新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』 新制作の裏側“衣裳仮縫い”レポート

主人公ホフマンの青年期から初老までの恋の遍歴をドラマティックに描く『ホフマン物語』が新国立劇場バレエ団にて新制作されます!!

そこで、新制作ならではのスペシャル企画「新制作の裏側」と題し、ホフマン役の福岡雄大さんジュリエッタ役&ラ・ステラ役の本島美和さんの衣裳仮縫いの様子をレポートいたします。


【ホフマン役 福岡雄大さん】


まずはこちらの衣裳から!
いきなり脱線いたしますが、目の前にスッと立たれた福岡さんの立ち姿に一瞬見惚れてしましました。ダンサーさんにとっては当たり前かもしれませんが、まっすぐ立つってこういうことなんですね!(あまりにも初歩的なことですみません)


さあ、気を取り直して!まずはツイードのスリーピースから。


ロングジャケットを羽織るとこのようになります。


それにしても、袖口などブカブカし過ぎやしませんか。と思った方!鋭い!
こちらはプロローグとエピローグの衣裳、つまり、恋の遍歴を語る初老のホフマンの衣裳なのです。少しくたびれたような印象を演出する、衣裳もその一役を担うのですね。


一転こちらは、きれいなピンクのジャケット!第一幕、青年ホフマンがオリンピアと恋をするシーンでの衣裳になります。


ジャケットの裾の長さ、袖の長さは1cm、いやそれ以下の微調整という細やかさ!

ちなみにデザイン画はこちら!


衣裳デザインはオペラや演劇、ミュージカル作品でもおなじみの前田文子さんです。


見ていると、あ、ピッタリ!と思ってしまいましたが、「踊る」ということを考えると、必要な可動域は異なってくるんですね。その辺りは、デザイン、素材、そして実際に身に付ける福岡さん意見を融合させてベストな衣裳を目指す衣裳チームのみなさん。

そして、最後はこちらの衣裳です。


こちらはだいぶしっかりとした生地を用いているので、袖ぐりの調整中。


ビリッと切れてしまったわけではなく(笑)、仮縫いですからね、調整が必要だとなると容赦なく縫い留められている箇所も糸をほどいていくのです。


さらにこちらの衣裳で福岡さんからリクエストが出たのは、パンツ。
そのあたりのこだわりについてもお話を伺いました。


--おつかれさまです。今日は4着もの衣裳をお召しになりましたが、タイトルロール、それも青年から初老まで演じるホフマン役の重責を感じられましたか。(お話を伺ったのはまだ暑い盛りです)

福岡さん)
いや、まだ全然ないです(笑)。
大役を任されたとは感じているので、少しずつ考えていかなくてはと思っているのですが、
僕自身、リハーサルを進めていく中で、役を作っていくタイプのダンサーなんです。なので、あまり最初からこうだと決めつけずにホフマン役に臨もうと思っています。

--衣裳にも表れていましたが、幅広い年代のホフマンを演じるのですね。

福岡さん)
今の段階では、あくまでもホフマンというひとりの人間という一貫性は大切にしたいと思います。劇中では初老から始まりますが、役作りという意味では、若者からだんだん作っていく形にしようかと思っています。

──先ほどの衣裳合わせでは、細部にわたって調整が行われていましたが、ダンサーさんにとっての衣裳とは。

福岡さん)
衣裳に助けられることがたくさんあります。
衣裳によって太く見えたり、細く見えたりするんですよね。
そして、それだけでなくやはり自分が着る上で、より美しく見せたいという思いを、『眠れる森の美女』の頃から強く持つようになりました。もちろんデザイナーさんの意向が大前提としてあるのですが、その上でなるべくなら自分がきれいに見えるようにしたいなと。

──細かくリクエストを伝えていたのもそのためなのですね。

福岡さん)
自分の中でもやもやしたままより、納得いく、きれいに見えるものに仕上げてもらったほうがいいので、僕の場合は仮縫いがさらっと終わることはないですね。そうやって衣裳さんには、わがままを言って困らせていますが、いつもバシッと仕上げてくださるので感謝しています。この子にはこうしよう、このほうがきれいに見えると衣裳さんの作品に対する情熱もすごいんです!


パターンに立ち返り、袖ぐりを大きくするか、見えない部分の一部を伸縮性のある素材にするか。衣裳チームのみなさんの経験総動員でつくり上げられるのですね。

──確かにそうでしたね!どうにかしようと知識と経験を総動員するみなさんの熱が伝わってきました。このようにバレエ公演は、それぞれの部門のスペシャリストが情熱を傾けて創り上げられるのですね。その一端も感じられました。ありがとうございます。

続いてはこちらの美女の登場です!

