帝劇から世界へ!舞台『千と千尋の神隠し』製作発表レポート~キャストコメント編 ~

宮﨑駿 不朽の名作の舞台版が日本人キャストにより前人未踏の日本/イギリスの二か国同時上演へ! 2024年の舞台『千と千尋の神隠し』製作発表が行われました。



舞台『千と千尋の神隠し』は、10歳の少女千尋が、神々の世界に迷い込み豚の姿に変えられてしまった両親を救う為に懸命に働き、生きる力を呼び醒ます姿を描いた宮﨑駿による大ヒットアニメーション映画をもとに、2022年に東宝創立90周年記念公演として初の舞台化がなされた作品です。英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクター、ジョン・ケアードが翻案・演出を手掛け、映画の世界から飛び出したようなキャラクターたちと、熱い息遣いまでが感じられるライブならではの醍醐味が相まった舞台は、高い評価を得ました。

2023年名古屋御園座での再演を経て、2024年は3月東京・帝国劇場を皮切りに、名古屋・御園座、福岡・博多座、大阪・梅田芸術劇場メインホール、北海道・札幌文化芸術劇場hitaruを巡る全国ツアー公演と並行して、4月から8月にかけて、ロンドン・ウェストエンドのロンドン・コロシアムでの初の海外公演も実現(ロンドン公演はPWプロダクションズ共同製作)します。

大きな注目を集める舞台『千と千尋の神隠し』製作発表会見が行われました。世界初演の舞台写真、ロンドン公演ポスターが見守る壇上にキャストが登場し一気に場が華やぎます。また、松岡宏泰さん(東宝(株)代表取締役社長)、イアン・ギリーさん(PWプロダクションズ 最高経営責任者) ジョン・ケアードさん(翻案・演出)、今井麻緒子さん(共同翻案)もご登壇されました。まずは速報としてキャストコメント編をお届けします。


【千尋役:橋本環奈さん】



『千と千尋~』は、私にとってかけがえのない作品です。いろんな感情が揺さぶられ、役者人生でこんなに充実した時間を過ごせるのは本当に幸せなことだと感じながらお稽古、ツアー公演をまわった初演でした。大切な千尋という役を、昨年の御園座に続いて、今年は帝劇から始まりロンドンでも演じられることを嬉しく思っています。また、萌音ちゃんと務めてきた千尋役に新しいキャストも加わり、新鮮さと学びを得て、私自身も進化した千尋をお見せできるのではと思っています。
稽古場では、初演からこんなに変わるんだとビックリするくらい、ジョンの演出が毎日変化しています、いい意味でね(笑)。作品がどんどん進化し続ける瞬間に立ち会えていることを幸せに思います。私自身は、今年25歳になったのですが、年を重ねることで遠ざかるのではなく、稽古をしていて10歳の千尋の気持ちがより理解できたり、寄り添えたりすることに自分でも驚いています。
日本のみなさん、そしてロンドンのみなさん、世界のみなさんにパワーアップした『千と千尋~』を早くご覧いただきたい!どれだけ期待をしていただいても、それを裏切らない作品になっていると思います。

──この作品はキャリアの中でどのような位置づけ?


初演は初舞台でしたので、本当に右も左もわからない状態でした。先ほども申し上げましたが、稽古や本番で演技をしていても発見だらけでしたし、こんなに感情が動くんだと驚きました。役者人生の中で絶対に何十年経っても色あせることのない記憶、忘れることはできない関係性に千尋となれたんじゃないかな。

──ロンドン公演について。

オリジナルキャストとしてロンドンの幕開けを担うことへは正直まだ実感はわいていないのですが、大変光栄なことだと思っております。ジブリの名作『千と千尋~』ですので、言葉が通じなくとも、楽しんでいただけるとそこに心配はしていません。どうなるのか私自身も楽しみにしています!


【千尋役:上白石萌音さん】



今年も大好きな作品に携われること、素敵なカンパニーの一員になれることがとても幸せです。今、ここにいて、報道の方の多さと、松岡さんやイアンさんのスケールの大きな言葉に、ちょっとふわふわしてしまいそうな気持ちですが(笑)、どの劇場でも素晴らしいストーリーを信じ、それを伝えることに徹して素朴に大切に千尋を演じたいと思っております。稽古場ではここにいる4人に加えてアンダースタディの森 莉那ちゃんと5人で千尋を作っています。キャストも2倍に増え、頼もしいスウィングさんも加わり、より一層『千と千尋の神隠し』の世界が豊かに自由になっているのを、日々、肌で感じています。私も毎日新鮮な気持ちで、柔らかく、そして誠実に、千尋として生きられるように初日まであと少しですが、役と、作品と向き合って頑張ります。

──この作品はキャリアの中でどのような位置づけ?



