントによると、英語の発音がとてもいいとのこと。海外でも十二分に通用する役者さんだと思うのですが、将来的に海外での活動というお考えはありますか。あ、でも、挑戦してほしい反面、日本に居てほしい気持ちもあるんです。
※「春琴」(2010年、2013年)公演のアメリカ、ヨーロッパ、アジアツアーに参加(原作/谷崎潤一郎、演出/サイモン・マクバーニー)成河さん) これまでも、外国人演出家とお仕事をさせていただく機会に恵まれてきました。最近では、『グランドホテル』でトム・サザーランドさんというオフ・ウエストエンドの方とご一緒し、すごく面白かった!トムはあの作品を、ロンドンでは300席くらいの劇場で、4人の楽師と鍛え上げられた歌・芝居の役者たちで上演したんです。こんな贅沢ってないでしょ。
異を唱える方ももちろんいらっしゃると思いますが、贅沢な舞台というのは、決して大きな劇場、豪華なセット、衣裳、素敵な照明を言うのではないと個人的には思っています。僕が思う本当の贅沢って、たとえば、今、こうしている場所じゃないかなって。
狭い広いという二元論はあまりに短絡的ですが、人(役者)がいるだけですべての世界が見えてくるような、そんな豪華さもあるんじゃなかって。
でも、それは今の日本では無理なんです。あまりにも採算が合わないので。つまり、こういう考えは興行を邪魔してしまう。絢爛豪華なものを贅沢だと思っていただくほうが、チケット代も高く設定できるでしょうし(笑)、都合はいい。でも、本当はそうじゃなくて、200人ぐらいの劇場で『エリザベート』をやってみたならば、装置はいらない、あのみなさんの歌声があればもっともっと、どこまでもいけるはず。とっても深いところまで思いが伝えられるんです。そして、それに対して「もったいない」と思う必要はないと思うんです。作り手は、そこを目指さないと!
成河さん) そうやって僕らは、より良い上演の形を考え、探っていかなくてはならない。その義務があると思っています。そして、作り手はもちろん受け手であるみなさんとも一緒になって、どんな未来が描けるのかをいっぱいお話したいんです。僕が、ミュージカルであれ何であれ、大きな場所でやるというのは種まきです。こうして出会って、その人たちを連れて、最後は本当に演劇が贅沢である場所に一緒に行きたいんです。今は、その道半ば。どうすればそこにたどり着けるかを考えています。
それを諦めて、ポンとそれが可能な海外に飛んでしまうことは考えていません。僕は日本でそれを探っていきたい。いいんです、僕が生きているうちにできなくても(笑)。だって、どんなに時間がかかっても、その贅沢がなくなることは絶対にありませんから。映画館で4DXの映画を見て、椅子がどんなに動いたとしても絶対に得られない贅沢が劇場にある。それが僕の考え方です。
そして、それは有史以来の演劇の在りようだと思います。
こうして演劇についてひざを突き合わせて語り合うプチ一人会。ご参加されたみなさんは、その贅沢さを実感されましたよね。公演後に、そんなひとときを作ってくれた成河さんにあらためてありがとうございます!
最後に、成河さんのミュージカルへの思いをご紹介してレポートを終わろうと思います。成河さん) 尊敬している演劇評論家の扇田昭彦さん。残念ながら昨年お亡くなりになりましたが、舞台を愛し著書も多数遺されています。綴る言葉が親しみやすく、とてもおすすめですので興味のある方はぜひ読んでいただきたいのですが、扇田さんは、晩年、ミュージカルを愛しておられました。
そして「ミュージカルの良さはその大衆的なところにある」とおっしゃっています。演劇が、ともすれば頭でっかちでインテリの遊び道具、メッセージを発する道具になってしまうのに対して、ミュージカルは理屈じゃないところで、たくさんの人の心に届く可能性を持っているということです。僕は、まだミュージカルに携わって日が浅いですが、その大衆性の大切さを身にしみて感じています。もちろん演劇でもそこを探っています。つかこうへいさんもそうでしたし、井上ひさしさんの「むずしいことをやさしく…」もそう。
成河さん) 仮に、大衆性の対極を文学性とします。直木賞と芥川賞でもいいですよ(笑)。ミュージカルという表現の様式は、その折衷を成す急先鋒になりうると思うんです。ですから、日本で翻訳ミュージカルが上演されるようになって50年ほど経つなかで、まだその在り方を探っているミュージカルの様式は、常に新しくしていかなくてはいけないと思います。そこは井上芳雄くん、がんばってねと思うところでもありますが(笑)。僕がこうしてミュージカルカンパニーの中にいて、痛感したことは、「保守的になってはもったいない」ということです。その気持ちをもって、これからも演劇・ミュージカルに向き合っていきます。
成河さん) 僕は中学生のときに『レ・ミゼラブル』と『ミス・サイゴン』に触れて、まぁ、感動しましてね。そのときは、本物のヘリコプターが降りてきたと思いましたし、本物のキャデラックが舞台上を走ったと思ったんです。当時のスタッフさんに「本当にエンジンをふかしていましたよね!」と聞いたら、「そんなわけないじゃん!」と言われ…。少年時代の美しい思い出はズタズタにされました(笑)。記憶って面白いものですね。
でも、僕はあのときのキャデラックは本物だと信じています。だから、みなさん、これからも自分の目で見て、感じたものを信じてください。そして、それを大切にしてください。
いつものキッチュスタイルでサブレを配る成河さん
こうして、各地で開催された『成河プチ一人会』。2017年も、ご出演舞台目白押しな成河さんですが、贅沢空間での演劇を楽しむ『一人会』、今回のような対話型の『プチ一人会』を今後も続けていきたい!といううれしいコメントも聞かれました。今度は、どこで、どんなスタイルで、何を食べながら(?!)開催されるのか、楽しみですね。
こちらは、現在上演中の『わたしは真悟』ダイジェスト映像はこちらです!!
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おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人