【ジュリエッタとラ・ステラを演じる本島美和さん】


第三幕で登場する、ホフマンを誘惑する高級娼婦ジュリエッタの衣裳から。
とても鮮やかな色で軽やかな素材を用いた衣裳です。



そこにさらに!
黒いマントを羽織るとのことですが、こちらはまだ生地のまま。
でも、イメージ膨らみます!現場でも、わぁ!との声が!


透かし柄も入っていて、素敵☆

──衣裳仮縫いを終えられて、いかがですか。

本島さん)
衣裳合わせをしてからお稽古に入ると、「あの衣裳を着るんだな」というイメージが自分の中にあるのでやりやすいです。何もわからないまま、「ここはマントをつけたままでリフトされます」と言われるのと、そのマントのテクスチャーだけでもわかっているのではやはり違いますよね。木綿の布とは違うのねというのがわかりますから(笑)


こちらはラ・ステラの衣裳デザイン画

先ごろ発表されたように、本島さんはプロローグとエピローグに登場するオペラ歌手ラ・ステラも演じます(一部日程)。こちらは一転して、演劇などの衣裳に近いお洋服的な衣裳です。


胸の開きやちょっとしたタックの調整など、みるみるうちに作業が進められます


より美しく!そのために一丸となるスタッフワークなのです

──ラ・ステラの衣裳はお洋服っぽいですね。

本島さん)
ラ・ステラは、それほど激しい踊りではないのでこのような衣裳で大丈夫なのだと思います。以前、牧阿佐美バレエ団で上演された『ホフマン物語』を見た時、ラ・ステラという女性もとても印象的でした。ホフマンの最後の恋人になるオペラ歌手で、去り際がすごく綺麗だったのです。彼が最後の最後に失恋する、締めくくりの女性として美しくありたいと思います。彼は全体的に失恋ですが(笑)。


腕を伸ばしたところで、さらに調整!

──こうして仮縫い作業をされていかがですか。

本島さん)
新制作というのは作っている段階から見られるので、ダンサーとしてもワクワクします。『シンデレラ』や『ロメオとジュリエット』など、イギリスから衣裳をお借りした際に、その衣裳のタグにMiyako Yoshidaと付いていたときの「その衣裳を私も着るんだ!」というワクワクもありますが、今回は自分のサイズで作っていただくので、また違ったうれしさがあります。オリジナルだということは、すごくうれしいですよね。

──衣裳には歴代の着用された方のタグが付くのですね。

本島さん)
そうなんです。その衣裳で踊った人のタグが付いていくんですよ。
今回はおひとりさま「本島」タグのみです。
そしてその衣裳を、これから何年、いや何十年と使っていくことになるので、きれいな状態で大切に使っていかなくてはなりません。

──ダンサーさんにとっての衣裳とは。

本島さん)
身体の一部というか、自分が作品の一部になるための大切なものです。
『ホフマン物語』のようなストーリー性の高い作品を皆レオタードで踊っていたら、誰がどのような人物なのかわかりませんよね。やはり視覚から入る芸術なので、ストーリーを語ってくれるという点でも重要です。
そのように、私たちもその役に入り込むのに必要なものですし、お客様にとっても役や場面をわかりやすくするものとして必要不可欠なものです。

──さきほど、ジュリエッタのマント(になる予定の布!)を羽織られたとき、目の奥にきらりと光る魔性…なんだか高級娼婦のスイッチが入ったように見えました!!
本番でもジュリエッタ、ラ・ステラ、それぞれ楽しみです!




【公演情報】
新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』
2015年10月30日~11月3日(火・祝)@新国立劇場 オペラパレス

<スタッフ>
芸術監督:大原永子

音楽:ジャック・オッフェンバック
編曲:ジョン・ランチベリー
振付:ピーター・ダレル
装置:川口直次
衣裳:前田文子
照明:沢田祐二

指揮:ポール・マーフィー
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

<キャスト>
【ホフマン】福岡雄大/菅野英男/井澤 駿
【オリンピア】長田佳世/奥田花純
【アントニア】小野絢子/米沢 唯
【ジュリエッタ】米沢 唯 /本島美和
【リンドルフ(悪の化身)ほか】 マイレン・トレウバエフ/貝川鐵夫

キャストスケジュールは公演HPをご覧ください。

おけぴ取材班:chiaki 監修:おけぴ管理人

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