私にとっても本当に大切な作品ですし、千尋は他のことをしていてもずっと心の中にいます。街で10歳ぐらいの子を見かけると目で追ってしまうんです。どうやって立つのか、走るのか、しゃべるのか……稽古中でなくても千尋のための研究をしている自分がいます。私はずっと心の中に千尋を飼っているんだなと感じます。友達のような子どものような愛しい存在です。

──ロンドン公演について。

ロンドン公演は私も全く想像が追いついてなくて。ロンドン公演までのローテーションも発表されましたが千尋を演じる回数がとても多いので ロンドン公演があるからとかではなく、まずはなによりも健康第一だなと思っています。稽古場で、ジョンは「ロンドンではこういう風にしよう」とか「日本語じゃないからこういう表現をしよう」というようなロンドン用を作ってはいません。日本人として、日本人の心を持って真っ直ぐ向き合いたいと思っています。ロンドンへ行ったらいっぱい変わるかもしれませんが(笑)。


【千尋役:川栄李奈さん】



私は初演時に、帝国劇場で萌音ちゃんの千尋を見ました。幕が開いた瞬間に「本物の千尋がいる」と鳥肌が立ったのを今でも覚えています。その作品に自分が参加できるとは思ってもいなかったので、こうしてここに立っていることが今でも信じられないくらいうれしいです。
新しいキャストたちを温かく、優しく迎えてくださるカンパニーのみなさんに感謝をしながら、稽古を頑張って精一杯千尋を務めたいと思います。

──新千尋としてオーディションや稽古でかけられた印象的な言葉はありますか。



千尋の体力面も含め不安が大きかったのですが、稽古場で私がわからないところを実際にやって、背中で見せてくれる萌音ちゃん。環奈ちゃんは「できるよ、できるよ!」「大丈夫っしょ!」「いけるっしょ!」と明るく励ましてくれます。この二人に、私も桃ちゃんもアンダーの莉那ちゃんも本当に助けられています。


【千尋役:福地桃子さん】



今、絶賛稽古中ですが、自分が千尋役で参加していることが今でも不思議です。稽古場では、一番いい席で(笑)生の千尋を見てたくさん学ばせていただいています。また、大きな生き物から、小さな生き物までいろんな可愛い(パペットの)生き物たちの匂いや発する音を感じ、自分の身体が感動している、その体験がとても楽しくて仕方がないです。そしていつも一緒に稽古を頑張っているみなさんとこうして今、会見の場に立っていることで、みんなでこの作品をお届けできることがますます楽しみになっています。

──新千尋としてオーディションや稽古でかけられた印象的な言葉はありますか。



千尋役経験者のお二人の言葉や姿勢からたくさんのことを教えていただいています。
加えてジョンの「不安になる気持ちもわかるけれど心配しなくていい。次に稽古場に来るときはみんなエネルギーを持ってきてください」という言葉がすごく私の心に残っています。そのエネルギーというのはパペットで表現される生き物に人が命を吹きこむ“生命力”に近いのかなと思っています。それによって見えなかったものが見えてくるような感動が毎日あります。私も千尋としてちゃんと生きて、そこにいる生き物たちと会話できるようになりたいと思います。


【ハク役:醍醐虎汰朗さん】




「キレキレなハク」
(自分の持ち味をPRすると?の問いに、以下同じ)

初演、再演に続いてハク役を務めること、千尋役のみなさんの小さくて、大きい背中を間近で見られることを光栄に思っています。今回も胸を張って、精一杯ハク役を務めていきたいと思います。


【ハク役:三浦宏規さん】



「幻のハク」

前回の御園座公演で「卒業宣言」みたいなものをさせてもらいましたが、いろんな奇跡が重なって再び出演できることになりました!(笑) 初演からのメンバーに新キャストが加わったこの素敵なカンパニーの一員でいられることを幸せに思います。また、舞台を始めた頃からの夢であった「日本のオリジナル作品を海外にもっていく」ことが実現できたことにも大きな喜びを感じています。


【ハク役:増子敦貴(GENIC)さん】



「消えそうなハク」

実は、今年、年男の辰年生まれです。加えて宮﨑駿さんと同じ誕生日! ハク役に選んでいただいたことに運命を感じています。龍のように天高く舞い上がる! とにかく全力で頑張ります!


【カオナシ役:小㞍健太さん】



「アンニュイなカオナシ」

僕はバレエやコンテンポラリーダンスの分野で活動していますが、こんなにたくさんのキャストがいる現場に入ることは初めてです。このような機会をいただき感謝しております。カオナシという人の心を持ちながらも人ではないというキャラクター。ジョンさんから「それはちょっと人っぽいからもうちょっと工夫できるかな」というリクエストをいただいたときなど、今日は不在ですが先輩の森山開次さんをはじめとするカオナシチームで話し合いながら稽古をしています。工夫を凝らしておりますので、怖いな、チャーミングだな、カオナシのいろんな面を見ていただけたらと思います。


【カオナシ役:中川 賢さん】



「キュートなカオナシ」

小さい頃から憧れていたアニメの世界、ジブリの世界に自分が立っているというのが今でも不思議で、ちょっと信じられません。稽古場では、みなさんの演技の生の息遣いやエネルギー、人間性や愛を感じることがとてもたくさんあります。それを自分の中で行ったり来たりするうちに本当に『千と千尋~』の世界に入り込んでいくような感覚です。お客様にもそれを感じていただけるように頑張ります!


【カオナシ役:山野 光さん】



「真面目なカオナシ」

初演にはアンサンブルキャストとして、昨年の御園座公演からカオナシ役として出演しています。稽古場では今日いらっしゃらない方も含め全員で作っています。宮﨑駿さんの作品、『千と千尋~』だからこそ、全員で作っているとより強く感じるのかもしれません。その中のカオナシというピース、カオナシの想いや千尋にとってのカオナシというところを大切に演じたいと思います。


【リン・千尋の母役:妃海 風さん】



ご縁があり、リンとしてまた油屋に再就職させていただくことになりました!
お稽古をしていく中で、この作品や仲間への愛やリスペクトが増しています。家に帰っても興奮が収まらない状態でちょっと眠れないくらい(笑)。その興奮を情熱に変えて舞台で爆発させたいと思います。この気持ちを日本の皆様、そしてロンドンにも持っていくぞ!という気持ちで頑張ります!


【リン・千尋の母役:華 優希さん】



私は去年の御園座公演から参加させていただいています。
このカンパニーに入ったとき、あまりにもみなさんが素晴らしく「大変なところに来てしまった」という思いでいました。また、今日の製作発表会にこんなにたくさんの方がいらしてくださっていてさらに身の引き締まる思いでおります。この素晴らしい作品を日本と世界の皆様に心を込めてお届けしたいと思います。


【リン・千尋の母役:実咲凜音さん】



今回、新しく油屋で働かせていただくことになりました。
初演を拝見したときに、舞台からのエネルギー、素晴らしい出来上がりに感動したことを覚えています。実際に新しいメンバーとしてお稽古場に入ったときは、セットやパペットなど人の手で動かすところを見て本当に細部までこだわりが詰まっていると感じました。それは作品へのリスペクトの表れでもあります。とにかく作品への愛があふれている稽古場です。



宝塚娘役出身3人が揃ったということで、
清いリンです(妃海さん)
正しいリンです(華さん)
美しいリンです(実咲さん)
清く正しく美しいリンをさせていただきます(三人)


【釜爺役:田口トモロヲさん】



「オールドな釜爺」

こういう形で国際的なロングラン上演になるということは夢にも思ってなかったので、本当に光栄に感じています。そして、演出のジョン、麻緒子さん、チーム釜爺をはじめカンパニーのメンバーには本当に感謝しています。あとはね、楽しみたいと思います!


【釜爺役:宮崎吐夢さん】



「不安なかまじい」

私は帝国劇場も初めて、ロンドン公演も初めて、マルチキャストも初めて、東宝さんの制作する舞台に出演させていただくのも初めて。初めて尽くしなので、初々しいもぎたての釜爺をお届けできたらと思っております。


【湯婆婆・銭婆:羽野晶紀さん】



「何が出るかわからない湯婆婆」

お稽古場では、新キャストの春風さんと私は顔を見合わせて、「初演でこの舞台を作ってきた皆様には尊敬しかない!」と言いました。それくらい覚える段取りの多いこと!今はそれでいっぱいいっぱいですが、ここからの芝居も作っていかなくてはと思っています。銭婆の台詞にある「魔法で作ったんじゃ何にもならないからね」、本当に舞台は夢のようなお話をスタッフ、役者は手探り、手作りで届けています。そうやって届けらる奇跡をぜひ劇場でご覧いただけたらと思います。


【湯婆婆・銭婆:春風ひとみさん】



「迷いある湯婆婆」

初演から3回拝見していますが、その度に、みんなで作る、寄ってたかって作る、これこそ演劇だと感動しております。そこでまさか湯婆婆・銭婆役をさせていただけるなんて、感謝しかありません。30年ほど前、日本で初めて行われたジョンのワークショップに参加したとき、まだまだ舞台経験も浅かった私に「あなたはきっとお芝居が必要な人になるわよ」と言ってくださったのが同じく参加されていたマリさんです。その言葉をくださったマリさんと、今、こうして同じ役を演じられることは奇跡のようです。従業員をこよなく愛し、ときにはちょっとはちゃめちゃになってしまう湯婆婆を全力でお届けしたいと思います。


【湯婆婆・銭婆:夏木マリさん】



初演、そして昨年、今回で3度目ですが、私個人的には映画をやらせていただいたのは20年ぐらい前ですので20数年も1つの役をやらせていただいていることになります。それはとても幸せなことであり、本当に頑張らなければいけないなと思っているところでもあります。そろそろ湯婆婆は後輩に譲ってくださいと言われても、私的には湯婆婆も銭婆も愛おしいので、もうちょっとだけやらせていただきたいなと思っております。従業員も増えました。しっかり働きますので、どうぞ今回もよろしくお願いいたします。

──舞台版を通して、役への新たな発見はありましたか。


声優としての表現は映画公開時に出来上がっている。そこから20年後に、この身体を使って同じ台詞を言ってみると全然違う表現になるんですね。演劇として私の身体が湯婆婆・銭婆として成立しないといけない、一方で映画を見てくださっている方もいるだろう。そこを行ったり来たり、誤解を恐れずに言えば二重苦でした。でもジョンが稽古場で「みなさん決してモノマネはしないでください」とおっしゃったんです。それでストンと落ちたような気がして、自分の手足を使った演劇の方向への迷いがなくなりました。



後編はロンドン公演への松岡社長やイアン・ギリーさんの想い、ジョン・ケアードさん、今井麻緒子さんが舞台化で大切にされたこと、千尋役4名による囲み取材の模様をレポートいたします。

※カオナシ役の森山開次さん、釜爺役の橋本さとしさん、湯婆婆・銭婆役の朴 璐美さんはご欠席されました
【公演情報】
舞台『千と千尋の神隠し』
2024年3月11 日(月)~30 日(土) 【東京】帝国劇場
2024年4月30 日(火)~8月24日(土) 【ロンドン】ロンドン・コロシアム
2024年4月7日(日)~4月20日(土) 【名古屋】御園座
2024年4月27 日(土)~5月19日(日) 【福岡】博多座
2024年5月27 日(月)~6月6日(木) 【大阪】梅田芸術劇場メインホール
2024年6月15 日(土)~6月20 日(木) 【北海道】札幌文化芸術劇場 hitaru

キャスト
千尋 橋本環奈/上白石萌音/川栄李奈/福地桃子
ハク 醍醐虎汰朗/三浦宏規/増子敦貴(GENIC)
カオナシ 森山開次/小㞍健太/山野 光/中川 賢
リン・千尋の母 妃海 風/華 優希/実咲凜音
釜爺 田口トモロヲ/橋本さとし/宮崎吐夢
湯婆婆・銭婆 夏木マリ/朴 璐美/羽野晶紀/春風ひとみ
兄役・千尋の父 大澄賢也/堀部圭亮
父役 吉村 直/伊藤俊彦
青蛙 おばたのお兄さん/元木聖也
頭 五十嵐結也/奥山ばらば
坊 武者真由/坂口杏奈

原作:宮﨑 駿

翻案:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子

オリジナルスコア:久石 譲
音楽スーパーヴァイザー・オーケストレーション・編曲:ブラッド・ハーク
音楽スーパーヴァイザー補・オーケストレーション・Ableton プログラミング:コナー・キーラン
美術:ジョン・ボウサー
パペットデザイン・ディレクション:トビー・オリエ
振付・ステージング:井手茂太
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
衣裳:中原幸子
ヘアメイク:宮内宏明
映像:栗山聡之
音楽監督・指揮:深澤恵梨香
舞台監督:北條 孝
演出補佐:今井麻緒子
演出補:永井 誠
演出助手:小貫流星
プロデューサー:尾木晴佳

演出:ジョン・ケアード

協力:スタジオジブリ
製作:東宝株式会社

公式 HP
●日本公演
https://www.tohostage.com/spirited_away/
●ロンドン公演
https://www.spiritedawayuk.com/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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